地部/上總國

p.1021 上總國ハ初メカミツフサノクニト云ヒ、後ニ、カヅサノクニト云フ、東海道ニ在リ、南ハ安房、北ハ下總ニ界シ、東西ハ海ニ面セリ、東西凡ソ十四里、南北亦之ト相若ク、其地勢ハ、南方山ヲ負ヘドモ、概シテ平曠ノ地多ク、山河卑小ナリ、此國ハ古ヘ國府ヲ市原郡ニ置キ、市原(イチハラ)、海上(ウナカミ)、畔蒜(アヒル)、望陀(マウダ)、周准(スヱ)、天羽(アマハ)、夷灊(イシミ)、埴生(ハニフ)、長柄(ナガラ)、山邊(ヤマノヘ)、武射(ムサ)ノ十一郡ヲ管シ、延喜ノ制、大國ニ列ス、後世海上郡ヲ市原郡ニ、畔蒜郡ヲ望陀郡ニ併セテ九郡ト爲シヽガ、明治維新ノ後、望陀、周准、天羽ノ三郡ヲ合シテ君津郡ト爲シ、長柄、埴生〈初メ上埴生ト稱ス〉二郡ヲ合シテ長生郡ト爲シ、山邊武射ノ二郡ヲ合シテ、山武郡ト爲シ、凡テ五郡、千葉縣ヲシテ之ヲ治セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1021 上總〈加三豆不佐〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈加天地〉

p.1021 上總(カヅサ)〈總州〉

〔日本風土記〕

〈一寄語島名〉

p.1021 上總〈茄迷倭撤(キヤアミーイツウサウ)〉

〔倭訓栞〕

〈前編六加〉

p.1022 かづさ　上總をよめり、かみつふさの、みとふを略したる也、

〔古事記傳〕

〈三十〉

p.1022 布佐(フサ)は、麻なり、古語拾遺に、好麻所レ生、故謂二之總國(フサクニ)一、古語麻謂二之總一也、今爲二上總下總(カミツフサシモツフサ)二國一とあり、〈麻を布佐と云しこと、此他には見えたることなけれども、總國と云名を思ふに、信に然ぞありけむ、〉

〔諸國名義考〕

〈上〉

p.1022 上總　下總　和名抄に、上總〈加三豆不佐、國府在二市原郡一、〉下總〈之毛豆不佐、國府在二葛飾郡一、〉名義は、古語拾遺に、天富命、更求二沃壤一、分二阿波齋部一率二往東土一、播二殖麻穀一、好麻所レ生、故謂二之總(フサ)國一、穀木(ユフノキ)所レ生、故謂二之結城一、〈古語、麻謂二之總一也、今爲二上總下總二國一是也、〉とあり、この義なり、和名抄に、下總國相馬郡布佐(フサ)郷あり、續日本後紀仁明天皇承和二年三月辛酉、下總國人陸奧鎭守外從五位下勳六等物部匝瑳(サフサ)連熊猪、改レ連賜二宿禰一云々、昔物語小事大連錫二節天朝一、出征二坂東一、凱歌歸報、籍二此功勳一令レ得二於下總國一、始建二匝瑳郡一、仍以爲レ氏、是則熊猪等祖也とあり、この匝瑳は佐總なるべきか、さて或書に、此國風土記とて引たるには、總謂二本枝一也、昔此國生二大楠一、長及二數百丈一、時帝怪レ之ト二占之一、大史奏曰、天下大凶事也、因レ玆斬二捨彼木一、倒二南方一也、上枝曰二上總一、下枝曰二下總一也云々、とあるはいかゞ、今世にかづさしもふさといへるは略語なり、

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.1022 各國經緯度〈附里程〉　上總富津村、極高三十五度一十八分半、經度東四度二分半、前同二十六里二十四間半、

〔日本經緯度實測〕

p.1022 北極出地　上總　木更津　三五度二三分〇〇秒　屋形村〈武射郡〉　三五度三六分三〇秒〈〇中略〉　東西里差　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈〇中略〉　上總　木更津村　東四度〇八分四二秒

疆域

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1022 郡郷　疆域、南至二安房國界一、北至二下總國界一、東西至レ海路程南北二十二里餘、東西十三里餘、又曰、古ヘ總ノ國

p.1023 也、古語拾遺ニ上麻ト出セリ、

〔日本地誌提要〕

〈二十上總〉

p.1023 疆域　南ハ安房、北ハ下總、東西ハ海ニ至ル、東西凡壹拾四里、南北亦同ジ、

島嶼

〔日本實測録〕

〈九島嶼〉

p.1023 上總國夷隅郡　遠測　アシバ島

地勢

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.1023 上總〈總(ソウ)州〉大、管二十一郡一、南北三日、海岸弘、碧藻多、絹布鐙鍬等發レ名、大中國也、

道路

〔日本實測録〕

〈一沿海〉

p.1023 從二三厩一沿海至二東京一〈〇中略〉　上總國武射(ムサ)郡屋形村濱、〈至二屋形村宿所一一十九町五十三間〉三十五度三十六分半、　二里一十五町一間　本須賀村濱〈至二本須賀村一二十三町五間〉　三里二十八町五十四間　長柄郡中里村濱、〈至二中里村宿所一一十三町三十九間〉三十五度二十五分、　五里二十一町五十間〈至二市宮村一二里二町二間半〉　夷隅郡小濱村、三十五度一十四分半、　二里二十五町一十九間　岩和田村、三十五度　十分半、　四里一十四町五十四間〈至二御宿村一二十九町一間半、從二御宿一至二勝浦村一一里三十四町四十一間、〉　守谷(モリヤ)村〈至二南戸岬一三町三十五間〉　二里三十町五十八間〈至二國界一二里七町二十九間〉　安房國長狹郡小湊村〈〇中略〉　上總國天羽(アマハ)郡金谷村、三十五度一十分半、　二里一十四町五十九間　湊村〈又呼二天神山一〉濱、〈至二湊村宿所一五町三十五間〉三十五度一十三分、　四里一十一町一十間〈至二八幡村一一里一十四間、從二八幡一至二富津崎一二里二十一町四十三間、〉　周准(スヘ)郡富津村、三十五度一十八分半、　三里二十四町五十間〈至二小濱村一二里二十六町四十五間半〉　望陀郡木更津村、三十五度二十三分、　二里一町五十八間　中島村、〈至二中島村宿所一一十町四十五間〉三十五度廿五分半、　五里八町五間〈至二奈良輪宿一二十九町四十四間、從二奈良輪一至二姉崎宿一二里七町七間半、〉　市原郡五井　一里五町一十五間　八幡宿　三里三十三町二十三間〈至二國界一九町一十九間、從二國界一至二生實新田一二里一十町九間半、〉　下總國千葉郡檢見川宿

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1023 諸國驛傳馬〈〇中略〉　上總國驛馬〈大前、藤瀦、島穴、天羽各五疋、〉傳馬〈海上、望陀、周准、天羽郡各五疋、〉

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二東海道〉

p.1023 上總　古總國〈古語拾遺云、佳麻所レ生、故謂二總國一、古語麻謂二之總一、今爲二上總下總二國一、〉分爲二上下二國一、未レ詳レ在二何時一、大國管九郡、〈延喜式等十一郡〉千百九十四村、　

p.1024 天羽〈七十七村〉　周准(　/スヘ)〈百九村　古須惠國、見二國造記一、延喜式等作二周准一、拾芥抄作二周維一、正徳二年四月令、自今宜レ書二周准一、而今仍作二周准一、〉　望陀〈百九十四村　古馬來田國、見二古事記國造記一、和名抄或作二望多一、〉　市原〈百八十四村　古府治、國造記菊麻國造、即市原郡菊麻郷是、〉　夷隅〈百六十九村　古伊甚國、日本紀安閑元年、伊甚國造稚子直等、獻二伊甚屯倉于皇后一、因定二伊甚屯倉一、古事記作二伊自牟一、延喜式等作二夷灊一、正徳二年四月令、自今宜レ書二夷灊一、而今仍作二夷隅一、仁徳紀伊寺水門、亦即此地、〉　埴生〈四十七村　延喜式等作二垣生一〉　長柄〈百五十一村〉　山邊〈百三十四村〉　武射〈百二十九村　古牟邪國、見二古事記一、國造記作二武社一、〉　海上〈古上海上國、見二國造記一、古事記作二上莵上國造一、萬葉海上潟、亦謂二此地一、〉　畔蒜〈以上二郡、延喜式等載、廢未レ詳レ在二何時一、〉

