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茶話指月集

一ある時蒲生飛騨殿、長岡幽斎翁両人、利休所にて茶湯過て後、蒲生殿千鳥の香炉所望あり、休無興のていにて香炉おとり出し、灰お打あけころばし出す、幽翁清見潟の歌の心にやと御申候へば、休気分なおり、いかにもさやうに候との返事なり、順徳院御百首の中に、
清見がた雲もまよはぬ浪のうへに月のくまなるむら千鳥かな、このこゝろは、けふの茶湯おもしろく仕舞たるに、なんぞや無用の所望かなとおもはるゝより、村千鳥お香炉に比したるなるべし、すべて何事も興の過たるはあしゝ、こどたらぬ所に風流余りある理、古き書にも見え侍る、