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南方錄

茶具客より所望して見る事作用差排援に略す
主の秘蔵一物抔は、かねにても知れ、又はあしらいにて賞玩の道具と見ゆるものは、其一物お乞て見るべし、其外さあらぬ道具品々乞事不可有、茶入茶碗の袋、又は盆抔は賞玩の一具なれば乞て可見、又茶入茶碗に添たる茶杓有物なり、乞て見るべし、主よりはかき畳に茶入茶碗も出す、客より戻す時も同然也、主勝手口おさしおく事も有、又は明ながら挨拶して居る亭主もあり、其時は秘蔵の物たりともかき畳に戻す、勝手口さし置時は、道具により秘蔵の物ならば、客の内功者成人道具畳に行て、扠道具お別入、かき畳へやつて受取て、台目所に道具相応にかねよく置て坐に帰る事有、勿論常の物ならば、主勝手口おさし置たりともかき畳にかへすべし、