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槐記
享保十三年正月四日、つぼかざりと雲こと、昔もめづらしきことにて、常修院殿〈○慈胤法親王〉へ所望せしかども度々はなされず、唯一度その茶にあひたり、今の流には、せきもりとやらんにて、にじり上りの口に、つぼお飾ること也と雲、御流儀にはなきこと也、床にきはめてかざられたり、客入て常の如く拝見しで、亭主出て御壺おかざられたり、先以て御口切と見へて、別して忝し、迚の儀に藷つがりおはづして見せられよと雲、覆のあるも、緒のつがりあるも、あみめあるもあり、それぞれのあしらひ也、鼻紙おしきて底までお見て亭主へもどす、亭主入て口お切る、〈客の前にてきると申すは僻がことにやと窺ふ、なしと仰なり、〉