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貞要集
一上
真台子之事
一台子、長盆茶入、台天目一荘、往昔有之候得ども、茶調様区々にして、茶道前不極処に、奈良の称名院住僧珠光、台子七荘にして茶調様工夫鍛錬して、東山義政公へ被召出、於御前茶道仕、夫より代代に台子の茶湯弘り申也、紹鴎利休よりすこし替り有、段々奥に茶道前記す也、
一台子の置様は、道具畳の向四寸余五寸迄間お明け、左右は畳の真中に置、客付の方畳の丸目お見る様に置也、左の方に風炉お置、風炉の左の鐶付と台子の柱と、見通し申様に置也、又釜の蓋柱際に置候て見合する也、釜の蓋大小により申也、〈口伝〉右の方水指お置、是も柱と水さしの脇とお見通す、台子の真中向柄杓立に唐金の火箸柄杓と立添て置、柄杓立の底には濡紙お敷、是は差引にならの様にとの事也、柄杓立の前に水覆お置、覆の内に蓋置お入置也、是お隠架と雲也、右の通、台子に水指、柄杓立、水覆、風炉お置合、とくと見合、片ひづみ無之様に置合する事第一也、金風炉の鐶、水指の左右上げ下る也、是は箆蒙釜の会釈也、
一上の架には茄子の茶入袋に入、天目袋に入、組長緒也、両種お長盆の左右に置、台子の真中に置也、昔より台子には唐物茄子の茶入お用也、天目台共に名物也、茶入は右の方、台天目は左に荘なり、
一床には掛物と花生と、台子上下の荘五種と、以上七種也、是お真の七荘と雲也、総じて釜は、炉風炉共に道具の数にいれず、一座の亭主と定て珠光よりの法也、釜お数に入る事、効なき故也、