石蒜

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 石蒜(シビトバナ/ステゴバナ)〈鳥蒜、老鴉蒜、蒜頭草、一枝箭、水麻並同、〉

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 石蒜しびとばな 伊勢にてせそび、中國及武州にてしびとばな、又ひがんばな、又きつねのかみそり、上總或は美作にていうれいばな、又ひがんばな、越後信濃にてやくひうばな、京にてかみそりばな、大和にてしたこじけ、出雲にてきつねばな、尾州にてしたまがり、駿河にてかはかんじ、西國にてすてごばな、肥唐津にてどくずみた、土佐にてしれい、又しびと花、又すヾかけと云、又まんじゆしやけと云有、種類なり、

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 石蒜 老鴉蒜也、シビトバナト云、四月或八九月赤花サク、下品ナリ、此時葉ハナクテ花サク故ニ、筑紫ニテステ子ノ花ト云、本草山草下ニアリ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十二末/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1086 石蒜 烏蒜 老鴉蒜 水麻 蒜頭草 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001f168.gif http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001f168.gif 酸 一枝箭 〈俗云死人花、又云彼岸花、〉曼珠沙華〈東國◯中略〉按、石蒜者山慈姑之類、而山野墳墓邊多有之、故俗曰死人花、而人家忌之不種者非也、唐人呼山慈姑無義草、惡葉花不相見亦同意也、九十月生苗似蒜葉而長有劒脊、四散布地、紀州人用藉密柑籠中、四月葉枯徒爲空地、七月抽一莖尺餘、莖端開花七八朶有青節、毎朶開紅花六出、狹長攅簇如深紅絲紐、毎瓣著赤蕊、七筋長而耑戴小子、形如伊乃牟土(イノンド)、而初赤後黄、老則花縁變白亦有之、秋分盛開、故名 彼岸花、小兒取之寸寸折之、脆而皮不絶、略作念珠状、掛頸爲戯、莖汁臭又法華經曰摩訶曼陀羅華曼珠沙華、乃曼陀羅花、今云朝鮮牽牛花也、曼珠沙花此石蒜也、〈摩訶者大之義〉共稱其美耳、其根似水仙根而不蒜有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 隔也、塗諸瘡佳、或和泥土壁則鼠不敢入、又擂和繪具於漆器則不繪滅

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1087 石蒜 マンジユシヤケ(○○○○○○○)〈京〉 シビトバナ(○○○○○)〈同上〉 テンガイバナ(○○○○○○)〈同上〉 キツネノイモ(○○○○○○)〈同上下久世〉 ヂゴクバナ(○○○○○) カラスノマクラ(○○○○○○○) ケナシイモ(○○○○○) キツネバナ(○○○○○)〈備前〉 サンマイバナ(○○○○○○)〈勢州〉 ヘソビ(○○○)〈同上粥見、凶年ニハ團子トナシ食用ス、ヘソビダンゴト云フ、〉 ホソビ(○○○)〈同上〉 シタカリバナ(○○○○○○)〈同上松坂〉 キツネノタイマツ(○○○○○○○○)〈越前〉 キツネノシリヌグヒ(○○○○○○○○○)〈同上〉 ステゴノハナ(○○○○○○)〈筑前〉 ステゴグサ(○○○○○)〈同上〉 シタマガリ(○○○○○)〈江州〉 ウシノニンニク(○○○○○○○)〈同上〉 シタコジケ(○○○○○)〈同上和州〉 ヒガングサ(○○○○○)〈仙臺〉 セウ〳〵バナ(○○○○○○)〈同上〉 クハエンサウ(○○○○○○)〈同上〉 ワスレグサ(○○○○○)〈同上〉 ノダイマツ(○○○○○)〈能州〉 テクサリバナ(○○○○○○)〈同上〉 テクサリグサ(○○○○○○)〈播州〉 フヂバカマ(○○○○○)〈同上三ケ月〉 シビレバナ(○○○○○)〈同上赤穗〉 ヒガンバナ(○○○○○)〈肥前〉 ドクスミラ(○○○○○)〈同上〉 キツネノヨメゴ(○○○○○○○)〈同上〉 オホスガナ(○○○○○)〈熊野〉 オホヰヽ(○○○○)〈同上〉 マンジユサケ(○○○○○○)〈同上〉 ユウレイバナ(○○○○○○)〈上總〉 カハカンジ(○○○○○)〈駿州〉 スヾカケ(○○○○)〈土州〉 ウシモメラ(○○○○○)〈石州〉 ハヌケグサ(○○○○○)〈豐後〉 ジユズバナ(○○○○○)〈豫州〉 イチヤニヨロリ(○○○○○○○)〈同上今治〉 ホドヅラ(○○○○)〈同上松山〉 テアキバナ(○○○○○)〈丹波笹山〉 キツネノアフギ(○○○○○○○)〈濃州〉 ウシヲビ(○○○○)〈同上〉 イツトキバナ(○○○○○○)〈防州〉 ヤクベウバナ(○○○○○○)〈越後〉 ハミズハナミズ(○○○○○○○)〈加賀〉 一名石垂〈三才圖會〉 天蒜〈南産志、汝南圃史〉 重陽花〈花暦百詠〉 酸頭草〈附方〉 兎耳草〈證治準繩〉 脱紅換錦〈廣東新語〉 脱緑換錦〈同上〉 脱衣換錦〈同上〉翻譯名義集ニ曼珠砂、此ニ朱華ト云、俗ニマンジユシヤケト云ハ此ニ據ナルベシ、又小兒コレヲ玩ベバ言語詘シ、故ニシタコヂケト名ク、原野甚多ク、阡陌道旁皆アリ、一根數葉、葉ハ水仙ヨリ狹ク長サ一尺許、緑色ニシテ黒ヲ帶ブ、厚ク堅クシテ光アリ、夏中即枯、七八月忽圓莖ヲ出ス、高サ一尺餘、其端ニ數花聚リ開ク、深紅色六瓣ニシテ細ク反卷ス、内ニ長鬚アリ、花後圓實ヲ結ブ、實熟シ テ莖腐シ新葉ヲ生ズ、冬ヲ經テ枯レズ、根ノ形水仙ノ如ク、大サ一寸許、外ハ薄キ茶色ノ皮ニテ包ム、内ハ白色、コレヲ破レバ重重白薄皮ナリ、一種白花ノモノアリ、此ヲ銀灯花ト云、秘傳花鏡ニ見エタリ、〈◯中略〉増、石蒜ノ根ヲ取リ水飛シテ、葛粉ヲ製スル如クシテ賤民食用トス、阿州一宇山ノ俗水粉ト呼ブ、或ハカタクリニ僞ル、ソノ味能ク似タリ、然レドモソノ製麁ナル時ハ、大ニ人ヲ酔ハシム、又石蒜汁ニ黄糵ノ末ヲ加ヘ、即効紙ニ代用ス、

〔廣益地錦抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 石蒜 是もさんじこのごとくなれども、花は八月中の比ひらく、色極朱紅花、しべ長く多く出ル、俗に曼珠沙花といふ、根は水せんのごとくなるたまなり、此根をこまかにすりて粘におしまぜ、屏風ふすまの下張に用れば、いつまでも虫はむ事なしとて、多く表具細工に用ユ、

〔武江産物志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 道灌山ノ産 石蒜〈王子ヘン千住〉

〔佐渡志〕

〈五/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 石蒜 方言マムシユシヤケ 路傍ニ生ズ、一種鐵色箭アリ、人家ニ種ユ、

鐵色箭

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 鐵色箭(ナツスイセン/マンジユシヤケ)〈與石蒜一類二種〉

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 金灯草(ナツスイセン) 鐵色箭トモ云、月令廣義曰、冬春葉茂、夏月花生而葉死、花葉不相衞、此花最下品也、其葉石蒜ニ似タリ、一類ナリ、此花ヲ國俗曼珠沙華ト云、翻譯名義曰、曼珠沙此柔軟、又曰赤華、酉陽雜俎曰、金灯草俗惡人家種http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之、一名無義草ト云、花アル時ハ葉ナシ、葉アル時ハ花ナシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1088 石蒜〈◯中略〉鐵色箭ハナツズイセン(○○○○○○)、キツネノカミソリ(○○○○○○○○)、石蒜ヨリ葉濶ク長シ、黄色ヲ帶ブ、山麓ニ多シ、四月ニ葉枯レ、五六月ニ莖ヲ生ジテ花ヲ開ク黄赤色、形状石蒜ノ花ニ似テ反卷セズ、根ハ石蒜ニ同ジ、又一種ナツズイセント呼者アリ、葉濶ク長サ二尺許、色白ヲ帶ブ、夏ニ至テ葉枯ル、秋深テ花ヲ開ク、石蒜ヨリ莖モ長ク、花モ大ニシテ粉紫色、是宮人草ナリ、任昉ガ述異記ニ見エタリ、

〔武江産物志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 道灌山ノ産 鐵色箭(きつねのかみそり)

水仙

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 水仙華(スイセンクワ)〈馮夷華陰人、服花八石得水仙、見韻府、涪皤山谷詩、含香體素欲城、山礬是弟梅是兄、日本俗名曰雪中華也、〉

〔尺素往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089庭上之景嚴前栽仕候、春花者〈◯中略〉水仙花、

〔多識編〕

〈二/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 水仙、今案爾波岐(○○○)、異名金盞銀臺、

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 水仙(スイセン)〈單瓣者名金盞銀臺、千葉者名玉瓏玲、〉

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1089 水仙水仙は花信風小寒三候にあて、梅つばきと共に、嚴冬に花開き、その香も梅にをとらず、盛りも久しきものにて、めづべきものなれども、皇國にて歌にも詠ぜられず、本草和名、和名類聚抄等にも載られざるは、この花の不幸なり、抑この花元より此國に自生多くして、人家園砌にも植置て、冬月のながめとし、盆にうへ插花となし、金殿玉樓の上段に咲匂ふこと、餘花の及ばざるもの也、これにも單瓣重瓣あれども、單瓣のもの最勝れり、古へより圖に畫き、物に彫したるもの、皆單瓣のものにて、祐乘の彫せし水仙は、時珍の五瓣といへるも同日の誤なり、金盞銀臺もひとへのもの也、大和本草にも、千葉を下品とすといへり、すべて花はひとへなるよしは、徒然草にもいへども、殊に水仙は單をよしといふべし、又伊豆島日記に云、三宅島新島には、水仙寒菊は道もせ垣根などに、をのづからありては草のごとし、霜の降ること稀なれば、葉も花もいきほひよしといへり、さて、安房國も暖氣にて自生殊の外にこえたり、さて花信風小寒三候に配したれども、其苗は九月頃より生じ、葉は二枝づヽ相對して、一株四枚のものなれども、五枚出るもあり、花は四葉の中より出て、初は帽をかぶりたる如し、其莟大きくなり、帽やぶれて花の開くもの也、其數多きは七八輪に至るもあり、少きものにても三輪より少なきはなし、早きは九月末より開くあり、をくるるは二月末三月に及もあり、信濃國人冬咲たる水仙の花を見て驚きて、我國にてはる咲に、江戸 の水仙は遲きといひしとぞ、又月令廣義に、水仙は雪中四友の一なり、又水仙の名のあるものは、なつ水仙といふものは、鐵色箭、又をらんだ水仙、じやがたら水仙といふものは、月下香なり、此類は其根の状は葉の状にて名づけしものにて、花の時節も、皆夏秋開くものなれば花信風には入がたし、

