p.0169 出羽國ハ、デハノクニト云ヒ、舊クハ、イデハノクニト云ヘリ、東山道ニ在リテ、和銅五年越後國ノ北部及ビ陸奧國ノ一部ヲ割キテ建ツル所ナリ、明治元年、分テ羽前、羽後ノ二國トス、羽前國ハ、東ハ陸前及ビ磐城ニ界シ、西ハ南半越後ニ接シ、北半海ニ臨ミ、南ハ岩代ニ隣リ、北ハ最上川ノ下流ニヨリテ羽後ニ界セリ、東西凡ソ二十二里、南北凡ソ三十五里、其地勢ハ、四方殆ド山嶽ヲ以テ圍繞シ、最上川ハ其間ヲ北流シテ中央ノ平野ヲ貫キ、國内幾多ノ河流ヲ集メテ海ニ入ル羽後國ハ、東ハ陸前、陸中、南ハ羽前、北ハ陸奧ニ界シ、西方一帶海ニ面セリ、東西凡ソ二十五里、南北凡ソ四十九里、其地勢ハ、國ノ東部山巒連亘シ、山勢一般ニ高峻ナレドモ、西部海ニ面スル所、處々小平原ヲ見ル、 此國ハ、古ヘ國府ヲ平鹿郡ニ置キ、最上(モガミ)、村山(ムラヤマ)、置賜(オイタマ)、雄勝(ヲカチ)、平鹿(ヒラカ)、山本(ヤマモト)、飽海(アクミ)、河邊(カハノベ)、田川(タガハ)、出羽(デハ)、秋田(アイタ)ノ十
p.0170 一郡ヲ管シ、延喜ノ制上國ニ列ス、後世由利仙北ノ二郡ヲ加ヘ、出羽郡ヲ廢セリ、明治維新ノ後、羽前國ニ西置賜、東置賜、南置賜、南村山、東村山、西村山、北村山、最上、東田川、西田川ノ十郡ヲ置キ、新ニ山形、米澤ノ二市ヲ設ケ、山形縣ヲシテ羽前國ト羽後國飽海郡トヲ治セシメ、又羽後國ニ飽海、由利、雄勝、平鹿、仙北、河邊、南秋田、北秋田、山本ノ九郡ヲ置キ、新ニ秋田市ヲ設ケ、秋田縣ヲシテ、飽海郡ヲ除キタル八郡及ビ一市ヲ治セシム、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0170 出羽〈以天波〉
〔饅頭屋本節用集〕
〈天天地〉
p.0170 出羽(デハ)〈羽州〉
〔日本風土記〕
〈一寄語島名〉
p.0170 出羽〈迷外(デハ)〉
〔倭訓栞〕
〈前編三伊〉
p.0170 いでは 和名抄に見ゆ、出羽國なり、今ではと呼り、神名式に、田川郡に伊庭波神社あり、姓氏録に出庭臣あり、古へ名鷹又箭羽を出せるよりの名なるにや、神社は今所レ謂金峯山にして出羽の池あり、
〔諸國名義考〕
〈上東山道〉
p.0170 出羽 和名抄に、出羽、〈以天波、國府在二平鹿郡一、〉名義は越の道の尻、また道の奧などよりの出端ノ國なるべし、〈◯中略〉さて或書に引る風土記の文には、上古此地貢二鷲鷹之羽一、故曰二出羽一といへるは、字になづみたるがごときこゆ、
〔地勢提要〕
〈乾〉
p.0170 各國經緯度〈附里程〉 出羽野代湊、極高四十度一十二分半、經度東四度三十三分、從二東都一〈奥州街道自二白川一經二會津及金光寺村一〉一百六十七里一十六町七間半、 出羽山形、〈旅籠町〉極高三十八度一十五分、經度東四度四十四分半、從二東都一〈奥州街道自二白川一經二會津一〉九十四里三十一町三十三間、
p.0171 出羽久保田、〈馬口勞町〉極高三十九度四十二分半、經度東四度三十五分半、從二東都一〈奥州街道自二白川一經二會津一〉一百五十里二十町四十四間半、
〔日本經緯度實測〕
p.0171 北極出地 出羽 米澤 三七度五四分三〇秒 上山 三八度〇九分〇〇秒 山形 三八度一五分〇〇秒 久保田 三九度四二分三〇秒 能代湊 四〇度一二分三〇秒〈◯中略〉 東西里差 山城 京 ◯度◯◯分◯◯秒〈◯中略〉 出羽 米澤 東四度九九分四〇秒
〔古事記傳〕
〈二十七〉
p.0171 出羽はもと越後國にて、越の域なり、續紀に和銅元年九月、越後國言三新建二出羽郡一、許之、同五年九月云々、於レ是始置二出羽國一とあり、〈◯中略〉出羽國は、陸奧國の内を分て建たる國なりと云は、ひがごとなり、其は續紀に、和銅五年十月、割二陸奧國最上置賜二郡一、隷二出羽國一とあるを、心得誤れるものなり、此は越後國を分て、出羽國を建られたるうへに、陸奧國の二郡を出羽に隷られたるにこそあれ、
〔日本地誌提要〕
〈三十四羽前〉
p.0171 疆域 東ハ磐城、陸前、南ハ岩代、越後、北ハ羽後、西ハ海ニ至ル、東西貳拾貳里、南北三拾五里、
〔日本地誌提要〕
〈三十五羽後〉
p.0171 疆域 東ハ陸前、陸中、南ハ羽前、北ハ陸奧、西ハ海ニ至ル、東西凡貳拾五里、狹處壹拾九里、南北凡四拾九里、
〔日本實測録〕
〈九島嶼〉
p.0171 羽後國田川郡 遠測 辨天 タヽ島 赤石 由良島 飽海郡 遠測 飛鳥 秋田郡 遠測 宮島 マナイタ 子ブト
〔易林本節用集〕
〈下〉
p.0172 出羽、〈羽州〉上、管十二郡、東西五十日、煖氣早而耘厚、大上々國也、
〔日本地誌提要〕
〈三十四羽前〉
p.0172 形勢 山脈東南ニ綿亘シテ、岩代ノ界ヲナシ越後ニ連ル、最上川ノ左右、頗ル平曠、肥磽相半ス、田川郡獨リ漁鹽ノ利アリ〈◯中略〉氣候極暑九拾度、極寒貳拾度、
〔日本地誌提要〕
〈三十五羽後〉
p.0172 形勢 山勢陸奧ヨリ來リ、北東二方ヲ劃シ、中央ニ鬱結ス、材ヲ産スル極テ多シ、能代川北疆ニ注ギ、御物川南方ヲ貫流ス、男鹿島西方ニ突出シテ、八郞潟ヲ擁ス、地味磽薄、果穀ニ宜カラズ、沿海頗ル繁盛ノ區アリ、〈◯中略〉氣候極暑九拾貳度、極寒貳拾五度、
〔日本實測録〕
〈三街道〉
p.0172 從二磐城國白川一歴二若松一至二油川一〈◯中略〉 羽前國置賜郡綱木驛 一里一十一町三十七間〈至二ナラ坂峠一二十三丁五十七間〉 關驛 二里八町五十七間半 米澤東町、三十七度五十四分半、 二里二十一町一十三間〈至二米澤城大手前一二丁一十五間〉 糠ノ目驛 一里七町一十一間 大橋驛 三十町四間 赤湯澤 一里五町一十一間 川樋驛 一十六町 小岩澤驛 一里一町一十二間 中山驛 二十三町五十七間 村山郡川口驛 一里一十三町一十三間 上山十日町、三十八度九分、 一里一十七町五十二間半 松原驛 二里一十四間 山形旅籠町、三十八度一十九分、 三里八町一十間半 天童驛 二里一十九町四十八間 六田驛 三町二十間 宮崎驛、三十八度二十六分半、 一十四町一十間 長泥村 一十七町三十間 楯岡驛 一里一十六町七間 本飯田驛 一十六町二十間 土生田驛 一里一十二町五十八間 尾花澤驛 二里六町九間 名木澤驛 一里七町五十八間 最上郡船方驛〈又書二船形一〉 二里八町三十五間 新庄南本町、三十八度四十五分半、 三里二十五町二十七間〈至二新庄城大手前一五十一間〉 金山澤、三十八度五十二分半、 三里七町三十四間半 及位驛 三里九町四十五間〈至二雄勝峠一一里八丁五十二間〉 羽後國雄勝郡下院内驛 四里八町三十三間半 湯澤町 五里四町一十一間 平鹿郡横手 一里二十一町三十七間〈至二横手城門一前一七丁五間〉 仙北郡金澤村 一里三十町二間 六郷驛 二里八町五間
p.0173 大曲驛 二十町一十五間 花館驛、三十九度二十八分半、 一里五町五十五間 神宮寺驛 一十七町一十八間 北楢岡驛 一里二十五町二十一間 刈和野驛 二里二十二町五十四間 境驛、三十九度三十六分半、 三里三町二間 河部郡和田驛 一里三十一町一十九間 戸鳴驛 三里二町四十六間 秋田郡久保田馬口勞町、三十九度四十二分半、 一里三十三町三十六間 土崎湊、三十九度四十五分、 三里二十三町六間 大久保驛、三十九度五十二分、 一十四町五十二間 下虻川驛 二里一十九町五十九間〈至二大川宿一二里一十四丁二十三間〉 一日市驛 二里一十六町三十七間 山本郡鹿渡驛 一里二十八町四十五間 森岡驛、四十度五分半、 一十七町一十五間 豐岡驛 一十町二十二間 金光寺驛〈至二能代湊宿所一三里一十丁五十一間〉 一里三十一町四十六間半 檜山驛 一里一十四町五十六間 鶴形驛 一里一十五町四間 飛根驛、四十度一十三分、 二里九町五十五間 荷揚場驛 一十九町五十八間半 秋田郡小繁驛 一里一十九町三十四間〈至二今泉驛一三十一丁四十五間〉 前山驛 一里二十三町三十一間 綴子驛、四十度一十五分、 二里三十四町二十八間 川口驛 一里二十五町九間 大館町 一里九町三十三間 釋迦内驛 五里三十一町三十九間半〈至二國界矢立峠一四里二十二丁三十九間半〉 陸奧國津輕郡碇關驛
