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喫茶指掌編

庸軒常に雲、遠州の風炉の灰は至て手際よく、実に刺刀にて切たる如く立派にて、前に灰お立炭お置時、土器の灰お不掃、灰の仕様は一通りに極たる也、亦宗旦の灰は古風にて、行かゝりさつと致たる灰なり、前土器の上に灰お掛るもかけぬも有て、立派なる事もなく、初より土器の中程は見えて有也、灰は何となく勢有て位よく、さつと灰お致て風呂へ火お入るなり、故に一通とは格別に極たる事なく、隻位と勢お専と致也、夫故に素人は、宗旦の灰は仕易様に思共、遠州織部のは、手際計にて立派なれども仕習やすし、宗旦流は手ぎはいらぬ替りに、勢と位とは中々初心の人の眼には入らぬものなりと雲り、