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槐記続編
享保十七年八月十二日、参候、日外車輪釜お拝見いたせし刻、仰に、〈○近衛冢熙〉車輪は夜会にかけた一段よき物也、火の影の炭にうつりて、其由ありと、三菩提院〈○貞敬法親王〉の説也と仰ありしが、近日車輪の釜お見出せしとて御覧に入る、これは本遠州〈○小堀政一〉が物ずき也、御流義にはなきものなれども、古へもかけられたるお見たり、三菩提院にもかけられたり、女〈○山科道安〉が見せし釜はよからず、御所持の釜お出して御見せなされしが各別のもの也、並べては影もなき由お申し上げしかば、左ほどに思はヾ下さるべき由にて拝戴す、此釜にて当年の口切お致すべき由お申して退出す、 十八年九月十三夜、九輪釜のかけやうには習あり、かくるときは正直に持ち、五徳にかけて後へじらして、角お両方へ分つべし、さげれば柄杓にさし合なり、是九蝓釜のあしらいなる由、常修院殿〈○慈胤法親王〉の御数なりと仰らる、