〔日本地誌提要〕

〈二十上總〉

p.1024 沿革　古ヘ國府ヲ市原郡ニ置、〈今ノ能滿(ノウマン)村是ナリ〉天長中、親王ノ任國トナシ、特ニ太守ト稱ス、寛平ノ初、高望(モチ)王、州ノ介ニ任ゼシヨリ、其子孫世職ヲ襲グ、十世廣常ニ至リ、源頼朝ニ從ヒ、權介ヲ以テ州事ヲ知ル故ノ如シ、後誅死シ、足利義兼、千葉秀常、其子秀胤、相繼テ介ニ任ズ、足利氏ノ初、鎌倉管領基氏、其執事上杉憲藤ノ子朝宗ニ本州ヲ賜フ、子氏憲亂ヲ作シテ誅ニ伏シ、本州管領ノ直隷タリ、文安中、鎌倉管領足利成(シゲ)氏、武田信長ヲ以テ守護代トス、信長、眞里谷(マリヤツ)、廳南(チヤウナン)二城ヲ築テ之ニ居ル、是時大多喜ノ正木氏、萬喜(マキ)ノ土岐氏、州東ニ割據シ、千葉氏州北ヲ有ス、既ニシテ里見義實、正木氏ヲ降シ、州西ヲ略取ス、文明中、義實ノ子成(シゲ)義、武田土岐二氏ヲ降シ、後其子實堯二氏ヲ率ヰ、足利義明ヲ生實(オヒミ)ニ奉ジテ主帥トシ、逐ニ千葉ノ諸城ヲ拔キ、盡ク本州ヲ取ル、玄孫義頼ニ至テ漸ク衰ヘ、天正中、北條氏政、萬喜窪田廳南ヲ陷ル、義頼爭フ能ハズ、子義康ニ至リ、豐臣氏本州ヲ削奪ス、徳川氏ノ關東ニ遷ル、松平忠政ヲ久留里ニ、〈後黒田直純〉本多忠勝ヲ大多喜ニ、〈後松平正久〉内藤家長ヲ佐貫(サヌキ)ニ〈後阿部正春〉封ズ、其後封ヲ受ル者、飯野、〈保科正貞〉一ノ宮、〈加納久通〉鶴牧、〈水野忠位(タカ)〉請西(ジヤウサイ)〈林忠英〉凡テ七藩、王政革新、小久保〈田沼意尊〉菊間、〈水野忠敬〉櫻井、〈瀧脇信敏〉鶴舞、〈井上正直〉松尾、〈太田資美〉大網〈柴津政敏〉六藩ヲ徙封シ、請西ノ地、官ニ沒シ十二藩トナル、既ニシテ皆改テ縣トシ、尋テ悉ク之ヲ併セテ木更津縣ヲ置、又之ヲ廢シテ千葉縣ヨリ兼治ス、

〔古事記〕

〈上〉

p.1024 天菩比命之子建比良鳥命〈此（中略）上莵上國造、伊自牟國造（中略）等之祖也、〉次天津日子根命者、〈（中略）馬來田國造（中略）等之祖也、〉

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.1025 須惠國造　志賀高穴穗、〈〇成務〉朝茨城國造祖、建許侶命兒大布日意彌命、定二賜國造一、　馬來田國造　志賀高穴穗朝御世、茨城國造祖、建許呂命兒深河意彌命、定二賜國造一、　上海上國造　志賀高穴穗朝、天穗日命八世孫忍立化多比命、定二賜國造一、　伊甚國造　志賀高穴穗朝御世、安房國造祖、伊許保止命孫伊己侶止直、定二賜國造一、　武社國造　志賀高穴穗朝、和邇臣祖彦意祁命孫彦忍人命、定二賜國造一、　菊麻國造　志賀高穴穗朝御代、无邪志國造祖、兄多毛比命兒大鹿國直、定二賜國造一　、　今上總國市原郡菊麻(首書)〈久久萬〉

〔古語拾遺〕

p.1025 天日鷲命之孫造二木綿及麻并織布一、〈古語阿良多倍〉仍令下天富命率二日鷲命之孫一、求二肥饒地一遣二阿波國一、殖中穀麻種上、其裔今在二彼國一、當二大嘗之年一、貢二木綿麻布及種種物一、所以郡名爲二麻殖一之縁也、天富命更求二沃壤一、分二阿波齋部一率二往東土一、播二殖麻穀一、好麻所レ生故謂二之總國(○○)一、穀木所レ生、故謂二之結城郡一、〈古語麻謂二之總一也、今爲二上總下總二國一是也、〉

〔類聚三代格〕

〈五〉

p.1025 太政官符　應三親王任二國守一事　上總國　常陸國　上野國　

p.1026 右撿二中納言從三位兼行左兵衞督清原眞人夏野奏状一偁、〈〇中略〉望請、點二定數國一爲二親王國一迭任二彼國一、身留二京都一、意欲レ居二京官一者、一兩人將レ聽、若有二守闕一者、不レ補二他人一、其料物者、納二置別倉一、支二无品親王之要一、伏聽二天裁一者、正三位行中納言兼右近衞大將春宮大夫良峯朝臣安世宣、奉レ勅依レ奏、但件等國守官位卑下、宜下改定二正四位下官一、以爲二勅任一、號稱二太守一、限以中一代上、不レ可二永例一、　天長三年九月六日

〔吾妻鏡〕

〈十〉

p.1026 文治六年二月十一日乙未、上總國者、爲二關東御管領九箇國之内一、以二源義兼一被レ補二任國司一之處、去年御辭退之間、正月廿六日、與二遠江國一、同日被レ任二國司一、〈平親長〉仍今日目代等國務云云、

〔鎌倉大草紙〕

〈下〉

p.1026 爰に古持氏の御供に討死しける、里見刑部少輔家基が子、左馬助義實は、房州より打て出、上總半國を押領し、鎌倉へ參、

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1026 上總國〈國府在二市原郡一、行程上三十日、下十五日、〉

〔房總志料〕

〈四上總附録〉

p.1026 一上總の國府は、海上郡姉崎の地方をいふなり、按に、海上地今市原郡に并す、説別見、又夷灊郡刈谷川の側に國府臺といふ一小村有、土人訛傳て古の國府の地といふ、しかれども其實は鸛(コフノ)臺など書しなるべし、如何となれば、此邊水厓の高樹などに、鸛の巣つくりしなど有しが、いつとなく字せると見ゆ、後世好事、國府臺ノ字に書かへたると見ゆ、

〔房總志料續〕

〈一夷隅郡〉

p.1026 或云、國府臺は、古へ伊甚の國と稱せし時の國府なるべし、安閑帝の御宇、屯倉の地、國造の住したる所なれば、國府と稱したるならん、　良道曰、上總の國府は、市原郡今の能滿村なるべし、(首書)

郡

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1026 上總國〈〇註略〉　管十一〈〇註略〉　市原〈伊知波良、國府、〉海上〈宇奈加美〉畔蒜〈阿比留〉望陀〈末宇太〉周淮〈季〉天羽〈阿末波〉夷灊〈伊志美〉長柄〈奈加良〉山邊〈也末乃倍〉武射　埴生

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.1026 上總國、大、〈管　市原　海上　畔蒜　望陀　周淮　天羽　夷灊　埴生　長柄　山邊　武射〇中略〉　右爲二遠國一

〔伊呂波字類抄〕

〈加國郡〉

p.1027 上總國〈管十二〇一本作二十一一〉　市原〈イチハラ府〉　海上〈ウミカミ〉　畔蒜〈アヒル〉　望陀〈マウタ〉　周准〈スフン〉　天羽〈アマハ〉　夷隅〈イシミ〉　埴生〈ハウ〉　長柄〈ナカラ〉　山邊　武射〈ムサ〉　上總十二郡ト注タリ、今一郡不レ足云々、不レ審也、

