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槐記
享保十二年霜月十日、参候、濃茶に初むかし後むかしと雲名に付て、昔の字にさま〴〵の説ありと申す、廿一日に取たる茶故に、昔の字ありなど附会して申すはいかヾと窺ふ、仰に、〈○近衛家熙〉さればとよ、無禅がいつも申せし、唯今の昔にまさりたるものは茶なり、秀吉などの時分は、しぶ茶とて味の渋きお用たるお、其後製して白茶と雲ものお出して、又もとのしぶ茶になりしが、どふしても昔の白茶がよしとて、白茶に極りしと也、初後は、初めて芽お出したる真おつみたるが初なり、其わきおかヽえたるお二番につみたるが後也、右の白茶に極りたるから、昔の初、昔の後と雲心にて、初むかしと雲也と仰らる、