〔日本實測録〕
〈一沿海〉
p.0173 從二鞠山一〈本敦賀〉沿海至二三廐一〈◯中略〉 羽後國田川郡鼠ケ關 三里一十七町三十五間半 五十川村鈴村 五里一十九町三十五間半〈至二三瀬村一二里三十一町四十三間半〉 加茂村、三十八度四十五分、 五里二十一間〈至二濱中村一二里六町五十三間〉飽海(アクミ)郡酒田湊最上川口〈沿川至二酒田湊一二十三町一十三間〉 四里三十三町三十九間〈至二青塚村一二里一十七町廿四間半〉 吹浦村、三十九度四分半、四里八町一十二間 由利郡鹽越村休石〈至二象潟迫門口一徑測一十九町四十八間〉 一十七町四十七間 同大町、三十九度一十三分、 二町四十七間 同迫門口〈象潟廻一里二十四町三十九間〉 三里一十一町四十五間半〈至二金浦村一一里一十九町二間半〉 平澤村 三里五十四間〈至二出戸村一一里二十一町二十四間半〉 本庄古雪川口〈至二本庄中町一三十町三十七間〉 三里五
p.0174 町三十七間 松ケ崎村 三里二十五町四十九間半〈至二道川村一一里一十七町五十八間半〉 長濱村、三十九度三十七分半 三里二十五町三十五間〈至二土崎川南岸一三里廿四町五間半〉 秋田郡土崎湊口〈至二土崎湊一一十七町五十二間〉 四里三十二町四間 船越村、三十九度五十四分、〈歴二金川村一至二小濱村一五里二十六町五十七間半〉 二里一十六町四間 鵜木村、三十九度五十七分半、 一里二十五町四十二間 野石村宮澤、四十度一分半、 二十一町三十四間 同宮澤濱〈歴二相川村一至二青砂村一一十一里七町二十四間〉 二里一十九町五十三間 山本郡濱田村濱〈至二濱田村一一十七町三十間〉 二里二十八町四十六間 能代濱、〈沿レ川至二能代湊一、二十三町一十二間〉四十度一十二分半、 三里一十二町三十二間〈至二米代川口一一十一町〉 八森濱、〈至二八森宿所一四町五十七間〉四十度二十分、 二里二十二町一十八間 岩館村、四十度二十四分、 二里三十四町四十五間〈至二國界一一里一十町三十四間〉 陸奧國津輕郡大間越村
〔延喜式〕
〈二十八兵部〉
p.0174 諸國驛傳馬〈◯中略〉 出羽國驛馬、〈最上十五疋、村山、野後各十疋、避翼十二疋、佐藝四疋、船十隻、遊佐十疋、蚶方、由理各十二疋、白谷七疋、飽海、秋田各十疋、〉傳馬、〈最上五疋、野後三疋、船五隻、由理六疋、避翼一疋、船六隻、白谷三疋、船五隻、〉
〔續日本紀〕
〈十二聖武〉
p.0174 天平九年四月戊午、遣二陸奧持節大使從三位藤原朝臣麻呂等一言、〈◯中略〉從二部内色麻柵一發、即日到二出羽國大室驛(○○○)一、
〔續日本紀〕
〈二十二淳仁〉
p.0174 天平寶字三年九月己丑、始置二出羽國雄勝平鹿二郡、玉野、避翼、平戈、横河、雄勝、助河〈◯中略〉等驛家一、
〔日本國郡沿革考〕
〈二東山道〉
p.0174 出羽 和同元年九月、越後國置二出羽郡一、五年九月、昇爲レ國、冬十月割二陸奧國最上置賜二郡一隸二出羽國一、後復割二陸奧國齶田渟代二郡一隸、〈未レ詳二其歳月一〉上國、管十二郡、〈延喜式等十一郡〉二千四百四十五村、 置賜(オイタマ/オイタミ)〈二百六十村〉 田川〈三百八十六村〉 飽海〈二百六十七村〉 村山〈四百三十村 仁和二年十一月、分二最上郡一置〉 最上〈百二十八村〉 秋田〈二百八十三村 齊明四年四月、定置二齶田郡一即是、或作二飽田一、後更爲レ城、延暦二十三年十一月、停二秋田城一爲レ郡、出羽國言、秋田城建置以來四十四年、大地〉
p.0175 〈磽确、不レ宜二孤居一、北隅無二隣相救一、伏望、永從二停廢一、和名抄云、有レ城謂二企治一、 蒲生秀實曰、古有二出羽栅一、和同二年令三諸國運二兵器于出羽栅一、爲レ征二蝦夷一也天平五年十二月、徙二置出羽栅于秋田村高清水之岡一、蓋有レ議未レ徙、至二寶字三四年一而徙焉、延暦廢城爲レ郡、厥後復置二秋田城一、未レ詳レ在二何世一、按最後置城之時、非二復廢一レ郡、以三今所二治稱可レ知也、〉 河邊( /カハノベ)〈五十三村〉 雄勝( /ヲカチ)〈八十六村 或作二男勝一、天平五年十二月、於二雄勝村一建レ郡居レ民焉、和名抄云、有レ城、謂二之答合一、〉 山本〈七十六村〉 平鹿〈百九村古國府〉 由利〈百九十二村 延喜式等不レ載、置未レ詳レ在二何時一、〉 仙北〈百七十五村同上〉 出羽〈延喜式等載、後廢、未レ詳レ在二何時一、〉
〔日本地誌提要〕
〈三十四羽前〉
p.0175 沿革 羽前羽後、本出羽州タリ、和銅中、陸奧越後ヲ分テ出羽ヲ置キ、國府ヲ出羽郡井口ニ建ツ、〈府址、今田川郡廣野新田村ニアリト云、〉天平寶字中、秋田城ヲ築キ、〈秋田郡秋田村ニ築ク、今久保田飯島ノ間ニ故址アリ、〉州ノ守介ヲ以テ之ヲ兼子、秋田城介ト云、康平中、州人清原武則、陸奧守源頼義ニ從テ安倍貞任ヲ平ラゲ、鎭守府將軍ニ任ズ、寛治中、其子武衡、從子家衡ト共ニ金澤〈仙北郡〉ニ據テ亂ヲ作ス、陸奧守源義家擊テ之ヲ平ラゲ、藤原清衡ヲ以テ陸奧出羽ノ押領使トナシ、其子孫終ニ本州ヲ攘有ス源頼朝東征シ、葛西清重ヲ以テ奧羽ノ奉行トナシ、其將小野寺武藤二氏ヲシテ邑ヲ州内ニ食マシム、將軍實朝ノ時、安達景盛城介ヲ以テ州事ヲ知り、孫泰盛ニ至リ、北條貞時ノ爲ニ滅セラル、建武中興、參議葉室光顯ヲ以テ國司ニ任ズ、足利尊氏ノ反スル、州人多ク之ニ應ジ、光顯戰沒ス、尊氏族弟家兼ノ子兼頼ヲシテ最上郡山形ニ鎭セシメ、〈今村山郡ニ屬ス〉子孫州事ヲ知ル、是ヲ最上氏トナス、元中ノ初、伊達氏長井廣房ヲ滅シテ置賜郡ヲ取、〈天文中、伊達晴宗徙テ同郡米澤ニ居、〉八年、將軍義滿、本州ヲ以テ關東管領足利氏滿ニ隸セシム、應永中、安東庶(モロ)季〈安倍貞任ノ裔〉陸奧ヨリ入リ、秋田城ヲ取テ之ニ據ル、是ヲ秋田氏トナス、永享ノ末、管領亡ビ、最上〈村山最上二郡〉秋田〈秋田山本二郡〉莊内ノ武藤氏、〈田川飽海二郡〉仙北ノ小野寺氏等、〈仙北雄勝平鹿三郡〉疆壤ヲ爭フ者數十年、天文永祿ノ際、小野寺氏漸ク盛ニシテ、由利ノ十二黨、〈大井大江諸氏是ナリ〉及六郷戸澤諸氏〈六郷仙北郡六郷ノ地頭戸澤同郡角館ニ居ル〉ヲ脅制シテ一時ニ雄タリ、天正中、最上義光(アキ)、小野寺氏ノ地ヲ略シ、武藤氏ヲ滅シ、莊内三郡ヲ取、俄ニシテ上杉氏來襲テ莊内ヲ奪フ、十九年、豐臣氏東征、伊達氏ノ置賜郡ヲ削リ、之ヲ蒲生氏郷ニ賜フ、後蒲生氏ヲ宇都宮ニ
p.0176 徙シ、上杉景勝ニ賜フ、關原役畢リ、徳川氏景勝ノ封ヲ削リ、僅ニ米澤ヲ賜ヒ、小野寺義道ノ地ヲ收メ、秋田六郷戸澤等ノ封ヲ徙シ、莊内三郡及仙北ヲ以テ義光ニ加賜シ、佐竹義宣ヲ秋田、〈又久保田ト稱ス〉ニ徙封シ、六郡ヲ領セシム、元和中、最上氏ノ地ヲ削テ近江ニ徙シ、山形ヲ以テ鳥居忠政ニ賜ヒ、〈後易封數氏、最後ニ水野忠精ヲ封ズ、〉酒井忠勝ヲ鶴岡、六郷政乘ヲ本莊、戸澤政盛ヲ新莊、岩城吉隆ヲ龜田ニ封ズ、其後前後封ヲ受ル者、上山(カミノヤマ)、〈初松平重忠、後松平信通、〉高畠、〈織田信浮、後天童ニ徙ル、〉長瀞(ナガトロ)〈米津通政、武藏久喜ヨリ徙ル、〉トナス、上杉、佐竹、酒井支封各一、米澤新田、〈上杉綱憲ノ第三子勝周〉秋田新田、〈佐竹義隆ノ第二子義長、後岩崎ト稱ス、〉松山、〈酒井忠勝ノ第二子忠恒〉凡テ十三藩、明治紀元、米澤、〈上杉齊憲〉鶴岡、〈酒井忠篤〉上山〈松平信庸〉等、皆若松藩ノ黨援タルヲ以テ削封差アリ、全州ヲ分テ羽前羽後ノ二州トス、羽前八藩、〈米澤、鶴岡、山形、新莊、上ノ山、天童、長瀞、米澤、新田、〉鶴岡藩ヲ若松ニ徙シ、尋デ復封シテ大泉ト稱ス、長瀞藩ヲ上總ノ大網ニ徙シ、〈尋デ常陸の龍崎ニ徙ル〉山形藩亦近江ニ從リ、山形縣ヲ置、旣ニシテ皆廢シテ縣ト爲シ、更ニ合併シテ山形置賜二縣ヲ置、 羽後五藩、〈秋田、松山、本莊、岩崎、龜田、〉矢島ノ生駒親敬新ニ藩屏ニ列シ、松山ヲ改テ松嶺ト稱シ、凡テ六藩、旣ニシテ皆廢シテ縣ト爲シ、又合併シテ秋田酒田二縣ヲ置、
