地部/下總國

p.1049 下總國ハ初メシモソフサノクニト云ヒ、後ニシモフサノクニト云フ、東海道ニ在リ、西ハ武藏、上野、南ハ上總、北ハ常陸、下野ニ界シ、東ハ海ニ面セリ、東西凡ソ二十二里、南北凡ソ十七里、其地勢ハ、西方武藏平原ニ連リ、田野茫々、國中殆ンド山峯ヲ見ズ、此國ハ古ヘ國府ヲ葛飾郡ニ置キ、葛飾(カツシカ)、千葉(チバ)、印幡(イムバ)、匝瑳(サウサ)、海上(ウナカミ)、香取(カトリ)、埴生(ハニフ)、相馬(サウマ)、猿島(サシマ)、結城(ユウキ)、豐田(トヨダ)ノ十一郡ヲ管シ、延喜ノ制、大國ニ列ス、後世豐田郡ノ一部ヲ分チテ岡田郡ヲ立テ、葛飾郡ノ西部ヲ割キテ、之ヲ武藏國ニ屬セシム、明治維新ノ後、葛飾郡ヲ東中北ノ三郡ニ分チ、尋デ又東、西、中、北ノ四郡ト爲シ、相馬郡ヲ南北ノ二郡ニ分チ、埴生郡ヲ改メテ下埴生郡ト稱セシガ、更ニ又下埴生郡ヲ印幡郡ニ、南相馬郡ヲ東葛飾郡ニ、西葛飾郡ヲ猿島郡ニ、岡田、豐田ノ二郡ヲ結城郡ニ合併シ、而シテ北葛飾、中葛飾ノ二郡ヲ武藏國ニ屬セシメ、凡テ九郡ト爲シ、匝瑳、海上、香取、印幡、千葉、東葛飾ノ六郡ヲ千葉縣ニ隷シ、猿島、結城、北相馬ノ三郡ヲ茨木縣ニ屬セシム、

名稱

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1049 下總〈之毛豆不佐〉

〔饅頭屋本節用集〕

〈之天地〉

p.1049 下總(シモフサ)〈總州〉

〔日本風土記〕

〈一寄語島名〉

p.1049 下總〈什麼倭撒(シツモツヲウサツ)〉

〔千載和歌集〕

〈十八雜〉

p.1049 しもつふさ(○○○○○)のかみにまかれりけるを、任はてヽのぼりたりける比、みなもとのとしよりの朝臣につかはしける、源仲正　

p.1050 あづまぢのやへの霞をわけきても君にあはねばなをへだてたる心ちこそすれ〈〇返歌略〉

位置

〔地勢提要〕

〈乾〉

p.1050 各國經緯度〈附里程〉　下總銚子湊飯沼村、極高三十五度四十三分、經度東五度六分、前同九十二里三町三十七間、

〔日本經緯度實測〕

p.1050 北極出地　下總　銚子湊　三五度四三分〇〇秒　古河　三六度三十一分三七秒〈〇中略〉　東西里差　山城　京　〇度〇〇分〇〇秒〈〇中略〉　下總　古河　東四度〇〇分〇〇秒

疆域

〔房總志料〕

〈三上總附録〉

p.1050 一下總千葉郡濱村と、上總市原郡村田村との間に三角畠と字せるあり、状によりて名く、此地に榜示有て、二總の界とす、又同郡閏井戸村より、古市場村を過て、濱村へ至る道に、左右は田にして、臂曲(ヒヂマガリ)と字せる道有、其形灣にして、臂を折たるがごとし、是又二總の界とすとも云、いぶかしきことなり、如何となれば、古へ一國を建るの始、かヽる事にて封域を別てるにてはあらじ、おもふに下總千葉郡に隷せる小弓濱村などの地勢によるに、全く上總に屬せし地と見ゆ、或いふ濱ノ村と垣生村との境に、小流有て海に宗す、源は麴室(カウジムロ)といふ所よりながると、これ等や二總の界なるにや、なをまた土人に問べし、

〔日本地誌提要〕

〈二十一下總〉

p.1050 疆域　東ハ海、西ハ武藏、上野、南ハ上總及海、北ハ常陸、下野、東西凡貳拾貳里、南北凡壹拾七里餘、

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.1050 神護景雲二年八月庚申、下總國言、天平寶字二年、本道問民苦使正六位下藤原朝臣淨弁等、具注下應レ掘二防毛野川一之状上、申レ官廳レ許已訖、其後已經二七年一、得二常陸國移一曰、今被二官符一、方欲レ掘レ川、尋二其水道一、當レ決二〈〇決原作レ次、據二一本一改、〉神社一加以百姓宅所レ損不レ少、是以具レ状申レ官、宜レ莫レ掘者、此頻年洪水損決日益、若不二早掘防一、恐渠川崩埋、一郡口分二千餘田、長爲二荒廢一、於レ是仰二兩國一掘自二下總國結城郡小鹽郷小

p.1051 島村一、達二于常陸國新治郡川曲郷一、受二津村一千餘丈一、兩國郡堺亦以二舊川一爲レ定(○○○○○○○○○○)、不レ得二隨レ水移改、

島嶼

〔日本實測録〕

〈九島嶼〉

p.1051 下總國海上郡　遠測　一ノ島　二ノ島　三ノ島　メトケ岬　黒碆　アシカ島　チカ岩

地勢

〔易林本節用集〕

〈下〉

p.1051 下總〈總(ソウ)州〉大、管十二郡、南北三日、山海但夥、禽獸交充、雖レ然无二食味一、大中國也、

道路

〔下總國舊事考〕

〈十五驛遞〉

p.1051 本州在二江府之東一、故傳遞應接、較二之相駿諸國一、煩劇不レ啻二天淵一、不レ憂二郵政之不一レ肅也、特八幡舟橋等驛、當二房總車馬之衝一、不レ爲レ無二勞費一、如二其古驛地一、今雖レ不レ可レ知、據二常陸風土記延喜式及史文一推レ之、在二千葉一者、蓋今之上總路是也、在二葛飾相馬一者、蓋今水戸道而少迂也、井上、浮島、河曲等數驛、雖レ不レ詳三其爲二何地一、以二地理一推レ之、在二日光道之傍近一、在二印播、香取一者、惟爲二香取神宮例幣使一而置レ之、故以二不要一廢也、果然當時官道無二與レ今太異一、〈〇中略〉　江府日本橋、抵二武藏千住一二里、千住東折抵二新井宿一一里十九町、新井宿經二小岩關一抵二下總市川一一里半、市川抵二八幡一二十八町、八幡抵二舟橋一一里半、舟橋抵二大和田一三里九町、大和田抵二臼井一二里八町、臼井抵二佐倉城一二里、〈按道程以二三十六町一爲二一里一、蓋中古以還有二此制一也、古制以二六町一爲二一里一者、廢レ之既久矣、據二古制一計二里程一、則不レ易二覈明一、故今盡用二今制一記レ之　或云、天正十年以二三十六町一爲二一里一、始置二一里塚一、〉　佐倉城抵二酒々井一一里、酒々井抵二上總加茂一四里、加茂抵二下總多古陣屋一一里八町、　多古陣屋抵二松山一二里半、松山抵二八日市場一一里、八日市場抵二太田一三里、太田抵二野尻一三里、野尻抵二銚子臺場一三里、　舟橋抵二馬加一二里、馬加抵二撿見川一十八町、撿見川抵二寒川一三十町、寒川抵二千葉臺場一二十町、　寒川抵二蘇我野一二十六町、蘇我野抵二濱野一二十町、濱野抵二生實陣屋一一里、濱野抵二上總八幡一一里　江府小網町、經二中川關一抵二行徳一三里八町、行徳抵二八幡一一里八町、八幡抵二鎌谷一二里八町、鎌谷抵二白井一一里二十八町、白井抵二大森一二里八町、大森抵二木下一二十八町、木下抵二安食一三里、安食抵二滑川一三里、滑川抵二

p.1052 高岡陣屋十町、　高岡陣屋、抵二神崎本宿一一里二十六町、神崎抵二佐原一二里半、佐原抵二津宮一三十町、津宮抵二小見川陣屋一二里、　津宮抵二香取神宮一十八町　小見川陣屋抵二須賀山一二里、須賀山抵二野尻一一里、野尻抵二銚子臺場一三里、　千住抵二武藏草加一二里八町、草加抵二越谷一一里二十八町、越谷抵二大澤一十町、大澤抵二粕壁一二里十八町、粕壁抵二杉戸一一里二十一町、杉戸抵二幸手一一里二十五町、　幸手抵二栗橋一二里三町、栗橋抵二下總中田一十町、中田抵二古河城一二里三町、古河城抵二下野野木一二十五町、謂二之日光道一　粕壁抵二關宿城一四里八町、關宿城抵二境町一十町、境町抵二谷貝一一里半、谷貝抵二仁連一二十五町、仁連抵二諸川一一里半、諸川抵二武井一一里半、武井抵二結城城一一里十一町、　新井宿抵二松戸一一里五町、松戸抵二小金一一里二十五町、小金經レ柏抵二我孫子一三里、我孫子抵二取手一一里半、取手抵二藤代一一里三十町、藤代抵二常陸若芝一一里、謂二之水戸道一〈國花萬葉集、我孫抵二荒木一（今作二新木一）二里荒木抵二小川一二里、小川抵二安食一二里半、〉木下、舟行五里抵二高岡一、又七里抵二小見川一、又六里抵二銚子一、

〔日本實測録〕

〈三街道〉

p.1052 從二東京一奧州街道至二野邊地一〈〇中略〉　下總國葛飾郡中田宿　一里一十六町三十四間半　古河三十一町一十八間〈至二國界一一十八丁五十五間半〉　下野國都賀郡野木宿

〔日本實測録〕

〈一沿海〉

p.1052 從二三廐一沿海至二東京一〈〇中略〉　下總國海上郡銚子飯沼村、三十五度四十三分、〈歴二犬吠崎一至二大若山下一二里三十四町〉　二里三十四町九間　飯岡村東町　三里二十五町　匝瑳郡神宮寺村〈至二井戸野村一三十町五十間〉　三里二十八町五十七間半〈至二野手村一一里六町五十〉

p.1053 〈四間、從二野手一至二國界一二里二十二町、〉　上總國武射郡屋形村濱〈〇中略〉　下總國千葉郡檢見川宿　二里一十六町一間半〈至二馬加宿一二十七町二十九間半〉　葛飾郡船橋五日市　一里二十七町卅五間半〈至二船橋五日市一一十町五十三間〉　本行徳町　二里三十五町三十九間半〈至二國界利根川口一一里三十一町六間〉　武藏國葛飾郡又兵衞新田

宿驛

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1053 諸國驛傳馬〈〇中略〉　下總國驛馬〈井上十疋、浮島河曲各五疋、茜津於賦各十疋、〉傳馬〈葛飾郡十疋、千葉相馬郡各五疋、〉

〔續日本紀〕

〈二十九稱徳〉

p.1053 神護景雲二年三月乙巳、下總國井上(○○)、浮島(○○)、河曲(○○)三驛、武藏國乘潴、豐島二驛、承二山海兩路一、使命繁多、乞准二中路一置二馬十匹一、奉レ勅依レ奏、

