[p.0638]
和泉草

壁書
一賓客腰かけに来り、同道人相待候はゞ、板お打て案内お報ずべし、
一手水之事、専心頭おすゝぐお以、此道の肝要とす、
一庵主出請して客庵に入べし、茶飯諸具、不偶にして美き事も又なし、露路の樹石、天然之趣、其心お不得輩は是より遥にかへりされ、
一沸湯松風に及び、鐘音に至らば、客再来、湯あひ火めひのたがいと成事多罪み也、
一庵内庵外において、世事の雑話古来禁之、
一賓主歷然の会、巧言令色お入べからず、
一会始終二時より過べからず、但法話清談に時うつるは例外、
右七け条は茶会の大法也、嗜茶輩不可忽者也、
天正十二年九月十二日 南坊在判
宗易在判