〔大和本草〕

〈七/草花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 水仙 金盞銀臺ヲ上品トシ、千葉ヲ下品トス、ウフルニ鐵器ヲオカセバ三年花サカズト云、海ノカタノ土ヲ用ヒテウフレバ花多シ、五月ノ初ニ根ヲホリテ、小便ニ一夜ヒタシ、ホシテ七八月ニ肥土ニ間遠クウフレバ春花多シ、又九月初ニ可植ト、諸書ニ見ヱタリ、早ク栽レバ葉莖長過テアシヽ、濕地モヨシ、糞小便スヽカヤカマドノヤケ土ナド宜シ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000187.gif (カタ)土尤ヨシ、北フサガリ南ニムカヘル陽地ニウフレバ花早シ、樹下ニ植テモ花開ク、又二年三年ハ夏間其マヽ根ヲホリ出サズシテヲクモ無害、如此スレバ苗早ク生ジテ、長ジ過テアシヽ、ホリ出セル根ヲヲソクウフレバ葉莖短シ、根ヲホリ出ス時、側子ヲ可分、花ヲキルニ根ノキハヨリキレバ根イタム、根ノ三四寸上ヨリキルベシ、瓶ニサスニハ鹽水ヲ用テヤシナフベシト、花鏡ニ見ヱタリ、梅花モ又シカリ、名花譜曰、霜降後搭棚遮霜、雪ニ不折タメニ早ク掩フベシ、王思義三才圖會曰、余家香雪林常蒔數畝、毎花時芳氣撩人トイヘリ、本邦好事ノ家亦有此者、根ノ皮ヲ去研クダキ、日〈ニ〉ホシテ收ヲキ、打目ツギ目ニ乳汁ニ和シテツクル、又黒燒ニシテ乳汁ニ和シツクル、甚效アリ、本草ニ此能ヲノセズ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十二末/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1090 水仙 金盞銀臺〈◯中略〉按水仙南面岸陰能茂生、如遠州駿州向陽地、則三四尺者不乏、或夏土用中堀其根、浸尿晒乾、一宿種之則佳、大抵十一月開花、近時有七八月開者、蓋因培糞之功也、河州志紀郡舟橋村出早華、紀州松江之産亦早、千瓣者名玉玲瓏、〈見于畫譜〉今有千葉淡青色者其紅花者、凡眼科取其根細末、水飛以點突 眼效、絞汁入眼亦佳、又傅http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b068.gif愈、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 水仙 セツチウクハ(○○○○○○)〈下學集〉 ハルタマ(○○○○)〈大坂〉 キンダイ(○○○○)〈房州〉 今ハ通名一名凌波客〈花鳥爭奇〉 水鮮〈草花譜〉 凌波僊子〈典籍便覽〉 凌波子〈名物法言〉 雅蒜〈汝南圃史〉 雅客〈事物紺珠〉 儷蘭〈三餘記〉 配玄〈同上〉 銀臺金盞〈中山傳信録〉 増一名女星〈三餘記〉 歳寒友〈學圃雜疏〉 女史花〈内觀日疏〉 姚女兒花〈同上〉 波上靈妃〈事物異名〉 栗玉花〈同上〉 黄玉花〈同上〉 玉蕊花〈同上〉花ニ單瓣アリ、千瓣アリ、單瓣ノモノヲ金盞銀臺ト云フ、同名アリ、銀ノ盃杔ニ金ノ盞ヲ載タルニ象ドレリ、千瓣ノ者ハ一瓣ゴトニ黄色ナルモノアリテ、盞ノ形ヲナサズ、コレヲ玉玲瓏〈秘傳花鏡〉ト云フ、又一種千瓣ニシテ淡緑色ナル者稀ニアリ、コレハ白花ノ變ジタルモノナリ、紅花ノモノ越後ニアリト云、然ドモ未ダ見ズ、群芳譜ニ、唐玄宗http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b72e.gif 國夫人ニ、紅水仙十二盆ヲ賜ルコトアリ、名花譜ニ諺曰、五月不土、六月不房、栽向東籬下、花開朶朶香、汝南圃史ニ五ヲ六ニ作リ、六ヲ七ニ作リ、花開ヲ寒花ニ作ル、水仙單葉ノ者ハ皆六瓣ナリ、而ルニ時珍五尖ト云者ハ誤レリ、諸書ニ多クコノ誤ヲ襲フ、タヾ廣東新語ニ六瓣ト云是ナリ、本邦タマタマ變ジテ五辨ナル者アレバ最奇品トス、又酉陽雜俎http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e09b.gif 祗ノ文ハ、十四卷山奈ノ條ニモ引テ山奈ノコトトナス、此ニハ水仙ノコトトス、水仙ノ説ヲ是トスベシ、増、一種重瓣淡紫ノモノアリ、又蠻産ノモノアリ、文政十三年ニ舶來ス、奇品ナリ、

〔廣益地錦抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 水仙 今多く草花につくり、冬の詠とせり、〈◯中略〉水仙の根をこまかにして粘におしまぜ、指いたみて腫るに付て甚妙也、又らう地の紙に書たる文字をぬぐひとるに、水仙の根の切〈リ〉めにすりて取れば、紙にあとなくとれるといへり、すり取に墨付たるをば殺て、新たなる所にて、數遍すりぬぐふべしとぞ、

〔草木育種〕

〈下/美花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1091 水仙〈本草〉 農業全書の植法は、夏中根の塊を堀出して日に乾、人糞汁に浸置、又採出 して日に乾こと三度ほどして、暖地に植るといふ、花鏡の法も是に似たり、水仙は安房國に多し、山にて早く花をひらく、盆に植たるは花咲がたし、地にうへて七月頃根廻を堀て、酒粕馬糞人糞とまぜ合、多入てよく土を踏つけ、夏中度々水を灌てよし、花鏡云、七月猪屎和泥種、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 攝津 水仙花〈分テ當所ニ多シ、桐ノ箱ニ入テ諸方ヘ遣ス、〉

仙茅

〔多識編〕

〈二/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 仙茅、今案也末知(○○○)、異名獨茅、〈開寳〉茅瓜子、〈同〉

〔物類品隲〕

〈三/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 仙茅 和名キンバイザヽ(○○○○○○)、先輩キスゲトスルハ大ナル誤ナリ、頌曰、仙茅葉青如茅、而軟且略濶面有縱文、又似初生椶櫚秧、高尺許、至冬盡枯、春初乃生、三月有花如梔子花、黄色不實、其根獨莖而直、大如小指、下有短細根相附、外皮稍粗褐色、内肉黄白色、東璧曰、蘇頌所説詳盡得之、但四五月中抽莖四五寸、開小花深黄色、六出不巵子ト、以上兩説キスゲニアラズ、此モノ葉初生ノ椶櫚葉ニ似テ、六瓣ノ深黄花ヲ開ク、大サ五六分許甚可愛、根ハ菖蒲根ノゴトクニシテ、又別ニ小根ヲ附ク、其形略人參ニ似タリ、皆頌ガ説ノゴトシ、但頌不實ト云モノハ非ナリ、花謝後莖更ニ延ルコト寸餘、莖下豐ニシテ形棗http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif ノゴトク、内ニ實アリ、熟スレバ迸裂ス、其内白穰アリテ實ヲ包ム、實ハ椒目ノゴトクニシテ稍小ナリ、長崎八郞山産、戊寅歳田村先生始テ是ヲ得タリ、己卯主品中ニ具ス、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈七/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1092 仙茅 キンバイザヽ 増一名阿輪勒陀〈本草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f3e.gif 〉 阿輪乾陀〈本草原始〉肆中ニ舶來ノ根多シ、形胡黄連ノ如ニシテ緊實、味甘薟色黒シ、今キンバイザヽニ充ル説アリ、ヨク允當セリ、ソノ草ハ北地ニ産セズ、南紀及四國九州地方ニ多シ、葉ハ薹(スゲノ)葉ニ似テ短ク、柔軟ニシテ膚ヲ傷ラズ、長サ數寸或ハ一尺餘、緑色ニ微白毛アリ、一根數葉、夏秋葉間ニ小根ヲ出シ、上ニ黄花ヲ開ク六出、大サ五六分、ソノ根直生ス、横紋アリ、旁ニ小根ヲ附ルコト、長解ノ説ニ異ナラズ、又舶來ノ者ト同ジ、又一種細葉ナル者アリ、花微シ小ナリ、倶ニ冬ハ苗枯レ、春ニ至リテ舊根ヨリ葉 ヲ生ズ、

濱木綿

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 濱木綿 ヲモトニ似タリ、俗名ニハマヲモト(○○○○○)トモ云、海邊ニ生ズ、七八月白花ヲヒラク、莖高クノビテ只梢ニ數花アツマリヒラク、卷丹ノ花ノ形ニ似タリ非好花、季秋結實、花サキタルアトニ數顆ミノル、一顆ノ大如胡桃、内ニ無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif白肉、萬葉集第四柹本人丸歌云、ミクマノヽウラノハマユフモヽヱナルコヽロハ思ヘドタヾニアハヌカモ、仙覺抄云、濱ユフハ芭蕉ニ似テチイサキ草也、莖ノ幾重トモナクカサナリタル也、ヘギテ見レバ、白クテ紙ナドノヤウニヘダテアルナリ、大臣大饗ナドニハ、鳥ノ別足ツヽマンレウニ、三熊野浦ヨリシテノボセラルヽトイヘリ、綺語抄云、濱ユフハ芭蕉葉ニ似タル草、濱ニ生ル也、莖ノ百重アルナリ、篤信曰、今按ニ西土ニモアリ、ハマバセウト云、紀州熊野ノ濱ニ多シ、甚雪寒ヲ畏ル、宅中ニウヘテハ冬月ワラニテアツクツヽミ、或コモヲ以オホフベシ、不然枯ル、盆ニウヘテ屋下ノ暖處ニヲクベシ、海濱ニアリテハ潮風温ニシテ雪早ク消ルユヘカレズ、二種アリ、一種ハ葉柔薄、其莖ノ皮多ク重レリ、是百重ナルトヨミシナルベシ、一種ハ葉ツヨクアツシ、莖皮カサナラズ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十五/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 木藜蘆 黄黎蘆 鹿驪俗云濱木綿、又云濱芭蕉(○○○)〈◯中略〉按木藜蘆南紀海濱溪澗有之、高二尺許、莖葉微似芭蕉而狹長、又似蜀黍苗(ナンバンキビ)淺黒皮、裹蘆數片層層、夏抽莖開黄花、不藜蘆(エビネ)花之艷、性畏寒、移植之於京大坂多難茂、又以甚美、人不珍、自古以藜蘆於毛止、故是亦呼曰濱於毛止、吝誤而已、

〔筆のすさび〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1093 萬葉集四にある所の濱木綿といふ草は、一名濱芭蕉一名濱をもと共云、廣東新語にのする所の文珠蘭(○○○)なり、芭蕉に似て小なり、莖幾重となく重り、花は夏の末より秋に至て開く、極めて潔白なり、形百合のごとし、十二花漸々上へ咲上る、紀州熊野海邊に多く生ず、花盛の時は白木綿を見るがごとし、よつてはまゆふと名づく、

〔萬葉集〕

〈四/相聞〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 柿本朝臣人麻呂歌四首〈◯三首略〉三熊野之(ミクマヌノ)、浦乃濱木綿(ウラノハマユフ)、百重成(モヽヘナス)、心者雖念(コヽロハモヘド)、直不相鴨(タヾニアハヌカモ)、

〔拾遺和歌集〕

〈十四/戀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 屏風にみくま野のかたかきたる所 かねもりさしながら人の心をみくま野のうらのはまゆふいくへなるらん

〔源氏物語〕

〈二十一/少女〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 殿のさやうなる御かたち、御心とみ給ふて、はまゆふばかりのへだてさしかくしつヽ、なにくれともてまぎらはし給ふめるも、むべなりけりと思ふ、

薯蕷名稱

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 署預〈山伊毛(○○○)〉

〔本草和名〕

〈六/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 暑預一名山芋、秦楚名玉延、鄭越名土藷、〈仁諝音諸〉一名土荼根、一名茅荼根、〈已上二名出小品方〉一名諸署、一名王廷、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000188.gif 脆、齊越名芋、鄭越名山陽、〈已上出釋藥性〉一名藷藇〈署預二音〉一名延草、〈已上二名出兼名苑〉一名玉茅、一名土餘、一名大餘粮、〈出雜要訣〉又、有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a284.gif 餘、和名也末都以毛(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/芋〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 山芋 本草云、署預一名山芋、〈和名夜萬都以毛、俗云山乃以毛、〉兼名苑云、藷藇、〈今按音與署預同〉

