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草人木

一炭おくに心持あり、大釜ならば大炭におき、小釜ならば小炭におくべし、又きはめて寒ずる日は大炭、におき、あたゝかにして二三月ならば、縦大釜成共小炭におくべし、
一当世炭おくに色々の異説あり、古き歷々衆に問侍れば、当代の人の雲説不審と雲々、故人の炭の定には、同炭お十文字におく事お嫌ふ、又手柄だてに大炭おして土檀へおき懸る事、又炉の角角へ置懸て、いつくしくしたる灰のかどおくづす事、以上これらお昔より嫌ふ、此外に別に指合おぼえずと雲々、同炭お十文字におくとは、黒炭とくろずみ、或は白炭としろずみなどの事也、黒炭と白炭との十文字はきらはずと也、取分五徳のあしお、あらはにはさみたるやうなるお嫌ふと也、