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茶道望月集
十三
一自在といふ物、其もとは山家にていろりに此自在お用ひて、朝夕のいとなみのぐより見立て、茶事のいろりにも用る事なれば、別而詫の具とは可知也、仍て本式一畳半二畳半迄のせまき所に、中柱ににらまざる座敷には用ると可知也、大目座敷などは、とかくにらみて惡き物と可知、中柱なきは各別の事也、〈○中略〉
一凡自在竹の長さは、其座敷の天井に合て切る事也、しかれば一畳半座敷の高さは五尺九寸也、是本式なれば、夫に合て切ると可知也、四畳にて用る時は、天井の式六尺一寸の曲尺に合せ切る事よし、仍而長さに定法は有てなし、夫とても広座敷にて略ながら此自在お折に寄て用る時、七尺とも有天井に長さお合て切といふ事はなし、其時宜ならば、上より鏁か、詫ては細引にて程能つり下げて用る事よし、
一其竹節数の法は七ふし、若は八節に限ると也、扠此竹の見立様は、ふし高くして樋はふかからず、ゆがまざるお見立て切用事也、節のひきゝはぬるくて見立惡し、又伊達にさび有は悪し、胡麻さびなど右て静なるお好む事也、ふとさは其鍵の太さによく取合お可見立也、扠名所はひるかぎかけの緒お掛緒といふ、此緒の付様は、四畳半一畳半向点ひるかぎ先きのむかい様に合て付る事よし、ひるかぎ向様はくさりの所に記す、くさりも同じ、竹の上の木口は三の留り、下は下の留りと雲、下の留りより九分上にふしお置也、如此切事習也、上の方は構ひなし、扠小ざる付の穴は、下の留りより一寸七分上にあける事よし、扠此小猿付の緒は、当世の様になく細きがよし、かけ緒の穴は、上の留りより是も一寸七分下にあける事よし、小猿は枇杷の木也、弦かぎは茱萸の木お用る也、扠釣様は、高さは炉ぶちの上端より竹の下の留りまで、一尺一寸お法と可知也、小猿の先きは、むかふて右のかたへなす、然ば小猿付の緒は左になす也、何れの座敷にても同じ事也、