〔續日本紀〕
〈五元明〉
p.0176 和銅五年九月己丑、太政官議奏曰、建レ國辟レ疆、武功所レ貴、設レ官撫レ民、文教所レ崇、其北道蝦狄、遠憑二阻險一、實縱二狂心一、屢驚二邊境一、自二官軍雷擊一、凶賊霧消、狄部晏然、皇民無レ擾、誠望、便乘二時機一、遂置二一國一、式樹二司宰一、永鎭二百姓一、奏可之、於レ是始置二出羽國一、
〔日本書紀〕
〈二十六齊明〉
p.0176 元年七月己卯、於二難波朝一饗二北(○)〈北越〉蝦夷(○○)九十九人、東〈東陸奥〉蝦夷九十五人、并設百濟調使一百五十人一、仍授二柵養蝦夷九人津刈蝦夷六人冠各二階一、
〔古事記傳〕
〈二十七〉
p.0176 北ノ蝦夷とは、越國に在者、東ノ蝦夷とは、陸奧に在者を云、さるは越國にも、陸奧の如く、北邊には蝦夷渡來て、多く居住りしなり、越ノ北邊とは出羽國の地なり、〈◯中略〉されば越蝦夷と云は、出羽の地に在し者を云なり、
〔先代舊事本紀〕
〈十國造〉
p.0177 出羽國造 諾羅朝〈◯元明〉御世、和銅五年割二陸奧越後二國一始置二此國一也、
〔續日本紀〕
〈四元明〉
p.0177 和銅元年九月丙戌、越後國言、新建二出羽郡(○○○)一許之、
〔續日本紀〕
〈五元明〉
p.0177 和銅五年十月丁酉朔、割二陸奧國最上置賜二郡一隸二出羽國一焉、
〔續日本紀〕
〈七元正〉
p.0177 靈龜二年九月乙未、從三位中納言巨勢朝臣萬呂言、建二出羽國一已經二數年一、吏民少稀、狄徒未レ馴、其地膏膄、田野廣寛、請令下隨近國民遷二於出羽國一、教二喩狂狄一兼保中地利上、許之、因以二陸奧置賜最上二郡、及信濃、上野、越前、越後、四國百姓各百戸一隸二出羽國一焉、
〔類聚三代格〕
〈五〉
p.0177 太政官符 應レ置二陰陽師一員一事 右得二出羽國解一偁、太政官、去年六月十一日符偁、國解偁、邊要之事、備レ豫爲レ本、不虞之儲、知レ機爲レ先〈◯先原作レ元、據二一本一改〉此國與二陸奧一共爲二邊戎一、雖下復國有二大少一官員有中降差上、而至レ決二嫌疑一、何彼有此無也、假令國内非レ無二恠異一、占二候吉凶一、曾無二其人一、望請永減二史生員一、殊置二陰陽師一、謹請二官栽一者、右大臣宣、奉レ勅依レ請者、而今雜務繁多、官員減少、望請不レ省二史生一、殊〈◯殊原脱、據二一本一補、〉置二件員一、但考選俸料准二博士醫師一者、同宣、奉レ勅依レ請、 嘉祥四年二月廿一日
〔羽奧永慶軍記〕
〈一〉
p.0177 奧州兵亂之起ノ事 陸奧出羽ノ兩州數代斷二鎭守府按察使ヲ一得テ、天文ノ比ニハ國司探題ノ人モナケレバ、兩國ノ武家我意ニ任ゼズトイフ事ナシ、〈◯中略〉羽州ニハ、最上、天童、大梵字、武藤ノ一族、北國ノ一黨、山北ニ小野寺、六郷、楢岡、角館、秋田ニ城介、淺利、久平、由利ニ十二黨、或時ハ舊好ノ交ヲ結ビ、或時ハ怨敵ノウラミヲ構フ、
〔憲法類編〕
〈十國郡府縣〉
p.0177 奧羽兩國ヲ七國ニ分國ノ事
p.0178 戊辰〈◯明治元年〉十二月七日御布告 奧羽兩國ハ、嚝漠僻遠之地ニシテ、古來ヨリ教化洽ク難二敷及一儀モ有レ之候ニ付、今般兩國御取調之上、府縣被二設置一、廣ク教化ヲ施シ、風俗移易、人民撫育之道、厚ク御手ヲ被レ爲レ盡度思食ヲ以テ、〈◯中略〉出羽國ヲ、羽前羽後ト二國ニ分國被二仰付一候條、此旨可二相心得一事、〈◯中略〉 羽前國 一高二十一萬六千百六十一石二斗二升二勺三才 置賜郡 一高三十六萬六千百四十七石一斗三升五合九勺七才 村山郡 一高六萬二千三百八十七石四斗五升三合八勺 最上郡 一高十五萬九千八百七十三石八斗八升三合七勺四才 田川郡 右四郡 高合八十萬四千五百六十九石六斗九升三合七勺四才 羽後國 一高二十三萬四千三百二石三斗五升六合一勺四才 飽海郡 一高八萬四千七百十九石九斗六升 秋田郡 一高二萬二千八十三石一斗五升四合 河邊郡 一高九萬三千六百十一石七斗九升四合 仙北郡 一高五萬四千八百三十六石七斗六合 雄勝郡 一高二萬八千四百五十三石六升三合 山本郡 一高五萬九千九百五十石二斗九升二合 平鹿郡 一高七萬二千六百七十石三斗八升六合三勺 由利郡 右八郡 高合六十五萬六百二十七石七斗一升一合四勺四才
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0178 出羽國〈國府在二平鹿郡一、行程上四十七日、下二十四日、〉
〔續日本紀〕
〈三十三光仁〉
p.0178 寶龜六年十月癸酉、出羽國言、蝦夷餘燼猶未二平殄一、三年之間、請二鎭兵九百六十六人一、且鎭二要害一、且遷二國府一、勅差二相模武藏上野下野四國兵士一發遣、
〔三代實録〕
〈五十光孝〉
p.0178 仁和三年五月二十日癸巳、先レ是出羽守從五位下坂上大宿禰茂樹上言、國府在二出羽
p.0179 郡井口地一、即是去延暦年中、陸奧守從五位上小野朝臣岑守、據二大將軍從三位坂上大宿禰田村麻呂論奏一所レ建也、去嘉祥三年地大震動、形勢變改、旣成二雲泥一、加之海水漲移迫二府六里所一、大川崩壤、法レ湟一町餘、兩端受レ害無レ力二隄、〈◯隄原脱、據二一本一補、〉塞一、湮沒之期在二於旦暮一、望請、遷二建最上郡大山郷保寶士野一、據其險固一避二彼危殆一者、太政大臣、右大臣、中納言兼左衞門督源朝臣能有、參議左大辨兼行勘解由長官文章博士橘朝臣廣相、於二左仗頭一、召二民部大輔惟良宿禰高尚、大膳大夫小野朝臣春風、左京亮藤原朝臣高松等一、問下被レ遷二國府一之利害上、所レ言參差、同異難レ定、更召二伊豫守藤原朝臣保則一、以二高尚等詞一、問レ之、保則言、國司所レ請、非レ无二理致一、保則高尚等元任二彼國吏一、應レ知二土地之形勝一、故召二問之一、太政官因二國宰解状一、討二覈事情一曰、避レ水遷レ府之議、雖レ得二其宜一、去レ中出レ外之謀、未レ見二〈◯謀未見原作二固因一、據二一本一改、〉其便一、何者最上郡地在二國南邊一、有レ山而隔、自レ河而通、夏水浮レ舟、纔〈◯纔原作レ終、據二一本一改、〉有二運漕之利一、寒風結レ凍、曾无二向レ路之期一、况復秋田雄勝城相去已遙、烽候不レ接、又擧二納秋饗一、國司上下、必有二分頭一、入レ部率レ衆、若赴二沼水一、而後泝二水面一、還有二徴發之煩一、更倍二於尋常一、運送之費、將レ加二於黎庶一、晏然无事之時、縱能兼濟警レ急、不虞之日何得二周施一、以レ此論レ之、南遷之事難レ可二聽許一、須擇二舊府近側高敞之地一、閑月遷造、不レ妨二農務一、用二其舊材一、勿レ勞二新採一、官帳之數不レ得二増減一、勅宜下依二官議一早令上レ行レ之、
〔最上系圖〕
p.0179 兼頼〈修理大夫 出羽按察使、延文元丙申年八月六日、出羽國最上 郡府中山形(○○○○)入部、康暦元年六月八日卒、◯下略〉
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0179 出羽國〈◯註略〉管十一〈◯註略〉最上〈毛加美〉村山〈牟良夜末〉置賜〈於伊太三〉雄勝〈乎加知、有レ城謂二之答合一、〉平鹿〈比良加〉山本〈也末毛止〉飽海〈阿久三〉河邊〈加波乃倍〉田川〈多加波〉出羽〈國府〉秋田〈阿伊太、有レ城、企治、〉
〔延喜式〕
〈二十二民部〉
p.0179 出羽國、上、〈管 最上(モカミ) 村山(ムラヤマ) 置賜(オイタマ) 雄勝(ヲカチ) 平鹿(ヒラカ) 山本(ヤマモト) 飽海(アクミ) 河邊(カハノヘ) 田川(タカハ) 出羽 秋田〉 右爲二遠國一
〔和漢三才圖會〕
〈六十五出羽〉
p.0179 十二郡〈◯中略〉 元明天皇和銅五年、割二陸奧越後二國一爲二出羽一、延喜式倭名抄並爲二十一郡一、後加二増由利郡一(○○○)爲二十二一、
〔出羽國風土略記〕
〈一〉
