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別本黒田家譜附錄
如水遺事
如水茶道の水屋に法度書おはり置るゝ、其文に曰、

一茶引候事、いかにも静に廻し、油断なく滞らぬ様に引可申事、
一茶碗以下、あかつき不申様に度々洗可申事、
一釜の湯一ひしやく汲取候はゞ、又水一ひしやくさし候て、まどひ置可申候、つかひ捨のみ捨に仕間敷事、右我流にてはなく、利休流にて候間、能々守可申事、総じて人の分別も、静とおもへば油断になり、滞らぬと思へばせはしくなり候て、各生付得方になり候、又随分義理明白なる様にと思へ共、欲あかにけがれ安候、又親主の恩お始、朋輩家人共の恩も預り候事多候処に、其恩お可報と思ふ心なく、終に神仏の罰おかふむり候、然者右三箇条、朝夕湯水の上にても能々分別候為、書付置候也、
慶長四年正月日 如水