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台子しきしやうの時かざり様の事
台天目の習
一台天目にて茶お立る時は、台の上にて湯おも茶おも入て立ると紹鴎は相伝せられ候、然ども天目お台よりおろして立て客へいだす時、台にのせてまいらするもよし、
一台は初水こぼしのわきへよせ置候お、茶わんに湯お入て置候時分に台おとつてよくふく也、一台天目にて茶おのみ候に、むかしは台おもともに持てのみしなり、是あぶなくてあしく候ゆへ、台ともにとつて台お下に置、天目ばがり持て呑たるがよく候、次の人にわたす時は、又台にのせてわたすべし、
一茶のみはてゝ、茶わんお見て其次にわたし、又台おも見るなり、見やうは盆の見やうと同前なり、扠ていしゆにかへし候時は、台にのせてかへすこと本なり、貴人の御前ならば下にも置べきが、いづれも当座のしゆびたるべし、
右之条々すき道の一秘事にて侍れば、漫に人に相伝あるまじく候、あなかしこ〳〵、
天正十五亥の二月吉日 利休宗易判
〈万貫や〉新四郎殿〈参〉