p.0180 出羽國〈◯中略〉類聚抄又近年開板の節用等にも上管拾二郡とす、延喜式に所レ謂拾一郡に由利を加へて拾二郡也、庄内物語を引て云、出羽拾二郡は、田河、飽海、河邊、村山、置賜、雄勝、平鹿、秋田、最上、山本、仙北、由利、出羽府、今通じて斯のごとくいへれど、出羽府といふを合すれば拾三郡なる事を訝る、古への節用集にも、右の十三所を擧て拾三郡と書る有、近年開板の節用には、仙北を除て拾二郡とす、國史を考れば、仙北は古へ山北と書て郡名とは見へず、三代實録元慶四年二月二日、先レ是出羽國云、管諸軍中山北雄勝平賀山本三郡、遠く去二國府一、近く接二賊地一云々、山北は郡名にあらざる故に、三郡とは書しなるべし、郡名ならば四郡と書べき所也、
〔皇國郡名志〕
p.0180 出羽國〈舊十一郡 今十二郡〉 最上(モカミ) 〈新庄 ●金山 ●舟方 ●清水 ●相貝 ＜板シキ越 奥界〉 村山(ムラヤマ) 〈山形 ●關根 ●天童 ●立岡 ●古口 ●砂地 ●海鹽 ●川口 ●長崎 上山 △最上川 奥界 置賜(オイタマ) 〈米澤 ●關 ●粕目 ●赤湯 ●小岩澤 ●萩生 ●小坂 ●口澤 ●玉川 △カノ岡文珠 奥越後界〉 雄勝(ヲカツ) 〈●院内 ●湯澤 △小野小町古跡 奥界〉 平鹿(ヒラカ)〈＜横手 國中山テ小郡〉 山本(ヤマモト) 〈＜角館 ＜生保内 ●金澤 ●六郷 ●大田 ●刈和野 ●田澤 ●上檜 奥界〉 飽海(アクミ) 〈庄内鶴ケ岡 ＜田菱畑 ●志津 ●丸岡 ●清川 ●山寺 松山 ●坂田 ●小砂川 ●吹浦 △湯殿、月山、羽黒、△鳥海山 西海向〉 豐島(トヨシマ) 〈●堺 國中山ニテ小郡〉 田河(タカハ) ●尾國 ●鼠崎 海端ノ小郡〉 秋田(アイタ) 〈久保田 ●大久保 ●森岡 ●篠館 ＜大館 ●小繫 ●荷上場 ●綴子 ●今泉 ●男鹿島 西海出崎郡 檜原(ヒハラ) ＜野代 ●鶴形 ●八森 ●岩館 奥界西海ニ向〉 由利(ユリ) 〈本庄 ＜龜田 ●汐越 ●芹田 ●松崎 ●長濱 ●百三端 西海ニ向 〈今増二檜原由利二郡一、舊有二出羽郡一今省之、豐島一名曰河邊郡〉 ◯按ズルニ、本書及ビ次下ノ郡名異同一覽ノ符號ハ、山城國篇郡條ニ引ク所ノ、二書ノ凡例ヲ參照スベシ、
〔郡名異同一覽〕
〔出羽國風土略記〕
〈十最上郡〉
p.0183 當郡は大郡にして、もとは奧州の内也、和銅年中、當國に屬す、東の方は山にして、奧州仙臺領に隣、南には村上郡有、西は飽海郡にして、最上河流下る、北は由利矢島領に隣、四方重山連也、山を以て境とす、地理を見るに、當郡仙北數郡の上に有故に、最上とは稱しけるにや、〈物を稱して最上といふ事數多あり◯中略〉當郷村等の事未レ考、高六万八千貳百石、戸澤上總介殿代々領レ之、郡中の大邑を新庄といふ、又奧州境の方に西新庄といふ有、新庄よりは東の方也、奧州よりは西也、是を以て考れば、古陸奧に屬したる頃、是に對する庄有レ之、新庄とは云けるにや、
〔續日本紀〕
〈十二聖武〉
p.0183 天平九年四月戊午、遣陸奧持節大使從三位藤原朝臣麻呂等言、〈◯中略〉從二賀美郡一至二出羽國最上郡玉野一八十里、雖二總是山野、形勝險阻一、而人馬往還、無二大艱難一、
〔出羽國風土略記〕
〈十村山郡〉
p.0183 最上郡の南に有、村山の東の方奧州仙臺に隣る、小坂峠不動の手前に大木有、是を奧羽の境とす、西には越後と、當國の田河郡あり、北は新庄領也、四方各山を以境す、大郡にして四十万石餘有、此内御公料あり、御私領六ケ所有、上の山領、山形領、松山領、〈飽海郡〉肥前島原領、宇都宮領、奧州棚倉領是也、三代實録四十九卷、仁和二年十一月十一日丙戌勅に、出羽國最上郡爲レ二といふは、當郡の事也、延喜式二十二卷、仁和二年十二月十一日條下に、分二最上郡一置二村山郡一と有、同驛馬の條下を見るに、村山はもと一ケ村の名にして、驛路と見へたり、山に始て村を建たる
p.0184 所にして、一郡の名に用ひける成べし、今山形の四方十里程の間を最上郡とす、又最上郡北と書たるもの數多有、村山郡と改稱の後も、土人呼馴たるは最上郡ともとなへ來りしにや、八九十年以前には、十が七ツ最上郡といふ、村山郡と書たる者也、百十四年前慶安元年、山形の兩所權現へ被レ下たる御朱印にも、最上郡と有、又寛文五年の御朱印にも最上郡と有、貞享年中より始て村山郡山形兩所權現と被二下置一けるとぞ、貞享以來は、別て文明の世と成、國史も開板せられ、遠國迄も流布侍れば、分二最上郡一置二村山郡一と有るを勘合せられし人有レ之、御朱印にも村山郡と書改し成べし、三代實録五十卷、仁和三年四月二十日條下に、最上郡大山郷保室志野と有、〈上下略、但先定と有は、當時の事にあらず、仁和二年より先の事にて、村山と改ざる前の事と見へたり、〉此野に出羽府を移さんと、國司より奏したる所也、然れ共勅許なかりき、其文第一卷に記す、其文中に、最上郡地在二國南邊一、有レ山而隔、自レ河而通と有、是は出羽郡の府より、大山郷の方角をさしたる詞也、山形の地、出羽府より南に當り、地理方角國史に符合す、又當方山ノ字を以名とせし所多し、村上、上ノ山、山形等是なり、予〈◯進藤和泉〉按に往古は大山郷と書しを、後に山縣と稱し、又山形と轉訛せしにや、
〔延喜式〕
〈二十二民部〉
p.0184 出羽國 仁和二年十一月十一日、分二最上郡一置二村山郡一、(頭註)
〔三代實録〕
〈四十九光孝〉
p.0184 仁和二年十一月十一日丙戌、勅分二出羽國最上郡一爲レ二、
〔奧羽觀跡聞老志〕
〈十三羽州〉
p.0184 村上郡 此地、乃古之河邊郡也、上山、山形、延澤城地、並藏王、熊野、大鳥、朝日山岳、及宿世山、千年山、阿古耶松、關山、立石寺等在二此郡中一、
〔出羽國風土略記〕
〈十置賜郡〉
p.0184 村山郡の南に有、東は奧州桑折領を隣とす、南に奧州會津有、西は越後に當る、西北へ入込て下永井郡といふ有、置賜郡の内にして、地は奧州に屬す、當郡上古は陸奧の内
p.0185 也、和銅五年十月より當國に屬す、此事續日本紀に見へたり、
〔出羽國風土略記〕
〈九雄勝郡〉
p.0185 河邊郡の南に有、山を境とも、俗仙北といふ、仙北の事愚考第一卷にしるす、雄勝は元一ケ村の名也、〈義經記、康平元年軍の事を引侍る條下に、源氏續せめ給ひしかば、おかしの山を打越てといふは、雄勝の事とぞ、吉野本におかちと有よし、義經記大全に見へたり、〉
〔續日本紀〕
〈十一聖武〉
p.0185 天平五年十二月己未、出羽柵遷置二於秋田村高清水岡一、又於二雄勝村一建レ郡居レ民焉、
〔續日本紀〕
〈三十七桓武〉
p.0185 延暦二年六月丙午朔、出羽國言、寶龜十一年、雄勝平鹿二郡百姓爲レ賊所レ略、各失二本業一、彫弊已甚、更建二郡府一招二集散民一、雖レ給二口田一、未レ得二休息一、因レ玆不レ堪レ備二進調庸一、望請蒙二給優復一、將息二弊民一、勅給レ復三年、
〔出羽國風土略記〕
〈九平鹿郡〉
p.0185 河邊郡の東、雄勝の下に在て、秋田河の水上なり、和名抄に國府あり、平鹿郡行程四十七日下二十四日云々、三代實録國府在二出羽郡一といふ事、第一卷に記す、和名抄の趣誤也、延喜式二十四卷、出羽國行程上四十七日、下二十四日、海路五十日と有、是出羽府よりの行程といふ、上下の日數不同の事は、上には東海道、下には北國と定めけるにや、海路五十二日と有は、船路の日和を待て日數を經る故成べし、和爾雅、出羽國名所の内に、平鹿とあり、又國名風土記に、平鹿鷹と有、國史を見るに、當國に官人を置れし事度々なれども、當郡にも官人の居館有て、名を負ひし所と見えたり、庄内物語に、田河郡大山城主武藤家、代々田河飽海平鹿の三郡を領すと有、田河飽海を領せられし事は、誰も能知る事也、平鹿郡を領せられし事は未レ考、
〔續日本紀〕
〈二十二淳仁〉
p.0185 天平寶字三年九月己丑、始置二出羽國雄勝平鹿二郡、玉野〈◯中略〉等驛家一、