〔日本後紀〕

〈十三桓武〉

p.1053 延暦廿四年十月庚申、廢二下總國印播郡鳥取驛(○○○)、埴生郡山方驛(○○○)、香取郡眞敷(○○)、荒海(○○)等驛一、以レ不レ要也、

〔扶桑略記〕

〈二十五朱雀〉

p.1053 天慶二年十一月二十九日、將門還二豐田郡鎌輪之宿(○○○○)一、長官詔使令レ住二一家一、雖レ加二愍勞一、寢食不レ穩、

建置沿革

〔日本國郡沿革考〕

〈二東海道〉

p.1053 下總〈神護景雲二年八月、仰二總陸兩國一掘二毛野川一、自二下總結城郡小鹽郷小島村一、達二于常陸國新治郡川曲郷受津村一、一千餘丈、其兩國郡界、亦以二舊川一爲レ定不レ得下隨二水移一改上、〉大國、管十二郡、〈延喜式十一郡〉千六百二十三村、　葛飾〈三百四十村　古府治、万葉集作二勝牡鹿一、〉　猿島〈七十四村　延喜式等作二猨島一〉　結城〈五十一村〉　豐田〈八十村　延喜四年十二月、改二岡田郡一爲二豐田郡一、四年、拾芥抄作二二十年一、〉　相馬〈百四十二村〉　千葉〈百三十七村〉　埴生(　/ハフ)〈六十三村　延喜式作二垣生一〉　香取〈二百九十七村〉　匝瑳〈六十九村〉　海上〈七十一村　古下海上國、見二國造記一、古事記作二下莵上國造一、〉　岡田〈三十九村　延喜式等不レ載、置未レ詳レ在二何時一、和名抄岡田郷、隷二豐田郡一、〉　印幡〈二百六十村　古印波國、見二國造記一、延喜式作二印播一、〉　千田〈拾芥抄載、延喜式等不レ載、廢置未レ詳、〉

〔日本地誌提要〕

〈二十一下總〉

p.1053 沿革　古ヘ國府ヲ葛飾郡ニ置、〈今ノ國府ノ臺村是ナリ〉承平中、高望王ノ子良兼、介ヲ以テ州事ヲ知ル、從子將門〈良將ノ子〉豐田郡ニ居リ、猖獗制ヲ受ケズ、天慶二年、良兼卒ス、將門遂ニ謀

p.1054 反シ、猿島郡廳南ヲ以テ京師ニ擬シ、僞宮ヲ營シテ八州ヲ扇動シ、〈本州、及上總、安房、武藏、相模、上野、下野、常陸、〉明年誅ニ伏ス、後將門ノ從姪忠常、〈良文ノ孫、忠頼ノ子、〉州ノ介ニ任ジ、海上郡ニ居リ、長元元年亂ヲ作シ、四年ニシテ法ニ伏ス、後其子常將ヲ宥シテ介ニ任ジ、始テ千葉城ニ居リ、子孫任ヲ襲ギ千葉ト稱ス、玄孫常胤、結城朝光ト源頼朝ニ從ヒ、常胤本州守護トナリ、子孫ニ傳ヘ、後上總ノ北境ヲ併有ス、朝光治承ノ末、結城郡ヲ領シ、結城ニ居リ、後常陸眞壁郡、下野芳賀郡ヲ兼領ス、建武中興、足利尊氏ヲ守護トス、尊氏ノ反スル、千葉貞胤〈常胤七世ノ孫〉結城直朝、〈朝光六世ノ孫〉皆之ニ屬ス、千葉氏、介ヲ以テ守護ヲ兼ヌル故ノ如シ、鎌倉管領足利持氏ノ亡ブル、直朝ノ曾孫氏朝、其遺孤ヲ奉ジテ結城ニ據ル、上杉氏將軍義教ノ令ヲ以テ來リ伐チ、城陷テ氏朝自盡、結城氏是ニ於テ中斬ス、寶徳ノ初、持氏ノ子成(シゲ)氏管領トナリ、氏朝ノ遺胤成(シゲ)朝ヲシテ結城ニ復歸セシム、既ニシテ成氏其執事兩上杉氏ヲ伐ツ、 タズシテ退テ古河ヲ保ツ、時ニ貞胤ノ玄孫胤直、上杉氏ニ黨ス、其叔父康胤〈馬加(マクハリ)城主〉胤直ヲ襲殺シ、千葉城ニ據テ、印旛以東ノ地ヲ領シ、〈臼井、佐倉、多古、小見川、皆領邑ナリ、〉結城氏ト倶ニ成氏ヲ翼戴シ關東八館、皆古河ニ覲ス、既ニシテ上杉氏、胤直ガ從子實胤ヲ胤直ノ後トシ、武藏石濱ニ居シム、千葉氏是ヨリ兩宗トナリ、爭戰ヤマズ、〈石濱ノ千葉後北條氏ニ屬シ、天正ノ末祀絶ユ、〉天文中、里見氏本州ヲ侵シテ東境ヲ略取ス、千葉結城漸ク衰ヘテ、自立スル能ハズ、遂ニ北條氏ニ屬ス、二十三年、北條氏康成氏ノ曾孫晴氏ヲ關宿ニ幽シ、其子義氏ヲシテ僅ニ古河ニ食シム、〈義氏子ナシ、小弓(ヲユミ)義明ノ孫國朝嗣トナル、慶長中其、嗣頼氏邑ヲ下野ニ受ク、喜連川氏是ナリ、〉天正十八年、豐臣氏東征、成朝ノ玄孫晴朝、欵ヲ納レ封ヲ全シ、徳川氏ノ庶子秀康ヲ養テ嗣トス、康胤九世ノ孫重胤、北條氏ニ從テ小田原ニアリ、豐臣氏盡ク其封ヲ奪ヒ、千葉氏亡ブ、既ニシテ徳川氏關東ニ遷ル、小笠原秀政ヲ古河ニ、〈後土井利里〉松平康元ヲ關宿ニ、〈後久世重之〉久能宗能ヲ佐倉ニ〈後堀田正亮〉封ジ、慶長中、秀康　越前ニ徙シ、結城城ヲ廢ス、其後州内封ヲ受ル者、生實(ヲヒミ)〈森川重俊〉高岡〈井上政重〉小見川、〈内田正信〉結城、〈水野勝長〉多古、〈松平勝以(ユキ)〉凡テ八藩、王政革新、下野ノ高徳藩〈戸田忠至〉ヲ會我野ニ

p.1055 徙ス、既ニシテ皆改テ縣トシ、尋テ之ヲ併セテ印旛縣ヲ置、又改テ千葉縣ヲ置キ上總安房ヲ兼治ス、

〔古事記〕

〈上〉

p.1055 天菩比命之子建比良鳥命〈此（中略）下莵上國造（中略）等之祖也〉

〔先代舊事本紀〕

〈十國造〉

p.1055 印波國造　輕島豐明〈〇應神〉朝御代、神八井耳命八世孫、伊都許利命定二賜國造一、　下海上國造　輕島豐明朝御世、上海上國造祖、孫久都伎直定二賜國造一、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.1055 文治二年二月二日庚戌、二位家就二諸國宰史事一、條々有下令レ申二京都一給事上、〈〇中略〉　一散位源邦業國司事　是爲二御一族功士一、下總國同爲二御分國一之間、被レ擧二申之一云云、

國府

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1055 下總國〈國府在二葛飾郡一、行程上三十日、下十五日、〉

〔成田參詣記〕

〈一〉

p.1055 國府址　國府臺村にあり、〈今總寧寺領百石の地を國府臺村と稱すれど、元は市川村の内なり、古書に小符代、鴻岱、高野臺等に作るもあれど、共に非なり、〉今國府臺と稱する地是なり、〈豆相記に險岸高聳、下帶二大河一とは、此地の形勢を盡せり、〉　葛飾浦名勝志に、葛西を下總國府と云たるよし、然ども東鑑を考るに、頼朝卿下總の國府に、九月十九日より十月二日まで御陣を居られ、夫より太井隅田の兩川をわたるとあれば、國府は利根川より東の方なるべし、

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1055 治承四年九月十三日壬戌、於二安房國一令レ赴二上總國一給、　十七日丙寅、千葉介常胤相二具子息太郞胤正、次郞師常、〈號二相馬一〉三郞胤成〈武石〉四郞胤信、〈大須賀〉五郞胤道、〈國分〉六郞大夫胤頼、〈東〉嫡孫小太郞成胤等一、參二會于下總國府一、從軍及二三百餘騎一也、

〔古文帖〕

p.1055 細井喜三郞　

p.1056 下總國國府貳百石出置候畢、全可レ令二領知一者也、仍如レ件、　天正廿壬辰三月朔日　御朱印　細井喜三郞どのへ

郡

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1056 下總國〈〇註略〉管十一〈〇註略〉葛飾〈加止志加〉千葉〈知波〉印幡　匝瑳　海上〈宇奈加美〉香取〈加止里〉埴生〈波牟布〉相馬〈佐宇萬〉猿島〈佐之萬〉結城〈由不岐〉豐田〈止與太〉

〔延喜式〕

〈二十二民部〉

p.1056 下總國、大、〈管　葛飾　千葉　印幡　匝瑳　海上　香取　埴生　相馬　猨島　結城　豐田〇中略〉　右爲二遠國一

〔伊呂波字類抄〕

〈志國郡〉

p.1056 下總國〈管十二〉　匝瑳〈サウサ〉　葛飾〈カトシカ府〉　千葉　印幡〈インハ〉　海上〈ウナカミ〉　香取〈カトリ〉　埴生〈ハニフ〉　相馬〈サフマ〉　猿島〈サシマ〉　結城〈ユフキ〉　豐田　千田

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1056 下總〈大遠〉十一郡　葛飾　千葉　印幡　匝瑳　海上　香取　埴生　相馬　猿島　結城　豐田〈元岡田、延喜廿年改二豐田一、〉　千田〈不レ入二延喜式一〉

