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茶譜

一茶の袋に極上と書こと、無上に究ると雲お以のこと也、
一初昔後昔と雲こと、古は畠の名お則茶の名とす、依之森と雲、畠の園は森と雲、宇文字と雲、今は其畠の名お、吾々の名字に付故、茶の名に唱がたし、依之家々の名園、上々の茶お初後と雲、然ば初後の文字には不可限処に、何れも家々にて初昔後昔と書は如何、答曰、其家々の上々の園の一番に摘、最初に仕立るお初と雲、翌日摘て翌日仕立るお後と雲、依之入日記並茶袋に、三月幾日摘初昔と書、翌日摘て後昔と書、其外の茶は摘の日付も不書、猶家々にて名お種々に付る、
一初後とばかり可書お、昔と雲文字お書こと如何、古は蒸茶に仕立る、中奥はゆで茶にして仕立し、然お其以後ゆで茶は青香有て、色も青黒惡と雲て、又古の蒸茶に仕立る故、古の仕立なりと雲お以、昔と雲文字お書加、
一白と雲こと如何、中奥ゆで茶の時は、色青黒し、蒸茶は青白し、其白ははなやかにうるはし、依之青い中に白青お第一に好むこと也、故白茶と雲心お以、白と雲字お書入る、
一別儀と雲茶は如何、或書物に曰、昔珠光所持の葉茶壺に松花と雲有、此壺茶お持過、煎色味ともに惡く成、珠光宇治へ雲付て蒸おひかへさせしと也、其砌此仕立常に替り、別に仕立ると雲お以、茶師の雲初しと有、然ども茶の味強して次成ゆへ、今は仕立様は極と同事なれども、味の次成お別儀と並て雲なり、猶別儀お袋に入ることは無之、
一揃と雲は極別儀の輪くづお揃へて、惡き詰茶に用、其中にも能お極そヽりと雲、惡きは別儀そそりと雲、そヽりは揃也、之より次お上そヽりと雲もあり、又粉と雲は、極のふるいかすなり、又吟と雲も有之は、袋茶に仕立る中に、若葉の蘂に白くきら〳〵として巻葉あり、之お輪出すお雲也、