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茶窻間話
上一
むかしは茶会の席とて、別に定めてはなく、其席々々に見合せて炉お切て点じ、珠光の座敷などは六畳敷なりしとぞ、但し炉の切所は何畳にても三所あり、其伝に、あげて切と、さげて切と、道具畳のむかふの地、敷居へおしつけて切との三つなり、しかるに武野紹鴎が四畳半の座敷お作りはじめて、炉お下中に切しより已来、四畳半構といふ事ありて、其後千利休三畳大目構の座敷お造り、初て炉お中に上て切しより、大目構の炉といひならはし、其頃より昔からいひ伝へし、あげて劫、さげて切といふ詞は据りはてゝ、今の世などは、むかしかゝる事ありしといふ事もしらぬ茶人多しとなん、