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茶道要錄
上/主法
茶杓之事
鄭尉が茶譜お按ずるに、撈雲は茶具十六箇の内、竹の茶匙也と雲り、撈は取物お攏ると注す、竹の茶杓唐朝に初る、倭朝には往昔象牙お以て作る、其比象牙希有なり、故に詫人は水牛の角にて作、汚穢お厭て漆にて塗て用ゆ、然お祖師珠光軽く詫て、竹の目の添樋有て節なきお以て作る、紹鴎も亦従之、其後利休に至て、竹にて作らんには節あらではとて、添樋なき節竹お以て造る、自此已往皆従之、樋は茶お匙ふに便たす、故に能茶お杓(くむ)者おして、樋無の竹にて削り与へたりと也、象牙に丸柄と角柄と二つの形あり、竹には形なし、茶盛の大小に因て削る、勿論大格の制あり、匕形(かひなり)に極秘の伝あり、裏の肉置に習あり、筒の制も亦伝受あり、盆立台天目の時は、必ず象牙又は珠光お可用、盆立台立は古法なる故に、器物も亦如此、茶盛陶の時は、茶杓お盤の縁に可置、扠茶盛お其座に直し茶お可解、塗物の時は、其儘右手に持ながら茶盛お座へ直し茶お解也、又圭首座の作あり是は利休下削おせられし故に、其自作は添樋有て、節お本へ寄、格お替て少伝あり、最も可用也、