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茶道望月集
十二
一此方に余り不用為なれ共、当時専用る四方棚といふもの有、成程形は古法の物也、真中に二本柱あり、上下共にひれ有て、上に成し方の棚板は広く大き也、下に成し方の地板は小き形なる物也、〈○中略〉
一其外紹鴎の水指棚といふ物有、是は四方共、棚木地板にて中棚もある、両脇上下の四所に茶碗すかしとて、志野袋棚の香ざまのごとく成すかし有、〈○中略〉
一三重棚といふ物有、四本柱有て、天井の棚地板共に四板也、是おせいろう棚共雲、此棚お風炉囲炉裏にも置合て、座敷に常に用ひて、近世宗室抔の仕置かれしといふ人有、左にあらず、昔より有物也、然共古法には、此棚は勝手に置て、晴の茶事また高貴尊客の時、其日用る道具お、此棚に愡而組付置て後、座敷へ持出候刻、此棚より段々次第能取おろして、座敷へ持出候時は、其具お敬ふ儘に用たる物也、一名仕懸棚とも雲、〈○中略〉
一又四方棚といふ物有、是凡ての棚より小形成物也、是も四本柱有て、上の棚地板有、地板の上に建水面桶にふた置抔、竹の引切などは、入子抔にして入置程の間有て、中棚一枚入たる物也、