〔和漢三才圖會〕

〈六十六下總〉

p.1056 十二郡(○○○)〈〇中略〉　葛飾(カトシカ)　千葉　印幡　匝瑳(サフサ)　海上(ウナカミ)　香取　埴生　相馬　狹島(サシマ)　結城　豐田　岡田

〔皇國郡名志〕

p.1056 下總國〈十一郡〉　千葉(チバ)　〈●野田　小弓　馬加　檢見川　●寒川　●曾我野　●濱野　●千葉　山家　大和田　池田　村田川ニ添上サ界〉　印幡(インバ)　〈佐倉　●木原　大サハラ　臼井　曰理　船穗　岩留　言美　八代　村神　國中ヨリ上サ界〉　匝瑳(サフサ)　〈八日市場　●飯高　＜多古　●椿　中村　内山　大寺　△矢立浦　東海ニ向〉　相馬(サウマ)　〈相馬　●鳥手　大井　小山　瓦代　長ヲキ　フカハ　布佐　●安彦　白井　荒木　常界〉　結城(ユウキ)　〈結城　●諸川　カヤヘ　仁連　山川　武井　飯沼　常野ノ界〉　猿島(サルシマ)　〈古河　●中田　礒部　佐川埜　野木　塔田　高根　●堺　宮　上毛下毛界〉　香取(カトリ)　〈●香取　△同社　音川　津宮　佐原　●滑月　神崎　大和田　高野　常界〉　

p.1057 埴生(ハニフ)　〈●酒々井　●成田　●木下風　●大森　寺タイ　介島　八タマキ　門間　常界〉　豐田(トヨタ)　〈岡田　マウヤ　飯猪　赤法花　常界小郡〉　葛飾(カトシカ)　〈關宿　吉川　●松戸　●市川　●行徳　●舟橋　△鴻臺　●八幡　●釜ケ谷　小倉野　利根川ヲ武ノ界トス〉　〇按ズルニ、本書及ビ次下郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡名異同一覽〕

p.1057 下總

葛飾郡

〔郡名考〕

p.1058 下總　葛飾〈カトシカ　カツシカ　カツシカ〉

〔地名字音轉用例〕

p.1058 入聲ツノ韻ヲ同行ノ音ニ通用シタル例　かとしか　葛飾〈下總郡〉加止志加(カトシカ)　葛ヲカトニ用ヒタリ、但シ萬葉ニハ勝鹿(カツシカ)、又可都思加(カツシカ)ナドア

p.1059 リ、〈（中略）サテ山城ノ郡名ノ葛(カド)野ノ葛(カド)ハ、古事記ノ御歌ニ、加豆怒(カヅヌ)トアリテ、カヅラノラヲ省ケルナレバ、字音ニアラズ、此(コヽ)ト混ズベカラズ、〇中略〉　入聲キノ韻ヲ同行ノ音ニ通用シタル例　かとしか　葛飾〈下總郡〉加止志加(カトシカ)　飾呉音シキヲシカニ用ヒタリ

〔下總國舊事考〕

〈七郡郷〉

p.1059 葛飾郡〈和名抄訓加止志加〉　和名抄訓加止志加トアレド、萬葉集〈十四〉ニ、可豆思加、又加豆思賀トアリテ、今モ土人カヅシカト呼ニ據バ、是正訓ナルベシ、〈按、略解ニ、カツノツハ濁音ニテ、カヅシカト訓ベシト云、土人ノ音モカナヘリ、名義ハ葛繁ニテ、此地武藏野ノ東ニ在テ、原野廣ク、葛ノイト繁リシヨリノ名ナルベシ、回國雜記ニ、カクテ郡ノ山ヲ出デ行ク道ニ、葛ノイト繁ク侍リケルヲ見テ、云云トモ見ユ、且郡中ニ葛生村アルニテモ、思ヤラルゝ也、伴信友云、高橋氏文ニ、景行天皇五十三年入二東國一、冬十月到二上總國安房浮島宮一、天皇葛飾野毛（毛ハ爾ノ誤ナルベシ）獵シ玉フ、本朝月令ニ、此事ヲ載テ、天皇五十七年トス、書紀ニ據バ、五十三年ヲ是トスベシ、葛飾野ハ今モ小金原トテ、廣キ原野也、和名抄ノ頃ニ至テモ、郡中僅六郷ナレバ、其廣漠ノ原野ナリシコト想像スベシ、〉本郡ハ、抄ニモ、國府在二葛飾郡一ト見エテ、一國ノ上游ニアリテ、府治ノ地ナリシ也、〈今地勢ヲ考レバ、國府ハ栗原ノ郷ノ内ナルベシ、〉葛東、葛西ノ稱アリ、葛東ハ下總ニ屬シ、葛西ハ今武藏ニ屬セリ、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1059 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　由古作枳爾(ユコサキニ)、奈美奈等惠良比(ナミナトヱラヒ)、志流敝爾波(シルヘニハ)、古乎等都麻乎等(コヲラツマヲラ)、於枳氐等母枳奴(オキテラモキヌ)、　右一首、葛飾郡和部石島、

〔萬葉集抄〕

〈五〉

p.1059 かつしかとは、下總國葛飾郡也、彼郡の中に大河あり、ふとゐと云、其川の東をば葛東の郡(○○○○)といひ、西をば葛西の郡(○○○○)といふ、

〔吾妻鏡〕

〈十七〉

p.1059 正治三年〈〇建仁元年〉八月十一日戊子、甚兩午刻大風、郷里穿レ屋、江浦覆レ船、〈〇中略〉下總國葛西郡海邊潮、牽二人屋一、千餘人漂沒云云、

千葉郡

〔下總國舊事考〕

〈七郡郷〉

p.1059 千葉郡〈和名抄訓千波〉　名義ハ、古事記〈明宮〉上卷ニ、時天皇越二幸近淡海國一之時、御二立宇遲野上一、望二葛野一歌曰、知婆能、加豆奴袁美

p.1060 禮婆云云、傳ニ、知婆能ハ、契冲云ク、千葉之ナリ、葛ハ葉ノ繁キモノナレバ、其枕辭ナリ、下總國千葉郡アルモ、サル意ヲ以テ名付タルカトアリ、按ルニ、本州ニ葛飾郡アリ、飾ハ借字、繁ノ義ナルベシ、シカトシゲト通ズ、然レバ、千葉郡ヲ建ル時ニ、ソノ發語ヲトリテ、名トセルニヤ、千葉葛飾兩郡トモ、取分ケ原野多ク、葛藤ノ繁茂セルヨリ、負ハセシ名ナルベシ、〈〇中略〉四至、東ハ本郡野田中野等ト、上總國市原山邊二郡ニ接シ南ハ海ヲ限リ、西ハ葛飾郡ト相錯シ、舟橋御厨ノ地、及原野ヲ限リ、北ハ本郡神崎ト、印播郡舟尾トノ間ノ細流、又同郡神野、下市場、稻葉、小谷流等ニ至ル、六方野ヲ限リ、印播郡ト比連ス、古老云、中古ニ葛飾郡千葉庄ト稱シ、貞享三年、復タ郡ヲ稱ス、此郡正徳年中、百二十八ケ村アリト云、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1060 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　知波乃奴乃(チバノヌノ)、古乃氐加之波能(コノテカシハノ)、保々麻例等(ホヽマレト)、阿夜爾加奈之美(アヤニカナシミ)、於枳氐他加枳奴(オキテタカキヌ)、　右一首、千葉郡大田部足人、

〔千葉系圖〕

p.1060 忠常〈武藏押領使下總介〉常將〈千葉小次郞居二下總千葉郡一、因氏焉、〉

印幡郡

〔下總國舊事考〕

〈七郡郷〉

p.1060 印播郡〈和名抄旁訓インハ〉　名義ハ、稻葉ノ義ナルベシ、郡中ニ稻葉村アリ、是ヨリ起リシ郡名ナルベシト、思ヒヌレド、假字モ違ハ、コレニテハナカルベシ、〈説印播郷條ニ詳カナリ〉回國雜記ニ稻穗トセルハ、記者ノ詞ヲカザレルノミ、〈或云、歌ニヨミ入ルガ爲メニ稻穗トセシナリト云、サモアランカ、〉播ノ字、舊事紀ニ波トシ、三代實録、和名抄、延喜式等ニ、共ニ幡ニ作リ、萬葉集、常陸風土記ニモ、皆波ト書リ、谷田村慶長七年水帳ニハ判トス、平岡村延寶二年鳥見社棟札ニハ、印鑁之郡トス、四至、東ハ上總國山邊、武射二郡ヲ限リ、西南ハ千葉、葛飾、相馬三郡ヲ限リ、北ハ利根川ヲ限リ、東北ハ埴生郡ヲ限レリ、

〔續日本紀〕

〈三十六光仁〉

p.1060 天應元年正月乙亥、下總國印幡郡大領外正六位上丈部直牛養、〈〇中略〉授二外從五位

p.1061 下一、以レ進二軍粮一也、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1061 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　志保不尼乃(シホフ子ノ)、弊古祖志良奈美(ヘコソシラナミ)、爾波志久母(ニハシクモ)、於不世他麻保加(オフセタマホカ)、於母渡弊奈久爾(オモハヘナクニ)、　右一首、印波郡(○○○)丈部直大歳、

匝瑳郡

〔續日本後紀〕

〈四仁明〉

p.1061 承和二年三月辛酉、下總國人陸奧鎭守將軍〈〇將軍原脱、據二一本一改、〉外從五位下勳六等物部匝瑳連熊猪、改レ連賜二宿禰一、又改二本居一貫二附左京二條一、昔物部小事大連、錫二節天朝一、出征二坂東一、凱歌歸報、籍二此功勳一、令レ得下於二下總國一始建二匝嵯郡一、仍以爲上レ氏、是則熊猪等祖也、

〔下總國舊事考〕

〈七郡郷〉

p.1061 匝瑳郡〈和名抄旁訓サフサ〉　名義ハ、或書ニ狹麻ノ義トス、猶考フベシ、〈（中略）伊能穎則云、郡ヲ建タルハ、孝徳ノ御世ニテ、類史ニ、昔難波朝廷始置レ郡トアレバ、續後紀ノ文ニノミ依リテ、此時郡ニセラレシト云ベカラズ、按ズルニ小事大連、當昔匝瑳國造ガ縣主ニナリシヲ、後郡縣ノ制ニ改メラレシトキ、國縣ハ皆國郡トナリシヲ、續後紀ハ後ノ稱ヲ前ヘメグラシテ、書シ者ナルベシ、小事連ノコト、國造本紀ニ漏レタリ、〉此ニ據ルトキハ、物部小事大連ヨリ、始テ建シ郡ナリ、是ノ小事ノ大連ハ、舊事紀〈天孫本紀〉ニ、弟宇麻志麻治命十二世孫、物部木蓮子連公〈布都久留大連公ノ子〉此連公石上廣高宮〈仁賢天皇〉御宇天皇御世、爲二大連公一云云、弟物部小事連公〈志陁連、柴垣連、田井連等祖、〉トアリ、十三世孫物部麻佐良連公、〈木連子大連之子〉此連公伯瀬列城宮〈武烈天皇〉御宇天皇御世爲二大連一トアリ、彼此推考スルニ、仁賢天皇ガ、武烈天皇ノ朝ニ仕ヘシ人ト思ハル、其事蹟古事記、日本紀等ニ漏レタレド、續後紀ノ此段ニテ詳ニ知ラルヽ也、〈志陁ハ、延佳本標註ニハ、匝瑳ノ誤リナルベシト云ヘリ、〉此郡ノ建ザル以前ハ、海上ノ國造ノ部内ニテ有リシナルベシ、

海上郡

〔下總國舊事考〕

〈八郡郷〉

p.1061 海上郡〈和名抄訓宇奈加美〉　本郡ノ名義ハ、遠江國河上郷、安房國平群郡川上郷、越前國足羽郡江上郷、播磨國揖保郡浦上郷ナドノ類ニテ、海ニ取レル義ナルベシ、當時本州第一ノ大郡ニテ、始テ國造ヲ置レ、其源ニ溯レバ、ハヤク天穗日命子建比良鳥命ヨリツヾキテ、此區域ヲ知ラレシナルベシ、〈〇中略〉　

p.1062 本郡ハ、和名抄ノ時ヨリ、十五郷ノ大郡ニテ、地勢大洋ニ臨ミ、東常陸ト界ル内海アリ、南椿海ノ未ダ田地トナラザリシ已前ナレバ、匝瑳郡ト入海ヲ隔テ界セリ、天正ノ撿田ニ至リ、僅ニ抄ノ六郷ノ地ヲ存シテ、其九郷ノ地ハ、香取郡ニ隷セシ故ニ、今ハ萬石餘ノ小郡トナレリ、サレド永祿ノ頃マデモ、大倉以東本郡ナリシコトハ、海上八幡宮永祿年中ノ祭事記ニ見エタリ、