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1027 郡郷　上總國十五郡、曰市原、海上、望陀、畔蒜、周准、天羽、平群、安房、朝夷、長狹、夷灊、長柄、埴生、山邊、武射、　續日本紀曰、養老二年五月、割二平群、安房、長狹、朝夷四郡一、置二安房國一、其後海上畔蒜二郡廢、九郡ト成ル、

〔皇國郡名志〕

p.1027 上總國〈舊十一郡今九郡〉　市原(イチハラ)　〈●八幡　●五井　姉ケ崎　今富　●笠森　小知　岡井　下サ村田川ヲ郡界トス、入江二向、〉　武射(ムサ)　〈上氣　一村限山地也　下サ界小郡〉　埴生(ハニフ)　〈●長南　清水寺　鹽井　荏村　國中郡〉　望陀(モウタ)　〈＜來里　木更津　吾妻　ナラハ　黒玉　釜生　四方木　房界入江二向〉　周淮(スヱ)　〈＜飯野　庚山　百首　カナヘ　富津　房界天羽郡ヲマトイテ内海ニ向〉　夷灊(イスミ)〈イシミトモ唱〉　〈小田木　●今留　●マリヤ　松野　上野　久留里　タイ宿　●市阪　●滑川　大澤　沖津　守屋　オソリ　松江　●勝浦　●江波　中原　内野　碓井　シングワ　岩崎　温石　ツセ　長世　山田　新田　万喜　ヲ池　岩舟　小濱　下サ界一國四分一郡〉　長柄(ナカラ)　〈●高師　茂原　●ホシノフ　大アミ　帆立　△玉前社　△白鳥沼　東海二向〉　山ノ邊　〈横柴　東金　流山　ナルト　野田　小西　宮作　成東　下サ界〉　舊有二海上畔蒜二郡一今減之　〇按ズルニ、本書及ビ次下郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.1028 上總

市原郡

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1029 郡郷　市原郡、國府此郡ニ在リ、東南ハ山邊、長柄、埴生、夷隅四郡ノ界ニ至リ、西ハ海ニ至リ、北ハ下總國千葉郡ニ至ル、　郷名海士〈廢ス、村存ス、〉市原〈廢ス、村存ス、今國府ノ舊址アリ、〉江田〈内田郷ニ江子田村アリ〉濕津〈潤井戸村存ス〉山田〈山田橋村アリ〉菓麻〈菓ハ菊ノ誤字カ、今菊麻村存セリ〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1029 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　阿之可伎能(アシガキノ)、久麻刀爾多知氐(クマトニタチテ)、和藝毛古我(ワギモコガ)、蘇氐毛志保々爾(ソデモシホゝニ)、奈伎志曾母波由(ナキシソモハユ)、　右一首、市原郡上丁刑部直千國、

〔三代實録〕

〈四十三陽成〉

p.1029 元慶七年二月九日丙午、上總國介從五位下藤原朝臣正範、飛驛奏言、市原郡俘囚四十餘人叛亂、盜二取官物一、數殺二略人民一、由レ是發二諸郡人兵千人一令二其追討一、而俘囚燒二民廬舍一、逃二入山中一、商量非二數千兵一、不レ得二征伐一者、〈〇下略〉

〔相州文書〕

〈鶴岡八幡宮乾〉

p.1030 奉二寄進一　鶴岡八幡宮　上總國市東郡(○○○)内年貢用途伍拾貫文事　右旨趣者、爲二天下安穩泰平、自身壽福長遠、息災康樂、子孫繁昌一、奉二寄進一之状如レ件、　正慶四年八月十五日　若狹守時明〈花押〇三浦〉

海上郡

〔上總志〕

〈上〉

p.1030 海上郡　今廢ス、延喜式ニ上總國海上姉崎神社トアルヲ見レバ、姉崎椎津ノ邊、古シヘノ海上郡ナルベシ、

〔南總郡郷考〕

〈土乾〉

p.1030 郡郷　海上郡〈廢〉此郡何レノ時代ヨリカ、市原郡ニ并セラル、　郷名、佐三、〈佐瀬村存ス〉稻庭〈廢〉倉橋〈廢〉大野〈廢〉福良〈廢〉鳴穴〈延喜式神名帳ニ、海上郡島穴神社アリ、今島野ニ改ム、和名類聚抄ニ島ヲ鳴ト作ルハ、傳寫ノ誤ナラン、〉馬野〈廢〉山田〈廢〉、〈今山口村アリ、疑ラクハ田ノ字ノ畫ヲ省キタルカ、〉

〔房總志料續〕

〈七〉

p.1030 市原郡〈古海上郡〉　或説曰、海上郡と市原郡とは、養老川を分界として、河北は市原郡にして、河南は古への海上郡なるべし、此郡西の方は、都て海に臨をもつて、海上の名を得たり、或曰、望陀郡下泉村の北の方六ケ村、今に海上郡と稱すと、

〔續日本紀〕

〈二十八稱徳〉

p.1030 神護景雲元年九月己巳、賜二〈〇中略〉上總國海上郡人、外從五位下檜前舍人直建麻呂上總宿禰一、

〔日本後紀〕

〈二十一嵯峨〉

p.1030 弘仁二年八月乙丑、上總國海上郡、加二置主政一員一、

〔萬葉集抄〕

〈十四〉

p.1030 上總國にいまは海北海南(○○○○)といふは、ふるき海上の郡なりと申す、

畔蒜郡

〔上總志〕

〈上〉

p.1030 畔蒜郡　今廢ス、或曰、下總印幡郡ノ東ニ、畔蒜ト云村アリ、是古シヘノ畔蒜郡ノ殘レルニヤト、又武射郡ノ中ニ、新田小川ナド云ル地名存セリ、是則和名抄ニ載ル所ノ、畔蒜ノ縣名ナレ

p.1031 バ、武射郡ト印幡郡ノ中ヘ、并隷セルト見ヘタリ、

〈明治十三年〉

〔東京地學協會報告〕

p.1031 國郡沿革考第二囘　塚本明毅　上總　畔蒜郡、和名抄、六郷アリ、後世廢シテ、望陀郡ニ併ス、今猶久留里ノ近傍諸村ヲ稱シテ畔蒜庄トナス、蓋望陀郡ノ中央ヨリ以南、皆此郡ニ屬セシナラン、〈六郷ノ中只新田郷ノミ、新田村ノ遺名ヲ存ス、餘ハ皆詳ナラズ、〉

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1031 郡郷　畔蒜郡、〈廢〉何レノ時ヨリカ、望陀郡ニ併セ入ル、按ルニ、同郡眞里萱野邊ヲ、ホヒルノ庄ト云ナレバ、畔蒜ヲホヒルト訓ジタラン、是昔シノ畔蒜郡ナランカ、　郷名、美々、小河、甘木、椅原、三衆、〈共ニ廢〉新田、〈今新田村存ス〉

〔日本靈異記〕

〈中〉

p.1031 未レ作二畢佛像一而棄木示二異靈表一縁第廿六　禪師廣達者、俗姓下毛野朝臣、上總國武射郡人、〈一云畔蒜郡人也〉聖武天皇代、廣達入二於吉野金峯一、經二行樹下一而求二佛道一、

望陀郡

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1031 郡郷　望陀郡　古事記、萬葉集等ニハ、馬來田ニ作ル、此郡西ハ海ニ至リ、南周准郡界ヨリ、安房國界ニ至リ、東北ハ夷隅市原二郡ノ界ニ至ル、　郷名、畔治、〈廢〉表可〈廢〉會戸〈廢〉飯富〈廢、村存、〉磐田〈廢、今岩井村存ス、〉河曲〈今河久保村アリ、河曲ノ唱ヘ誤リカ、〉鹿津〈廢、今勝村存ス、〉

〔地名字音轉用例〕

p.1031 ウノ韻ヲカノ行ノ音ニ轉ジ用ヒタル例　うまぐた　望多〈上總郡〉末宇太(マウタ)　望ハマウノ音ナルヲ、ウノ韻ヲ轉ジテ、マグニ用ヒタリ、〈上ノウニ當ル字ヲバ省ケリ、ウチ省ク例ハ常也、サテ和名抄ニ、末宇太トアルハ、後ノ音便ノ唱ヘナリ、古事記ニ馬來田(ウマクタ)、萬葉ニ宇麻具多(ウマグタ)トアリ、〉