〔伊呂波字類抄〕

〈也/殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 薯蕷〈ヤマノイモ、本草和名、無草冠、俗作署預、〉 山芋〈本草云、署預一名山芋、〉 藷藇〈已上同〉 署預 秦楚名三延、鄭越名土藷、〈仁諝音諸〉 土荼根 茅荼根〈已上二名出少品方〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000188.gif 脆 鄭越名山陽〈出釋藥性〉 玉茅 土餘 大餘粮〈出雜要訣、已上ヤマノイモ、〉

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 薯蕷(ジヨヨ)〈山芋也、又云蕷藥、或云山藥、趙采之時、兩度去諱、故有多名也、〉

〔易林本節用集〕

〈伊/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 薯蕷(イモ)〈山〉

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 薯蕷(ヤマノイモ)〈山芋、藷藇、土藷、山藥、玉延並同、〉 野山藥(シネンシヤウ)〈俗云自然生〉

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 山芋ヤマツイモ 倭名鈔に薯預一名山芋、ヤマツイモ、俗にはヤマノイモといふ、零餘子はヌカゴ、薯預子也と註せり、ヌカゴとは、其子小しきなるをいふなり、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1094 薯蕷〈訓也末乃伊毛、或云長伊毛、古者和名夜萬都伊毛、俗曰山乃伊毛、〉 釋名、山芋、〈源順曰、署預一名山芋、兼名苑藷藇音署蕷同、必大(平野)按、王旻山居録曰、曾得山芋子、然則山芋之名華和倶有之、〉集解、薯蕷山中野處自然生、稍短而堅實者、製作山藥、宜藥用、家種長而肥豐者、宜厨用、其味不自然生之山産、故入厨亦宜山産、四月生苗延蔓、紫莖緑葉、葉有三尖、中一尖長、左右兩尖短而不尖、略似白牽牛葉而更光潤、五六月開花成穗、初碧後淡赤、結莢成簇、筴凡三稜、合成堅而無仁、其子別結於一旁、即零餘子也、霜後收子留種、或春月采根截種皆生、冬月采根爲蔬食、或制作乾山藥、〈◯中略〉根、氣味、甘涼無毒、主治、益腎氣、健脾胃、止洩痢、化痰涎、潤皮毛、餘詳于綱目

薯蕷種類

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十九/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 薯蕷 ヤマツイモ〈和名鈔〉 ヤマノイモ ナガイモ〈◯中略〉家ニ栽ユル者ヲナガイモ(○○○○)ト云、一名マイモ、〈和州〉根ノ形圓ニシテ長サ一二尺、食用ニ良トス、救荒本草ニ家山藥ト云フ、又山中自生ノ者ヲジネンジヤウ(○○○○○○)ト云フ、一名ヱグイモ、〈大和〉救荒本草ニ野山藥ト云フ、一名土山藥、〈廣東新語〉白鳩蒔、〈同上〉家山藥ヨリ根細クシテ堅ク長シ、至テ長キ者ハ六七尺ニ至ル、藥用ニ良トス、頌ノ説南中一種生山中ト云者是ナリ、國ニヨリ家山藥ナクシテ、此品ヲ藥食共ニ用ユルアリ、筑前モ然リ、方言ヤマイモ、又一種ツクネイモ(○○○○○)ト呼ブ者數品アリ、和州ノ産ヲ良トス、故ニ大和イモ、ウダイモト云フ、其形扁ク、枝アル者ヲイチヤウガタ(○○○○○○)ト呼ブ、一名ミネイモ、〈上野〉ミカハイモ、〈仙臺〉ハダヨシ、〈同上〉テイセ、〈土州〉トウイモ、〈津輕〉漢名佛掌藷、〈鎭江府志〉一名掌藷、〈撫州府志〉其形肥厚ニシテ、人形ノ如キ者ヲ、ダイコクイモ(○○○○○○)ト呼ブ、一名トイモ、〈仙臺〉漢名觀音薯、〈陽春縣志〉人薯、〈南寧府志〉又最肥大ニシテ、長サ一尺餘ナル者ヲキネイモト呼ブ、是皆山藥ノ類ナリ、苗ノ形状モ異ナラズ、

薯蕷栽培

〔農業全書〕

〈山/山野菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1095 薯蕷うゆる法、細沙の地、山ごみ〈田舍にてはあずと云〉など、いか様和らかにして、深く牛蒡など作りてよき地心、少つまり心の地に宜し、畠に長く溝を掘、深さ廣さ各二尺ばかりにして、牛馬糞と土と合せ、溝の中に半分過入、山のいもの肥たる長き皮の薄きをゑらび、三四寸に折、溝の中に五六寸間ををき て横にねせ、其上より又糞を土とかき合せ入る事三四寸ばかりおほひ置、旱せば水をそヽぐべし、但甚うるほひの過るはあしヽ、山藥は人糞を用る事を嫌ふと云ならはせり、されども久しくよくかれたるを、わきよりかくるはよし、つるの出るを待て、竹や柴などを立て、是にまとはせ、或棚をかまへて、はひまとはせ、又多く作るには籬をゆひて、まとはするもよし、わきを削り、草あらば去べし、求めのなる所ならば、油糟、鰯などの糞を調へ置、側を少ほりくぼめて、次第に多く入べし、糞し養ひによりて過分に利潤ある物なり、霜ふりて掘取べし、麥をまかざる地ならば、霜月の後までもをきて掘取べし、遲き程根よく入物なり、〈◯中略〉又山城にて、薯蕷を作る法、細沙のよく肥たる地の濕氣なきを、いか程も細かにこなし、何にても先作りて、さて來春山藥を作るべき前の冬よりは、麥を作らずして、よく〳〵寒耕し、こなしをき糞をも多くうち、度々犂かへし、熟しをきて、畦を作る事、麥畦の廣さのごとく、竪にても、横にても、筋を廣く切、筋と〳〵の間、凡二尺ばかり、さてたねは、大きなる蘆頭の細長き所ばかりがよけれども、多く作るには求る事成難き故、肥たる太き山藥を四五寸ばかり、竹刀にて切折て、筋の中に横にふせ、其間一尺程をきて、兩方より土をおほふ事、一寸餘なり、同うゆる時分の事、二月初よし、遲くうゆるは、芽立出て痛む事あり、同じく糞を用る事、芽立の土を出る時、油糟にても鰯の粉にても、芽のきは近く、一二寸をきて、鍬にて土を兩方へかきのけ、能ほど入べし、勝手次第糞の多き程よし、其後土をおほひをき、又山草にても馬屋ごゑにても、多くおほひ置べし、是は日おほひのためにもなるゆへ、薄ければ根に日とをりて痛む事あり、其後とても、水糞などを度々かくべし、扨つる漸く出る時、竹にても柴のくきにても、半間に二三本づヽさし、横ぶちを二とをりゆひ、まきつかせをくなり、同掘取時分の事、九月の末十月の間、わきより溝を立、おれざる様にほるべし、急ぎてあらくすれば、必おるヽ物なり〈◯中略〉又つくねいもをうゆる法、是は常の畠など、屋敷の内にても、其まヽうゆれば、土龍のよく食す る物なるゆへ、瓦を廻りに立、その中に糞土を一盃入、たねを指三つばかりのふとさに割て、五七寸も間を置てうへ、其後もわきより、能こゑを入べし、牛馬糞など土の和らぐ物をおほひをけば、その瓦の内殘らず皆いもになる物なり、土龍のくはざるふせぎをよくすれば、是又多く作りて厚利の物なり、凶年飢饉をも助る事、穀に劣らぬ物にて、性よく人に藥なり、取分手入次第にて、凶年をもいとはず、甚益おほく、損なき物なり、諸國にても、城下ちかき所、又は人家多き大邑の邊にては、多く作りて、利潤ある物なり、尤つねの料理にも、品々用ひてよし、

〔成形圖説〕

〈二十二/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 山津芋山芋は根は更にも云ず、食にも藥にも皆悉味の美のみならず、性も良こと野蔌中の巨魁ともいふなるべし、本山原に産るものにして、亦家園にも生(ハエ)り、三四月の交、宿根より苗を出し蔓と成る、葉に縱道(タテスヂ)の光澤ありて軟けし、老(フル)くなれば三尖(ミカド)なすあり、其根大きは蔓亦從て太し、中夏の頃葉間に細花さく、棘の花に頗似れり、色白きと淡紅とあり、實なりて中秋に至りて熟(ミイレ)り、圓扁大小乙(ヒトシ)からず、色梨子に似て、是亦味佳しく、生も熟(ウデ)たるも食ふべし、即糠子なり、〈◯中略〉根は四時よろしけれど、其發芽の節は味腆からず、二八月掘采ぞよき、大なるは圍み二握に近く、長さ四尺にも餘れり、〈◯中略〉凡大和、山城、丹波、近江、紀伊等に産る山芋嘉し、中國西州より東陸山形日光富士郡内練間の諸地また宜し、

〔浪花の風〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 長芋には長きものあれども、是は江戸にて一年芋と云類にて、横に延る様に人力にて製せしものなり、自然と根入深くして、延大なるものは絶てなし、

薯蕷利用

〔藥經太素〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1097 薯蕷 温味甘 山藥トモ 一説ニ銅鐵ヲ忌能洗テ上皮ヲ削去テ、白水ニ付テ切干モ有、又石灰ヲヌリテ干モ有、腰痛ト膝ノ力ナキト、耳ノ聞ヘザルニ用、能安寸白、鎭心神、補虚下氣、強筋骨

〔宜禁本草〕

〈乾/五菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 山藥 甘温平、一名山芋、二月八月採根、暴乾、且愈疾而補、主傷中泄精、補虚羸、益氣力、長肌肉、下氣止腰痛、充五臟、除煩熱、強陰、食療云、利丈夫、助陰力、益顏色、心鏡云、主下焦虚冷、小便數、痩損無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 力、長志安神、主健忘、衍義云、竹刀刮去皮、於簷下風徑處、盛竹篩日色、全乾收之、〈生濕則滑不可入藥、熟則堪http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001ef6c.gif 亦滯氣、〉

〔農業全書〕

〈五/山野菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 薯蕷藥種にする法は、寒中に皮をさり、長さ三寸ばかりに切折、かき灰又は米粉をぬり、竹かごに入、風にあて陰干にし、或は糸にてあみ、寒中さらしをき、能干たる時籠に入藏め置べし、都又は城下などの大邑に、遠き所の山中にて、山藥は多けれども、運送の費かヽり、其利なき所柄にては、乾山藥に調へ藥屋に賣べし、取分藥種には山中の自然生を用ゆるなり、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 仁王經齋會供養料僧一口別菓菜料〈◯中略〉薯蕷三根半〈根長一尺、徑一寸、菓餅料二根、好物料一根、生菜料半根、〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 諸國進年料雜藥大和國卅八種、〈◯中略〉署預七斗、 攝津國卌四種、〈◯中略〉署預六升、

