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南方錄

飛石附名有石
露地飛石おすゆる事雲に丕及、躪上りの口に遣ふ石お初の石といふ、刀掛石、手水鉢の前石、相手石、額見石抔さま〴〵あり、大戸より外の石お一つ石といふ、是にて雪蹈おはきかへ露地に入る也、総じて飛石有露地の時、躪上り又は障子にても、初の石の上にて雪蹈お蹈揃へ躪入り、雪蹈おなおすべし、裏と裏お合て腰板に寄掛置てよし、扠亦休居士の露地に飛石なしあり、其時は玄関の外にひきく竹すのこにても、板はりにても小縁お付て、下駄にても雪蹈にてもふんぬぎて、小縁にあがり、それより挑にても障子にても明て入也、此時は勿論くつお手にてあつかふまじきとての事也、中立まへに人おやりてくつ直し、客衆其儘はく様にしたるが能也、休のもず野は、露地すべて芝生なりとかや、飛石なき事相応なり、当国抔砂地多石無きもよろし、苔地抔はせきだの裏しめりて惡し、飛石にすべし、