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翁草

当代奇覧と題せるものに、あらゆる雑談有り、十が一援に拾ふ、
一古老の雲、〈○中略〉囲ひも利休作にて、泉州堺浄土寺の椽側お三畳敷屏風にて囲ひ、茶の湯おせしより始る、去に仍て囲ひはあらたに造ると雖片庇也、数寄屋は棟お別に建る也、中くゞりは遥後に出来たり、利休時代は中くゞり無く、猿戸にて有し、古田織部正重勝中くゞりと雲事お仕出さる、囲ひの住居種々の事は古田の作多し、中柱は利休子の道安が初て仕出しけるお、父の利休是お見て、無類の物数寄也、しかし女が仕出したりと雲はゞ、後世用ひざる事もや有んとて、頓て崩させて利休が囲ひに中の柱お建しと也、