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客之次第
一茶入こふ時分は、茶おとり置ざまに、亭主ちやわん茶巾茶せんおも仕廻、さゝくおふくさにてのごひしまふ時分に所望してよし、是は亭主ふくさ物の手にある次而にて侍れば、其ふくさにて茶入おふき出させん手づかひなり、
一茶入出され候時、総客ひぢおつかへ、茶入おのぞき見てほめる、名物の茶入なれば、亭主より手に御取候て御覧候へと申、其時ふところより手拭お取出し、手おのごひひぢおたゝみに付て茶入おとり、まづなりおちと見てふたお取、其ふたの内、ばかりお見て、ふたお右のかたに置、茶入の口つき内の体雲、くすりどまり、いときりのやうす不残見て、よく〳〵ほめておしいたゞき、次へ渡す時に、又初の所に置なり、次の人も同前なるべし、但せとやき日本物ならば、客より何と手にとり見申度と雲て、扠手拭にて手おのごひ、右のごとくに見申なり、客いづれも同前に見て、下座の人又上座の人に渡す、上座の人いよ〳〵又見て又いたゞきて、本の所に茶入の表お亭主の方になしおくなり、此見る間には亭主は勝手へ入、各見仕廻たる時分に、亭主また出て茶入おとり申さるゝ、其時客おの〳〵いんぎんに礼おする事なり、