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木石居煎茶訣

〈和名〉こんろ 経〈○茶経〉に風炉とありて、其製銅鉄泥の三通りあり、真〈○真斎清事錄〉には凉炉とよべり、今用ふる所はこゝに図〈○図略〉するごときの類にして、形状一ならず、いづれも明以後の製なり、按ずるに、こんろとよぶは風炉、凉炉等の唐音なるべし、しかるお俗間に崑崙の文字などお配当せしは、謂れなき伝会の説といふべし、
〈和名〉こんろぶた 錄〈○茶錄〉に炉蓋とあるは、疏〈○茶疏〉にいふ所の雪洞にして、今末茶家に用ふる雪洞是也、こゝに図〈○図略〉するはこんろぶたにして、近ごろ新渡にたま〳〵これお見る、こんろに火お、用ひし後、これおもて覆ふに、灰燼騰散の憂ひなく、頗る便利お覚ゆ、舶来に蓮葉などおかたどれるもの多し、
〈和名〉ゆわかし きびしやう 杜〈○杜氏全集〉に急須、疏〈○茶疏〉に茶注甌、注湯銚、資〈○資暇錄〉に茗瓶、会〈○曾典〉に茶瓶、間〈○間情偶奇〉に茗壺、類〈○類書纂要〉に砂缶、真〈○真斎清事錄〉に茶壺など、さま〴〵の名、種々の形もあれど、いづれも明以後のものにして、ゆわかしも、きびしやうも、素より一物なるお、三四十年来淹茶になりてより、ゆわかしときびしやうと、二物のごとくもてはやす俗習とはなりぬ、〈○中略〉石〈○石山斎茶具図譜〉に急尾焼の称あり、きびしやうの和名は、全くこゝにもとづくなるべし、
〈和名〉ひしやく 経〈○茶経〉に又犠杓ともよびて、図〈○図略〉の如くふくべにて造り、或は梨の木にても作るとあり、譜〈○茶譜〉に分盈、花〈○花史左編〉に水杓などいふも、みなひしやくにして、或は竹の節ある所お底にして造れるなどの類多し、
〈和名〉みづさし 経〈○茶経〉に熟孟とあるは、漉したる水お貯ふるゆえの名なり、譜〈○茶譜〉に図する雲屯は、則こゝに図〈○図略〉するものにして、運びに便なるお旨とするものなるべし、備〈○居家必備〉に両耳あるものお、水提点といへるも、又此雲屯の類ならんか、経に水方とあるは、四角なる水さしおいへり、まうきはすべて方といひがたし、
〈和名〉みづつぎ 疏〈○茶疏〉に〓水、石〈○石山斎茶具図譜〉に水缶などいひて、図〈○図略〉のごとく後手、或は上手、或