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千家茶事不白斎聞書
長緒之事
一長緒は先づ平茶入によし、併つヽ立候茶入は、長緒付る事も昔より有る事也紀州に上杉瓢箪とて名物也、是は珠光紹鴎より伝なり、古金らんの袋に、浅黄の少し短き長緒付有之、是お先づ形とす、茶入は唐物也、珠光紹鴎の時ぶ皆長緒也、利休被伝候も長緒也、後利休より短き緒出来、依而其後長緒不用候処、原叟宗佐常叟〈江〉相談、又長緒遣ひ初、色は先づ紅紫なり、棗に長緒は無之候、
袋之事
一大津袋は棗に限り候袋也、併又春慶などのはだ能茶入には付て不苦、此袋は大津より米お入来る袋形になる、仙叟より、 柿袋は他流もの、此方に不用、 袋は四つ立とて、切四つにしたる物也、片身替り迚、切れ二つにて縫有り、是は面白切迚、切能方お客附〈江〉遣ふ、
唐物茶袋之事
一唐物茶入袋は緞子能候、併紀州の上杉瓢箪は萌黄地の古きんちん掛り有之候、珠光紹鴎より伝る茶入なれば、是お形とし不苦と如心斎申候、唯唐物に金入お掛たる例有と雲事に而、先づは緞子能候、 天目は金入の袋能候、緞子お掛る例も有之候、