〔東大寺正倉院文書〕

〈四十四〉

p.1062 謹解　申請海上郡大領司仕奉事　中宮舍人左京七條人、從八位下海上國造他田日奉部直神護我、下總國海上郡大領司爾仕奉止申故波、神護我祖父小乙下忍、難波朝庭〈〇孝徳〉少領司爾仕奉支、父追廣肆宮麻呂、飛鳥朝庭〈〇天武〉少領司爾仕奉支、又外正八位上給氐藤原朝庭爾〈〇持統〉大領司爾仕奉支、兄外從六位下勳十二等國足、奈良朝庭〈〇元明〉大領司爾仕奉支、神護我仕奉状、故兵部卿從三位藤原卿位分資人、始二養老二年一至二神龜五年十一月一、中宮舍人、始二天平元年一至二今廿年一、合卅一歳、是以祖父父兄良我仕奉祁留次爾在故爾、海上郡大領司爾仕奉止申、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1062 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　阿加等伎乃(アカトキノ)、加波多例等枳爾(カハタレトキニ)、之麻加枳乎(シマカキヲ)、己枳爾之布禰乃(コキニシフ子ノ)、他都枳之良受母(タツキシラズモ)、　右一首、助丁海上郡海上國造他田日奉直得大理、

〔萬葉集抄〕

〈十四〉

p.1062 上總國にいまは【海北海南】(うなかたうなかみ)といふは、ふるき海上の郡なりと申す、

香取郡

〔郡名考〕

p.1062 下總　香取〈カトリ　カントリ〉

〔下總國舊事考〕

〈八郡郷〉

p.1062 香取郡〈和名抄訓加止里〉　名義ハ、萬葉集ニ、〈卷十一八丁〉大船ノ香取ノ海ニ、慍下(イカリオロシ)、何有人(イカナルヒトカ)、物不念有(モノオモハザラム)、ト云歌ニヨリテ、楫取ノ義トシ、應安中海夫文書ニ、常陸下總ノ津々浦々、古來ヨリ香取神宮ノ所務ナルヲ證トシ、〈海夫ノコト別ニ言フベシ〉或ハ續千載集藤原定家卿ノ、夏衣香取ノ浦ノウタヽネニ波ノヨル〳〵カヨウ秋風、ト云歌ニヨリテ、縑(カタ)

p.1063 織(ヲリ)ノ義トシ、〈縑ハ、衣ナリ、生衣ヲ云トアリ、又水色ノスヾシナリトモ云ヘリ、〉傍近ニ、折幡、幡鉾、小見〈和名抄麻績郷〉ナド云村、皆縑ニ因アルヲ證トシ、〈折幡ヲ織機ノ義トスルハアタラズ、皇國ノ語例ハ、體言ヲ先トシ用言ヲ後トスルガ常ナリ、折播ハ本障(オリ)畑ノアルヨリ、負ハセシ名ナルベシ、幡鉾ハ畠發塊ナルベシ、地方ニテ新墾ノ地ヲホツクト云、又荒久ト云ハ、新發塊ノコトナリ、其近隣ニマタ、虫畠ナド云村アリ、此ハ文字ノ如クナルベシ、〉或ハ神集(カムヅマ)リノ義トシ、〈萬葉五ニ、ウナハラノヘニモオキニモカムヅマリウシハキイマスモロモロノ大神タチ、云々ノ歌モアリ、〉　高天原ノ故事ニ取レルナリト云、〈此説甚ダ非ナリ、上古ノ神ト云ハ、即チ其土地ノ守ナルヲ、神變不可思議ノ鬼神ノ如ク思ヘルヨリ、言出タル陋説ナリ、〇中略〉上古物ヲ結ブニ葛ヲ用ヒ、其葛ヲ採ル人ヲ、葛取ト云ヘリ、觀古雜帖ニ載タル法隆寺三倉古書中ニ、寶字六年正月云云、葛取雇夫二人、功廿文、人別十文ト見エタリ、同年比、造近江石山寺司ノ用途文書ニ、黒葛幾斤ト云コトモ見エタレバ、葛取ノ義ニテ、其事ヲ業トスル人、住メルユヱノ地名ナルニヤ、本州ニ葛飾郡アリ、香取地方ニ葛(ツナ)原牧アリ、〈牧ハ庄ト異ナレド、實ハオナジサマナリ、香取文書ニ見ユ、因ニ云、葛原牧ハ、京師葛原ヨリ取レルニヤ、平氏ノ祖ハ葛原親王ヨリ出ヅ、其庄園ナドノアルニヨリ、千葉氏モ下總ニ蔓衍スルコトナリシニヤ、藤原新田ト云地モアリ、フヂモカヅラモ、葛ノ字ノ訓ナリ、播磨國明石郡葛江ハ、（布知衣）讃岐國多度郡葛原ハ、（加都良波良）豐前國宇佐郡葛原等アリ、證トスベシ、〉　舊事紀天孫本紀ニ、船長同共率二領梶取等一天降供奉、梶取阿刀連等祖天麻良、〈古老曰、大禰宜ノ分家ニ、カイトリト云神官アリ、今ハ梶取ト書クヨシ也、〉船子倭鍛冶等祖天眞浦トアリ、前ニアゲタル海夫文書等ニヨリテ考レバ、梶取等ノ住居セシ地ヨリノ名ナルベシ、上古經津主命、海門ヲ控制シ、ソレユヱ、北浦、西浦ニ部下ノ船子等、多ク住シテ、風魚非常ノ警ニ備ヘシモノト見ユ、〈今霞浦北邊ニモ、南邊ニモ、船子村アリ、是ソノ部曲ノ住セシ地ナルベシ、〉

〔延喜式〕

〈十八式部〉

p.1063 凡郡司者一郡不レ得二併用同姓一、若他姓中无二人可レ用者一、雖二同姓一除二同門一外聽レ任、神郡陸奧縁レ邊郡大隅馭謨熊毛等郡者、不レ在二制限一、〈謂（中略）、下總國香取、（中略）筑前國宗形等郡一爲二神郡一、〉

〔續日本紀〕

〈九元正〉

p.1063 養老七年十一月丁丑、下總國香取郡(○○○)〈〇中略〉等少領已上、聽レ連二任三等已上親一、

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十一〉

p.1063 下總國釬托郡(○○○)少幡郷戸籍　下總國釬托郡少幡郷養老五年戸籍(繼目裏書)　

p.1064 男壬生部波奈年拾貳歳　小子〈〇下略〉

埴生郡

〔郡名考〕

p.1064 下總　垣生〈ハニフ〉　埴生〈ハブ〉

〔下總國舊事考〕

〈九郡郷〉

p.1064 埴生郡〈和名抄訓波牟不〉　名義、埴生ハ、ハニノオフル處ヲ云、和名抄訓波牟不ナレド、地方ノ方言ニテ、ハブト省言ニ呼ビ來レリ、〈或云、牟一本二爾ニ作レリト、イカヾ、駿河ノ國阿陪ノ郡埴生ノ郷、訓反布トアリ、ソノ地方ノ稱呼モ本郡ト同ジサマナリ、〉抄ニ四郷ヲ載スレド、龍角寺所藏天正八年、千葉邦胤文書ニハ、埴生十五郷料所、并私領云々トアリ、〈此ノ料所トハ千葉家ノ領分ヲ云ニヤ、私領トハ其一族ノ領所ナルベシ、〉郷トハ十五箇村ノコトニヤ、又吉岡大慈恩寺文書ニ、伊能郷、奈土郷、津富良郷、小松郷等アリ、皆村ト並ベ擧ゲタリ、郷村ノ辨別ナシ、　按ニ、佐倉風土記ニ、本郡中古廢シテ、香取ノ郡埴生ノ庄ト唱フ、貞享三年以來復タ郡トナレリト云、郡名ノ起レルハ、上福田村ニヤ、〈上福田下福田トモ、舊ハ一村ニテ、埴生郷トモ云シナラン、〉此村ニ土地明神ト云社アリ、社傳ニ埴安姫命ヲ祭ルト云、サテ上總下總共ニ埴生、海上ノ二郡アリ、　四至、今ノサマハ、東南ハ香取郡、上總國武射郡ヲ限リ、西南ハ印幡郡、北ハ利根川、常陸國河内郡ナリ、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1064 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　阿米都之乃(アメツシノ)、以都例乃可美乎(イツレノカミヲ)、以乃良波加(イノラハカ)、有都久之波々爾(ウツクシハヽニ)、麻多己等刀波牟(マタコトトハム)　右一首、埴生郡大伴部麻與佐、

相馬郡

〔下總國舊事考〕

〈九郡郷〉

p.1064 相馬郡〈和名抄訓佐宇萬〉　相馬ノ名義ハ、狹沼ナルベシ、此地昔シ衣川ノ末流、小貝川ニ合シ、今ノ利根川ト川瀬ヲ異ニシテ、立木村ノ北方ヲ迂回シテ、沼澤沮洳ノ地ナレバ名付シナルベシ、但馬國氣多郡狹沼郷アリ、此地ノサマナルベシ、　

p.1065 四至、今ノサマハ、南ハ手賀沼ヲ限リ、〈縁湖ノ新田地ハ印播郡ナリ〉西ハ葛飾郡花野井ヲ限リ、西北ハ鬼怒川ノ落口ヲ限リ、北ハ小貝川、常陸國若芝、龍ケ崎等ヲ限リ、東ハ藤藏印播郡大森、木下(キオロシ)等ヲ限レリ、

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十一〉

p.1065 下總國倉麻郡意布郷戸籍　下總國倉麻郡〈〇相馬〉意布郷養老五年戸籍(繼目裏書)　戸藤原部黒栖年參拾肆歳　正丁　戸主藤原部伊良都從文弟、課戸、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1065 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　於保伎美能(オホキミノ)、美己等加之古美(ミコトカシコミ)、由美乃美仁(ユミノミニ)、佐尼加和多良牟(サ子カワタラム)、奈賀氣己乃用乎(ナカキコノヨヲ)、　右一首、相馬郡大伴部子羊、

