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筆のすさび

茶事に長じたる人、古より名家数多あり、おのれ〈○橘彦通〉壮年あころより往来して、目のあたり見聞しける宗匠家といふ分、三十人ばかりもありぬべし、その中に、鈴木宗川、久田宗渓、同弟宗参、鈴木知足庵、速見宗達、この五家ほど事実式礼等に精しく、茶手前もよく、茶の湯も上手にて、並に詩歌の風流にもわたりし人は見当らず、この余にもありぬべし、予がしれる人の内ばかりおいふ、