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南方錄

中板
能阿弥の作なり、桃尻と雲杓立、耳口のこぼし、臨済の印の蓋置、此三色所持、是に依て出来す、水指の座切のけたる故貫秘事多く、せい高といふ釜お求め、筑前蘆屋山鹿左近と雲し者、名誉の上手成し、鉄の風炉お鋳させ、中板のかざりお十分に調と雲、置方は東山殿御物にて、そろりの杓立、合子のこぼし、夜学、獅子の蓋置、車軸御釜に、朝鮮の風炉、此らお飾り、中板お用らる、略の物なれども、名物お揃へて飾る故、所作秘伝多し、書院かざりの間、平坐敷共に用ゆ、紹鴎四畳半真に夏の会抔は、度々用られしとなり、手前に取つく時、水指いかにも今焼の伊賀備前等はこびてよし、取あつかひかれ是秘事口伝、