〔今昔物語〕

〈二十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1098 利仁將軍若時從京敦賀將行五位語第十七今昔、利仁ノ將軍ト云人有ケリ、若カリケル時ニト申ケル、其時ノ一ノ人ノ御許ニ格勤ニナン候ケル、越前國ニノ有仁ト云ケル勢徳ノ者ノ聟ニテナム有ケレバ、常ニ彼國ニゾ住ケル、而ル間、其主殿ニ正月ニ大饗被行ケルニ、當初ハ大饗畢ヌレバ、取食ト云者ヲバ追テ不入シテ、大饗ノ下ヲバ其殿ノ侍共ナン食ケル、ソレハ其殿ニ年來ニ成テ所得タル五位侍有ケリ、其大饗ノ下侍共ノ食ケル中ニ、此五位其座ニテ暑預粥ヲ飮テ舌打ヲシテ、哀レ何カデ暑預粥ニ飽カント云ケレバ、利仁此ヲ聞テ、大夫殿未ダ暑預粥ニ飽セ不給カト云ヘバ、五位未ダ不飽侍ト答フ、利仁イ デ飮飽セ奉ラバヤトイヘバ、五位何ニ喜フ侍ント云テ止ヌ、〈◯中略〉而ル間、物高ク云音ハ何ゾト聞バ、男ノ叶テ云様、此邊ノ下人承ハレ、明旦ノ卯時ニ、切口三寸長サ五尺ノ暑預各一筋ヅヽ持參レト云也ケリ、奇異クモ云哉ト聞テ寢入ヌ、未ダ曉ニ聞バ庭ニ筵敷音ス、何態爲ニカ有ムト聞ニ、夜曉テ蔀上タルニ、是レハ長筵ヲゾ四五枚敷タル、何ノ料ニカ有ムト思フ程ニ、下衆男ノ木ノ様ナル物ヲ一筋打置テ去ヌ、其後打次ギ持來ツヽ置ヲ見レバ、實ニ口三四寸許ノ暑預ノ長サ五六尺許ナルヲ持來テ置、巳時マデ置ケレバ居タル屋許ニ置積ツ、夜前http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/0000000187c4.gif ビシハ、早フ其邊ニ有下人ノ限リニ、物云ヒ聞スル人呼ノ岳トテ有墓ノ上ニシテ云也ケリ、只其音ノ及ブ限ノ下人共ノ持來ルダニ然許多カリ、何況ヤ去タル從者共ノ多サ可思遣、奇異ト見居タル程ニ、解納釜共五ツ六ホド掻持來テ、俄ニ杭共ヲ打テ居ヘ渡シツヽ、何ノ料ゾト見程ニ、白キ布ノ襖ト云物著テ中帶シテ若ヤカニ穢氣无キ下衆女共ノ、白ク新キ桶ニ水ヲ入テ持來テ此釜共ニ入ル、何ゾノ湯涌スゾト見レバ、此水ト見ハ味煎也ケリ、亦若キ男共十餘人許出來テ、袪ヨリ手ヲ出シテ、薄キ刀ノ長ヤカナルヲ以テ、此暑預ヲ削ツヽ撫切ニ切ル、早フ暑預粥ヲ煮ル也ケリ、見ニ可食心地不爲、返テハ疎シク成ヌ、サラ〳〵ト煮返シテ暑預粥出來ニタリトイヘバ、參ラセヨトテ、大キナル土器ノ銀ノ提ノ斗納計ナル三ツ四ツ計ニ汲入テ持來タルニ、一盛ダニ否不食テ飽ニタリト云ヘバ、極ク咲テ集リ居テ、客人ノ御徳ニ暑預粥食ナド云ヒ嘲リ合ヘリ、

〔殿中申次記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 正月八日一土筆一折(同○永正http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00000b0c0a.gif ㆔)、〈◯中略〉山芋一折、 若王子〈例年進上之〉

〔建久三年皇大神宮年中行事〕

〈五月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 五月御節供、〈◯中略〉御饌ハ、粽山芋蒜名吉菓子等也、

〔武家調味故實〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1099 一このみてまいるべき物山のいも

〔廻國雜記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 ところ澤といへる所へ、遊覽にまかりけるに、福泉といふ山伏、觀音寺にてさヽえをとり出しけるに、薯蕷といへる物、さかなに有けるを見て、誹諧、野遊のさなかに山のいも(○○○○)そへてほりもとめたる野老澤かな

〔梵舜日記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 慶長二十年正月十四日辛酉、妙法院殿より荷桶肴三種、〈饅頭臺昆布〉薯蕷一折被下也、

〔官中秘策〕

〈二十/年中行事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 年中諸大名獻上物之事九月一薯蕷 大久保長門守十月〈寒中獻上此月ニ入ル〉一薯蕷 鹽雉子〈寒中〉 秋元攝津守一薯蕷 松平越中守一薯蕷 南部甲斐守十二月一自然生薯蕷 牧野豐前守

〔年中恒例記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 九月九日今日より十二月廿日迄、御かゆ栗こぶ參る、山のいもおろし(○○○○○○○)候て參せ候、御かゆの入料、政所より請取之云々、進士説、

〔梅花無盡藏〕

〈三上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 二十日〈◯長享二年十一月〉能生逆旅之主、爲余調藷蕷之麵子(○○○○○)、設浴湯之室、懇切不謝、蓋以藷蕷麵者、越府大主〈◯上杉房定〉之筵而始見之、惜哉洛盤未此風味、逆旅眉寒離帶稜、麵調藷蕷主人蒸、蛻塵衣浴湯室、忘却途中履薄氷

薯蕷産地

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1100 山城(○○) ヌカゴ

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 薯蕷和城河丹江紀諸州最好、奧之南部、野之二荒、駿之富士根、甲之郡内、武之八王練間等處皆佳、京師江都市上惟肥厚者足蔬矣、

〔奧羽觀蹟聞老志〕

〈三/庸貢土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 薯蕷(ヤマノイモ) 俗謂之山薯、以于名取郡佳、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 諸國貢進菓子越前國(○○○)〈(中略)署預二擔、署預子二捧、〉

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 凡諸山野所在草木、〈◯中略〉薯蕷、

零餘子

〔本草和名〕

〈二十/本草外藥七十種〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 零餘子、〈此署豫子、在葉上生、大如卵、〉和名奴加(○○)古、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/芋〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 零餘子 拾遺本草云、零餘子〈和名沼加古〉署預子也、

〔伊呂波字類抄〕

〈奴/殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 零餘子〈ヌカゴ署預子也〉 零陵子〈同〉

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 薯蕷零餘子〈源順曰、和名沼加古、必大(平野)按、今世稱無加古、即山藥藤上結子者也、長圓不一、皮黄或青、或黄青紫褐雜色、小http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a620.gif 多出亦有、肉白煮熟作果食、味似山藥、氣味主治與山藥同、尤爲小兒之弄、〉

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 零餘子ぬかご 相州にてくろめと云、常陸にていもしが子といふ、肥前唐津にてばんごといふ、常陸の國にていふいもしがこは、いもがこにして、しは助字也、平忠盛のいもが子ははふほどにこそなりにけれとありしも、此事とかや、故事こヽに略す、

〔倭訓栞〕

〈後編十四/奴〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 ぬかご 倭名抄に零餘子を訓ぜり、糠子の義、ちひさきをいふなるべし、大臣大饗にも用ひらるヽ事、江家次第に見えたり、今むかごといへり、伊豫にてめかごといふ、〈◯下略〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十九/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1101 零餘子 ヌカゴ〈古名薩州〉 ムカゴ メカゴ〈豫州〉 マカコ〈石州〉 ガコ〈筑前〉 クハンゴ〈同上〉 カゴモ〈防州〉 カグモ〈長州〉 イモカゴ〈三州〉 イモシカゴ〈常州〉 イモゴ〈佐渡〉 クロメ〈相州〉 パンコ〈肥前◯中略〉 山藥ノ實ナリ、葉間ニ生ズ、花ハ別ニ穗ヲナシ生ズ、土芋ノ穗ニ同ジ、ムカゴハ大サ四五分、大小一ナラズ、形ノ圓長モ等シカラズ、褐色ニシテ斑アリ、食用ニ良トス、

〔空穗物語〕

〈藤原の君〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1102 かくて人まいりなどするを、とくまちいちへ出たるまに、さむらひに人まいりて、ひるましり侍に、さるなヽしとて、うへに申ければ、おとヾ心まどひて、われか人かにもあらでの給、かヽればこそは、人なくて年ごろへつれ、いかなるついえ有らん、ましてあたらしくとも人は、十五人つけ、まめをひとさやあてにいだすとも、とをまりいつヽなり、たねなくしていくそばくなりぬる、こをひとつあてにいだすとも、とをまりいつヽなりならしてとらば、おほくのぬかごいも出きぬべし、

〔源平盛衰記〕

〈二十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1102 忠盛歸入事此子〈◯平清盛〉三歳ノ時、保安元年ノ秋、白川院熊野御參詣アリ、忠盛北面ニテ供奉セリ、絲鹿山ヲ越給ヒケルニ、道ノ傍ニ薯蕷絃枝ニ懸リ、零餘子玉ヲ連テ生下、イト面白ク叡覽アリケレバ、忠盛ヲ召テ、アノ枝折テ進セヨト仰ス、忠盛零餘子ノ枝ヲ折進スルトテ、仰下シ給ヒシ女房、平産シテ男子也、オノコヾナラバ、汝ガ子トセヨト、勅定ヲ蒙リキ、年ヲ經ヌレバ、若思召忘タル御事モヤ、次ヲ以テ驚奏セント思ヒテ、一句ノ連歌ヲ仕ル、這程ニイモガヌカ子モナリニケリ、是ヲ捧タリ、白川院打ウナヅカセ御座シテ、忠盛トリテヤシナヒニセヨ、ト付サセ御座ケリ、思召忘サセ給ハヌニコソト、悦思ヒケル處ニ、還御ノ後三歳ト申冬冠給テ、熊野權現ノ御託宣ナレバトテ、清盛ト名ク、

〔今物語〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1102 小大進と聞えし歌よみ、〈◯中略〉ほどなく八幡の別當光清に相ぐして、たのしく成にけり、子などいできて後、もろともに居たりける所、近き所にいものつるのはひかヽりて、ぬかごなどのなりたりけるを見て、光清、 はふほどにいもがぬかごはなりにけり、といひたりければ、ほどなく小大進、今はもりもやとるべかるらむ、とつけたりける、おもしろかりけり、

薯蕷雜載

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/附録〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 江州日野近邑山中、例年八月十日野神の祭あり、東西の村より芋を出して長短をくらぶ、是を芋くらべといふ、毎年かくあれば、よく作たてヽ長さ一丈に近き芋ありとぞ、

〔風俗文選〕

〈四/説〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 山芋説 吾仲芋に數種あり、山中に生ずるを山芋と號し、自然生と稱して山藥に用ゆ、畑に植てまろがせとなるを、つくねと呼て、其功もすくなく其味も次也、秦楚には玉延といひ、鄭越には土藷と號す、杜詩囊中の法をこヽろみず、陳簡齋は玉延の賦作る、鐘山の薯蕷は、三日炊るれど色を變ぜず、我國みちのくの芋は、糸を引事藕のごとし、四月に葉を生じ、初秋に子を結ぶ、ぬかごとよばれて座禪豆に入られ、いもが子ははふ程とよみて、叡聞に預る、寒夜の寢酒には、峨眉山の芋をすり込、卯月の麥飯には、まり子の宿のとろヽをうらやむ、世に腎藥ともてはやさるれど、盆僧の爲には少よろしからず、人參よく人を活し、よく人を殺す類なればとて、椶櫚ばせを植まぜて、其勢ひをもどされけるこそおかしけれ、

