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茶之湯六宗匠伝記

茶通箱之習事
茶通箱は、両種の茶お入るため、たとへば客より明日被招、忝奉存候、折ふし御茶挽おき候故、幸と存じ、其様へおくり候と申来る時は、手前にも濃茶お挽てある故、両種ともに出し振舞可申と思ふときは、茶通箱に茶入二〈つ〉にすることも有、又一種棗に入来れば、此方のは茶入也、何時も取ちがへたるが吉、又宇治の茶師方より、両種お進るとて来る事有、是又茶通箱菱皮籠に入〈る〉こと有、紊は棚に横おくべし、亭主出て右のあいさつ也、先棚に向ひ箱おおろし、ふたお取てまづ客の茶よりとり出し、初は茶入取出し、跡なる茶入お真中へよせ、本のごとく蓋おして、如本たなへ上ておき、扠手前にかゝる也、是第一の習也、たて仕廻、茶入出し、後の炭おすることもあり、又茶菓子出し、手水に客立たる跡には、又掛物にても花にてもする也、扠後の茶おたつる也、菱皮籠の手前も茶通と同じことなり、