〔古事記傳〕

〈七〉

p.1031 馬來田(ウマクタ)國造、和名抄に、上總國望多〈末宇多〉郡とありて、萬葉十四〈九丁〉上總國歌に、宇麻(ウマ)具

p.1032 多能禰呂(タノ子ロ)とよめる地なり、〈末宇多とは、後に訛れる唱なり、〉書紀廿八に、大伴ノ連馬來田(ウマグタ)といふ人名を、廿九卷には望多(ウマグタ)と作り、〈かゝれば、もとは望多と書るをも、宇麻具多と唱しこと知べし、〉

〔房總志料〕

〈一上總〉

p.1032 一望陀郡は六万石の地なりと、土地も廣く、民家いやしからず、美田他郡にまされり、　源平盛衰記に、望陀郡を望西東と別てる、海邊倉浪、木更津、万穀等の地を西とし、茅野、眞里谷、高谷、泉、望陀邊を東とせるなるべし、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1032 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌　多比己呂母(タビゴロモ)、夜豆伎可佐禰氐(ヤツキカサ子テ)、伊努禮等母(イヌレドモ)、奈保波大佐牟志(ナホハダサムシ)、伊母爾志阿良禰婆(イモニシアラ子バ)、　右一首、望陀郡上丁玉作部國忍、

〔長門本平家物語〕

〈十一〉

p.1032 兵衞佐殿は、使者を上總介千葉介方へ遣して、各々急ぎ來らるべし、是程の大事を引出しつヽ、此上は頼朝を世にあらせんとも、世にあらせじとも、兩人が心なり、廣常をば父と頼、常胤をば母と思ふべしと宣ひける、〈〇中略〉上總介廣常は、此次第を聞て、我遲く參りぬとおもひて、當國中、伊比南、廳北、廳南、望西(○○)、望東(○○)、畔蒜、ほり口、むさ、山邊の者ども、平家の方人として、強き輩をば、押寄々々是をうち取、隨ふ者をば相具して、一萬餘騎にて、下總の國府に參會す、

周准郡

〔郡名考〕

p.1032 上總　周准〈スエ　スヽ〉

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1032 郡郷　周准郡、萬葉集ニハ種泚ニ作ル、延喜式、和名抄ニハ周准ニ作ル、此郡東南ハ、天羽郡界ヨリ安房國長狹郡界ニ至リ、北ハ望陀郡界ニ至リ、西ハ海ニ至ル、郷名、山家〈廢〉山名〈廢、山野村存ス〉、額田〈廢、糠田村存ス〉、三直〈廢、村存ス〉、丸田〈廢〉湯坐〈廢、湯江村存ス〉、藤部〈廢〉勝部〈廢〉勝川〈廢〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1032 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　

p.1033 於保伎美乃(オホキミノ)、美許等加志古美(ミコトカシコミ)、伊氐久禮婆(イテクレバ)、和努等里都伎氐(ワヌトリツキテ)、伊比之古奈波毛(イヒシコナハモ)、　右一首、種泚郡(○○○)上丁物部龍、

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1033 治承四年九月十九日戊辰、上總權介廣常、催二具當國周東周西(○○○○)〈〇中略〉廳北輩等一、率二二萬騎一參二上隅田河邊一、

〔集古文書〕

〈四十四寄附状〉

p.1033 足利持氏寄進状　奉寄進　鶴岡八幡宮　上總國周東郡(○○○)大谷村〈岩松左馬助入道跡〉事　右爲二天下安全武運長久一、所奉二寄附一之状如レ件、　應永廿四年正月一日　左兵衞督源朝臣〈花押〉　足利持氏寄進状〈相模國鎌倉名越別願寺藏〉　附　鶴岡　八幡宮　上總國周西郡(○○○)内大山名上村、同郡濱子田畠、同郡青木村内田畠等〈簗田河内守寄進之地〉事　右爲二且子孫繁昌、且武運長久一、所レ可レ附也、然者勤二行法華問答講一間、可レ被レ致二祈祷精誠一之状如レ件、　正長三年六月廿七日　從三位源朝臣〈花押〉　供僧中

天羽郡

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1033 郡郷　天羽郡、西ハ海ニ至リ、東北ハ周准郡界ニ至リ、南ハ房州平長狹ノ二郡ノ界ニ至ル、　郷名、三宅、〈廢〉讃岐、〈今佐貫ニ作ル〉長津〈廢〉雨霑〈廢、賣津村アリ〉、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1033 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、

p.1034 美知乃倍乃(ミチノヘノ)、宇萬良能宇禮爾(ウマラノウレニ)、波保麻米乃(ハホマメノ)、可良麻流伎美乎(カラマルキミヲ)、波可禮加由加牟(ハカレカユカム)、　右一首、天羽郡上丁丈部鳥、

夷灊郡

〔郡名考〕

p.1034 上總　夷灊〈イシミ〉　夷隅

〔地名字音轉用例〕

p.1034 ンノ韻ヲマノ行ノ音ニ通用シタル例　いじみ　夷灊〈上總郷〉伊志美(イジミ)　灊ハジンノ音ナルヲ、ジミニ用ヒタリ、〈燈心(トウシミ)ナドモ此ノ例ナリ〉但シ古事記ニハ伊自牟(イジム)トアリ、モトハ然云シナルベシ、〈サレバイジミト云ハ、サガムヲサガミト云類ニテ、後ノ唱ヘカ〉、書紀ニハ伊甚トアリ、

〔古事記傳〕

〈七〉

p.1034 伊自牟(イジム)國造、〈〇中略〉書紀安閑卷元年四月、伊甚(イジム)國造稚子(ワクゴ)直等云々の罪ありて、爲二皇后一獻二伊甚屯倉一贖レ罪、因定二伊甚屯倉一、今分爲レ郡、屬二上總國一と見ゆ、即和名抄に、上總國夷灊〈伊志美〉郡とある此なり、

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1034 郡郷　夷隅郡、日本紀曰、安閑天皇元年四月、定二伊甚屯倉一、今分爲レ郡、屬二上總國一、延喜式和名鈔倶ニ夷灊ニ作ル、東ハ海ニ至リ、南ハ安房國長挾郡界ニ至リ、北西ハ長柄、埴生、望陀三郡ノ界ニ至ル、此郡ニ隷セル、粟、又小澤、大田代、小田代、面白、筒森、葛藤ノ七村ハ、往昔市原郡ニ屬セルナラン、又北ノ界、椎木、綱田、中原、泉等ノ四村ハ、舊夷隅郡ノ内ナルベシ、今長柄郡ニ屬ス、　郷名、雨霑、〈廢〉蘆道〈廢〉荒田〈廢、新田野村アリ、東鑑ニ新田庄ニツクレリ〉、長挾〈今長志ニ作ル〉白羽〈廢〉　餘戸〈廢、令ヲ案ズルニ、戸數ヲ以テ郡郷ヲ定ム、戸數一郷ニ足ザルヲ餘戸ト名ヅク、故ニ諸國ニ此郷名有テ、何モ其所知ガタシ〉、

〔房總志料〕

〈三上總附録〉

p.1034 夷灊郡の地を、夷南夷北と割るものは、房總境清澄山を標とし、南北を別てる也、

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1034 治承四年九月十九日戊辰、上總權介廣常、催二具當國〈〇中略〉伊南(○○)、伊北(○○)、廳南、廳北輩等一、率、二萬

p.1035 騎一參二上隅田河邊一、

〔吾妻鏡〕

〈二十一〉

p.1035 建暦三年〈〇建保元年〉五月七日丁未、勳功事、今日先被レ定レ之、〈〇中略〉　同國〈〇上總〉伊北郡(○○○)〈平九郞左衞門尉〉

長柄郡

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1035 郡郷　長柄郡、西ハ埴生市原二郡ノ界ニ至リ、東ハ海ニ至リ、南ハ夷隅郡界ニ至リ、北ハ山邊郡界ニ至ル、古昔ハ此郡ト埴生郡トノ疆界ハ、一ノ宮河ナルベシ、今河ヲ越テ十四村、〈猿袋、寺崎、川島、北山田、大谷木、上市場、岩井、新生、上ノ郷、下ノ郷、小瀧川、須ケ谷、一ノ宮、本郷、東浪見〉、此郡ニ隷ス、　郷名刑部〈廢、村存ス〉、管見〈廢〉車持〈廢〉兼田〈廢、金田村存ス〉、柏原〈廢〉谷部〈廢〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1035 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　都久之閉爾(ツクシヘニ)、弊牟加流布禰乃(ヘムカルフ子ノ)、伊都之加毛(イツシカモ)、都加敝麻都里氐(ツカヘマツリテ)、久爾々閉牟可毛(クニニヘムカモ)、　右一首、長柄郡上丁若麻續郡羊、