〔出羽國風土略記〕
〈九山本郡〉
p.0185 秋田郡の東北に有、〈◯中略〉上古は渟代郡の内成べし、地理を見るに、當郡は高岳山によれり、故に山本郡といふ成べし、
〔出羽國風土略記〕
〈九仙北郡〉
p.0185 村數百七十二ケ村、當郡に馬蛭嶽とて高山有、土人鬼住山といふ、
p.0186 按に、仙北の二字、雄勝平鹿山本三郡の總號にして、往古一郡の名に非る事、第一卷并前件にも記し、土人に聞に、寛文四年辰山本郡を仙北と改といへども、東鑑文治元年條に、出羽國山本郡と有ば、郡名に用たる事も近代の事とは不レ見、但近年米澤上杉家より寫し出たる國繪圖を見るに、當郡を山本郡と記し、〈土人寛文年中、山本郡を仙北と改といふも、此説によれば據有に似たり、仙北郡といふ事、上杉家の國繪圖には見へず、〉今の山本郡をば檜山郡と記す、檜山は郷名にして郡名にはあらず、是のみならず郷名を郡名にしたる所二三ケ所有、
〔出羽國風土略記〕
〈一〉
p.0186 出羽國〈◯中略〉國史を考れば、仙北は古山北と書て、郡名とは見へず、三代實録元慶四年二月二日、先レ是出羽國云、管諸軍中、山北雄勝、平賀、山本三郡、遠去二國府一、近接二賊地一云々、山北は郡名にあらざる故に、三郡とは書しなるべし、郡名ならば四郡と書べき所也、〈◯中略〉土民、庄内三郡と言るも據有に似たり、國府より北に當て鳥海山有、〈◯中略〉雄勝、平鹿、山本三郡は鳥海山の後にして、國府より北に當るが故に、山北とは稱したるにや、又出羽は、東山道の内にて、三郡は北にあたれば山北といひしにや、近年開板の節用集に、山北を郡數に入ざる事、三代實録に叶へり、但東鑑十卷、文治元年正月の條下に、出羽國山北郡とあり、又千福山本共あり、先年彼地の土人より來る文に、仙北平鹿郡とあり、
〔三代實録〕
〈三十四陽成〉
p.0186 元慶二年七月十日癸卯、出羽國飛驛奏曰、〈◯中略〉其雄勝城承二十道之大衝一也、國之要害尤在二此地一、仍遣二左馬大允藤原滋實、左近衞將曹兼權大目茨田直觀額等一、以二雄平鹿山本(○○)三郡不動穀一、給二郡内及添河霜別助川三村俘囚一、慰二喩其心一、令二相励勉一、〈◯下略〉
〔三代實録〕
〈三十七陽成〉
p.0186 元慶四年二月廿五日己酉、先レ是出羽國言、管諸郡中、山北雄勝平鹿山本三郡、遠去二國府一、近接二賊地一、〈◯下略〉
〔郡名考〕
p.0186 出羽 飽海〈アクミ アタミ〉
〔出羽國風土略記〕
〈五飽海郡〉
p.0187 田河郡の北にあり、東北は山也、西は海也、南は大河有、兩郡の境也、〈◯中略〉郡中遊佐若瀬平田迚三郷有、郡中の大村を酒田といふ、万民出て用を達す、家數六千餘有、
〔郡名考〕
p.0187 出羽 河邊〈ノヘト計 カハノヘ カハヘ〉
〔出羽國風土略記〕
〈八河邊郡〉
p.0187 小郡也、秋田郡を裂別たる所にや、五國史等に當郡之事跡不レ詳、延喜式第二十二卷、出羽國上管十一郡之内に河邊と有、平鹿郡〈南之方〉より流出る河有、郡の内を流て、北の方秋田領へ流入、郡民河の兩端に居を構たる地成故に、河邊郡といふ成べし、河筋當郡を過ては秋田河といふ河上は南也、下は秋田也、三代實録、陽成天皇元慶二年、夷賊討伐之爲に、官兵を下し給ふ條下に、凡秋田、河南、拒二賊川北一と有、川南は河邊、川北は秋田也、河邊共秋田殿領也、其内龜田殿領一ケ村有、向野村といふ、龜田領猶田村の下に北山村といふ有、河邊郡に屬す、戸島村〈新庄領堺村へ四り久保田へ三り有〉佐竹殿御上下の節、山宿の殿舍有、
〔續日本紀〕
〈三十六光仁〉
p.0187 寶龜十一年八月乙卯、出羽國鎭狄將軍安倍朝臣家麻呂等言、〈◯中略〉寶龜之初、國司言、秋田難レ保、河〈◯河原作レ阿、據二一本一改〉邊易レ治者、當時之議、依レ治二河邊一、然今積以二歳月一、尚未二移徙一、以レ此言之、百姓重レ遷明矣、宜下存二此情一歴二問狄俘并百姓等一、具言中彼此利害上、
〔出羽國風土略記〕
〈一〉
p.0187 出羽の號、後に國號と成し以來、出羽郡(○○○)を田河郡(○○○)と改稱せしと見へたり、藤島組の内に古郡村といふ有、新郡に對する名にや、此所羽黒山に近し、羽黒は伊氐波の神社也、伊氐波は出羽の万葉書也、此神延喜式に田河郡に屬す、是改稱の證據か、又此邊に越後京田といふ邑在、出羽郡は古へ越後の内なりし故、斯る名も殘りしにや、
〔出羽國風土略記〕
〈二田川郡〉
p.0187 當時二十二組あり、内五組は御公料也、所レ謂二十二組は、田川組、京田組、本郷組、青龍寺組、島組、田澤組、黒川組、由良組、温海組、淀河組、加茂組、横山組、藤島組、添河組、狩河組、清川組以上、〈酒井左衞門尉殿領地也、組々に大庄屋有、〉松山組、〈酒井石見守殿領知也〉余目組、上余目組、下余目組、丸岡組、大山組、〈余目以下五組〉
p.0188 〈御公料也、其内船料も有、末に記、〉以上二十二組也、是を五通とす、京田通、山濱通、稀川通、中河通、狩川通是なり、〈◯中略〉羽源記五卷、東朝日山軍酒内出張の條下に、飽海田川三庄三郡の兵共と有、三郡といふは、近代は田川櫛引(○○)、飽海三郡とも云り、慶長四年、飽海觀音寺殿、小助河への書状にも、櫛引郡と有、
〔續日本紀〕
〈四元明〉
p.0188 和銅元年九月丙戌、越後國言、新建二出羽郡一、許之、
〔續日本後紀〕
〈八仁明〉
p.0188 承和六年十月乙丑、出羽國言、去八月廿九日、管田川郡司解偁、此郡西濱達レ府之程五十餘里、本自無レ石、而從二月三日一、霖雨無レ止、雷電鬪聲、經二十餘日一乃見二晴天一、時向二海畔一自然隕石、其數不レ少、或似レ鏃、或似レ鋒、或白、或黒或青赤、凡厥状體鋭、皆向レ西、莖則向レ東、詢二于故老一、所レ未二曾見一、〈◯下略〉
〔郡名考〕
p.0188 出羽 秋田〈アイタ アキタ〉
〔出羽國風土記〕
〈九秋田郡〉
p.0188 河邊郡の東にして、東に大平山といふあり、此山の後より北に當て山本郡あり、太平山より秋田郡中へ流出る川あり、北出河といふ、見二國史一、上古は、齶田、或飽田、秋田とも書り、出羽國の號未レ出以前の大郡にして、東蝦共稱し、陸奧とも一國成りしと見へたり、以二國史地理を一按に、河邊由利飽海等は當郡の内成べし、古へ此邊無二五穀一、蝦夷漸王化なれて、初て水田を發、稻を植たる所より、飽田秋田ともいふ名出しにや、齶或秋の字を書たるは、和訓イトキト横音通るを以書たる成べし、
〔日本書紀〕
〈二十六齊明〉
p.0188 四年四月、阿陪臣〈闕名〉率二船師一百八十艘一伐二蝦夷一、齶田渟代(○○○○)二郡蝦夷望悕乞レ降、於レ是勒レ軍陳二船於齶田浦一、齶田蝦夷恩荷進而誓曰、〈◯中略〉將二清白心一仕二官朝一矣、仍授二恩荷一以二小乙上一、定二渟代津輕二郡郡領一、 七月甲申、蝦夷二百餘、詣レ闕朝獻、饗賜贍給有レ加二於常一、仍授二柵養蝦夷二人位一階一、渟代郡大領沙尼具那小乙下、〈或所下云二授位二階使上レ撿二戸口一〉少領宇婆左、建武勇建者二人位一階、〈◯中略〉又詔二渟代郡大領沙奈具那一、撿三覆蝦夷戸口與二虜戸口一、 五年三月、是月遣二阿倍臣一〈闕名〉率二船師一百八十艘一、討二蝦夷國一、阿倍臣簡二集飽田渟代二郡蝦蛦二百四十一人、其虜三十一人一、〈◯中略〉於二一所一而大饗賜レ祿、
〔日本後紀〕
〈十二桓武〉
p.0189 延暦廿三年十一月癸巳、出羽國言、秋田城建置以來卌餘年、土地墝埆、不レ宜二五穀一、加以孤二居北隅一、無二隣相救一、伏望永從二停廢一、保二河邊府一者、宜乙停レ城爲レ郡、不レ論二土人浪人一、以下住二彼城一者上編附甲焉、
〔出羽國風土略記〕
〈八由利郡〉
