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貞要集一

茶桶箱茶湯の事
一肩衝半切茶入に濃茶お入、猶袋に入、茶桶箱の内へ手前の方に入置、塗棗に薄茶お入、和巾にて包、箱の向の方に入置、架の上に竪に上げ置なり、但二重架には下の架に上げ置也、四畳半には水指の前に竪に置合、茶碗はすこし壁際へはづし荘合也、則絵図に記す、〈○図略〉
一茄子、丸壺、柿茶入、総而せひのひくき茶入のときは、薄茶は中次、又は薬窓雪吹等用る也、宗易作意にて小㯙に濃茶お入、袋に入て薄茶お大㯙に入て用ひる事如何、棗中次に入申たき事なり、一中立の中に、水指如法置合、前に茶桶箱置合せ、茶立前は茶碗に三品仕込持出、左の壁際に置、扠水覆に蓋置柄杓組て持出、蓋置定座へ直し、時宜おして茶碗如法直し、茶桶箱引寄、我前に置、蓋お取、ふたは左の方に箱のごとく置、茶入取出し前に置、棗お箱の中へ直し、蓋おして水覆の向へ置合、扠茶入袋お取、和巾にてふき、定座へ直し、茶立前は常のごとくなり、又大目架にも茶桶箱置合る、其時は茶入取出し、元のごとく架へ上げ置、〈○中略〉
一何れの小座鋪にても、道幸有之時は、茶桶箱お道幸の中へ入置、此時は茶碗お水差の前に置合、立前は替る事なし、
一濃茶二種、一度に立る事有之、又濃茶薄茶お一度に立る次第六け敷事也、〈口伝〉濃茶お両種調る時は、茶桶箱の中の茶入お取出し、前に記す通にして茶立出し、客茶お呑終り、茶碗お見ずに返し、今一種給可申と挨拶有也、其時茶の礼おして茶碗お洗申時、客より湯お御出し候様にと乞申也、此湯お出し様に効有り、下洗して茶巾にて茶碗おふき、また湯お入さつと捨、熱くまいり候や、ぬるくまいり候やと亭主たづね申時、あつく御出しあれなどとこのみ申也、其時湯おすこし入て出し、釜のふたおしめ置、客湯お呑仕廻申内に、茶桶箱の棗お取出し、箱は水覆の向に置、和巾にてさつと拭て、箱の前はづれ棗の中墨間二寸程に置、茶かへりて、又釜のふたおとり、茶碗下洗してまた湯お汲入、茶筌さつと洗て置、茶碗の湯お捨、茶巾にてふく、此間も極寒、には釜の蓋おしめて置なり、扠茶杓お取、和巾にてさつとふき、棗お取茶お匙ひ入、棗持ながら茶お茶杓にてくだき、茶杓お持ながら棗のふたおしめ、元の所に置、茶杓は茶入に懸置、釜の蓋おとり茶立出す、客後の茶給申内に、釜へ水おさして蓋おしめ、柄杓は架へ上げ、勝手お明て覆お捨に立申也、二種立申故に水覆捨申事也、客は茶お呑仕廻、茶碗お見申事也、茶碗返し一礼有、仕舞は如法なり、扠茶入所望の時茶入お出し、茶入の跡へ棗お直し置なり、茶杓袋お乞出し、又棗おも乞出す、棗中継ともに、古きか又は利休などは出申也、名もなき物は出し申に不及也、出す時は茶入お先へ棗お跡に、脇に袋茶杓出す也、箱に入たるごとく出し申が能也、扠箱は其儘置、すきと道具返り取入仕廻申也、客より返し申も、茶入お前に棗お跡に箱に入申様にして返し申候、亭主出、箱おそばへ寄、蓋お明、茶入お前へ棗お向へ入、蓋おしめ、蓋の上に袋お置、茶杓お持添て取入る也、右茶桶箱茶道前は、客より濃茶持参、又は貴高より御茶被下候時、手前の茶と両種箱に入立申次第也、是お古来より茶桶立と申て、軽き草の茶湯に用る効の一つなり、中々六け敷手前故、委書記申也、濃茶薄茶も調申候、替る事なし、但薄茶立申候時は、湯お乞出し不申也、
一風炉一つ居の時、茶桶箱は長板の右の方に置合る、立前の時は茶桶箱前へ引寄、蓋お取、左のかたに置、茶入お取出し、右の膝際に置、棗お箱の真中へ引直し、蓋おして左の水指の前に横に置合る也、是一つ居の風炉の会釈也、