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1035 治承四年九月十九日戊辰、上總權介廣常、催二具當國〈〇略〉　廳南廳北(○○○○)輩等一、率二二萬騎一參二上隅田河邊一、

〔房總志料〕

〈三上總附録〉

p.1035 一廳南廳北は、在廳の建し地より南北を別てる也、廳南の地は、埴生郡を凡ていふ、　廳北指所分明ならず、疑らくは山邊郡土氣邊の地方をいふなるべし、又在廳の建し地、是又詳ならざれども、恐は海上郡の地方と見へたり、彼地は國府なればなり、　〇按ズルニ、廳南亦長南ト書ス、蓋シ長南長北ハ、長柄郡ノ南部北部ノ義ナリ、房總志料ノ説、恐ラクハ非ナラン、

山邊郡

〔郡名考〕

p.1035 上總　山邊〈ヤマノヘ　ヤマヘ〉

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1036 郡郷　山邊郡、東ハ海ニ至リ、南ハ長柄郡ニ至リ、北ハ武射郡ニ界シ、西北ハ下總國千葉印幡兩郡ノ界ニ至ル、　郷名禾生〈廢、粟生村存ス、〉岡山〈廢〉山口〈廢、村存ス、〉管屋〈廢、管ハ菅ノ誤字カ、長柄郡ニ川須ケ谷村アリ、夷隅郡ニ須ケ谷村アリ、和名抄誤テ、此郡ニ入タルカト或人云リ、〉武射〈廢、武射田村存セリ、〉高文〈廢〉草野〈廢、茅野村存ス、〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1036 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　和我波々能(ワガハヽノ)、蘇氐母知奈氐氐(ソデモチナテテ)、和我可良爾(ワガカラニ)、奈伎之許己呂乎(ナキシコヽロヲ)、和須良廷努可毛(ワスラエヌカモ)、　右一首、山邊郡上丁物部手刀良、

〔相州文書〕

〈鎌倉郡三〉

p.1036 當寺領上總國山邊北郡(○○○○)内堺郷〈〇中略〉等知行不レ可レ有二相違一者、天氣所レ候也、仍執達如レ件、　元弘三年十月五日　右兵衞督長光〈花押〇葉室〉　淨光明寺長老如仙上人御房

〔武州文書〕

p.1036 上總國山邊南郡(○○○○)、國下河邊莊内春日郷地頭職、止二方々妨一、可レ令二知行一者、天氣如レ此、悉レ之以レ状、　延元元年三月廿二日　左中辨〈花押〇中御門宣明〉　春日部瀧口左衞門尉〈〇重行〉館

武射郡

〔郡名考〕

p.1036 上總　武射〈ムサ　ムシヤ〉

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1036 郡郷　武射郡、東ハ海ニ至リ、南ハ山邊郡界ニ至リ、北ハ下總國匝瑳香取二郡界ニ至リ、西ハ印幡埴生二郡ノ曠原ヲ界トス、　郷名、巨備、〈今小借毛郷ト稱ス、備ハ借ノ誤字ナルカ、〉加毛〈廢、加茂村存ス、〉畔代、片野、〈倶廢〉大藏〈廢、村存ス、〉新居〈廢、新井田村存〉新屋〈廢〉塡谷〈廢、垣谷村〉

p.1037 〈存ス、塡ハ埴ノ誤字カ、〉理倉〈廢〉押猥〈廢、牛熊村存ス、〉

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1037 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　余曾爾能美(ヨソニノミ)、々氐夜和多良毛(ミテヤワタラモ)、奈爾波我多(ナニハガタ)、久毛爲爾美由流(クモヰニミユル)、志麻奈良奈久爾(シマナラナクニ)、　右一首、武射郡(○○○)上丁丈部山代、

埴生郡

〔郡名考〕

p.1037 上總　垣生〈ハニフ〉　埴生〈ハブ〉

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1037 郡郷　埴生郡、南ハ夷隅郡界ニ至リ、東北ハ長柄郡ニ界ヒ、西ハ市原郡ニ界フ、往古此郡ノ北界ハ、一ノ宮河ニシテ、一名埴生川トモ云、何レノ時カ東方ノ十四村、長柄郡ニ入シト見ヱタリ、依テ本郷村ニ坐スル所ノ一ノ宮玉崎神社ハ、延喜式神名帳ニハ載テ埴生郡ニ在リ、　郷名、埴生、埴石、横栗、河家、〈倶廢〉小田〈廢、小野田村上下ニ村存ス、〉坂本、〈廢、村存ス、〉

私稱郡名

〔烟田文書〕

〈ニ〉

p.1037 在二御判一〈〇源頼朝〉　下　上總國佐是郡(○○○)〈〇市原郡有二佐是村一〉内、矢田、池和田兩村、　可下早以二權介娘一爲二一色別納一、有限所當者令上辨二加々美小次郞一事、　右件兩村、爲レ令レ優二免公事一、爲二一色別納一、所レ仰二付權介之娘一也、雖レ然於二有限之所當一者、可レ令レ辨二加々美小次郞一之状如レ件、以下、　文治二年正月廿一日

〔相州文書〕

〈鶴岡八幡宮乾〉

p.1037 寄進　鶴岡八幡宮　上總國眞野郡(○○○)椎津郷内田地壹町事　右且爲二天長地久現世安穩子孫繁昌一、至二于子々孫々一、於二此料田一者、不レ可レ致二其煩一、仍寄進状如レ件、　建武三年十月廿三日　三浦介平高繼〈花押〉　

p.1038 〇按ズルニ、倭名類聚抄ニハ、海上郡馬野〈無萬乃〉郷アリ、而シテ海上郡後世廢シテ、市原郡ニ併ス由テ知ル、當時眞野郡ト稱スルハ、古ノ海上郡馬野郷ノ地ニシテ、今ノ市原郡ニ屬セリ、

郷

〔倭名類聚抄〕

〈六國郡〉

p.1038 上總國　市原郡　海部〈阿萬〉市原　江田〈衣多〉濕津〈宇留比豆〉山田〈夜萬多〉萬麻〈久々萬〉　海上郡　佐三　稻庭〈伊奈無（無、高山寺本作レ爾）波〉大野　山田　倉橋〈久良波之〉福良〈布久良〉鳴穴　馬野〈無萬乃〉　畔蒜郡　美々　小河〈乎加波〉甘木〈安萬木〉新田　椅原　三衆〈美毛呂〉　望陀郡　畔治〈安波留〉表可　會戸〈〇會、高山寺本作レ倉、〉飯富〈於布〉磐田　河曲　鹿津〈加津〉　周淮郡　山家〈也萬以倍〉山名〈也萬奈〉額田　三直　丸田〈〇丸、高山寺本作レ凡、〉湯坐　藤部　勝部〈〇高山寺本無〉勝川　埴生郡　埴生　埴石　小田　坂本　横栗　河家〈〇河、高山寺本作レ何、〉　長柄郡　刑部　管見〈豆々美〉車持　兼陀　柏原　谷部〈波世部〉　山邊郡　禾生　岡山　管〈〇管恐菅誤〉屋　山口　高文　草野　武射　武射郡　巨備　加毛　理倉　狎猥〈〇狎猥恐押隈誤〉長倉　畔代　片野　大藏　新居〈〇高山寺本無〉新屋　埴屋　天羽灊　三宅　讃岐　長津　雨霑　夷灊(イシミ)郡　兩霑　蘆道　荒田　長狹　白羽　餘戸

