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醒睡笑

茶之湯
慈照院殿〈○足利義政〉愛に思召るゝ壺あり、名おなにとかなづけんと御工夫ある、ころは完正弐年八月廿日、たれかある、今日は廿日かとお尋あれば、女房達聞もあへず、中々けふ初雁おきゝまいらせたと申上られたり、あらおもしろの返事やとて、能阿弥にむかはせたまひ、
誰もきけ名づくる壺の口びらきけふはつかりの声によそへて
とおほせあれば、能阿弥とりあへず、
初雁お聞へあげゝることのはおいやめづらしき雲のうへまで
此由来により、初雁といふ壺ありとなん、