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茶話真向翁

千家および薮内お茶の家本と唱ふ、これもおほやけならず、私の唱也といふべし、利休居士の婿万代(もづ)屋宗安の末葉、肥後細川家につかへて、今に茶家お唱ふとなん、又紹翁晩年の子武野宗瓦の子孫尾州に有とぞ、加州に小堀家、金森家有、此類猶ありぬべし、其人其道に堪能ならば、家と称すとも可なるべし、
立花家池坊は、室町家治世より連綿して、今に花の家本たり、其余諸芸の家もと、みなおほやけに有、茶家に限りて其沙汰なきは、居士〈○千利休〉ことありて後、織田常真公、織田有楽翁、細川三斎翁等の諸歷々、就中古田織部、小堀遠州、片桐石州等、つゞいて公上の御師範たり、されば家本の沙汰あらぬ成べし、