〔吾妻鏡〕

〈十三〉

p.1038 建久四年十一月二十三日丙戌、上總國小野田郷(○○○○)住人、本權太國廉、依下刃二傷姨母一之罪科上被レ召レ之、可レ遣二伊豆大島一之由、北條殿令レ奉給云云、

〔吾妻鏡〕

〈十九〉

p.1038 承元二年十二月十四日己卯、上總國海上郡久吉郷(○○○)住人僧善勝以下之輩、被レ加二鶴岳職掌一云云、圖書允清定爲二奉行一云云、

〔吾妻鏡〕

〈三十四〉

p.1038 仁治二年七月二十六日壬子、文元朝臣始二行屬星祭一、所レ被レ募二上總國皆吉郷(○○○)知行之功一也、各將軍家御息災御祈祷云云、

〔相州文書〕

〈鎌倉郡四〉

p.1039 寄進　上總國北山邊郡森郷(○○)内藤大夫名〈田地六反半畠壹反〉事　右所領者、爲二勳功之賞一、頼行所二拜領一也、然者割二分彼田畠一、爲二現當二世一、永代所レ寄二進于相模國鎌倉大藏南小路聖天堂一也者、早爲二燈油佛請之料足一、守二先例一致二其沙汰一、可レ有二祈祷精誠一之状如レ件、　建武元年八月三日　右馬權助源朝臣〈花押〇一色頼行〉

〔集古文書〕

〈二十五問状〉

p.1039 文和三年問状〈所藏不レ詳〉　五大堂　春日社雜掌慶退申、上總國金田郷(○○○)内万石大崎村正税事、訴状如レ此、所レ申無二相違一者、可二究濟一、若又有二子細一者、可二辨申一之間、達正員可レ申二左右一之状、依レ仰執達如レ件、　文和三年十一月廿四日　前安藝守〈花押〉　地頭代助法印御房

村里/名邑

〔郡名一覽〕

p.1039 上總國(御料私領)　〈總州　南北三日〉　九郡　高三拾九万千百拾三石九斗五升四合壹勺壹才　千百九拾九ケ村　●久留里　二十三里　●佐貫　二十四里十六町　 鶴牧　十六里　●大田喜　二十二里餘　●飯野　二十二里三十二町　○一宮　十五里　○五井　十三里　○貝淵　二十一里　＜富津　〈二十二里海防陣屋浦賀ヘ海上三里〉　＜竹ケ岡　二十六里同上　〇按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.1039 上總　九郡千百九十四村、　高四十二万五千八十石四斗五升三合四勺一才(御料私領)　天羽郡七十七村　周准郡百九村　望陀郡百九十四村　市原郡百八十四村　夷隅郡百六十

p.1040 九村　埴生郡四十七村　長柄郡百五十一村　山邊郡百三十四村　武射郡百二十九村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.1040 郡邑島嶼奇名　上總　夷隅郡、部原(ヘハラ)村、守谷(モリヤ)村、周准(スス)郡、富津村、青木村、天羽郡、

〈武藏上野〉

〔國村名帳〕

p.1040 關東村數　上總國　千三百四十七ケ村

〔上總志〕

〈上〉

p.1040 市街　長者町〈夷隅郡四九ノ日〉　苅谷〈同郡一六〉　大田喜〈同郡三八〉　久留里〈望陀郡四九〉　牛久〈市原郡一六〉　大綱〈山邊郡三八〉　東金〈同郡四九〉　一ノ宮〈長柄郡五十〉　長南〈埴生郡二七〉　茂原〈長柄郡四九〉　本納〈同郡一六〉

〔房總志料〕

〈一上總〉

p.1040 望陀郡木更津(○○○)浦家數千有餘に及べり、富商屋を比す、舟航駢集の地なり、　姉崎の人かたりしは、黒戸の濱は、木更津浦をいふと、しかれども其實は非也、百首浦を云也、

〔吾妻鏡〕

〈三十六〉

p.1040 寛元三年五月九日壬寅、金津藏人次郞資成申、上總國新田庄米澤村(○○○)名主職事、以二懸物状一雖レ申二子細一、文暦御下知爲二相違一之旨、難レ及二改沙汰一之由被二仰下一云云、

〔集古文書〕

〈三十四禁制状〉

p.1040 覺園寺制札〈同寺藏〉　禁制覺園寺　右於二當寺領上總國小盖八板(○○○○)兩村一、武士甲乙之輩、不レ可レ致二濫妨狼籍一、若有二違犯之族一者、爲レ處二罪科一、可レ注二申交名一之状如レ件、　觀應三年六月廿四日

莊

〔朝野群載〕

〈十七佛事〉

p.1040 施入帳　藻原庄(○○○)壹處　地四至〈東限二清水野一、西限二巨堤葦原一、　南限二緑野一、北限二小竹河一、〉　東西壹仟貳拾丈　南北肆佰捌拾漆丈　田代庄(○○○)〈壹處在二長柄郡一、壹處在二天羽郡一、〉　開田參拾餘町畠等〈員在二文券一〉　

p.1041 右庄田等制圖券、公驗等書、奉レ入如レ件、就レ中藻原庄曾祖父故從四位上黒麻呂朝臣之牧也、墾闢爲二治田一也、田代庄始自二曾祖父一、至二于祖父故從五位下春繼朝臣一、其間往々買得以爲二私業一也、先考故從四位上良尚朝臣相二承管領一也、菅根等先人、生平被二過庭之訓一云、件兩箇庄、先君有レ命、可レ施二入興福寺一云、〈〇中略〉但天羽庄奉二維摩會之資用一、藻原庄奉二諸聖衆之供給一、願以二此功徳一、先奉レ資二祖考一早脱二漏屋一、遊二常樂我淨之域一、乍レ渡二迷風一觸二究竟涅槃之岸一、乃至二七世父母一皆成二佛道一、敬白、　寛平二年歳次庚戌八月五日　蔭子　藤原朝臣敏樹

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.1041 文治二年六月十一日丁巳、熊野別當知行、上總國畔蒜庄(○○○)也、而地頭職者、二品令レ避二付于彼人一給、

〔吾妻鏡〕

〈八〉

p.1041 文治四年六月四日戊辰、所々地頭沙汰之間事、注二條々一、令レ附二帥中納言一〈經房〉給之處、御返報今日到著、於二勅答之趣一者、爲レ讓二子細一、所レ副二獻權右中辨定長朝臣奉書一也、〈〇中略〉　上總國伊灊庄(○○○)事　金剛門院領也、於二年貢一者、可レ進二納寺家一　、此外不レ進二年貢一之寺〈〇寺下恐脱二領字一〉所二注進一也、仍相副也、〈〇中略〉　上總國菅生庄(○○○)　前攝政家領也、年貢注文遣レ之、〈〇中略〉　以前條々、以二此趣一可レ被二計遣一之由、御氣色候、恐々謹言、　五月十二日　權右中辨

〔吾妻鏡〕

〈十八〉

p.1041 元久二年三月廿五日壬午、勝長壽院領、上總國菅生庄十二箇郷事、今日被レ中二分之一、以二六郷一爲二別當分一、割二六郷一給二供僧中一云云、

〔下總國舊事考〕

〈十一金石〉

p.1041 飯沼村圓福寺鐘銘　

p.1042 敬白於二上總國菅生莊本郷飯富宮社頭一、奉再興鑄鐘一口、〈〇中略〉　享徳五年十二月十五日

〔吾妻鏡〕

〈二十一〉

p.1042 建暦三年〈〇建保元年〉五月七日丁未、勳功事、今日先被レ定レ之、〈〇中略〉　上總國【飯富(ヲフ)庄】〈武州〉

〔集古文書〕

〈三十六禁制状〉

p.1042 天正十八年制札〈上總國一宮莊高根村農玄蕃藏〉　禁制上總國一宮之莊(○○○○)〈十二村之内高根〉　一當年軍勢亂妨狼籍之事〈〇中略〉　右條々堅令二停止一訖、若違犯之族於レ在レ之者、可レ處二嚴科一者也、　天正十八年五月日　淺野彈正少弼　木村常陸守

