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茶窻間話
上一
金森宗和、加藤何がしへ示されしは、茶道は取合が肝要なり、たとへば白木造りの結構なる書院の庭に、松椵柏など植込し中に、藁屋の数奇屋お見わたせば、奥深く寂ておもしろく見ゆるなり、田舎辺の草屋ばかりの中に、二階作りの家土蔵など高く見ゆるは、さびたる中の富貴なる体、何となくおくゆかしく思はるゝなり、こゝが茶道の取合の心得ぞといはれしよし、今も掛物は名僧の墨跡のあとに、瓢の花いけ、又は青竹などお用ひ、唐物か古瀬戸の名ある茶入に、今出の楽焼国焼などの茶碗お取合するの類も面白し、但しあまりにおもしろがらせんとては、却て不道化におちいる事多し、又いつも〳〵同じ取合せもよろしからず、其時々の機変こそ肝要なれとなむ、