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茶道筌蹄

香合之部
香合は道具中にても至て軽き物ゆへ、利休百会にも香合の書付なし、夫故名物も少し、名物は堆朱青貝に限る、張成、楊茂、周明、此三人は宋朝にて堆朱の三作といふ、張源、銭珍、呂甫、金甫、王円、王賢、印堆、此七人は、元明の間の人、時代定めがたし、前の三人と合せて、堆朱の十作といふ、
存星 彫に星のやうなる物ある故に存星といふ、又存清と書て人の名といふ説もあり、時代不分明なり、但し東山殿飾書には存清とあり、
堆黒 唐物にて新古あり、十作の内にもあり、
綠葉紅花 摸様文字の通り也、十作の内にもあり、
蒟漿(きんま) 安南国にてきんまお入るゝ器なり、きんまの葉に、檳榔子(びんろうし)お包み、石灰お付て、食後に用るよし、木地とかご地と二通りあり、此器に似よりのおきんまといふ、〈○中略〉
こま 高麗(こま)といふ事ならん、狛楽といふは非なり、
青貝 唐物と、琉球と二品あり、
象牙 唐物、山中氏に紹鴎所持宝珠形あり、
青磁類
雲鶴 至て古し
角牛 至て少き物なり、名高きは雲州侯、淀侯、山中氏にあり、角にして蓋の上に牛の浮もやうあり、至て白き物にて、白呉洲ならんか、
桔梗〈七官〉 木瓜〈七官〉 一葉〈七官〉 木葉形〈七官〉 元和慶長の頃、七官といへる唐人の持渡る手お七官といふ、
蜜柑〈七官〉
犬鷹桃 一種の物、桃の上に犬と鷹と向ひあわす物なり、開扇〈七官〉 木魚〈七官〉 獅子〈七官〉 角〈七官〉 丸〈七官〉
裏白 〈南京青磁にて内白し、姿いろ〳〵 あり、〉七官よりは時代若し、南京青磁ともいふ、