佛掌薯

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 甘藷(ツクネイモ)〈本草〉

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1103 佛掌薯つくねいも 東國にてつくねいも、又つくいも(○○○○)、又山のいも(○○○○)、又やまと(○○○)などと稱す、關西にても山のいもといひ、又一名うぢいも(○○○○)といふ、奧州仙臺にてはだいしいも(○○○○○○)と云、津輕にては唐いも(○○○)と云、土佐にて手いも(○○○)と云、上野にてみねいも(○○○○)といふ、今按に山のいもと呼所をヽし、然どもやまのいもは薯蕷にて、東國に長いもといふ是なり、又藥物の山藥は、自然薯蕷を用ゆ、南郭遺契ニ負暄雜録ヲ引テ、山藥本名薯蕷、避唐代宗諱豫、改名薯藥、避宋英宗諱曙、遂名山藥云云、又つくねいもを山のいもといふは、其形山のごとく、又峯の ごとし、或石或人の手にも似たり、故にかく名づくるなるべし、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈一/質疑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 甘藷、多識篇ニツクネイモ、或人曰、此和名ハ穩當ナラズ、江戸トコロト云アリ、恐クハ是甘藷ナルベシ、他日老圃ニ江戸トコロヲ問ニ、老圃曰、江戸トコロハ、常ノトコロノ如ニシテ鬚多ク生ジ、其長サ一二尺アリ、肉色黄ニシテ味アシヽ、灰湯ニテ煮熟スレバ煮栗ノ如シ、又ツクネイモヲ問ニ、老圃曰、其葉ノ形ハ山ノイモノ葉ト同シテ、色ウスクヤハラカ也、其根ノ色モ、山ノイモノ色ト同シテ、山ノイモヲツクネタルガ如シ、山ノイモノ根ハ牛蒡ノ如ク長シ、是ニヨリ長イモツクネイモト云ワケタリト云、本草集解ニ、甘藷ハ薯蕷ト云、或ハ根葉トモニ芋ニ似タリ、其根ハ芋魁ノ如シ、故ニ芋類ト云、然ニ又本草説ニ、性味功用ハ薯蕷ニ同トイヘリ、是ニ依テミレバ、甘藷ハ江戸トコロニアラズ、ツクネイモナルコト疑ナシ、其根ノ芋魁ノ如シト云ハ、是土地ノカハリナルベシ、漢土ノ萊菔ハ根ノ形圓也ト本草ニミエタリ、日本ノ萊菔ノ根ハ長シ、又西國ノ蕪菁根ハ圓也、江州ノカブラハ稍長シ、加州山中ニ一種長キカブラアリ、是皆土地ノカハリ也、漢土ノ甘藷ハ芋魁ノ如ク、日本ノ甘藷ハツクネタル如キモ、土地ノカハリナルベシ、甘藷ハツクネイモ疑ナシ、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 薯蕷甘藷〈近俗稱豆久禰伊毛、根似薯蕷而不長、如老薑芋魁、皮紫或灰黒、肉白或黄微青、味亦同、比薯蕷則不粘、莖葉亦同、然葉不尖而微圓、零餘亦生、氣味甘平無毒、主治亦與薯蕷同、必大(平野)按、是薯蕷之種類也、〉

黄獨

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1104 薢何首烏芋、〈春生苗、蔓生莖、紫色葉葉相對、如薯蕷而不光澤、其三稜亦小異、根大者似大芋魁、而有小稜、其色有黄有白、黄者味苦似萆薢、白者甘而不苦、其花微小似薯蕷、其子著莖如零餘子、世人以爲雌雄、而賞美之、必大(平野)按、葉莖略相似、然雌雄不根不赤白、味不苦濇、状不五稜、花實亦似薯蕷零餘、則乖夜合交藤紅内消之名、惟近俗多食之、而無其毒、則非野芋天荷之比、暫爲毒而可乎〉

〔和漢三才圖會〕

〈百二/柔滑菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 黄獨 苦蔞〈出于邵武府志〉 俗云介以毛 時珍、以黄獨土芋之異名者非也、鎭江府志云、黄獨莖蔓花實、絶類山藥、葉大而稍圓、根如芋而有鬚、味微苦、按黄獨、葉似佛掌薯(ツクネイモ)葉而大、色稍淡、其零餘子似薯蕷之零餘子而大、其根如芋魁而有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif、煮則皮毛自脆、肉白、味淡甘美、處々皆有、藝州廣島多出之、藥肆有黄獨何首烏販者、大僞也、何首烏葉長尖如薯蕷葉、其根如小甜瓜、而有五路毛、〈詳見蔓草下

〔五雜俎〕

〈十一/物〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 何首烏、五十年大如拳、服一年則鬚髮黒、百年大如椀、服一年則顏色悦、百五十年大如盆、服一年則齒更生、二百年大如斗、服一年則貌如童子、走及犇馬、三百年大如三斗栲栳、其中有鳥獸山嶽形状、久服則成地仙矣、

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 黄獨けいも 畿内にてけいもと云、東國にてかしゆうと云、〈藥種の何首烏にあらず、同名にして異なり、〉駿遠にてぜつぷといふ、相模にてぜんぶと云、仙臺にてべんけい芋といふ、

〔成形圖説〕

〈二十二/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 毛芋(ケイモ)〈根芋魁のごとくて、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 鬚あるを似て名けり、〉 何首烏芋(カシウイモ)〈或は毛芋、何首烏ともいふ、〉 大頭久(オホヅク) 比米〈西州◯中略〉毛芋は藤生にて、葉宛がら薯蕷に類て稍長太く、色深し、野生なし、園圃中に種藝(ツクレ)り、棚に搭(ハヽ)し引上す、晩夏葉間に花開く、暮秋に根成て實著く、暖地にては葉に虫を生ぜり、而其根團に、大さ斗の如く毛多し、外土黄色、肉は微黄なり、味略家芋(サトイモ)に似て粘とねばらざるあり、〈◯註略〉其根を乾し蓄て、明年の種となせり、〈◯中略〉上總あたりにて、大ヅクと呼て、湯に瀹し、鹽を傅(ツケ)て朝夕の飯にかてヽ食へり、

〔草木育種〕

〈下/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 黄獨(かしう)〈鎭江府志〉 貯置たるかしうむかごを、四月頃山畑に穴をほること四五寸、一つ植る也、尤まやげ肥を土へまぜ植べし、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十九/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1105 土芋 ケイモ(○○○) カシユウイモ(○○○○○○) カシユウ(○○○○)〈東國〉 ゼツプ(○○○)〈遠州〉 ゼンブ(○○○)〈相州〉 ベンケイイモ(○○○○○○)〈仙臺◯中略〉 コレハ薯蕷ノ類ニシテ蔓生ナリ、葉ハ薯蕷ヨリ圓、大五寸許、秋時葉間ニ穗ヲナシ花ヲ開ク、山萆薢穗ニ似タリ、別ニ子ヲ生ズ、零餘子ヨリ大ニシチ圓扁一寸許、周邊ニイボアリ、褐色、秋後苗枯ル、根ハ年ヲ經テ漸ク大ニナル、形圓扁ニシテ三四寸許、蒻頭(コンニヤクイモ)ニ似テ粗鬚多ク味苦シ、故ニ灰汁ヲ以煠過シ、再煮食フ、色黄ニシテ栗ノ如シ、是藏器後説及恭ノ説ノ土芋ナリ、又藏器ノ前説ハ別物ナリ、俗名ホド、一名フド、〈紀州〉ツチクリ、〈江州〉シバグリ、〈同上〉一名香芋、〈食物本草〉土http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/0000000189cd.gif 兒、〈救荒本草〉地栗子、〈同上〉山中ニ生ズ、藤蔓紫黒色、葉互生ス、形小豆葉ニ似テ五葉、夏月葉間ニ花ヲ生ズ、數蕚穗ヲナス、長サ一寸餘、形豆花ノ如ニシテ、淺黄微紫色、其根モ蔓ニシテ數塊ヲ連ヌ、形鷄卵ノ如ク黄赤色、奧州南部ニハ端午ニ根ヲ用テ節物トス、 又一種三葉ナル者アリ、ミヅホド、〈和州〉ト云、一名マメツル、〈土州〉

〔古今著聞集〕

〈十一/畫圖〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 小野宮のおとヾ、つゐたち障子に松をかヽせんとて、常則をめしければ、他行したりけり、さらばとて、公望をめしてかヽせられにけり、後に常則をめして見せられければ、かしら毛芋に似たり、他に難なしとぞ申ける、

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000189.gif (○)〈遲地反、山薢上二字止己呂(○○○)、〉

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 萆薢(○○)一名赤節、一名白攴、一名快䈥、一名具擎、〈已上三名出釋藥性〉一名虎膝、一名地脊、〈出大清經〉一名蜀脊、一名強脂、〈已上二名出兼名苑〉和名於爾止古呂(○○○○○)、

〔本草和名〕

〈十七/菓〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 薢(○)〈出崔禹〉和名止古呂、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/芋〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 薢 崔禹錫食經云、薢〈音解、和名土古呂、俗用http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e488.gif、漢語抄用野老二字、今按所出並未詳、〉味苦小甘無毒、燒蒸充粮、兼名苑注云、黄薢其根黄白而味苦者也、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 萆解〈オホトコロ(○○○○○)〉

〔伊呂波字類抄〕

〈止/殖物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 薢〈トコロ〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e488.gif 〈俗用字、或用野老二字、未詳、〉 野老〈已上同、俗用之、〉

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1106 萆薢(トコロ)〈又云、世俗皆謂野老也、〉

〔易林本節用集〕

〈登/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 萆薢(トコロ)〈又黄精、又野老、〉

〔多識編〕

〈二/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 萆薢、乎爾登古呂、今案度古呂、

〔倭訓栞〕

〈前編十八/登〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 ところ〈◯中略〉 和名鈔に黄薢、新撰字鏡に土薢をも訓ぜり、拾遺集によめり、古事記にところづらとも見ゆ、薢蔓の義也、春盤に用るは所領の義を取也、本朝式にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e488.gif と見え、漢語抄には野老と書り、所出未詳といへり、長鬚あるをもて名くる也、類聚雜要五節殿上饗にも見えたり、あまどころと稱するは葳蕤也、姫どころと稱するは女萎也、鬼どころと稱するは萆薢也、枕草紙に見ゆ、山どころといふは知母也、字鏡に見ゆ、

〔本朝食鑑〕

〈三/柔滑〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 薢〈訓土古呂〉集解、野老處處家圃多種之、蔓生葉似薯蕷而圓、大如盌有小尖、花有三稜、如桔梗之微花未http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 開、碧色根類老薑薯蕷之状、而有節多長鬚、煮之則根黄鬚白、故稱野老、冬春采根煮熟、拔鬚去皮而果食、味苦而甘、山中自然生者、節多肉瘠、味亦太苦、宜藥用、凡采老肥根煮熟、搗碎堅之作器形、數日晒乾即勁堅如石、刀鐵不入、故造棊枰砧盤、然費功難成、故造之者少矣、本邦春初供蓬萊盤中之一種、而祝多壽及住處繁昌、其多壽者以白鬚多長黄肉堅固有野老之稱也、

〔和漢三才圖會〕

〈九十六/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 萆薢(ところ)〈◯中略〉按萆薢蔓葉頗似薯蕷、開小白花、結青子三稜、其根類老薑薯蕷之状、最肥者如甘藷而黄色、有節多長鬚、俗以爲野老、以鰕爲海老、共充嘉祝之食品、出於武陽者、肥大肉柔、味苦甘相半、煮之食甚佳也、山中自然生者、肉瘠味甚苦、呼曰鬼野老、豫州今治、藝州廣島、多出萆薢、可藥入用

〔藥經太素〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1107 萆薢 平味苦能洗テ酒ニ一夜付テ剉焙、小瘡積聚テ治ス、主腰背痛、治風寒温痹、周身補温、水藏堅筋骨、失溺陰萎益老人

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉署預http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001e488.gif (○)各二合、仁王經齋會供養料僧一口別菓菜料、〈◯中略〉薢四葉、〈好物料〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 諸國進年料雜藥攝津國卌四種、〈◯中略〉松蘿、萆薢(トコロ)、地楡、桑螵蛸各二斤、

〔類聚雜要抄〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 十五節殿上饗目録〈保延元年右衞門督家成進五節時、玄蕃頭久長調進之、◯中略〉居物次第〈◯中略〉次菓子〈小餅 唐菓子 枝柹 小柑子 掻栗 野老(○○) 椿餅 甘栗〉

〔徳川禁令考〕

〈四十四/農家〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1108 天明六午年九月萆薢を以夫食等に致し候儀御觸書家主 與市(淺草心月院門前)右之もの儀、山藪等に生候萆薢之苦味を拔、粉ニ製候方ハ、食物并糊に致し、如割麥之製候方ハ、米麥等を交、夫食相成、尤毒無之品之旨申立候間、吟味之上、在方助にも可成品ニ付、願之通萆薢之問屋株賣場差免候、依之京大阪其外國々〈江〉も、相對を以出店差出賣弘、右製法習請方旨望候ものは、最寄之出店〈江〉申聞次第、聊之禮物ニ不及教遣候筈ニ候、右製方習請、在方ニ〈而〉致手製、夫食糊等ニ用候儀ハ勿論之儀候得共、商賣ニ致度存候者ハ、最寄與市出店〈江〉差出、外賣ハ不致候様可致候、右之趣、御料ハ御代官、奉行支配之所ハ其奉行、私領ハ領主地頭より、寺社領共城下并在町迄、不洩様可相觸者也、九月右之通可相觸

