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茶話指月集

ある時豊臣関白秀吉公、始て千宗易に台子の茶湯仕べきよし仰出さる、そのころ辻玄哉といふもの古来の台子おしる、宗易玄哉所へゆきて古流おならひ、御殿においてつかうまつる、公上覧の後、われもむかし台子おならふ、女が茶湯格にたがふところあり、奈(いかん)と御猶候お、宗易、古流はそこ〳〵品おほくおもはしからず候により、略して仕候と申上る、公さては其ならひしらざるにあらず、最におぼしめす、向後茶に嗜(すけ)るめん〳〵宗易が台子見ならふべきよし仰られ、却て御感に預る、夫より千家古流お閣、利休が当流相承し来る、