藩封

〔房總治亂記〕

p.1042 同年〈〇天正十八年〉七月十一日、小田原ノ北條氏政、氏直、秀吉ノ爲ニ滅亡シ、東八州ヲ家康公ヘ授ケラル、〈〇中略〉同八月九日、領地拜領、四箇國ノ分上總大多喜、〈本多中務大輔忠勝十萬石、兩總事司ル、〉同廳南、〈本多佐渡守正信、一萬石、〉同勝浦、〈植村土佐守泰忠、三千石、〉同小井戸、〈本多作左衞門重次、三千石、〉同五井、〈松平紀伊守家信、五千石、〉同裳原、〈大久保治右衞門忠佐、五千石、〉同佐貫、〈内藤彌次右衞門家長、二萬石、〉同鳴戸、〈石川左衞門大夫康通二萬石、任二長門守一、〉同久留利、〈大須賀五郞左衞門康高、三萬石、〉同矢作、〈鳥居彦右衞門元忠、四萬石、〇中略〉上總岩村、武州稻毛峯郷、〈坪内喜太郞利足二千石〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1042 　黒田伊勢守直質(雁間　朝散大夫)　三万石居城上總望陀郡久留里　江戸ヨリ二十二里　〈天正十八、松平出羽守忠政、慶長五、御番城、同七、土屋民部少輔忠直、同民部少輔利直、同伊豫守頼直、廢城、延寶八、酒井雅樂頭忠孝加増、代々領、寛保二再依二公命一、黒田大和守直純築レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1042 　保科彈正忠正益(帝鑑間　朝散大夫)　二万石　在所上總周准郡飯野　江戸ヨリ二十二里三十二丁　〈寛永年中ヨリ保科氏代々領レ之〉　松平彈正忠(雁間　朝散大夫)　二万石　居城上總夷隅郡太田喜　江戸ヨリ二十二里餘　

p.1043 〈天正十八、本多中務大輔忠勝領、中絶、承應年中、阿倍因幡守正長、同伊與守正春、元祿十五、稻垣對馬守重富、同十六、松平備前正久、以後領レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1043 　阿部駿河守正恒(雁間　朝散大夫)　一万六千石　居城上總天羽郡佐貫　江戸ヨリ二十四里十六町　〈天正十八、内藤彌次右衞門家長、慶長五、同左馬允政長、元和八、松平大膳大夫勝重、寛永十六、松平出雲守勝隆、寛文六、松平修理亮重治、元祿三、柳澤出羽守保明、寶永七、阿部伊豫守正春、以後領レ之、〉　水野肥前守忠順(雁間　朝散大夫)　一万五千石　居城上總市原郡鶴牧格　江戸ヨリ十六里　〈從二房州安房郡北條一、文政十亥年、水野壹岐守忠韶移レ之、〉　加納大和守(菊之間　朝散大夫)　一万三千石　在所上總長柄郡一宮　江戸ヨリ十五里〈〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1043 　林肥後守忠交(菊之間　朝散大夫)　一万石　在所上總望陀郡請西(ヂヨウサイ)　江戸ヨリ二十一里

〔嘉永明治年間録〕

〈十七下〉

p.1043 慶應四年〈〇明治元年〉九月廿三日、遠州諸侯ニ、安房上總兩國ニ於テ換地ヲ賜フ、〈〇中略〉　高一万千二百七十石餘　上總國天羽郡周准郡　田沼玄蕃頭　右者先般上知被二仰付置一候代知として、頭書之通下賜候旨、御沙汰候事、　高六千八百五十石餘　上總國周准郡　増山對馬守　右同文　高六万二千百石餘　上總國市原郡埴生郡長柄郡　井上河内守　右其方領地下總國下野國領知高、今般上知被二仰付一、右代地並先般上知被二仰付一候遠江國領分爲二代知一、頭書之通、下賜候旨、御沙汰候事、　高五万三千三百石餘　上總國夷隅郡　太田備中守　其方伊豆國領知高、今般上知被二仰付一、右代地並先般上知被二仰付置一候遠江國領知爲二代知一、頭書之通、下賜候旨、御沙汰候事、　

p.1044 高六千六百八十石餘　上總國望陀郡　大河内刑部大輔　右者先般上知被二仰付置一候代として、頭書之通、下賜候旨、御沙汰候事、

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1044 上總國〈〇註略〉管十一〈田二萬二千八百四十六町九段二百三十五歩〉

〔伊呂波字類抄〕

〈加國郡〉

p.1044 上總國〈管十二（中略）本田二万二千六百六十六丁〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1044 上總〈大遠〉十一郡〈（中略）田二萬二千三百六十六町〉

〔新撰類聚往來〕

〈下〉

p.1044 國名〈〇中略〉　上總(カツサ)〈總州〉十一郡〈田數二万一千八百七十町、南北三日、海岸弘、碧藻多、絹布鐙鞦等在、〉

〔海東諸國記〕

p.1044 上總州　郡十二、水田二萬二千八百七十六町六段、

〔左經記〕

p.1044 長元七年十月廿四日庚辰、上總守辰重來向語云、忠常追討之後、坂東之間、敢无二公事對捍輩一、但被二追討一之後、多以損亡之中、當國依レ爲二忠常住國一、爲レ使直方、并諸國兵士等三箇年被レ調之、人物一塵不レ遣、則前司維時朝臣任終年、徴符案隨身令レ見之、國内通計所作之由十八町餘也、前司署名明白也、敢无二事疑一、彼國本田(○○)二万二千九百八十餘町云々、將門亂間雖レ最、已未レ若二此時一云々、而辰重到レ任之年、五十餘町、次々年逐レ年加作、今年内撿定千二百餘町、散二在他國々一之人民、多以歸來、是全守二符旨一、于レ今未レ徴二把分官物一之故、漸興復也、而爲レ申二交替事等一、單騎上道、封家納官責如レ雲、忽无レ方、官符所レ損已如レ無レ已、爲レ之如何者、答云、官符意免二四箇年一、官物令二興復一之後、爲レ令レ濟二今四箇年物一、任三八年内濟二四箇年一事、可二勸賞一之由所レ給也、然者至二于今年調庸一、官官更不レ可レ候、又不レ可レ濟、而近代之事多以如レ此之、左右相計可レ被二進止一歟者、

〔前關白秀吉公御檢地帳之目録〕

p.1044 三十七万八千八百九十石　上總

〔和漢三才圖會〕

〈六十六上總〉

p.1044 十一郡　三十七万八千八百九十石

〔官中祕策〕

〈二〉

p.1044 上總國　十一郡〈〇中略〉　石高三拾九万千百三石餘

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1045 天保度御國高調〈〇中略〉　上總國〈御料私領〉　一高四拾貳万五千八拾石四斗五升三合四勺壹才

〔南總郡郷考〕

〈乾〉

p.1045 夷隅郡〈南房州長挾郡界ニ始リ、北長柄埴生二郡ニ接シ、西望陀市原二郡ノ界ニ終ル、〇中略〉　村數百七十三箇邑　合六万七千百六十三石八斗六升三合六勺　戸員一万四千九百六十九　望陀郡〈北市原郡界ニ始リ、南周准郡ニ接シ、東南夷隅郡并房州ノ界ニ終ル、〇中略〉　村數百七十一箇邑　合高五万七千五百八十二石三斗八升一合六勺　戸員八千八百八十八　天羽郡〈北周准郡界ニ始リ、東南房州平郡界ニ終ル、〇中略〉　村數七十六箇邑　合高二万四千三百九十三石六斗一升八合九勺　戸員四千六百八十六　周准郡〈北望陀郡界ニ始リ、南天羽郡界ニ接シ、東南房州界ニ終ル、〇中略〉　村數百三箇邑　合二万五千七百四十二石四斗八升二合三勺六才　戸員四千九百六十八　長柄郡〈南夷隅郡界ニ始リ、北山邊郡ニ接シ、西市原郡界ニ終ル、〇中略〉　村數百五十二箇邑　合高六万千九十五石六斗三升七合三勺　戸員九千八百八十五