猨島郡

〔下總國舊事考〕

〈九郡郷〉

p.1065 猿島郡〈和名抄訓佐之萬〉　本郡ノ〈豐田郡宗任明神社藏嘉吉中文書、又岩井延命寺華鬘銘、及常陸大寶八幡社、享徳中鐘銘等、共ニ幸島ニ作ル、中古或ハ幸島ト書シト見ユ、坂野耕雨云、將門記辛島郡ハ幸島郡ノ誤リナリト、コノ説極メテ是ナリ、〉建置ハ、書紀ニ、景行天皇五十五年春二月戊子朔壬辰、以二彦狹島王一拜二東山道十五國都督一、是豐城命之孫也、然到二春日穴咋邑一臥レ病而薨之、是時東國百姓悲二其王不一レ至、竊盜二王尸一、葬二於上野國一、五十六年秋八月、詔二御諸別王一曰、汝父彦狹島王、不レ得レ向二任所一而早薨、故汝專領二東國一、是以御諸別王、承二天皇命一、且欲レ成二父業一、則行治レ之早得二善政一、時蝦夷騷動、即擧レ兵擊焉、時蝦夷首帥、足振邊大羽根邊、遠津闇男邊等、叩レ頭而來之、頓首受レ罪、盡獻二其地一、因以免二降者一而誅二不服一、是以東方久之無レ事焉、由レ是其子孫於レ今有二東國一、蓋當時地方ニ彦狹島王〈三代實録、貞觀六年十一月八日、右京人二品秀良親王家令、正六位上宇自加臣吉人賜二姓笠朝臣一、彦狹島命之後也、〉ノ御名代ノ地ヲ建ラレシナルベシ、王カク東國ニ有功ノ人ナレバ、彦狹島王ノ御名代ノ爲メニ猨島郡ヲ建タマヒシナルベシ、詳ニ其事ヲ記サヾルハ史ノ闕文ナルベシ、後物部小事連ナド、此例ニテ匝瑳郡ヲ置レシナラン、

〔一話一言〕

〈二十四〉

p.1065 下總國郡の事　

p.1066 古代下總國猿島郡に屬せし村々、元祿十四年、結城郡に屬すべきよし、仰出さると云、

〔續日本紀〕

〈三十稱徳〉

p.1066 神護景雲三年七月己酉、下總國猨島郡災、燒二穀六千四百餘斛一、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1066 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　牟浪他麻乃(ムラタマノ)、久留爾久枳作之(クルニクキサシ)、加多米等之(カタメトシ)、以母加去々里波(イモカコヽリハ)、阿用久奈米加母(アヨクナメカモ)、　右一首、猨島郡刑部志加麿、

〔下總國舊事考〕

〈十一金石〉

p.1066 大寶村八幡社鐘銘〈〇中略〉　下州上幸島郡(○○○)穴太邊星智寺椎錐　開山權律師隆遍　住持阿闍梨隆翁　享徳五年丙子七月十六日

結城郡

〔下總國舊事考〕

〈九郡郷〉

p.1066 結城郡〈和名抄訓由不岐〉　名義ハ、カヂヲユフト訓ズルハ、結束スルノ義ヨリ取レルナルベシ、古語拾遺ニ、天富命、更求二沃壤一、分二阿波齋部一、率往二東土一、播二殖麻穀一、好麻所レ生、謂二之總國一、穀木所レ生、謂二之結城郡一、〈本注、古語、麻謂二之總一也、今爲二上總下總二國一是也、〉トアル如ク、穀木ノ生ズルヨリ取レル名ナルベシ、今モ此地ヨリ出ル紬、木綿等ハ、精好天下ニ冠タリ、其由來ノ舊キコト知ルベシ、〈按ニ、古語拾遺ノ成リシハ、大同三年ナレバ、其以前ヨリト見ユ、同書ノ趣ニテハ、天富命ヨリノ事ナラン、〉　四至、今ノサマハ、東ハ常陸國眞壁郡毛野川故道ヲ限リ、南ハ豐田、岡田、猨島三郡ニ錯リ、西北ハ下野國都賀郡ヲ限ル、統村四十二アリ、正徳中所二撿括一高二萬四千六百二十四石餘、

〔萬葉集〕

〈二十〉

p.1066 天平勝寶七歳乙未二月、相替遣二筑紫一諸國防人等歌、　和加々都乃(ワガヽドノ)、以都母等夜奈枳(イツモトヤナギ)、以都母以都母(イツモイツモ)、於母加古比須奈(オモカコヒスナ)、奈理麻之都之母(ナリマシツシモ)、　右一首、結城郡矢作部眞長、〈〇中略〉　久爾具爾乃(クニグニノ)、夜之呂乃加美爾(ヤシロノカミニ)、奴作麻都理(ヌサマツリ)、阿加古比須奈牟(アガコヒスナム)、伊母賀加奈志作(イモガカナシサ)、　

p.1067 右一首、結城郡忍海部五百麿、〈〇中略〉　於保伎美能(オホキミノ)、美許等爾作例波(ミコトニサレバ)、知々波々乎(チヽハヽヲ)、以波比弊等於枳氐(イハヒヘトオキテ)、麻爲氐枳麻之乎(マヰテキマシヲ)、　右一首、結城郡雀部廣島、

岡田郡/豐田郡

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1067 下總〈〇中略〉　豐田〈元岡田、延喜二十年改二豐田一、〉

〔郡名考〕

p.1067 下總　豐田〈トヨタ〉　〈延喜式頭書云、延喜四年十二月十日、改二岡田郡一爲二豐田一、〉

〔延喜式〕

〈九神名〉

p.1067 下總國岡田郡一座〈小〉　桑原神社

〔下總國舊事考〕

〈九郡郷〉

p.1067 豐田郡〈和名抄訓止與太〉　岡田郡〈豐田岡田ノ二郡ハ、元岡田郡ナリシヲ、延喜四年ニ豐田郡ニ改メラレ、今代貞享三年ニ豐田郡ノ内絹川ノ西十ケ村ヲ割キテ、岡田郡ヲ建シヨリ、二郡分立スル事トハナレリ、〉　名義ハ、郡中ニ豐田村アリ、コレヨリ出タル名ナラン、廢建ハ民部式頭註ニ、延喜四年十二月十日〈拾芥抄延喜廿年トス、神名帳考證土代ニ云、祕釋ニハ延喜四年三月十日改トアリ、〉改二下總國岡田郡一爲二豐田郡一トアリ、是ヨリ岡田郡全ク廢セシト見エテ、民部式、和名類聚抄共ニ載セズ、タヾ神名帳ニ岡田郡ヲ載ス、考異云、式ノ撰集、延喜五年ニ始リ延長五年ニ成ル、藤原時平、忠平等前後總裁ヲ異ニシテ、廿三年ニシ成功セシ書ナレバ、神名帳ハ元ノマヽヲ書キ、〈是ハ神社ニ付テノコトナレバ、後人ノ錯惑ヲ生ゼンカト、筆者ノ深キ意アリテ、ワザト舊郡ヲアゲシナルベシ、〉民部省條ニハ、今名ヲ書セシ故ニ、一書ノ内支互ヲナセシナラムト、猶大須本將門記ニ載ル所ノ地名ヲ撿スルニ、豐田郡大房ト云、豐田郡鎌輪〈今岡田郡ニ鎌庭村アリ、是ナルベシ、〉ト云、岡田郡ヲ載セズ、將門記ハ天慶ニ成リシ書ナレバ延長五年ヲ去ルコト、僅ニ十餘年ナリ、然ルニ絶テ岡田郡ノ名見エザレバ、全ク廢セシト見ユ、其後岡田郡ヲ建タルハ、貞享三年ナリト云、　四至、今ノサマハ東ハ常陸國筑波郡ヲ限リ小貝川コレヲ界シ、南ハ相馬郡ニ接シ、西ハ岡田郡ニ對シ、鬼怒川コレヲ界シ、結城郡ニ接シ、北ハ常陸國眞壁郡ニ對シ、絲繰川コレヲ界シ〈即毛野川ノ故道ナリ〉統村七十七、正徳中所二撿括一三萬九千三百〇三石餘、〈〇下略〉

私稱郡名

〔圓福寺文書〕

p.1068 下總國太方郡(○○○)今里郷圓福寺法儀條々、　一於二胎寶山圓福寺領仁一、自今已後希宗親類并不レ撰二甲乙之素緇於一、不レ可レ向二馬之鼻於一、況佛供便宜之田畠不レ可レ有二狼籍一事、〈〇中略〉　右爲二末代一所二記置一如レ件　應永二年八月三日　沙彌希宗〈花押〉　〇按ズルニ、倭名類聚抄ニハ、豐田郡ニ大方郷アリ、

郷

〔倭名類聚抄〕

〈六國郡〉

p.1068 下總國　葛飾郡　度毛　八島　新居　桑原　栗原　豐島　餘戸　驛家　千葉郡　千葉　山家　池田　三枝　糟 　山梨　物部　印幡郡　八代　印幡　言美　三宅　長隈　島矢〈〇島矢、高山寺本作二鳴矢一、〉吉高　船穗　曰理　村神　餘戸　匝瑳郡　野田　長尾　辛川　千俣　山上　幡間　石室　匝瑳　須加　大田　日部　玉作　田郡　珠浦　原　栗原　茨城　中村　相馬郡　大井　相馬　布佐　古溝　意部　餘戸　猨島郡　塔陁　八侯　高根　石井　葦津　色益　餘戸　結城郡　茂治　高橋　結城　小埇〈〇埇、高山寺本作レ埆〉、餘戸　豐田郡　岡田　飯猪　手向　大方　海上郡　大倉　城上　麻續　布方　輕部　神代　編玉　小野　石田　石井　橘川　横根　三前　三宅　船木　香取郡　大槻　香取　小川　健田　礒田　譯草　埴生郡　玉作　山方　麻在　酢取

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十〉

p.1068 下總國葛飾郡大島郷戸籍　

p.1069 下總國葛飾郡大島郷(○○○)戸籍　養老五年　甲和里戸主孔王部小山年肆拾捌歳　正丁課戸

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十一〉

p.1069 下總國倉麻郡意布郷戸籍　下總國倉麻郷意布郷(○○○)養老五年戸籍繼目裏書

〔東大寺正倉院文書〕

〈二十一〉

p.1069 下總國釬托郡少幡郷戸籍　下總國釬托郡少幡郷(○○○)養老五年戸籍繼目裏書

〔東大寺正倉院文書〕

〈小杉本〉

p.1069 下總國司解　申貢上逃官賤事　合婢貳口〈當國一口他國一口〉　婢稻主賣年貳拾壹歳〈右頰黒子　部下香取郡神戸大槻郷(○○○)中臣部眞敷之婢〉　右依二民部省去天平勝寶元年九月廿日符一買取、付二運調使史生從七位下土師宿禰稻守一貢上者、〈〇中略〉　天平勝寶三年五月廿一日　從七位下行少目守山眞人智万侶

〔續々修東大寺正倉院文書〕

〈十八〉

p.1069 石山院奉寫大般若經所解　申進二返仕丁等一事　合仕丁伍人　〈占マ小足〈下總國埴生郡河佐郷五月七日逃〇中略〉〉　矢作眞足　〈下總國相馬郡大井郷(○○○)〉　久須波良部廣島〈同國郡邑保郷(○○○)〇中略〉　以前仕丁等、依事畢、進返如レ件、以解、　天平寶字六年十二月廿四日　造東大寺司主典正八位上安都宿禰

〔扶桑略記〕

〈二十五朱雀〉

p.1069 天慶二年十二月十五日、賊主將門恣行、合戰章云、〈〇中略〉定下可レ建二王城一之處上、下總國猿

p.1070 島郡石井(○○)郷南亭可レ爲二都朝一、

〔稱名寺古文書〕

p.1070 新見文書所レ收　當寺領〈〇中略〉下總國埴生庄内山口郷(○○○)南栖立村、〈〇中略〉等事、任二度々寄附状、并元徳元年十二月二日下知状一、可下令二知行一給上之状如レ件、　建武三年十二月一日　左馬頭御在判〈〇足判直義〉　謹上　金澤稱名寺長老