p.0189 延喜式第二十二卷、出羽國上管拾一郡の中には、由利郡といふなし、但二十八卷出羽國傳馬の條下に由利六疋と有、此比は郷里の名にして郡名にはあらず、五國史等にも由利郡といふ事見へず、和漢三才圖繪に、由利は後に郡數に加へ侍るとあれども時代見へず、予〈◯進藤和泉〉國史を見て考るに、上古は秋田郡の内なるべし、東は最上郡を隣とし、矢島領遣子村より〈家數百軒ほどあり〉荏村迄六里有、中央に山伏峠といふ有、遣子村より峠へ三里、峠より荏へ三里あり、兩郡の境に女こじき男こじきと云山貳ツ有、南は飽海郡三崎山大師堂を境とし、庄内領女鹿村と、由利御領小砂川と、元祿年中、取替證文あり、西は海にして岩組亦濱地有、北は龜田領黒瀬村猶田村を、由利郡兩郡の境とす、又同領内廣村を仙北の境とす、郡中一保十五郷四通有、所レ謂一保ハ仁加保也、十五郷ハ小管郷、内越郷、子吉郷、西目郷、石澤郷、瀧澤郷、鮎川郷、〈◯註略〉玉米郷、遣子郷、直根郷、大澤郷、川内郷、前郷、内方郷、以上矢島領是なり、四通といふは内越通、川内通、大正寺通、下濱通是也、〈龜田領也〉
〔倭名類聚抄〕
〈七出羽國〉
p.0189 最上郡 郡可〈◯郡恐那誤〉山方 最上 芳賀 阿蘇 八木 山邊 福有 梁田 大倉 村山 長岡 大山 福岡〈◯高山寺本梁田以下六郷無、蓋此六郷村山郡郷名之重出、宜レ削、〉 村山郡 大山 長岡 村山 大倉 梁田 徳有 置賜郡 置賜 廣瀬 屋代 赤井 宮城 長井 餘戸 雄勝郡 雄勝 大津〈◯大、高山寺本作レ本、〉中村 餘戸 平鹿郡〈◯平鹿郡、高山寺本作二山本郡一、〉 山川 大井 邑知 山本 塔甲 御船 鎰刀 餘戸 飽海郡 大原 飽海 屋代 秋田 井手 遊佐 雄波 曰理〈◯曰理高山寺本作二由理一、〉餘戸
p.0190 河邊郡 川合 中山 邑知 田郡 大泉 稻城 芹泉〈◯芹、高山寺本作レ荇、〉餘戸 田川郡 田川 甘禰〈◯甘禰、高山寺本作二其彌一、〉新家 那津 大泉 出羽郡 大窪 河邊 井上 大田 餘戸 秋田郡 添川 率浦 方上 成相 高泉
〔萩藩閥閲録〕
〈百二十四ノ二〉
p.0190 平賀九郞兵衞 讓渡安藝國高屋保、出羽國鞍曾郷(○○○)、〈今度勳功賞也〉 同國平賀郡内三樟郷(○○○)、蟻守郷(○○○)、 右所々者、兼宗之所領也、しかるを子息兵衞藏人貞宗に讓與ところ也、總領として可レ令二知行一、但先年於二田舍一認二置庶子面々讓状一畢、依二天下動亂一、若引失事もやとて、重書與者也、委旨可レ守二先日讓一也、仍レ之状如レ件、 建武五年三月廿五日 遠江守兼宗〈◯平賀〉判
〔白河證古文書〕
〈一〉
p.0190 讓與 所領等事 一出羽國餘部内 尾青村 清河村 一同國狩河郷(○○○)内田在家〈◯中略〉 古於二彼所領等一者、相二副手繼證文一所レ讓二與孫子七郞左衞門尉顯朝一、不レ可レ有二他妨一、爲二後日一讓状如レ件、 延元元年四月二日 道忠〈花押◯結城宗廣〉
〔郡名一覽〕
p.0190 出羽國(御料私領) 〈羽州 東西五十日〉 拾貳郡 高百拾貳万六千貳百四十八石八斗三升四合四勺 貳千四百貳拾七ケ村 ●米澤 七十五里 ●久保田 百四十三里 ●上ノ山 九十三里 ●庄内 〈百二十里鶴岡城〉 ●山形 九十二里 ●松山 百二十里餘 ●新庄 〈百十里二十五町〉 ●本庄 百四十里 ●龜山 〈百四十三里〉
p.0191 ◯天童 九十七里 ◯長瀞(ナガトロ) 九十八里 
矢島 〈百三十里生駒鋋三郞〉 尾花澤百四里餘 ＜大石田 船役所 ＜寒河江 九十四里 ＜柴橋 九十五里 ＜幸生 銅山 ＜東根 百里餘 ◯按ズルニ、本書ノ符號ハ、山城國篇村里條ニ引ク所ノ、本書ノ凡例ヲ參照スベシ、
〔郡國提要〕
p.0191 出羽 十二郡二千四百四十三村 高百二十九万五千五百二十三石五斗二升一合四勺四才(御料私領) 置賜郡二百六十村 田川郡三百八十六村 飽海郡二百六十七村 村山郡四百三十村 最上郡百二十八村 秋田郡二百八十三村 河邊郡五十三村 雄勝郡八十六村 山本郡七十六村 平鹿郡百九村 由利郡百九十二村 仙北郡百七十五村
〔續日本紀〕
〈十二聖武〉
p.0191 天平九年正月丙申、先レ是陸奧按察使大野朝臣東人等言、從二陸奧國一達二出羽柵一、道經二男勝一行程迂遠、請征二男勝村(○○○)一以通二直路一、於レ是詔二持節大使兵部卿從三位藤原朝臣麻呂、副使正五位上佐伯宿禰豐人、常陸守從五位上勳六等坂本朝臣宇頭麻呂佐等一、發二遣陸奧國判官四人、主典四人一、
〔續日本紀〕
〈三十四光仁〉
p.0191 寶龜七年五月戊子、出羽國志波村(○○○)賊叛逆、與レ國相戰、官軍不レ利、發二下總下野常陸等國騎兵一伐之、
〔日本後紀〕
〈二十一嵯峨〉
p.0191 弘仁二年七月辛酉、出羽國奏、邑良志閉村(○○○○○)降俘吉彌侯部都留岐申云、己等與二貳薩體村夷伊加古等一、久構二仇怨一、今伊加古等、練レ兵整レ衆、居二都母村一誘二幣伊村夷一、將レ伐二己等一、伏請二兵粮一、先登襲擊者、臣等商量、以レ賊伐レ賊、軍國之利、仍給二米一百斛一奬二励其情一者、許之、
〔三代實録〕
〈三十四陽成〉
p.0191 元慶二年七月十日癸卯、出羽國飛レ騨奏曰、〈◯中略〉秋田城下賊地者、上津野(○○○)、火内(○○)、榲淵(○○)、野代(○○)、河北(○○)、腋本(○○)、方口(○○)、大河提(○○○)、姉力(○○)、方上(○○)、燒岡(○○)十二村也、向レ他俘地者、添河(○○)、霜別(○○)、助川(○○)三村也、令下此三村俘囚、并良民三百餘人一、拒中賊於添河上、次攻二雄勝一、後將レ侵レ府、其雄勝城承二十道一之大衝也、
〔小早川家什書〕
〈六〉
p.0192 小早河左衞門五郞入道性秋謹言上 欲下早任二宣旨状一賜二國司御證判一備二後代龜鏡一、當知行所中領出羽國由利郡小友村(○○○)上〈由利孫五郞惟方跡〉事、副進御下文案、 右所領者、性秋知行無二相違一之條、國中無二其隱一、若又以二不知行之地一、稱二當知行一者、可レ被レ處二罪科一也、然早申二賜御證判一、爲備二後代之龜鏡一、仍言上如レ件、 元弘三年八月日
〔東遊雜記〕
〈五〉
p.0192 八日〈◯天明八年六月〉大澤出立、三里にて米澤(○○)城下に休、城主上杉彈正大弼侯、十五万石、城は平城にして、櫓を低く、寒國故に瓦は用ひがたきによりて、みな〳〵檜皮の家根、壁も板と見ゆ、予〈◯古河辰〉思ふに敵を城外迄も引請ては、火災の防ぎ成まじきやふの城なり、定て心得も有べし、市中凡三千餘軒、大概の町にて豪家もある所也、然れども板葺草ぶきの家造りゆへに、上方筋の町と違ひて、きれいなる事なし、制度は何となく謙信侯の遣風殘りて、政事正敷聞へ侍る也、近郷の郷はひろ〳〵として、東西と南の方は嶮山并び立、奧州福島より越ゆるは、板谷峠と云し三里の間嶮しき壹筋道にて、一人横たわれば万人を止るの所、南の方は會津より越ゆるを、〈出羽の方、綱木峠と云、奥州の方、檜原峠と云、〉此山道の嶮岨、筆紙に盡しがたし、峯を登りては雲に入かと思ひ、谷に下りては金輪際に入かと思ふ、蜀の棧橋たりとも是ほどには有まじと人々云し事なり、予按るに、奧州會津の地利は、出にはよく、敵を防ぐにはあしく、米澤は出るにあしく敵を防ぐによし、雙方よき事はなきものなり、兩所とも寒國ゆへに、十月頃よりは他方の往來しがたく、何事も不自由の事にて、東西ともに海をさる事三十里、海の生魚なく、産物には、蠟とたばこ名産にてよし、予九州を遊行せし頃、六月薩州にありしに、貴賤となく夏中は裸身にて、中以下の婦人は、他村へ行にも二布計にて裸にて行事也、予是を見て邊鄙の地、又夏中暖氣暑氣のたへがたき事には大ひに驚し事なるに、今
p.0193 年の六月は此地に來りて、冷氣の強きに驚し事也、朝夕の寒さは、江戸上方筋の十月霜月の時候に同じ、尤年にも寄る事にや、海内狹しといへども、かくのごとし、中華をおもふべし、此邊の稻のうへやふ中國におなじ、米の生ぜる事三百坪に直し、四斗五升入五俵宛はありと、土人物語り也、俗にいふには、稻作は暑氣の強からざれば生ぜず、冷氣の地には至てあしき事にいへども、奧羽の二州寒國にて、米國なるを以て知るべし、土地によるものならずや、
