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茶窻間話

丿貫といひしもの、京都の住人にて、数寄道の逸人なりけり、〈○中略〉或時休師〈○千利休〉日比聞及しものなり、いざ尋んとて、二三子お携へ、其許とひしが、家のそともに石井あり、直に街道にて、人馬のちりほこり立こみて、いぶせかりしお見て、此水にて茶はのまれず、各帰らんといひしお、丿桓聞つけ、表へ出て呼かへし、茶の水は筧にて取が、それでも御帰り有かと、高声にてよばはりければ、休師それならばとて、人々ともなひ立かへり、旧知のごとくしたしくかたりて、それより交深かりしとなん、