〔南總郡郷考〕

〈坤〉

p.1045 山邊郡〈南長柄郡界ニ始リ、北武射郡ニ接シ、西市原郡ノ界ニ終ル、〇中略〉　村數百二十三箇邑　合高五万千五百五十九石三斗五升六合六勺　戸員八千百四十三　武射郡〈南山邊郡界ニ始リ、北下總匝瑳郡ニ接シ、西同州香取埴生ニ郡ノ界ニ終ル、〇中略〉　村數百十二箇邑　合高五万三千七百三十石七斗九升五合九勺　戸員七千三百五十三　市原郡〈北下總國界ヨリ始リ、南望陀郡ニ接シ、東夷隅郡ニ終ハル、〇中略〉　村數百八十二箇邑　合高五万三千七百八十石三斗二升一合一勺　戸員一万千四百三十一　埴生郡〈北長柄郡ノ界ニ始リ、西市原郡ニ接シ、東南夷隅郡界ニ終ル、〇中略〉　村數四十七箇邑　合高一万七千九百八十七石九斗五升一合三勺　戸員三千七百二十七　

p.1046 九郡通計　村數一千百四拾九箇邑　高四拾一万三千三拾六石四斗八合八勺五才　戸員七萬四千四百五拾八家

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.1046 諸國出擧正税公廨雜稻〈〇中略〉　上總國、正税公廨各卌万束、國分寺料四万束、藥師寺料三万四千束、文殊會料二千束、藥分料一万束、修理池溝料四万束、救急料十二万束、俘囚料二万五千束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1046 上總國〈〇註略〉管十一〈（中略）正公各四十萬束、本稻百七萬千束、雜稻二十七萬千束、〉

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.1046 年料別納租穀〈〇中略〉　上總國〈四千六百九十斛、〇中略〉　年料別貢雜物〈〇中略〉　上總國〈筆一百管、牧牛皮六張〇中略〉　諸國貢レ蘇番次〈〇中略〉　上總國十七壺〈七口各大一升　十口各小一升〇中略〉　右六箇國爲二第二番一〈寅申年〇中略〉　交易雜物〈〇中略〉　上總國〈絁五十疋、商布一万一千四百廿段、布一千五百九十端、腐革八張、鹿皮五十張、洗革一百張、鹿角十枚、鑣廿具、木綿四百七十斤、櫑子四合、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.1046 上總〈〇中略〉　右十一國、麁絲、〈〇中略〉　上總〈〇中略〉　右十國、輸レ絁、〈〇中略〉　上總國〈行程、上卅日、下十五日、〉　調、絁二百疋、緋細布廿端、薄貲布百十四端、細貲布六十三端、小堅貲布五十一端、紺望陀布五十端、縹望陀布七十三端、縹細布三百八十端、望陀貲布百端、〈長八丈、廣一尺九寸、〉貲布一百卌八端、自餘輸二望陀布細布、調布鰒一、　庸、輸レ布、　中男作物、麻二百斤、紙、熟麻、白暴熟麻、枲、紅花、漆、芥子、雜腊、鰒、凝海藻、

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.1046 諸國進年料雜藥〈〇中略〉　上總國廿種　虵 一斤、白頭公三斤、 杞、木防己各十斤、杜仲、地楡各四斤、瞿麥、貝子各三斤、伏苓廿八斤、葛花旋䨱花各二斤、白鮮六斤、 黄四斤、榧子二斗二升、署預四斗、麥門冬一斗四升、桃人六斗、附子八斗、莨蓎子

p.1047 一升、升麻三斤、

〔新猿樂記〕

p.1047 四郞君受領郞等刺史執鞭之圖也、〈〇中略〉宅常擔集二諸國土産一貯甚豐也、所レ謂〈〇中略〉上總鞦、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.1047 上總　長南紅花　ヲダキ鮑〈貝勝タリ〉　鯛　東金蛤〈蟹蛤共云〉

〔續日本紀〕

〈六元明〉

p.1047 和銅七年二月庚寅、上總國言、去レ京遙遠、貢調極重、請代一細布一頗省二負擔一、其長六丈、闊二尺二寸、毎レ丁輸二二丈一、以二三丁一成レ端、許之、

〔續日本紀〕

〈十二聖武〉

p.1047 天平八年五月辛卯、諸國調布、長二丈八尺、闊一尺九寸、庸布長一丈四尺、濶一尺九寸、爲レ端貢之、〈〇中略〉上總望陀細貲、〈〇中略〉依レ舊貢之、

人口

〔官中祕策〕

〈二〉

p.1047 上總國　十一郡〈〇中略〉　一人數四拾五万三千四百六拾人　内〈貳拾三万七千六百九拾五人　男　貳拾壹万五千七百六拾五人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1047 諸國人數調〈〇中略〉(文化元甲子年)　人數三拾六万四千五百六拾人(御料私領)　上總國(高三拾九万千百拾三石餘)　内〈拾八万七千四百三拾五人　男　拾七万七千百貳拾五人　女〇中略〉　諸國人數調〈〇中略〉(弘化三丙午年)　一人數三拾六万七百六拾壹人(御料私領)　上總國(高四拾貳万五千八拾石餘)　内〈拾八万四千三百六拾貳人　男　拾七万六千三百九拾九人　女〉

風俗

〔人國記〕

p.1047 上總國　上總國、人文風俗、大體安房ニ替ル事ナシ、雖レ然此國ノ人ハ、別而氣質偏屈ニ而、其勤ル所、諸民トモニ常ニ山賊夜討ヲ本ト覺ヘテ、正道ヲ知ル人、百人ニ九十人無レ之、雖レ然其ケナゲ成事、關東二番ト可レ劣風儀ニ非ズ、サレバ勇ヲ内ニシ、智ト和トヲ外ニ而、是ヲ勤ルヲ以善トス、然ニ此國ノ風儀、勇

p.1048 ヲ先キニ而、智ヲ後ニスルトイワンヤ、最智勇兼備ノ人有ト難レ云、唯氣質ニ勝テ、勇ヲ強ク行フ風俗ナリ、危キ事ノミ多シ、

名所

〔日本鹿子〕

〈七〉

p.1048 同國〈〇上總〉名所之部　海上潟　當國中よりひがしのかた也、海上は郡の名也、海邊なり、此所のはまべより、あわ下總の浦々かすみに見えわたる、　浮寢する海上かたの沖のすにたづぞ鳴なるよや更ぬらん　浪の山　海上のうち、磯邊にある此山よりも、近國の、浦々よく見えわたり、景よき山也、大明神の宮とて、山のうちにあり、　千草(クサ)の濱　當國と下總との堺の海邊也といふ、所の人に尋るに、總名當國の濱邊をいふといへり、實正いづれの所にや、おぼつかなし、　色々のかひありてこそひろはめれ千草の濱のあまがまに〳〵

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1048 諸國健兒〈〇中略〉　上總國一百人〈〇中略〉　諸國器仗〈〇中略〉　上總國〈甲四領、横刀十六口、弓卌八張、征箭卌八具、胡簶卌八具、〉

〔三代實録〕

〈十四清和〉

p.1048 貞觀九年十二月四日己巳、勅二上總國一、置二檢非違使一員主典一員一、帶レ劒把レ笏、

〔三代實録〕

〈十八清和〉

p.1048 貞觀十二年九月十五日甲子、遣二新羅人二十人一、配二置諸國一、〈〇中略〉僧嵩、沙彌傳僧關解、元昌、卷才五人於二上總國一、

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

p.1048 奈都素妣久(ナツソヒク)、宇奈加美我多能(ウナガミガタノ)、於伎都渚爾(オキツスニ)、布禰波等杼米牟(フ子ハトゞメム)、佐欲布氣爾家里(サヨフケニケリ)、　右一首上總國歌〈〇中略〉　相聞〈〇中略〉　宇麻具多能(ウマクダノ)、禰呂乃佐左葉能(子ロノササバノ)、都由思母能(ツユシモノ)、奴禮氐和伎奈婆(ヌレテワキナバ)、汝者故布婆曾母(チハコフハソモ)、　

p.1049 宇麻具多能(ウマクダノ)、禰呂爾可久里爲(子ロニカクリヰ)、可久大爾母(カクタニモ)、久爾乃登保可婆(クニノトホカハ)、奈我自保里勢牟(ナガメホリセム)、　右二首上總國歌