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茶道独言
薄茶手前おはじめ、諸具の取扱に及んで、肩おいからしひぢおはり、無言の行おなすごとく、顔おいからしてなすこと、いらぬこと也、隻主客和順にして驚くことなく、静にしてねばることなく、いつ働となく取扱ふて手前おなすこそ本意なれ、古人の無言などいはれしことも有なん、隻世間の雑談おいみ、今時の人、何の清談有べきとて、いましめられし言葉なり、切磋琢磨に於て無言といふもの有べき哉、勿論雑談は誰制せずとても、茶の本意お観ぜんと思ふ者、かほどのことは、もとより得心も有べし、