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槐記続編
享保十六年二月廿四日、茶入の紐の結びやう、左手にてわなおなし、通用の紐お左の方にて流通するやうにして、引ときは手お覆ひにしてこれお引、とまる処は、大指お仰けて引とめて結れぬやうにすべし、むすぶときも、左にてわなおこしらへ、引しめて左の方お通用として、右の人さしゆびにて、きつと押へて結び付、紐のむすび目、仰むくやうにして、前に洞お見ることお第一にすべし、甲の平なるは、つがりの先お下につけて、甲のなでがたなるは肩に付て、先さがりにしたるがよしと仰〈○近衛家熙〉なり、 長紐のことお伺ふ、長ひもは大海内海にかぎりたることにやと伺ふ、仰に大海内海に限る可らず、併唯今はめつたに長紐にして用るも本のことにあらず、長紐にせでかなはぬ茶入あり、ちとめづらしく長紐にすると雲義にあらず、常の茶入の紐と雲もの、茶入袋の口お一杯にひろげて、はなの処お折かへして三け一なるものなり、夫にて出入よきほどの茶入は、みなながひもなり、大海や大肩つきなどの、胴まで手のかヽりて出がたきは短紐のとがなり、長紐にせではならぬものなり、是は大海にかぎらず、長紐の筈なりと仰なり、