〔東遊雜記〕
〈六〉
p.0193 十七日〈◯天明八年六月〉長谷堂村出立、〈三里餘〉畑谷村休、山形(○○)止宿、御城主秋元攝津守侯六万石、城は平城にて、街道よりちら〳〵見ゆる計也、昔時は最上出羽守義光、家光、義俊居城にて、大いに繁茂せし所ゆへに、町の長サ壹里半餘、今は大に衰へて見苦敷町なり、端々に至ては、乞食小屋同前の家居なり、
〔東遊雜記〕
〈七〉
p.0193 鶴が岡(○○○)は、酒井侯〈左衞門尉十四万石餘〉の御城地にて、御城下なり、昔時は大寶寺の城と稱して、最上義光居城有し時に、初て鶴が岡と改名す、庄内といふも此地の事なり、酒井侯政事正しく、清川よりは、在々に至るまで民家のもやふ奇麗なり、富饒の百姓も數多見え、人足に出るものも衣服賤しからず、馬なども肥へふとり、かヽり美々敷、山川草木上々國の風土なり、十萬石も有なんと思ふ郷中も見へ、これまで通行せし所々の及ぶ事にあらず、よき地の第一とおの〳〵評ばんせしなり、市中も寒國ゆへに板ぶき草ぶきの家居ながらも、會津の若松、二本松、白川、米澤、何れも十万石餘の城下なれども、鶴が岡にくらべ見れば、大に勝劣あり、酒田の津へ遠からざれば、上方筋への便りもよく、海魚も高直ながらも自由なり、城は往來よりは委しく見へず、ちら〳〵見ゆる計なり、
〔東遊雜記〕
〈九〉
p.0193 久保田(○○○)は、昔時秋田城之助代々城主たりしに、今は佐竹侯の御城地にて、當主次郞侯と稱し、二十万五千八百石餘の諸侯にて、新羅義光の嫡流にして、諸侯の中にての歴家なり、〈◯中略〉
p.0194 市中三十六丁にて、三千八百餘軒の地なり、町のもやふ皆々杉板の家根にて、上に石をかず〳〵ならべておしとなし、壁も板壁にして、ひさしは同じやふに一間餘も差出して、是を雪道と稱して、雪のふる節の通ひ路とす、往來筋には富饒に見ゆる家居もなく、かしこ爰に草ぶきの小家交わりて、上方筋の城下と違ひて見苦し、
〔吾妻鏡〕
〈十〉
p.0194 文治六年〈◯建久元年〉正月六日辛酉、奧州故泰衡郞從大河次郞兼任以下、去年窮冬以來、企二叛逆一、或號二伊豫守義經一、出二於出羽國海邊庄(○○○)一、〈◯下略〉
〔羽前東根龍興寺鐘銘〕
p.0194 羽州中央、小田島庄(○○○○)、東根境致、白津之郷、山號佛日、寺號普光、鑄鐘六月、林鍾時當、借爐炎熱、通冶風凉、一樓鯨骨、万斛銅湯、大解脱器、吸空肛腸、圓滿覺口、吐寺外方、天曉告報、地久天長、日暮扣發、檀信吉祥、 正平十一年〈丙申〉六月廿四日 住持比丘閑雲叟〈希孚〉 大檀那前備前守從五位上平朝臣長義 大工左衞門大夫景弘(願主比丘紹)
〔奧の細路〕
p.0194 南部道はるかに見やりて、岩手の里に泊る、小黒崎美豆の小島を過ぎて、鳴子の湯より尿前の關にかヽりて、出羽の國に越えんとす、〈◯中略〉あるじのいふ、是より出羽の國に、大山をへだてヽ路さだかならざれば、道しるべの人をたのみて越ゆべきよしを申す、〈◯中略〉あるじの言ふにたがはず、高山森々として一鳥の聲を聞かず、木の下茂りあひて、夜行くが如し、雲端に土降るここちして、篠の中蹈みわけ、水を渉り石に蹶き、肌につめたき汗を流して最上の莊(○○○○)に出づ、
〔出羽國風土略記〕
〈二田川郡〉
p.0194 大泉庄(○○○) 按ずるに、田川郡のうちに有、今其分内詳ならず、庄内(○○)といふは、大泉庄内といへるの略稱也、〈◯中略〉信正は、義經記二にも大泉庄と有、飽海田河兩郡を言にや、又田河郡のみを言にや、右書の起を考ふれば、田河郡計を大泉といふにや云々、
〔慶應元年武鑑〕
p.0195 佐竹右京大夫義就(大廣間 從四位少將 元治元子二) 二拾万五千八百石餘 居城出羽秋田郡久保田 〈江戸ヨリ〉百四十三里餘 〈代々領主、秋田城之助實季、同河内守俊季居、慶長十、佐竹左中將義宣、以後代々領レ之、〉 酒井左衞門尉忠篤(溜間格 四品 元治元子十二月叙) 拾七万石 居城羽州庄内田川郡鶴岡 〈江戸ヨリ笹屋通百廿四里小坂通百廿里ヨ 最上領、元和八、酒井忠勝以後代々領レ之、〉 上杉彈正大弻齊憲(大廣間 從四位左中將上 元治元子五月任) 拾五万石 居城羽州置賜郡米澤 〈江戸ヨリ〉七十五里 〈天正十八、蒲生飛騨守氏郷、慶長五、上杉中納言景勝以後代々領レ之、〉 戸澤中務大輔正實(帝鑑間四品 元治元子五月叙) 六万八千二百石 居城出羽最上郡新庄 〈江戸ヨリ〉百十里廿五町 〈往古最上出羽守義光、同駿河守家親、同源五郞領分、元和八、戸澤右京亮政盛、以後代々領レ之、◯節略〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0195 水野和泉守忠精(從四位侍 從文久二戌六月任) 五万石 居城羽州村山郡山形 〈江戸ヨリ笹屋通九十四里餘土山通九十二里餘 城主最上出羽守義光、同駿河守家親、同源五郞義俊、元和八、鳥居左京亮忠政、同左京亮忠恒、寛永十三、保科肥後守正之、正保元、松平大和守道基、慶安元、松平下總守忠明、同下總守忠弘、寛文八、奥平大膳亮昌能、同美作守昌章、貞享二、堀田下總守正仲、同三、松平大和守正矩、元祿五、松平下總守忠雅、同十三、堀田伊豆守正虎、同内記正春、同相模守正亮、延享三、松平和泉守乘佑、明和元、三州西尾替、同四、秋元但馬守凉朝、同但馬守永朝、同但馬守久朝、同但馬守志朝、弘化二ヨリ水野大監物忠經領レ之、◯節略〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0195 松平山城守信庸(帝鑑間 朝散大夫) 三万石 居城羽州村山郡上(カミ)ノ山 〈江戸ヨリ〉 九十三里 〈元和六、丹後守重忠、同丹後守重直、寛永三、松平中務大輔昌勝、同五、土岐山城守頼行、同左京亮頼長、同伊豫守頼陸、元祿四、松平越中守信通、以後領レ之、◯節略〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0195 酒井大學頭忠良(帝鑑間 朝散大夫) 二万五千石 居城羽州飽海郡松山 〈江戸ヨリ〉百廿里餘 〈寛文年中、酒井氏忠恒、以後領レ之、安永八亥年、蒙二台命一、酒井石見守忠休初築レ之、〉 六郷兵庫頭政鑑(柳間 朝散大夫) 二万二拾一石餘 居城羽州由利郡本庄 〈江戸ヨリ〉百四十里餘 〈右差出之高、元和八ヨリ六郷氏代々領レ之、◯節略〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0195 佐竹壹岐守義諶(柳間 朝散大夫) 二万石 在所羽州秋田新田 〈江戸ヨリ〉百四十三里
p.0196 〈寛文十二年ヨリ佐竹壹岐守義長、以後代々領レ之、〉 岩城左京大夫(柳間 朝散大夫) 二万石 居城羽州由利郡龜田格 〈江戸ヨリ〉百四十三里 〈慶長五ヨリ岩城貞隆以後代々領レ之、〉 織田兵部少輔信學(柳間 朝散大夫) 二万石 在所羽州村山郡天童(テンドウ) 〈江戸ヨリ〉九十七里 〈羽州村山郡置賜郡、明和四年、上州小畠ヨリ高畠ニ移ル、文政十三年依レ願移レ之、〉 米津伊勢守政明(菊之間 朝散大夫) 一万千石 在所出羽村山郡長瀞(ナガトロ) 〈江戸ヨリ〉九十八里 〈寛政十年ヨリ徙レ之◯節略〉
〔慶應元年武鑑〕
p.0196 上杉駿河守勝道(柳間 朝散大夫) 一万石 在所羽州置賜郡米澤新田 〈道法右同斷◯江戸ヨリ七十五里〉
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0196 出羽國〈◯註略〉管十一〈田二萬六千百九町二段五十一歩〉
〔伊呂波字類抄〕
〈伊國郡〉
p.0196 出羽國〈管十一（中略）本田二万六千百九十町三反五十歩〉
