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甲陽軍鑑
十四/品第四十
一此次に高坂弾正申さるゝ、四国牢人に村上源丞と申者は、堺、の紹鴎が雑談おきゝたるとて、我等にかたる、数奇者(すきしや)と茶湯者(ちやのゆしや)は別なり、茶湯者と申は、手前よく茶たてゝ、料理よくして、いかにも塩梅よく、茶湯座敷にて、振舞する人お申、扠又数奇者と申は、振舞に一汁一菜なりとも仕り、茶は雲脚にても、心の奇麗なるお数奇者と名付てよび候、元来数奇は禅僧から出たるわざにて如件、諸宗は仏語、禅宗は仏心とて、廬地お肝要にして、まことおほき心指お執行人のたつる茶お、数奇者の振舞と、村上源丞がかたると、きんば、数奇者と茶湯者は各別と聞候よし高坂弾正がかたる也、