〔武江年表〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 天明六年、淺草心月院門前なる與市といふもの、萆薢の根を以割麥の如く製し夫食とし、又葛の如く製して、食物にも糊にも用ふる工夫をなし、官許を得て、九月の末より、在々諸州迄も賣弘む、

〔甲斐國志〕

〈百二十三/産物及製造〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 一萆薢〈和名土古呂〉 食經燒蒸充粮トアレドモ、今食者ナシ、蒸搗テ爲餻、乾シテ碁盤及硯材ニ造ルベシ、

〔嬉遊笑覽〕

〈十二/附録〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 草木軍談と云草子に、美濃國横藏の藥師如來は萩にて作る、同國石越の圓興寺に安置せらるヽ觀音菩薩も萩なり、越後國久米山の藥師は野老にて作れり、歌に久米山の藥師のみくじところにて苦々しくもたふとかりけり、萩は大木ありとぞ、トコロは粉にして、煉りて器物に作るといへり、この藥師も然せしにや、

〔廣益國産考〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1109 萆薢 ところ萆薢はところなり、本草諸書を按ずるに、無毒にして諸病を治するの大功あり、且食用にもあつべきものなれば、飢歳には五穀にかへて餓死をまぬかるべし、されば我邦にても、古へは食料となせしゆへ、和名抄にも芋の類におさめられ、崔禹錫が食經を引て、薢は味ひ苦く少しく甘し毒なし、燒蒸て粮にあつといへり、〈◯中略〉今は國により食ふ所あれども、大かたは只艸とこヽろえて、食となるべき事はしらず也けり、且此物藥となりて諸病を治する事も、唯醫師のみ知りて、諸人是をしることなし、年凶にして五穀登ず、邊境の民食に乏しく、飢餓におよぶの時に至りては、偶これを掘出すといへども、其苦味をしのびかね、得も食ざること多し、曾て戸谷老人なる人是をなげき、苦味を去る工夫をなし、此物毒なくして藥となる事どもの證をひき、製萆薢略記といへる書をつヾりて、世人にしらせたれども、苦味をぬき製するに至りては、口傳とばかりしるし、且その書、梓にのぼせざれば、世に知る人稀なり、故に予〈◯大藏永常〉これを歎じ、其書を補はんことを願 ふこと久し、いにし天保甲午の年、三河田原に遊事し、俸祿を辱ふせられ、館舍をも給りければ、其四周の竹林中に萆薢の多く生じたるを、家奴に命じほらしめ製し試み、其わざをつばらかにしるし、世にひろくすることヽはなしつ、〈乙〉未年仲冬 黄葉園主人誌

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 河内 芹谷野老  武藏 津久美野老

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 野老 案萆薢之類也、洛北鞍馬山之産爲佳、土人掘其根、水洗煮之後、村婦盛布囊、戴頭上京師、一種有江戸野老、其状長大而其味甘美也、

〔食物知新〕

〈首〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 日域諸國名産果http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a438.gif  鞍馬萆薢〈城州〉久津美萆薢〈武州〉

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 凡諸山野所在草木、〈◯中略〉薯蕷、萆薢、

〔古事記〕

〈中/景行〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110是坐倭后等、及御子等諸、下到而作御陵、即匍匐廻其地之那豆岐田、〈自那下三字以音〉而哭爲歌曰、那豆岐能(ナヅキノ)、多能伊那賀良邇(タノイナガラニ)、伊那賀良爾(イナガラニ)、波比母登富呂布(ハヒモトホロフ)、登許呂豆良(トコロヅラ/○○○○○)、

〔拾遺和歌集〕

〈七/物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 とち、ところ、たちはな、 すけみ思ふどちところ(○○○)もかへずすみなれんたちはなれなば戀しかるべし

〔拾遺和歌集〕

〈十六/雜春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 春ものへまかりけるに、つぼさうぞくして侍ける女どもの、野べに侍けるを見て、なにわざするぞととひければ、ところほるなりといらへければ、  賀朝法師春の野にところもとむといふなるはふたりぬばかり見てたりや君返し よみ人しらず春の野にほる〳〵みれどなかりけり世に所せき人のためには

〔空穗物語〕

〈俊蔭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1110 いきたるものころすはつみぞ、これをひろひてくへとをしへて、このほかひろひ あつめたるものどもをとらせて、わらはヽうせぬ、この子うれしと思ひて、もていきて、はヽにくはす、このヽちは山にいりて、みせしらせしいもところ(○○○)をほり、このみ、かづらのねをほりてやしなふ、

〔源氏物語〕

〈三十七/横笛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 御寺のかたはらちかきはやしにぬきいでたるたかうな、そのわたりの山にほれるところ(○○○)などの、山里につけては、あはれなれば、奉れ給ふとて、御ふみこまやかなるはしに、春の野山霞もたど〳〵しけれど、こヽろざしふかくほり出させて侍るしるしばかりになん、

〔常磐嫗物語〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 山のものにとりては、ところ(○○○)、さわらび、くずの根、まつたけ、ひらたけ、〈◯中略〉月よだけまでもくはばやな、

〔有徳院殿御實紀〕

〈二十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 享保十一年十二月廿四日、増上寺より佳茗萆薢を獻じ、傳通院より蜜柑を獻じて、ともに歳杪を賀し奉る、

鳶尾

〔本草和名〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000137.gif 尾 一名烏〈◯烏下恐脱園一名三字〉烏國子、一名烏菌〈已上出釋藥〉一名烏固、〈出雜要決〉和名古也須久佐(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 鳶尾 本草云、鳶尾一名烏園、〈和名古夜須久佐〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 唐本注云、鳶尾葉似射干而濶短、不長莖花紫碧色、根似高良薑、皮黄肉白、蜀本云、此草葉名鳶尾、根名鳶頭、亦謂之鳶根、又圖經云、葉似射干地生、黒根似高良薑而節大、數个相連、

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 鳶尾(イチハツ)〈一名烏園〉 紫羅傘(同)〈出于閩書

〔大和本草〕

〈七/花草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1111 紫羅傘(イチハツ) 又鳶尾ト云、閩書云、本草圖經名鳶尾、葉似射干、花色紫碧、不高莖、俗呼紫羅傘、其根即鳶頭、亦入藥、射干胡蝶花此類也、圖經又曰、人家亦種、葉似射干而濶短、與射干全別、射干花紅抽莖長、今案〈◯貝原篤信〉陳藏器蘇恭所説射干ハ、倭名カラスアフギナリ、鳶尾ハイチハツナル事分明也、カラスアフギハ莖高ク花紅ナリ、イチハツハ莖短ク葉ヒロク、花紫ニ燕子花ニ似タリ、綱 目ニ鳶尾トアルハ是イチハツナリ、蘇恭保昇ガ説ヨシ、時珍ガ説不據、民家茅屋ノ棟ニイチハツヲウヘテ大風ノ防トス、風イラカヲ不破、蝴蝶花モ此類ナリ、又花白アリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十三下/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 鳶尾 イチハツ(○○○○) ヤツハシ(○○○○)〈薩州〉 一名紫羅傘〈閩書〉 石扁菊〈藥性要略大全〉 墻頭草〈秘傳花鏡〉 高良薑〈同上、芳草類ノ高良薑ト同名、〉 紫羅欄〈同上〉 花薑〈廣東新語〉 紫羅蘭〈本草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001922c.gif 言〉人家ニ多ク栽ユ、一尺許ノ長葉扁布シテ繁茂ス、射干胡蝶草葉ニ似テ深緑色、三四月莖ヲ抽コト一尺許、頂ニ花アリ、大サ三寸餘、凡六出、三出ハ大ニシテ三出ハ小ク、燕子花(カキツバタ)ニ似タリ、紫碧色ニシテ深紫點アリ、又白花及淡黄褐色ノモノアリ、藥肆ニテ此根ヲ採テ知母ニ僞リ雜ユ、射干鳶尾ノ分別、蘇恭及韓保昇ノ説是ナリ、李時珍ハ地ノ肥瘠ヲ以テ言ヲ立テ一物トス、最非ナリ、

〔剪花翁傳〕

〈二/三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 一八(いちはち)艸 鳶尾花、花二種白あり青あり、青はhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000190.gif 蓀(あやめ)に等し、開花三月中旬、方日向、地一分濕、土えらばず、肥小便、寒中澆ぐべし、移十月也、

〔狗猧集〕

〈三/夏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 一八すがりてもなや一八の花の庭〈◯作者不詳〉千種あれど先一はつの花野哉 正滿

烏扇/胡蝶花

〔本草和名〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 射干(○○)〈楊玄操云、上音夜、下考寒反、〉一名烏扇、一名烏蒱、一名烏翣、〈仁諝音所甲反〉一名烏吹、一名草姜、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000137.gif 尾、〈葉名也、出陶景注、〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000137.gif 頭、〈根名也、出蘇敬注、〉一名烏喙、〈出雜要決〉一名烏屢、〈出兼名苑〉和名加良須阿布岐(○○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 射干 本草云、射干一名烏扇〈射音夜、和名加良須安布木、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1112 陶云、射干相似而花白、似射人之執竿者、故阮公詩云、射干臨層城、蘇頌曰、今觀射干之形、其莖梗疎長、如長竿之状、得名由此耳、王念孫曰、子虚賦云、騰遠射干、張氏彼注云、射干似狐能縁木、射干之獸、不之状如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 竿、則射干之草亦不陶氏蘇氏所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 説也、蓋草之名、多取雙聲疊韵、射干疊韵字也、射字古音在虞部、干字之聲亦有轉入此部、禹貢惟菌http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001abb9.gif 枯、史記五帝紀別本楛

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113杆、徐廣曰、杆音楛、是也、蜀本圖經云、高二三尺、花黄實黒、根多鬚、皮黄黒肉赤黄、陳藏器曰、本草射干、即人間所種爲花草、亦名鳳翼、葉如鳥翅、秋生紅花赤點、圖經、葉似蠻薑而狹長、横張、疎如翅羽状、故一名烏翣、謂其葉中抽莖、似萱草而強http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、六月開花黄紅色、瓣上有細文、秋結實作房、中子黒、

〔饅頭屋本節用集〕

〈加/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 射干(カラスアフギ)

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 射干(カラスアフギ) 〈紫金牛、仙人掌、鳳翼、鬼扇並同、〉烏扇茸(同) 野萱草(同)〈並見本草〉烏http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif (同)〈文選〉

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 射干カラスアフギ〈◯中略〉 カラスアフギとは烏扇の字の訓をもて呼びしなり、今俗にヒアフギといふは、檜扇を開くに似たるをいふなるべし、又俗にシヤガ(○○○)といふ物は蝴蝶花也、花史花鏡等に蝴蝶花類射干といふなり、〈シヤガといふ義詳ならず、万葉集抄にシヤガとは、ソレガといふ詞也と見えたり、此花のカキツバタ、ハナアヤメなどいふものに似たれば、かく云ひしも知らず、又俗にカラスアフギをば烏扇となし、此物をば射干の字の音を轉じて、シヤガと云ひしも知るべからず、〉

