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総見記
十一
信長公自摂州被引返於坂本対陣事
柴田もさすが鳴呼の者にて、追かけ参らせ、信長公の馬の轡の水つきにひしとすがりて申上るは、我等は父土佐守より某まで二代の内、合戦に向て終に老ぼれたる不調法は不仕候、もし四畳半敷の数寄屋へ入て、茶などおたべ候にこそ不調法なる事も有べく候と申しすて、あざ笑て罷帰る、さすがの信長公も返答につまらせ給ひて、御詞なく打通らせらる、