〔相馬岡田文書〕

p.1070 相馬泉五郞胤康〈今者討死〉子息乙鶴下總國相馬御廚内泉郷(○○)〈本領〉并手賀藤心(○○○○)兩郷〈新田源三郞跡〉安堵事、胤康者爲二御方一自二奧州一致二軍忠一、去年二三兩月、前代一族蜂起之時、散々致二合戰一、〈〇中略〉以二此旨一可レ有二御披露一候、恐惶謹言、　建武四年八月十八日　陸奧守家長〈〇斯波〉上　進上　武藏權守殿〈〇高師直〉

〔集古文書〕

〈四十二寄附状〉

p.1070 北條貞將寄附状〈武藏國金澤稱名寺藏〉　下總國下河邊庄内赤岩郷(○○○)、〈〇中略〉此所々者、爲二不輸之地一、永代奉レ寄二附當寺一候、此外父祖二代之間、寄附之所々者、如二本知行一、御管領不レ可レ有二相違一候、天下泰平之御祈念、可レ致二精誠一候、恐々謹言、　正慶元年二月十六日　武藏守貞將〈花押〉　稱名寺長老

〔大慈恩寺文書〕

p.1070 雲富山大慈恩寺當知行領事　合　伊能郷(○○○)内〈本願寄進并新寄進〉　奈土郷(○○○)内〈本願寄進并新寄進〉　津富良郷(○○○○)内〈本願寄進并新寄進〉　西雲富村内〈本願寄進并新寄進〉　臼栗村内〈本願寄進并新寄進〉　物木村内〈本願寄進并新寄進〉　久士崎村内〈本願寄進并新寄進〉　古山村内〈本願寄進大椎代〉　横山村内〈本願寄進大椎代〉　青木村内　小松郷(○○○)内　滑河村

p.1071 内　水懸村内　一坪田村内〈本願寄進并新寄進〉　猿山村内　前林村内〈本願寄進〉　柴村内〈本願寄進并新寄進〉　大室村内〈本顧寄進〉　矢田山　中野〈本願寄進〉　雨尾　助崎　達山方　南城　上畠　柴田　上總國大椎郷内　右本願胤氏〈法名信蓮〉御寄進、并代々寄附等文書、依二紛失子細一、爲二後證判一者也、〈〇中略〉仍爲二後證状一如レ件、　應永卅三年〈丙午〉卯月十日　左衞門尉平朝信〈花押〇大須賀〉

〔集古文書〕

〈二十補任〉

p.1071 應永卅三年補任〈相模國鎌倉鶴岡相承院藏〉　補任　下總國葛西御厨上木毛河郷(○○○○○)内、藥師堂號淨光寺別當職〈并寺領等〉事、　右任二奧津右衞門五郞家定申請之旨一、所二補任一之状如レ件、　應永卅三年六月十三日　安房守〈花押〉　相承院法印御房

〔勝願寺文書〕

p.1071 禁制　磯部郷(○○○)之内大坊　一軍勢甲乙人等濫妨狼籍事〈〇中略〉　右條々有二違犯之輩一者、可レ被レ處二罪科一之状、依レ仰下知如レ件、　太永三年十月十二日　式部大夫〈花押〉

〔下總國舊事考〕

〈七郡郷〉

p.1071 千葉郡　千葉郷(○○○)　今千葉町ト稱スル地是ナリ、新田共十二町ニ分テリ、千軒許アリト云、〈因云、千葉介ト云ハ、下總介ガ千葉ニ居住セシユヱノ在名ナリ、千葉郡ノ介ニハアラザルナリ、ソレモ國造ノ故址ニヨラレシナルベシ、或云、本郡ニ殿臺村アリ、國造ノ址ハ是ナルベシト、猶考フベシ、千學集ニ、大治元年丙午六月朔、ハジメテ千葉ヲ立ツ、〈町ノコトナルベシ〉凡一萬六千軒ナリ、表八千軒裏八千軒、小路表裏五百八十餘ナリ、曾場鷹大明神ヨリ、御達報稻荷ノ宮ノ御前マデ、七里ノ間御宿ナリ、〈六丁一里ナルベシ〉後ノモノナガラ、

p.1072 〈大概ヲ見ルベキニヤ、〉

村里/邑名

〔郡名一覽〕

p.1072 　下總國(御料私領)　〈總州　南北三日〉　拾貳郡　高五拾六万八千三百三拾壹石壹斗壹升三合七勺四才　千四百八拾四ケ村　●佐倉　十三里半十六町　●古河　十六里　●關宿　十三里　●結城　二十一里　○生實(オヒミ)　十二里　○小見川　二十六里　○高岡　十九里　○多古　十九里　〇按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、

〔郡國提要〕

p.1072 下總　十二郡、千六百二十三村、　高六十八万千六十二石六斗三升一合六勺六才(御料私領)　葛飾郡三百四十村　猿島郡七十四村　結城郡五十一村　豐田郡八十村　相馬郡百四十二村　千葉郡百三十七村　埴生郡六十三村　香取郡二百九十七村　匝瑳郡六十九村　海上郡七十一村　岡田郡三十九村　印幡郡二百六十村

〔地勢提要〕

〈坤〉

p.1072 郡邑島嶼奇名　下總千葉郡、撿見川(ケミカハ)村、馬加(マクハリ)村、匝瑳(サフサ)郡、神宮寺(ジゲジ)村、

〔下總國舊事考〕

〈十五市集〉

p.1072 古河(○○)城下、十二町戸凡五百、販二賣二麥二豆紅花等一、多二驛家一、有二狹斜一、　關宿(○○)城下、六町、戸凡五百、向河岸則多下鬻二魚粕魚油等一者上、而有下高貲戸以二萬金一稱者上、境町則多二船儈一、船自二此地一發、一夕可レ達二江府一也、　野田町(○○○)右傍町、戸凡二百、多二造醤油戸一、頗稱二殷實一、流山村(○○○)町、戸凡三百、多二醸酒米商一、近來出二精醇九醞酒一、爲二三都冠一、　松戸(○○)驛、爲二水戸往還一、町、戸凡三百、多二旗亭一、有二狹斜一、行徳村(○○○)、爲下房總到二江府一要路上、三町、戸凡五百、多二船儈鹽戸一、〈以上共沿二利根川一〉　舟橋驛(○○○)、爲二佐倉及房總往還一、町、戸凡一千、多二漁戸旗亭一、有二狹斜一、　

p.1073 右在二葛飾郡一　千葉町(○○○)町、戸凡一千、多二漁戸一、　登戸村(○○○)戸凡一百多二船儈一、　寒川村(○○○)町、戸凡五百、二總諸物、轉二輸江府一馬頭也、多二船儈漁戸一、　蘇我野(○○○)　濱野(○○)　共爲二房總往還一、戸各二百、多二旗亭一、有二船儈一、　右在二千葉郡一　佐倉(○○)城下、六町、戸凡七百、　岩富町(○○○)、爲二東上總諸物轉輸之通衢一、戸凡二百、　右在二印播郡一　八日市場(○○○○)、町、戸凡六百、多鬻二木綿魚粕米穀等一、　太田村(○○○)、陣屋下、戸凡二百、　右在二匝瑳郡一　銚子(○○)陣屋下町、戸凡五千、多二漁戸一、造醤油爲二關左之最一、而奧羽海運屯泊之所、爲二本州第一段富之地一、野尻(○○)　高田(○○)　共戸凡一百、九十九里濱所レ出魚粕魚油、皆從レ此漕二江府一、　右在二海上郡一　小見川(○○○)陣屋下町、戸凡六百、農賈雜居、醸酒鬻米爲レ業者多、　多古(○○)陣屋下町、戸凡五百、佐原(○○)町戸凡一千五百、多二醸酒米商一、　高岡(○○)陣屋下戸一百　滑川(○○)、戸凡二百、多二旗亭一、　神崎(○○)、戸凡三百　右在二香取郡一　成田(○○)、戸凡二百、多二旗亭一、

p.1074 右在二埴生郡一　取手(○○)　布川(○○)　共戸各五百　右在二相馬郡一　境町(○○)、係二關宿城下内一町、戸凡五百、多二船儈一、　谷貝(○○)、亦係二關宿城下一、戸凡一百、　仁連(○○)　諸川(○○)　共戸各一百、多二旗亭一、　右在二猨島郡一　水海道、戸凡三百、多下鬻二酒米綿布等一者上、　本宗道、戸凡二百、　右在二田郡一　結城(○○)城下、十八町、戸凡五百、織二木綿一爲レ業者多、精好爲二天下之冠一、　右在二結城郡一

〔相馬岡田文書〕

p.1074 しもさのくにさうまのこほりいづみのむら(○○○○○○)、みちのくになめかたのこほりゐんないそしふんはのぞく、やつうさぎ、ゐヽとへやま、たかきのはたや、くろかはのこほりにふたのむら、しそく小ご郞胤家にゆづりわたすじやう、くだんのごとし、　けんむ二ねん十二月廿日　平胤康

〔相馬文書〕

〈一〉

p.1074 讓渡　所領事　次男彌次郞光胤分　一下總國相馬郡内　栗野村(○○○)〈〇中略〉　右村々者、限二永代一讓二渡彌次郞光胤一畢、〈〇中略〉永代可レ令二知行一、仍讓状如レ件、　建武三年二月五日　平重胤〈花押〉

〔相馬文書〕

〈一〉

p.1074 下總國相馬郡内鷲谷村(○○○)津々戸〈相馬六郞跡〉藤谷村(○○○)〈相馬六九郞等跡〉大鹿〈〉高井〈〉高(○)

p.1075 柳村(○○)等事、爲二關所一由、被二聞食一之間、將軍家御計程、所可レ被レ致二沙汰一状、依レ仰執達如レ件、　建武三年十一月二十二日　源〈花押〇斯波家長〉　相馬孫次郞殿〈〇親胤〉

〔集古文書〕

〈四十三寄附状〉

p.1075 足利氏滿寄進状〈相模國鎌倉鶴岡八幡宮藏〉　寄進　別願寺　下總國相馬御厨内横須賀村(○○○○)事　右爲二瑞泉寺殿御菩提所一、寄附状如レ件、　永徳二年十月廿九日　左兵衞督源朝臣

〔大慈恩寺文書〕

p.1075 下總國大慈恩寺雜掌申、同國伊能郷内壹町三段、奈土郷内貳町五段、富良郷内貳町壹段、臼栗村(○○○)内貳町二段、久士崎村(○○○○)内五段、青木村(○○○)内貳段、横山村(○○○)内壹町、古山村(○○○)壹町四段、西雲富村(○○○○)内貳町貳段、一坪田村(○○○○)内壹町貳段、前林村(○○○)内壹町、中野村(○○○)内陸段、矢田山村(○○○○)内貳段、雨尾村(○○○)内貳段、滑河村(○○○)内三段、小松郷内七段、猿山村(○○○)内貳段、水懸村(○○○)内五段、柴村(○○)内壹町六段、大室村(○○○)内五段、柴田村(○○○)内壹町七段、南城内貳町、上畠内壹町三段、遠山方内四段、助崎村(○○○)内壹町、上村(○○)内五段、物木村(○○○)内五段、上總國大椎郷内山野等文書事、去二十八年正月七日、當寺廻祿時、令二紛失一由申レ之、且云二當知行實否一、云二土貢分限一云下可二支申一仁有無、紛失實否上、載二起請之詞一可レ被二注申一、若引渡訴人捧二不實請文一者、可レ有二其咎一状、依レ仰執達如レ件、　應永卅三年八月廿二日　前備中守押　國分參河守殿

