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茶話指月集

一宗易が盛阿弥に、棗は漆の滓おまぜてざつとぬれ、中次は念お入れて真にぬれといひし、紀三与三が棗は、塗みごとすぎておもくれたり、秀次藤重およしとす、
附、先年千宗佐物語に、昔より中次は疵あるお嫌ふ、棗は厭ずといはれしも此意に合ふ、一或時今日庵主古宗佐へ物語に、宗易は尻張の茶入お嗜て二つ迄所持す、一つは三斎へまいらせ、一つは予〈○藤村庸軒〉が家に伝たるお、若き時煩て厨乏かりければ、姪の九兵衛に、其茶入替りにつかはし金子調させつるが、そのまゝにてえ取もどさず、先にはかゝるものともしらで、うづもれやしつらん、茶入はあめ薬の一色なるものなりといはれし、