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茶譜

一利休流路地は、在郷の側に、古森の陰に、隠遁者の菴室お仕て居ると見るやうに薮お植、細い道おつけて、竹のしほり戸、或は猿戸お立、詫て静かな体なり、石頭炉、並手水鉢、苔つき殊勝成体なり、飛石もむなく無之やうにして、きら〳〵磨ことは無之、植木の下は篠芝の其間々は木の葉お蒔、木の葉は柏椋の葉松葉、加様の類取集て蒔、山出しの木葉に塵のないやうにして蒔、其森の大木の木葉風に散て、土も不見と雲ごとし、道筋ばかり掃のけて和に見へし、