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茶話真向翁

いにしへ茶杓は象牙なりしお、紹鴎初て南都宗清といふものに、竹にてけづらせしとなん、あさぢいもなどいひて節なし、居士〈○千利休〉にいたりて、はじめて節おこめられし也、甫竹慶首座下けづりおなせりとかや、其後茶杓の上手ありて、利休、織部、遠州、石州、宗和など、夫々の風およくうつしければ、茶お嗜むもの、我流々々の朽お、此ものにあつらへもとめし事にてありしに、是等の杓、後世にいたりて、皆其宗匠達の真作に混じけるとそ、又遠州の茶道逸斎といふ者けづりし杓おほく有は、寺町二条辺に、竹屋一斎といふ茶杓の上手ありしかば、いつとなく此者の作、逸斎作と相混ぜしと見えたり、又細川三斎翁茶道にも、一斎と雲者有て茶杓お造りしが、此人百余歳の長寿おたもちしとなん、