〔古文帖〕

p.1075 千貳百石　岡部半之助　大神君　

p.1076 下總國葛飾郡相谷村八木村(○○○○○○)百石、相模國大住郡千田村三百石、都合四百石出置候畢、永可レ令二知行一者也、仍如レ件、　天正十九年　御朱印　岡部庄左衞門どのへ

〔古文帖〕

p.1076 大神君御朱印　下總國匝瑳郡野手村(○○○)五百石之事　右出置候畢、永可レ令二知行一者也、仍如レ件、　天正十九辛卯年月　御朱印　押田與一郞どのへ

〔廻國雜記〕

p.1076 古川(○○)といふ所にて、舟にのりて、　こがくれにうかべる秋の一葉舟さそふ嵐を川おさにして　河舟をこがのわたりの夕なみにさしてむかひの里やとはまし

〔下總國舊事考〕

〈十二古書地名考〉

p.1076 古川(コカ)、〈諸本古河ニ作レリ〉葛飾郡ニアリ、萬葉集〈十四卷〉ニ、マクラガノコガノ、ワタリノ、カラカヂノ、オトタカシモヨ、ネナヘコユヘニ、夫木抄〈二十六卷〉西行法師、キリフカキコガノワタリノワタシモリキシノ舟付思ヘ定メヨ、左注ニ、武藏ノ國ト、下野ノ國トノ中ニアル古河ノワタリストテ、霧深カリケレバヨメル云々、此下野ハ、下總ノ誤リナリ、古河ト中田ノ邊ハ、武藏二毛錯綜シツレバ、カヽル事ハアルベキナリ、東游行嚢抄〈十八卷〉ニ、古河、自二栗橋一到二于此一一里半、利根川舟渡シアリ、坂東太郞ト云大河也、以二此河一爲二武藏之堺一云々、中田宿ハ利根川ノ東岸ニアリ、古河ヘ行程一里、

〔成田參詣記〕

〈四〉

p.1076 佐倉(○○)城　印播郡鹿島山にあり、〈今の城地を鹿島郷と云は古きことゝ見えて、永祿八年海隣寺佛識に見えたり、〉街坊六ケ

p.1077 町、〈田町、新田、彌勒町、本町、本佐倉町、酒々井町、〉江戸より十三里十八町餘、天正十六年七月、千葉介邦胤卒し、十一月、北條氏政がはからひにて、新館を此地に營み、那胤の長女東をして居しむ、　佐倉の本町は元鹿島宿と云、千葉家本佐倉に治城のをりふりだしの宿なり、今猶繼場は此宿にてつとむと云、

〔令條記〕

〈二十九〉

p.1077 定　下總國佐倉より東におゐて、しがみ錢取遣べし、但われ錢かけ新錢、ゑらび可レ申事、　慶長十一年七月廿三日　對馬守判　大炊介判　備前守判

莊

〔吾妻鏡〕

〈一〉

p.1077 治承四年九月十四日癸亥、下總國千田庄(○○○)領家判官代親政者、刑部卿忠盛朝臣聟也、平相國禪閤通二其志一之間、聞二目代被レ誅之由一、率二軍兵一欲レ襲二常胤一、依レ之常胤孫子小太郞成胤、相戰遂生二虜親政一訖、

〔吾妻鏡〕

〈五〉

p.1077 元暦二年〈〇文治元年〉十月二十八日丁丑、片岡八郞常春、同二心佐竹太郞一〈常春舅〉有二謀叛企一之間、被レ召二放彼領所下總國三崎庄(○○○)一畢、仍今日賜二千葉介常胤一、依レ被レ感二勤節等一也、

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.1077 文治二年三月十二日庚寅、關東御知行國々内、乃貢未濟庄々、召二下家司等一、注文被レ下レ之、可下加二催促一給上之由云云、今日到來、　注進　三箇國庄々事〈下總信濃越後等國々注文〉　合　下總國　三崎庄〈殿下御領〉　大戸神崎〈同〉　千田庄　玉造庄(○○○)〈三井寺領〉　匝瑳南庄(○○)〈熊野領〉　印東庄(○○○)〈成就寺領〉　白井庄(○○○)〈延暦寺領〉　千葉庄(○○○)〈八條院御領〉　船橋御厨〈院御領〉　相馬御厨〈同前〉　下河邊庄(○○○○)〈八條院御領〉　豐田庄(○○○)〈按察使家領、號二松岡庄一、〉　橘並木内庄(○○○○○)〈二位大納言〉　八幡〈〇中略〉　右注進如レ件　

p.1078 文治二年二月日

〔吾妻鏡〕

〈四十三〉

p.1078 建長五年八月三十日戊午、下總國下河邊庄堤、可二築固一之由有二沙汰一、被レ定二奉行人一、所レ謂清久彌次郞保行、鎌田三郞入道西佛、對馬左衞門尉仲康、宗兵衞尉爲泰等也、

〔吾妻鏡〕

〈二十三〉

p.1078 建保六年十一月二十七日乙未、東平太重胤者、無雙近仕也、其男胤行又相並、又夙夜在レ君歟、去比下二向下總國海上庄(○○○)一、久不二歸參一之間、將軍家被レ遣二御書一、是早可レ令二歸參上一之由也、

〔神崎文書〕

p.1078 下　下總國神崎御庄(○○○○)神官沙汰人等所　可三早如レ本立二行鹿島神田肆町一事　右件神田者、本四町也、而右衞門尉行國撿注之時、被レ倒二二町一云々、尤不便次第也、但於二二町一者、以前被レ立畢、所レ被レ倒今二町相加、本可レ立二四町神田一之状、所レ仰如レ件者、神官沙汰人等、宜承知、勿二違失一、以下、　承久三年六月十六日　文章生平〈花押〉

〔吾妻鏡〕

〈三十七〉

p.1078 寛元四年十二月二十九日甲寅、左馬權頭入道昇蓮、與二上野入道日阿一、相二論下總國松岡庄(○○○)田久安兩郷所務一條々内、去文暦元年貢物所濟事、依レ爲二日阿當給人一、可レ令二辨償一之由、領所昇蓮、訴申之間、日阿拜領者、文暦元年十二月十六日也、全不三微納二彼年貢物一之上者、難二辨濟一之旨、日阿陳レ之、仍日來有二其沙汰一、今日仰二件郷本地頭忠 一、可レ令レ致レ辨之由云云、

〔吾妻鏡〕

〈三十八〉

p.1078 寛元五年〈〇寶治元年〉六月七日戊子、又下總次郞時常、自二昨夕一入二籠此館一、同令二自殺一、是秀胤舍弟也、相二傳亡父下總前司常秀遺領垣生庄(○○○)一之處、爲二秀胤一被二押領一之間、年來雖レ含二鬱陶一、至二斯時一並二死骸於一席一、勇士之所二美談一也、

〔吾妻鏡〕

〈四十一〉

p.1078 建長三年十二月二日丁巳、宮内少輔泰氏朝臣、所領於二下總國垣生庄一、潜被レ遂二出家一、〈年三十六〉即年來遂二素懷一云云、

〔下總國中山法華寺古文書〕

〈上〉

p.1078 八幡莊(○○○)若宮戸村内法花寺堂敷〈并〉畠事、如本不レ可レ有二相違一之状如レ件、　建武二年二月六日　貞胤〈花押〇千葉介〉　

p.1079 大輔阿闍梨〈〇日祐〉御房

〔武州文書〕

〈八〉

p.1079 海上中務入道理一女子尼蓮一言上　欲三早任二蓮一相傳證文、并安堵下知状一蒙二御成敗一金澤稱名寺代官光信非分知行、下總國東莊(○○)上代郷内田八段半、在家一宇事、〈〇中略〉　建武二年四月日

〔鎌倉大草紙〕

p.1079 此千葉介は、平將軍村岡五郞重門末葉にて、右大將頼朝の御時、當家の元祖常胤は、鎌倉へ無二の忠節ありて、將軍より御崇敬あり、官加階はあらざれども、諸家の上座に列、一男千葉新介〈〇中略〉六男東六郞大夫胤頼とて、東庄三十三郷を知行し、代々歌人にて、禁中の御會にも參ければ、子孫代々在洛す、

〔古文帖〕

p.1079 青山牛太夫藏　大神君　下總國東庄三千石宛行訖、永可レ令二知行一者也、仍如レ件、　天正廿年二月朔日　御朱印　青山圖書助どのへ

〔烟田文書〕

〈天〉

p.1079 讓二與所々所領等一事　下總國印東莊(○○○)貝塚郷〈自二大道一北、并加二親常跡一、〇中略〉　建武三年〈大才丙子〉六月廿日　信崇〈判〉

〔下總國舊事考〕

〈十一金石〉

p.1079 龍腹寺村龍腹寺鐘識　南闡浮提大日本國關東下總印西莊(○○○)龍腹寺玄林山大鐘、寄附之作者谷田部三郞兵衞、千葉于行人　筆者當寺普門坊賢勝　

p.1080 〈按此鐘雖レ不レ鐫二歳月一、推二其形状且文體一爲二天正以前物一必矣、〉

〔下總國舊事考〕

〈十一金石〉

p.1080 宮本村光明院鐘識　敬白下總國匝瑳南條庄(○○○)熊野山若一王子御寶前突鐘　發願聖人上慶〈〇中略〉　文和貳年〈癸巳〉拾貳月十三日

〔下總國舊事考〕

〈十一金石〉

p.1080 富岡村長徳寺鐘銘〈〇中略〉　下總國千葉莊(○○○)椎名富岡山長福寺　願主宥傳　藥師如來鐘一口　天文四乙巳二月十七日

〔東路のつと〕

p.1080 或人安房の清洲を一見せよかしと誘ひしに、いづこかさしてと思ふ世なれば、立歸り江戸のたてのふもとに一宿して、隅田川の河舟にて、下總國葛西の庄(○○○○)の河内を半日計りよしあしをしのぐ折しも、霜枯は難波の浦に似通ひて、隱れて住し里も見えたり、

