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四方のあか

茶杓記〈石原氏に代りて作れり〉
いにし完延己巳〈○二年〉の秋、近江の国三井寺の桜の根おわかちて庭に植置しに、志賀のうら浪たちかへり、とし〴〵春のながめ絶せす、ことし聊その下枝おきりて、茶杓となし、人のもとに贈るとて、そのよし箱の蓋にかきつく、猶一炉の清風お添て、百花の余香に飽んとなり、