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煎茶綺言

湯候
湯沸に新汲潔水お盛、襄炉に活火お起し、初沸〈魚眼〉二沸〈連珠〉三沸〈波騰〉お候し、瓶中に茶お投じ湯お沃ぎ、湯面の気眼おさまり、茶脚沈むお節として、芳鮮お喫すべし、古人是お初巡とす、初巡は則半韻色嫩、次に沸湯おさし喫せしむ、是お再巡とす、則醇美廿冽なり、三巡則意況尽、 むべからずと、凡そ煎茶は享に循速お要とす、湯熟すれば性弱にして芳韻乏し、また昔日より山林の人茶お盌中におき、沸湯お衝、茶筅おもて泡おたてヽ喫す、是お泡茶また沖茶と雲ふ、実にひなびたる太古の風なり、