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茶道独言
露地といふことは、能阿弥珠光の二流より出たるにあらず、また陸羽七碗などの茶味より出るにもあらず、専ら休〈○千利休〉の開避にて、人我の相おうち破て風雅おなせり、其後古織〈○古田織部正〉小遠州〈○小堀政一〉など、聞へし時の宗匠たりといへ共、休の心入と少しく違び有て、草庵露地に事よせ、猛きお柔らげ、交りの道お本意とし、又人々の才お試みなどせんのため、大命お蒙りて宗匠たり、小児の及ぶ所にあらず、然りといへ共、またかく用ひ給ひしほどの人々故、休の露地などのこと心入もありながら、時の命に違ふお憚り、むなしく過給ふこと押て知べし、しかし休の露地とても、ふしぎの法お出したるにあらず、本書院台子の規矩より出て、かへつて規矩お忘れ、自ら一風おなせり、