〔大和本草〕

〈六/藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 射干 和名カラスアフギ、漢名モ亦烏扇ト云、本草ニ陳藏器曰、射干葉如鳥翅、秋生紅花赤點、人間所種爲花草、丹溪曰、紫花者是ナリ、紅花者非ナリト、今日本ノカラスアフギニハ未紫花者、但中夏ニアリテ日本ニナキ也、時珍曰、紫花者呼爲紫胡蝶、イチハツト云物、射干ニ似テ花紫ナル故、是丹溪ガ所謂花紫ナル者ナラント云人アレドモ、射干ト鳶尾ハ全ク別ナリト、蘇恭モイヘリ、只日本ニハ射干ノ紫花ナル者ナシトスベシ、射干非一種、有花白者花黄者花紫者トイヘリ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十五/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1113 射干(しやが) 野萱花 草薑 黄遠 仙人掌 紫金牛〈◯中略〉按本草綱目射干與烏扇一物、因倭名抄亦云、射干一名烏扇、〈和名加良須安布木〉並未詳審、其二物莖葉花形状各別也、蘇頌所謂莖梗疎長、正如射之長竿之状者射干也、莖短葉側相比而如扇者烏扇也、射干葉似鳶尾而濶、段段抱莖上生、中心抽一莖、高三四尺、七月開花似萱草花、而六瓣黄赤、〈俗呼紅朽葉色〉有細點略如山丹花、結實作房、如胡麻房而三稜、一房六隔、有中子、二三十粒大如豌豆、而生青熟紫黒色 而http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、一種小射干(コシヤガ)〈一名姫射干〉葉小而長六七寸、如石菖輩、花亦小淺紫、略似菖蒲花而小、美可愛、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十三下/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 射干 ヒアフギ(○○○○)〈京〉 カラスアフギ(○○○○○○) ウセン(○○○)〈烏扇ハ即漢名ナリ〉 ミチキリ(○○○○)〈伯州〉 一名鬼箭草〈江都新志〉 秋胡蝶〈秘傳花鏡〉 地扁竹〈鎭江府志〉 麝乾〈痘科鍵〉 夜干〈本事方〉 扁筑〈通雅〉 玉燕〈花暦百詠〉山中ニ自生アリ、家圃ニモ多栽テ花ヲ賞ス、鳶尾ノ如キ長葉、互ニ斜ニ並ビ扁ク生ズ、扇ヲ開タル形ニ似タリ、ソノ中心ニ一莖ヲ抽ヅ、六七月ニ至テ高サ三四尺、梢ニ多ク小枝ヲ分チ花ヲ開ク、大サ一寸許、六瓣、瓣細長黄赤色ニシテ紫斑點アリ、其紅色ノモノハ、ベニヒアフギ(○○○○○○)ト云、黄色ノモノハ黄ヒアフギ(○○○○○)ト云フ、共ニ紫點ナキモノヲ賞ス、藥ニハ尋常ノモノヲ用ユベシ、集解ニ陶弘景又別有射干相似而花白ト云、コレハ胡蝶草ニシテシヤガノコトナリ、射干ニ白花ナルモノハナシ、朱震亨紫花者ト云ハ、是鳶尾ニシテイチハツナリ、次ニ本條アリ、紅花者非ト云フハ反テ誤レリ、紅花ノモノ即射干ナリ、李時珍ハ射干鳶尾ヲ混ジテ一物トス誤レリ、紫胡蝶ハイチハツノコトナリ、射干胡蝶草鳶尾ノ分別、本草彙言ニ詳ナリ、宜ク從フベシ、又松岡先生用藥須知ニモ辨ゼリ、増、一種チヤボヒアフギ(○○○○○○○)、一名大坂ヒアフギ、又エゾヒアフギトモ云モノアリ、葉短クシテ幅廣ク、葉ノ末ニ微ク皺アリ、又一種江戸ヒアフギ(○○○○○○)、一名クジヤクヒアフギ、又タチノボリトモ名クルモノアリ、莖長ク直上シテ葉莖ニ附テ登リタルガ如ク見ユ、又一種四方ヒアフギ(○○○○○○)ト呼ブモノアリ、葉四方ニ並ビ生ズ、又間道(シマスヂ)ノモノアリ、ホウワウ(○○○○)ト呼ブモノアリ、葉ノ形ニ因テ名ク、又一種ヒアフギアヤメ(○○○○○○○)ト呼ブモノアリ、加賀ノ産ナリ、形容共ニ射干ノ形ニシテ、花ハ全ク溪蓀(アヤメノ)花ノ形ノ如シ、奇品ナリ、

〔剪花翁傳〕

〈一/二月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1114 射干(しやか) 胡蝶花、花の色白に紫點あり、開花二月中旬より四月最中なり、方半陰、地土肥撰ばず、分株、移春彼岸よし、

〔剪花翁傳〕

〈三/五月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 檜扇艸 花一重、色黄にして葩本に黄朱の點あり、葉の並び檜扇に似て中高く伸るなり、開花五月中旬なり、方日向、地二分濕、土回込、肥油粕、移正月中よし、已下の諸檜扇艸ともに育方同じ、國部檜扇艸(こくぶひあふぎさう/○○○○○) 花形ちとも尋常の檜扇艸に同じ種なれど、英低き曲り屈むほどに、花莖漸々延るにいたつて丸く纏はれ、英竟に外に出て咲也、開花五月中旬、育方前に同じ、〈◯中略〉蝦夷檜扇艸(○○○○○) 花二種、赤色黄色最上品なり、開花五月末なり、育方既に上の章に出たり、形容花莖短く、葉もくねりてよくしまり、長七八寸に過ず、

〔剪花翁傳〕

〈三/六月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 孔雀檜扇艸(○○○○○) 花一重色黄にして、葩本に黄朱點あり、半延るころ葉縮みて雅なり、長二尺餘にいたる、勢ひ孔雀の尾に似たり、育方同種に等し、開花六月中旬なり、

〔剪花翁傳〕

〈四/七月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 鳳凰檜扇艸 花並種のごとし、開花七月中旬より八月下旬迄あり、育方並種のごとし、葉の形ち孔雀檜扇よりも亦目挾に繁密也、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 諸國進年料雜藥山城國卅二種、〈◯中略〉香http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f00006509f0.gif 夜干各十五斤、 攝津國卌四種、〈◯中略〉夜干五斤、〈◯下略〉

菖蒲

〔本草和名〕

〈六/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 昌蒲 一名昌陽、一名溪蓀、一名蘭蓀、〈已上二名出陶景注〉一名臭蒲、〈出香蒲條、蘇敬注、〉一名堯時韮〈出雜要訣〉一名靈身、一名昌陽之草、〈出太清經〉一名水中泉、〈出録驗方〉一名白昌、一名水昌、一名水宿、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001fd68.gif 蒲、〈已上出拾遺〉昌蒲者水精也、〈出范注方、〉菖蒲一名菖陽、注云、石上者名之蓀、〈出兼名苑〉一名荃、〈出文選〉和名阿也女久佐(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 昌蒲 養性要集云、昌蒲一名臰蒲、〈和名阿夜女久佐〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1115 按依本草和名、堯時韮之名出養性要集、臭蒲之名出蘇敬注也、源君以一名臭蒲養性要集、本草云、菖蒲一名昌陽、一寸九節者良、陶注云、生石磧上http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001aa4a.gif 節爲好、眞菖蒲葉有脊一如劒刄、四月五月亦作小釐華也、圖經曰、春生青葉、長一二尺許、其葉中心有脊状如劒、無花實、其 根盤屈有節、状如馬鞭大、一根傍引三四根、傍根節尤密、一寸九節者佳、亦有一寸十二節者、人多植于乾燥砂石土中、臘月移之尤易活、別説云、今陽羨山中生水石間者、其葉逆水而生、根鬚略無少泥土、根葉極緊細、一寸不啻九節、今二淅人家、以瓦石器之、旦暮易水則茂、水濁及有泥滓則萎、李時珍曰、蘇頌言無花實、然今菖蒲二三月間抽莖、開細黄花穗、而昔人言菖蒲難花、非無花也、是知本草所載菖蒲、後人呼石菖蒲者、今俗省呼石菖、非皇國所謂阿夜米久散也、陶注又云、好在下濕地、大根者名昌陽、別説云、池澤所生肥大、節疎麁慢、恐不藥、李時珍曰、生於池澤、蒲葉肥根、高二三尺者、泥菖白菖也、是可以充謂阿夜米久佐也、阿夜米久佐、脊有劒刄、開小釐華、與石菖蒲同、今俗音讀菖蒲、五月五日葺屋者是也、今俗又有別呼阿夜米、葉無劒背、有波奈菖蒲、葉有劒背、並開花紫碧色、皆是馬藺別種、非菖蒲類也、李時珍云、菖蒲乃蒲類之昌盛者、故曰菖蒲、又呂氏春秋云、冬至後五十七日菖始生、菖者百艸之先者、於是始耕、又取此義也、陶注又云、東溪澗側又有溪蓀、根形氣色極似石上菖蒲而葉正如蒲、無脊、俗人多呼此爲石上菖蒲者謬矣、詩詠多云蘭蓀、正謂此也、又有水菖蒲、生溪澗水澤中、甚多葉、亦相似、但中心無脊、時珍云、生於溪澗、蒲葉痩根、高二三尺者、水菖蒲溪蓀也、是今俗呼犬石菖者、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 昌黄〈アヤメクサ〉 昌http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b559.gif 〈同〉 臰蒲〈同〉 菖蒲〈上音昌〉

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 菖蒲(シヤウフ)

〔尺素往來〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116庭上之景、莊嚴前栽仕候、〈◯中略〉雜草木者〈◯中略〉石菖蒲、

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 菖蒲(シヤウブ/セキシヤウ)〈昌陽、堯韭、水劍草並同、〉 泥蒲(シヤウブ)〈白菖同生于池澤、蒲葉肥根高三四尺者、〉 水蒲(アヤメ/シロアヤメ) 花菖蒲(ハナシヤウブ) 錢蒲(カウライセキセウ)

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1116 昌蒲アヤメグサ 倭名鈔に養性要集を引て、昌蒲一名臭蒲、アヤメグサといふと註せり、唐本草に據るに、昌蒲を臭蒲といふは香蒲に對し言ふなり、李東璧本草に、昌蒲凡五種ありと見えたり、此にアヤメグサといふものは、白菖溪蓀の類也、此に石菖蒲といふものヽ類は、即眞の 昌蒲なるなり、此に高麗石菖蒲といふものは、錢蒲といふもの是也、アヤメといふ義不詳、昔も此物の名によりて相論の事ありなど云ひ傳へしなり、

〔日本釋名〕

〈下/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 菖蒲(アヤメ) あやはあざやか也、めは見ゆる也、他の草より色うるはしく、あざやかに見ゆる也、せきしやうの事也、花さくあやめは溪蓀、はなあやめと云、菖蒲の葉ににたる故に、是もあやめと云、

〔八雲御抄〕

〈三上/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 菖蒲 あやめぐさ 抑只あやめとばかりいへり、但くちなはの名なりと云り、通俊匡房と有種々相論、但あやめといへるうたおほし、非難、通俊難無由、万にあやめぐさかつらにきむ日いへり、

〔藻鹽草〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 菖蒲あやめ草〈◯註略〉あや引、あやめふく、〈五月五日〉あやめかほる、ねながきよしいへり、あやめ草こますさめず、〈あやめを馬くはずと云々、すさめぬとはくはぬ事也、〉あやめのくさ、〈拾遺〉袖のうへにねざしとヾめよあやめ草、あやめ草玉にぬく、同〈◯同、恐衍〉 〈万〉かくれぬ下よりねざすあやめ、草、やどにかざれる花のあやめ草、