〔拾芥抄〕
〈中末本朝國郡〉
p.0196 出羽〈上遠〉十一郡、〈田三萬八千六百二十八町五反〉
〔新撰類聚往來〕
〈下〉
p.0196 國名〈◯中略〉出羽〈羽州〉十一郡〈（中略）田數五万二百九十町〉
〔海東諸國記〕
p.0196 出羽州 有二温井一産レ金、郡十、水田二萬六千九十町二段、
〔前關白秀吉公御檢地帳之目録〕
p.0196 三十一万八千九十五石 出羽
〔和漢三才圖會〕
〈六十五出羽〉
p.0196 十二郡 高八十七万石餘〈東山道〉
〔官中秘策〕
〈四〉
p.0196 出羽國 十二郡〈◯中略〉 一石高百拾貳万六千貳百四拾八石餘
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0196 天保度御國高調〈◯中略〉 出羽國〈御料私領〉 一高百貳拾九万五千三百貳拾三石五斗貳升壹合四勺四才 〈三百一本ニ五百ニ作ル〉
〔延喜式〕
〈二十六主税〉
p.0196 諸國出擧正税公廨雜稻〈◯中略〉
p.0197 出羽國、正税廿万束、公廨卅四万束、月山大物忌神祭料二千束、文殊會料二千束、神宮寺料一千束、五大尊常燈節供料五千三百束、四天王修法僧供養并法服料二千六百八十束、健兒粮料五万八千四百十二束、修理官舍料十万束、池溝料三万束、救急料八万束、國學生食料二千束、
〔倭名類聚抄〕
〈五國郡〉
p.0197 出羽國〈◯註略〉管十一〈（中略）正二十四萬四千三百二十束、公四十萬束、本頴九十一萬七千七百十二束、雜穎二十八萬三千三百九十二束、〉
〔延喜式〕
〈二十三民部〉
p.0197 年料別貢雜物〈◯中略〉 出羽國〈零羊角十具、紙麻一百斤、◯中略〉 交易雜物〈◯中略〉 出羽國〈熊皮廿張、葦鹿皮、獨犴皮、數隨レ得、〉
〔延喜式〕
〈二十四主計〉
p.0197 出羽國〈行程上卌七日、下廿四日、〉海路五十二日、 調庸輸二狹布、米穀一、
〔延喜式〕
〈三十七典藥〉
p.0197 諸國進年料雜藥〈◯中略〉 出羽國二種 甘草五斤、零羊角卌具、
〔毛吹草〕
〈三〉
p.0197 出羽 最上紅花 青苧〈桑良布ニ用レ之〉 蠟 漆 温石 油紙〈諸國ニ行〉 秋田紫根 干蕨 臭槇 霰煎餅 ハタハタ鮨〈䱞（このしろ）ニ似タル魚也〉 鹿皮 針金錢 錫 鈆 銀 田部煎海鼠 串鮑 昆布 庄内米 外濱鶋(ウトフ)
〔和漢三才圖會〕
〈六十五出羽〉
p.0197 出羽國土産 紅花〈最上◯中略〉 狗背草〈秋田〉 臭槇 馬 尾花澤、有二馬市一、毎歳六月中旬、引二出奧羽兩國馬一、買者著レ價、而馬主不レ諾、則敲二馬主之頭一、一打則百錢、二打則二百錢、如二踏仆一則金一分増レ價、亦一興也、
〔官中秘策〕
〈四〉
p.0197 出羽國 十二郡〈◯中略〉 一人數八拾四万六千貳百五拾五人 内〈四拾七万九千貳百貳拾三人 男 三拾六万七千三拾貳人 女〉
〔吹塵録〕
〈五人口及國高〉
p.0197 諸國人數調(文化元甲子年)〈◯中略〉 一人數八拾七万百四拾九人(御料私領) 〈高百拾貳万六千貳百四拾八石餘〉出羽國
p.0198 内〈四拾六万七千三百七人 男 四拾万貳千八百四拾貳人 女〉 諸國人數調(弘化三丙午年)〈◯中略〉 一人數九拾壹万貳千四百五拾貳人(御料私領) 〈高百貳拾九万五千三百貳拾三石餘〉出羽國 内〈四拾七万五千七百拾四人 男 四拾三万六千七百三拾八人 女〉
〔人國記〕
p.0198 出羽國 出羽之風俗ハ奧州ニ大體不レ替也、然ドモ奧州之風儀ヨリハ律儀ナル處有テ、知モ亦上也、武士ハ我主親ヘ忠孝之志有テ、下ヲ使フ之法ヲ沙汰シ、下臈ハ上ヲウヤマフ心有、百姓ハ地頭ヲ頼ム心入有テ、他之村郷之者、我頭ヲ誹ルヲ聞テハ、則勝負ヲ付ルノ類ニテ、寔ニ頼母敷シホラシク有レ之所多ク有也、蓋シ此國之者、都而我國ハ遠國偏土ニ而カタクヘナキ國風成故、耻ケ敷キ事ナドヽ云風俗ナリ、因レ玆奧出兩國之者ハ、四民トモニ禮厚キナリ、本奧出ノ兩國ハ、一國ヲ割リ出シタル國ト云傳ヘタリ、
〔日本鹿子〕
〈九〉
p.0198 同國中〈◯出羽〉名所之部 最上川 奧州一番の早川也、古今大歌所の御歌、 最上川のぼればくだるいな舟のいなにはあらず此月ばかり 象潟(キサカタ) 後拾遺旅のうたに、能因法師 世の中はかくてもへけりきさがたの海士のとまやをわが宿にして 角深山(スミノフカヤマ) わくらはにとふ人もなき柴の戸にわが身ひとりはすみのふか山 宿蜻(ヤドセ)山 ムヤ〳〵の關 袖ノ浦 當國は、舊記にとヾむる所の名所すくなし、世に人のしるところをのするものなり、
〔奧の細路〕
p.0198 山形領に立石寺(○○○)といふ山寺あり、慈覺大師の開基にて、殊に清閑の地なり、一見すべき
p.0199 よし人の勸むるによりて、尾花澤より取つてかへし、其の間七里ばかりなり、日いまだ暮れず、麓の坊に宿借りおきて、山上の堂にのぼる、岩に巖を重ねて山とし、松栢年ふり、土石老いて苔なめらかに、岩上の院々扉を閉ぢて、物の音きこえず、岸をめぐり、岩を這ひて佛閣を拜し、佳景寂寞として、心澄みゆくのみ覺ゆ、 しづかさや岩にしみ入る蝉の聲〈◯中略〉 江山水陸の風光數を盡して、今象潟(○○)に方寸を責め、酒田の港より東北の方、山を越え磯を傳へ、砂子を踏みて、其の際十里、日影やヽ傾く頃、汐風眞砂を吹きあげ、雨朦朧として鳥海の山かくる、闇中に摸索して雨もまた奇なりとせば、雨後の晴色又たのもしと、蜑の苫屋に膝をいれて、雨の晴るヽを待つ、其あした天よく晴れて、朝日花やかにさし出づるほどに、象潟に舟をうかぶ、先づ能因島に舟をよせて、三年幽居の迹をとぶらひ、向ふの岸に舟をあがれば、花のうへ漕ぐとよまれし櫻の老い木、西行法師のかたみを遣す、江上に御陵あり、神功皇后の御墓といふ、寺を干滿珠寺といふ、此の處に行幸ありしこといまだ聞かず、如何なる事にか、この寺の方丈に坐して、簾を捲けば、風景一眼の中に盡くして、南に鳥海天をさヽへ、其の陰うつりて江にあり、西はむや〳〵の關路をかぎり、東に堤を築きて秋田に通ふ路はるかに、海北にかまへて、波打ち入る處を汐越しといふ、江の縱横一里ばかり、俤松島にかよひて、又異なり、松島は笑ふが如く、象潟は怨むが如し、さびしさに悲しみを加へて、地勢魂をなやますに似たり、 きさかたや雨に西施がねぶの花 汐越しや鶴はぎぬれて海涼し
〔延喜式〕
〈二十八兵部〉
p.0199 諸國健兒〈◯中略〉 出羽國一百人
〔續日本紀〕
〈六元明〉
p.0199 和銅七年二月辛丑、始令二出羽養蠶一、 十月丙辰、勅割二尾張、上野、信濃、越後等國民二百
p.0200 戸一、配二出羽柵戸一、
〔續日本紀〕
〈七元正〉
p.0200 養老元年二月丁酉、以二信濃、上野、越前、越後四國百姓各一百戸一、配二出羽柵戸一焉、
〔續日本紀〕
〈八元正〉
p.0200 養老三年七月丙申、遷二東海東山北陸三道民二百戸一配二出羽柵一焉、
〔續日本紀〕
〈二十八稱徳〉
p.0200 神護景雲元年十一月丙寅、私鑄錢人王清麻呂等四十人、賜二姓鑄錢部一流二出羽國一、
〔續日本紀〕
〈三十六光仁〉
p.0200 寶龜十一年五月甲戌、勅二出羽國一曰、渡島蝦狄早効二丹心一、來朝貢獻爲レ日稍久、方今歸レ俘作レ逆、侵二擾邊民一宜二將軍國司賜饗之日、存レ意慰喩一焉、
〔諸州奇跡談〕
〈下〉
p.0200 出羽國 羽州奧州にては、錢百文の通用に丁百を用ゆ、他國にては、九十六文にしてこれを百といふ、予羽州に下る折から、米穀高直なる由にて、米壹升の價ひ十一錢也、田畑甚だ廣大にして、苗代場處又は水付の田地は出來かたよろしからず、これによつて地を伏ると云て、空田所々に見へたり、又此國のことばに、賣女のことをやろこまかりと云由、
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