藩封

〔慶應元年武鑑〕

p.1080 堀田相模守正倫(帝鑑間　朝散大夫)　拾一万石　居城下總印幡郡佐倉　江戸ヨリ〈千住〉通十三里半ヨ〈天正十八年、久野三郞左衞門尉宗能、慶長年中、同民部少輔宗秀代遠州久野所レ替、後中絶、元和年中築レ之、土井大炊頭利勝、寛永十、石川主殿頭忠總、同十二、松平紀伊守家信、同若狹守康信、同十九、堀田加賀守正盛、同上野介正信、寛文元、松平和泉守乘久、延寶六、大久保加賀守忠朝、貞亭二、戸田山城守忠昌、同能登守忠眞、元祿十四、稻葉丹後守正通、同丹後後守正知、享保八、淀エ替、松平左近將監乘邑同和泉守乘裕、延享三、堀田相模守正亮、以後領レ之、〉　土井大炊頭利則(雁間　朝散大夫)　八万石　居城下總葛飾郡古河　〈江戸ヨリ十六里　舟路二十二里半　天正十八、小笠原兵部大輔秀政、慶長七、松平丹波守康長、同十三、小笠原左衞門佐信之、同左衞門佐政信、元和三、關宿エ替、同五、奧平美作守忠昌、同八、永井右近大夫直勝、同信濃守尚政、寛永十、土井大炊頭利勝、同遠江守利隆、同大炊頭利重、同周防守利益、延寶九、堀田筑前守正俊、貞享二、松平日向守信之、元祿七、松平伊豆守信輝、同伊豆守信高、正徳二、本多中務大輔忠良、同中務大輔忠敝、寶暦九、松平周防守康福、同上ヨリ再土井大炊頭利里、以後領レ之、〉　久世出雲守廣文(雁間)　四万八千石　居城下總葛飾郡關宿　江戸ヨリ十三里　

p.1081 〈天正十八、松平因幡守康元、同甲斐守忠良、元和二、松平大隅守重勝、同五、小笠原左衞門佐政信、北條出羽守氏重、正保元、牧野内匠頭信成、同佐渡守親成、明暦二、板倉周防守重宗、同阿波守重郷、同隱岐守重常、寛文九、久世大和守廣之、同出雲守重之、元祿十、牧野備後守成貞、同備前守成春、寶永二、久世大和守重之、同讃岐守暉之、同出雲守廣明、大坂ニテ、城地、安永二再領レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1081 　水野日向守(帝鑑間　朝散大夫)　一万八千石　居城下總結城郡結城　江戸ヨリ〈小山通二十一里、關宿通二十里、　當城頼朝公三男結城七郞朝光、結城中納言秀康卿迄十八代相續、秀康卿越前所レ替、慶長十六、爲二城破却一、元祿十六、再築レ之、水野隱岐守勝長以後代々領レ之、〇節略〉

〔慶應元年武鑑〕

p.1081 　松平大藏少輔勝行(菊間　朝散大夫)　一万二千石　在所下總香取郡多古　江戸ヨリ十九里　〈寛文年中ヨリ代々領レ之〉　井上筑後守正和(菊之間　朝散大夫)　一万石　在所下總香取郡高岡　江戸ヨリ十九里　〈寛永年中政重以後井上氏代々領レ之〉　内田主殿頭(菊之間　朝散大夫)　一万石　在所下總香取郡小見川　江戸ヨリ二十六里　〈寛永年中ヨリ内田氏代々領レ之〉　森川内膳正(菊之間　朝散大夫)　一万石　在所下總千葉郡生實(ヲイミ)　江戸ヨリ十二里　〈寛永年中ヨリ森川氏代々領レ之〇節略〉

田數/石高

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1081 下總國〈〇註略〉管十一〈田二萬六千四百三十二町六段二百三十四歩〉

〔拾芥抄〕

〈中末本朝國郡〉

p.1081 下總〈大遠〉十一郡〈（中略）三萬二千卅八町〉

〔新撰類聚往來〕

〈下〉

p.1081 國名　下總　田數二万六千百三十町

〔海東諸國記〕

p.1081 下總州　郡十一、水田三萬三千一町

〔前關白秀吉公御檢地帳之目録〕

p.1081 三十九万三千二百五十石　下總

〔和漢三才圖會〕

〈六十六下總〉

p.1081 十二郡　三十九万三千二百九十石

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1081 天保度御國高調〈〇中略〉　

p.1082 下總國〈御料私領〉　一高六拾八万千六拾貳石六斗三升壹合六勺三才

出擧稻

〔延喜式〕

〈二十六主税〉

p.1082 諸國出擧正税公廨雜稻〈〇中略〉　下總國正税公廨各卌万束、國分寺料五万束、藥師寺料三万五千束、文殊會料二千束、藥分料一万束、修理池溝料四万束、救急料七万束、俘囚料二万束、

〔倭名類聚抄〕

〈五國郡〉

p.1082 下總國〈〇註略〉管十一〈（中略）正公各四十萬束、本稻百二萬七千束、雜稻二十二萬七千束、〉

國産/貢獻

〔延喜式〕

〈二十三民部〉

p.1082 年料別納租穀〈〇中略〉　下總國〈一万四千石〉　年料別貢雜物〈〇中略〉　下總國〈筆一百管、牧牛皮六張、牛角十二具、麻子七斗、〉　諸國貢蘇番次〈〇中略〉　下總國廿壺〈八口各大一升、十二口各小一升、〇中略〉　右六箇國爲二第二番一〈寅申年〇中略〉　交易雜物〈〇中略〉　下總國〈布一千五百九十端、商布一萬一千五十段、鹿革廿張、皺文革十張、紫草二千六百斤、櫑子四合、〉

〔延喜式〕

〈二十四主計〉

p.1082 下總〈〇中略〉　右十一國、麁絲、〈〇中略〉　下總、〈〇中略〉　右十國、輸レ絁、〈〇中略〉　下總國〈行程、上卅日下十五日、〉　調、絁二百疋紺布六十端、縹布卌端、黄布卅端、自餘輸レ布、　庸、輸レ布、　中男作物、麻四百斤、紙、熟麻、紅花、

〔延喜式〕

〈三十七典藥〉

p.1082 諸國進年料雜藥〈〇中略〉　下總國卅六種　青木香一斤八兩、芎藭八斤、前胡、連翹、黄精、白芷、稾本、白薇各二斤、獨活、薺苨、桔梗、木斛、白鮮、大戟各五斤、 杞、松脂各十斤、白朮三斤五兩、藍漆五斤、 茄一斤、芍藥十兩、瞿麥六斤、地楡十四兩白頭公九斤伏苓六斤、續斷四兩、瓜帶三兩、 黄二斤、榧子大一斗、暑預、桃人各一斗、麥門冬、蜀椒各四升、附子大五升、荏子二升地膚子一升、獺肝二具、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.1082 下總　三度栗(ミタビクリ)〈一年ニ三度ナルト云〉　葛西(カサイ)苔〈是ヲ淺草苔トモ云〉　結城紬　中山紬島

〔和漢三才圖會〕

〈六十六下總〉

p.1082 下總國土産　

p.1083 苔〈出二於葛西一、亞二于淺草苔一〉　紬〈出二於結城一、同紬島出二於中山一、〉　栗〈一歳三度結レ實、名二之三度栗一、〉　牛蒡〈結城〉　干温飩〈同〉

人口

〔官中祕策〕

〈二〉

p.1083 下總國　十二郡〈〇中略〉　一人數五拾六万七千六百三人　内〈三拾万七千四百四拾壹人　男　貳拾六万百六拾貳人　女〉

〔吹塵録〕

〈五人口及國高〉

p.1083 　諸國人數調(文化元甲子年)　一人數四拾七万八千七百貳拾壹人(御料私領)　下總國(高五拾六万八千三百三拾壹石餘)　内〈貳拾五万貳千五百拾貳人　男　貳拾貳万六千貳百九人　女〇中略〉　諸國人數調〈〇中略〉(弘化三丙午年)　一人數五拾貳万五千四(御料私領)　人　下總國(高六拾八万千六拾貳石餘)　内〈貳拾六万八千貳百五拾貳人　男　貳拾五万六千七百八拾九人　女〉

風俗

〔人國記〕

p.1083 下總國　下總國ノ風俗、上總ニ同ジ、然レドモ結城人ハ律義ニ而、一國之内ニモ珍敷キコトナリ、

名所

〔日本鹿子〕

〈七〉

p.1083 同國〈〇下總〉名所之部　勝鹿浦　當國の東ニあたりて、小松といふ所に近き也、海邊也、總勝鹿の浦といふ也、續後撰戀のうたに、　勝鹿の浦間の浪の打つけに見初し人の戀しきやなぞ　眞間入江　繼橋有レ之、勝鹿よりちかし、　勝鹿や昔のまゝの繼橋をわすれずわたる春霞かな　千葉野　千葉郡のうちに有名所也　許我渡　むさしと下總との中間をながるゝ川也　霧深きこがの渡のわたしもり岸の舟かたおもふ定に　

p.1084 書卷川　こがのわたりと同じ流なり、水上をいふなり、

雜載

〔延喜式〕

〈二十八兵部〉

p.1084 諸國健兒〈〇中略〉　下總國一百五十人〈〇中略〉　諸國器仗〈〇中略〉　下總國〈甲五領、横刀十六口、弓五十張、征箭五十具、胡籙五十具、〉

〔續日本紀〕

〈三十三光仁〉

p.1084 寶龜六年三月乙未、始置二〈〇中略〉下總少目二員一、

〔類聚三代格〕

〈十六〉

p.1084 太政官符　應下造二浮橋布施屋一并置中渡船上事〈〇中略〉　一加二増渡船十六艘一〈〇中略〉下總國太日河四艘〈元二艘、今加二二艘一、〇中略〉　以前被二從二位行大納言兼皇太子傳藤原朝臣三守宣一偁、奉レ勅、如レ聞件等河、東海東山兩道之要路也、〈〇中略〉但渡船者、以二正税一買二備之一、〈〇中略〉　承和二年六月廿九日

〔萬葉集〕

〈十四東歌〉

p.1084 可豆思加乃(カツシカノ)、麻萬能宇良未乎(マヽノウラマヲ)、許具布禰能(コグフ子ノ)、布奈妣等佐和久(フナビトサワグ)、奈美多都良思母(ナミタツラシモ)、右一首下總國歌〈〇中略〉　相聞〈〇中略〉　可都思可能(カツシカノ)、麻末能手兒奈乎(ママノテコナヲ)、麻許登可聞(マコトカモ)、和禮爾餘須等布(ワレニヨストフ)、麻末乃氐胡奈乎(マヽノテコナヲ)、　可豆思賀能(カツシカノ)、麻萬能手兒奈家(マヽノテコナガ)、安里之可婆(アリシカバ)、麻末乃於須比爾(マヽノオスヒニ)、奈美毛登杼呂爾(ナミモトヾロニ)、　爾保杼里能(ニホドリノ)、可豆思加和世乎(カツシカワセヲ)、爾倍須登毛(ニヘストモ)、曾能可奈之伎乎(ソノカナシキヲ)、刀爾多氐米也母(トニタラメヤモ)、　安能於登世受(アノオトセズ)、由可牟古馬母我(ユカムコマモガ)、可都思加乃(カツシカノ)、麻末乃都藝波思(マヽノツギハシ)、夜麻受可欲波牟(ヤマズカヨハム)、　右四首下總國歌(○○○○)

〔更科日記〕

p.1084 昔下つさの國に、まのゝ長といふ人住けり、引ぬのも千むら万むらをらせさらさせけるが、家の跡とて、深き川を船にてわたる、昔の門の柱のまだ殘りたるとて、おほきなる柱、川の中

p.1085 によつたてり、人々歌よむを聞て、心のうちに、　くちもせぬ此川ばしら殘らずば昔の跡をいかでしらまし、その夜は、くろとの濱といふ所にとまる、かたつかたは、廣濱なる所の、すなごはる〴〵としろきに、松原しげりて、月いみじうあかきに、風の音も、いみじう心ぼそし、人々おかしがりて、歌よみなどするに、　まどろまじ今宵ならではいつかみんくろとの濱の秋のよの月