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茶道望月集
十七
一いろりふさぐ心得嗜とは、炉中の灰お皆、救上げて、能ふるいぬきて、霰灰みぢん灰は分ん〳〵にして、杉の桶か大壺かの類に入て、夫へ濃きあくおすゝぎて、夫にて灰心の能程に打しめして、土蔵の下屋か、其床かの下の、しめり気の有所に、ふたお能して取置事よし、扠来る開炉の刻、其灰お出し候時は、色能黄ばみて見事に成て有物也、其時霰灰お能打まじへて、冬中春かけて用る事よし、古流には霰の余りこまか成は不好、一分四方、一分に二分計にても丸み有お好也、此霰灰は分んに求るにあらず、則炉中のこげ灰お右の大きさにくだき、あくにて能しめして、右に雲如く半年中嗜み置時は、能霰灰何ほども出来する事も可知、風呂の灰も、当時は色白き字治のほいろ灰とて用る事なれども、夫に不及、古法は隻炉の灰お随分こまかなるすいのふにてふるいぬきて、是お用る事と可知也、
一炉の五徳は、此時揚げて能洗ひ、ふき切て風透の所に、又一向古き重宝の五徳ならば、箱に納て置事也、