〔宜禁本草〕

〈乾/藥中草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 菖蒲 辛温平、開心孔九竅、明耳目音聲、止小便利、小兒温瘧身熱不解作浴湯、久服益智、聰明不忘不迷、〈五月十二月〉採根甚去虫并蚤虱、抱朴子、韓藂服菖蒲十三年、身上生毛、日視書万言皆誦之、冬袒不寒、近人瓦石種、旦夕易水則茂、水濁有泥滓則萎、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/水草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1117 菖蒲 昌陽 堯韭 水劒草 〈和名阿夜女久佐、今唯呼字音、〉本綱、菖蒲冬至後五十七日菖始生、菖者百草之先生者、春生青葉、四時常青、新舊相代、葉中心有脊、状如劒、二三月間抽莖開細黄花穗、其根一寸九節者良、按菖蒲者總名(○○○○○)而本草有五種、今分爲(○○○)三種(○○)、菖蒲石菖白菖(アヤメ)是也、入藥宜石菖根、醫書雖菖蒲根惑、菖蒲乃石菖之大者長二三尺、濶五六分、有劒脊、五月五日葺屋檐者也、或件日浴菖蒲湯、或 以石菖根酒飮之、則禳邪氣、一種有花菖蒲、開紫花白菖花而痩小、石菖蒲(せきしやう) 錢蒲(カウライセキシヤウ)本綱、石菖蒲生於水石之間、葉有劒脊、痩根密節、高尺餘、一種人家以瓦石器之、一年至春剪洗愈剪愈細、高四五寸、葉如韭根如匙柄粗、入藥須此二種一寸九節者、一種 錢蒲(○○)其根長二三分、葉長寸許、石菖根〈辛温〉通九竅耳目、出音聲心智年、〈手少陰足厥陰〉心氣不足者用之、虚則補其母也、肝苦急以辛補之是也、以爲神仙之靈藥、〈忌飴餹羊肉、勿鐵器人吐逆、〉按石菖多栽水盆、常灌水則能繁茂、眼病人弄之見其蒼色快、春抽莖開細黄花穗、凡石菖菖蒲之類、葉有劒脊、而爲香臭氣也、白菖燕子花之類、葉無劒脊、色亦淡、軟http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c654.gif 而無香氣以爲異、所謂錢蒲乃俗云髭石菖、〈又名高麗石菖〉葉長一二寸、其細小者爲佳品、白菖(あやめ/○○) 泥菖蒲 莖蒲 昌陽 水昌蒲 水宿 溪孫 蘭孫 〈今云阿夜女〉本綱有二種、一種生於池澤、根大而肥白、節疎者白昌也、俗謂之泥菖蒲(○○○)、一種生溪澗、根痩而赤、節稍密者溪孫也、俗謂之水菖蒲(○○○)、其葉倶無劒脊、其根乾後輕虚、多滓不藥、按白菖蒲葉花皆似燕子花而痩小、其花紫色、如飛燕状、又有白花者淡紅花者、皆變種也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1118 菖蒲(○○) セキセウ(○○○○) ネガラミ〈大和本草〉 一名緑劒眞人〈輟耕録〉 石澗菖蒲〈遵生八牋〉 石上草〈山堂肆考〉 劒背草〈楊州府志〉 堯薤〈典籍便覽〉 望見消〈外科啓玄〉 木臘 陽春雪〈共ニ同上〉 紫茸〈名物法言〉 松衣个〈採取月令〉 跛者〈金光明經、梵名、〉 石菖〈白昌條下〉 菖莆〈正字通〉 荃〈典籍便覽〉 昌羊〈通雅〉溪澗水旁ニ生ズ、或ハ石ニ附テ生ズ、平地ニ移シ栽テ繁茂シ易シ、石ニ附タル者ヲ採、土ヲ洗ヒ去リ、水ヲ用テコレヲ養フモ亦茂ス、葉皆深緑色ニシテ劒脊アリ、冬モ枯レズ、是ヲ切レバ香氣アリ、 春莖ヲ抽テ頂ニ穗ヲナス、長サ一二寸、形筆頭菜(ツクツクシ)ニ似テ狹ク堅シ、蓽http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001f063.gif ニ似タリ、淡黄色、俗ニメハジキト呼ブ、根ハ緑色節多シ、大サ三分許、節多ヲ良トス、故ニ一寸九節ト云フ、然ドモ必シモ九ノ數ニ拘ハラズ、本草原始ニモ、多節者良、不必泥于九節、但忌鐵ト云フ、石菖ノ品類甚多シ、大葉ナル者アリ、小葉ナル者アリ、直葉ナル者アリ、兩面ナル者アリ、白色ナル者アリ、間道ナル者アリ、小葉ナル者ハ高麗ゼキセウ(○○○○○○)ト呼ブ、即錢蒲ナリ、本草彙言ニ、甚有短一二分者ト云フハ、ビロウドゼキセウ(○○○○○○○○)ナリ、葉長サ二三分ニシテヨク石ニ附ク、是即浦城縣志ニ謂ユル雀舌ナリ、又尋常ノセキセウモ、度々葉ヲ剪ル時ハ細短ニナル、時珍モ亦コレヲ云リ、然レドモ高麗ゼキセウ、ビロウドゼキセウ等ハ、剪洗ニ因ルニ非ズ、自然ニ小ナル者ナリ、花戸ニハ鬼ゼキセウ(○○○○○)、鎌倉ゼキセウ(○○○○○○)、アヅマセキセウ(○○○○○○○)、唐セキセウ(○○○○○)、琉球セキセウ(○○○○○○)、其餘數品アリ、セキセウヲ養フ法ハ、秘傳花鏡ニ詳カナリ、増、種樹家ニテ名稱尤多シ、大ナル者ニダテクラベ、龍門、中ナル者ニ有栖川、正宗、チウヤ、シマゼキセウ、兩根、タニミヅ、黄八丈、光龍、ミダレガミ、アサギ、マタゼキセウ、小ナル者ニ龍ノヒゲ、カマクラ、カウライセキセウ等アリ、其他品類多シ、〈◯中略〉白昌(○○) アヤメグサ〈古歌〉 ウタカタグサ ノキアヤメ 白實草〈共ニ同上〉 セウブ 一名泥蒲〈群芳譜〉古歌ニアヤメト讀ハ、皆今端午ニ簷ニ插ムセウブナリ、今俗ニアヤメト呼テ、花ヲ賞玩スル者ハハナアヤメノ略ナリ、セウブハ水中ニ生ズ、燕子花(カキツバタ)ノ葉ニ似テ狹長、淡緑色、薄シテ一縱道アリ、葉ノ長サ四五尺叢生ス、夏穗ヲ出ス、セキセウノ穗ニ似テ大ナリ、根モ亦粗大ニシテ香氣アリ、藥ニ入レズ、一種間道ノ者アリ、又一種ハナセウブハ葉ノ形同クシテ、花ハ燕子花ノ如シ、數百品アリ、漢名詳ナラズ、釋名、溪蓀(○○)、 蘭蓀(○○) コノ二名ハハナアヤメニシテ即水昌蒲ナリ、今略シテアヤメト云フ、山溪ニ自生ス、陸地ニ移シテ繁茂シ易シ、人家ニ多ク栽ユ、葉白昌ニ類セズ、燕子花葉ニ似テ狹シ、長サ一 二尺多ク叢生ス、四月花ヲ開ク、圓莖高サ一尺許、梢ニ二三花開謝相續グ、形ハナセウブニ似テ小ク、瓣狹ク紫碧色、大小數十種アリ、又白花ナル者アリ、秘傳花鏡ニ白花蓀紫花蓀ノ名アリ、

〔増補地錦抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1120 花菖蒲(○○○)るひるり八重 るり色、黒きほどなり、せんやう、大りん、 しやれかき うすがき色、ひとへ、 江戸紫 こいむらさき、八重と一重あり、 白 雪白、ひとへ八重有、八重は少さくら色、 村雲 白ひとへに、うすきべにのかすりうるはしく有、 紅絞(べにしぼり) むらくものごとく、白にべにかすり有、 縮緬 へりしぼりにて、さらさあり、 紫縮緬 むらさきにちゞみ有、ひとへ、 花せうぶるひ、右之外いろ〳〵有、白昌(あやめ/○○)草(/○)紫あやめ 葉は花せうぶのごとくなり、菖蒲杜若http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000191.gif (まこも)草等に紛やすく、あやめたれ共、各別ちがひ有草也、花紫せんやうとひとへ有、 白あやめ しろし、花の中黄色、八重ひとへ有、 柿あやめ うすかきいろ、八重ひとへあり、 是まであやめるひ〈◯中略〉菖蒲 端午に家をふく草也鬼石菖 葉ひろく長し、しやうぶに似たれば、菖蒲せきしやう共云、鎌倉(かまくら)石菖 葉ほそく長く色青み上々よし、葉先しやんとたちてほそし、是を上とす、東(あづま)石菖 葉形かまくらにまぎるヽ計似たれ共、しやんとたヽず故にわろし、唐(から)石菖 葉みじかく色青みよし琉球 からせきせうのるひ、葉大きくわろし、

〔地錦抄附録〕

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1120 花菱石竹(はなびしせきちく) 花形紋所の花びしのかたちにて、色上々の紅、ながめすぐれてよし、五月中旬、つねの石竹同時に花開く、又一種花形同斷にて、うす色ほんのりときれいなるあり、櫻び しといふ、又一種花形同斷にて、白地に紅のさらさとびいり有、さらさ花びしといふ、又一種櫻色にてやゑにひらくあり、やゑ花びしといふ、又一種花形切りさきて、せんやう白花有、はぐまといふ、右何も花形異風にしてかはりたる物也、總名をいぎりすといふ、せきちく也、咲分白菖(さきわけあやめ) 花形つねのあやめなり、花白地にあさぎ色のさらさ、さきわけのごとくにあり、四月咲、鷹羽白菖(たかのはあやめ) 花はつねのあやめにて、むらさき色、四月さく、葉に鷹の羽のごとくなるもやうあり、琉球菖蒲(りうきうしやうぶ) 花形丸く極大りん、指渡し曲尺八九寸餘迄、花中のくもでほこ花かつこうよりちいさく異形也、うす紫のうすくきヽやう色也、五月咲、葉大く長く高さ六七尺ほどまで立のびる、琉球國より種來るよし、

〔増補地錦抄〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1121 せきせう せきせうはたくさん成物にして、又よきせきせうはすくなし、其品さまざま有る中にも、鎌倉せきせうといふを上とす、先植様はひりの木にてまげたる器物か、又は手水たらいのそこに水ぬけの穴をほり、しのぶ土に合、肥少まぜ、右の器物に一はい入れ、中の少し高様にならして、さてせきせうの根を水にてあらい、根の長さ一寸ほど置て切てすて、器物の中より段々植て、日かげ成所に上にすだれをかけて置く、成ほどしげく植たるよし、四五月に植たるは、來年の三四月に、器物をやぶりすて見れば、白き根計になりてからむ、水鉢に入葉をすかし、箸にて葉をなでつやを出す、箸にてなづるに心得あり、先づ箸のさきをほそくけづりて、やわらか成紙をまき、清き水にひたしてせきしやうの根本より、葉すへまでなづる、葉末外へねたるは内へ成やうに、又内へまがりたるは外へねせる様に箸をつかふ、手心大節なり、時々手かけてしるべし、とかく毎日箸にてなづれば、葉色いさぎよくなりて、しやんとする物也、つねに水をつけて置ば、根やわらかになりてわるし、葉末より赤くかるヽも、水のすぎたるゆゑんなり、但水を 少かけて持べし、年をふるほど、根しまりてよし、さて冬は土藏に入、時々朝日のさす所へ出したるよし、又朝日のさす所に、上と脇を寒氣のあたらぬ様にかこいて、置たるもよし雪霜少もあたれば、葉先かるヽ、二月の時分より取出て、葉をすかし指南をすべし、からせきせうは、鉢に植る砂土にかべ土をまぜ鉢にならし、せきせうの葉を、根本より切テすて、鉢の中よりあつく植る、廿日ほどして葉しげりて見事なり、冬は雪霜にあたらぬ様にすべし、まきせうは、岩松をあつめつがねて、針金にてまき、さてせきしやうの根をあらい、わらび繩又はしゆろなわの、成ほどほそきにて、右の岩松へまき付る、尤葉は切てすてたるがまきよし、やがて葉出る物なり、節々箸にてなづべし、岩松にまきたるは、よく水をあげ、久敷さかへてよし、外の物にまきたるはくさりてわるし、近年の仕出しに、ちいさきほうろくに、田土合肥をねりまぜ、平にしてせきせうの根の長きをあらい、葉をむしりすて、右のほうろくのねり土へならべ、所々へ竹の串をさして、根のうごかぬやうにして置、五ケ月にしてほうろくをやぶりすつるに、よく根からみて有る葉をすかし、手入して用る、俗に龜子せきせうといふ、その形中高くして龜子似たればなり、ほうろくは其性土にして水をふくむゆへ、せきせうをして早くからましむる、又こけらせきしやうといふ有り、是はせきせうの根も葉もよくあらい、油綿を以てなづれば、葉色、うるはしくなるを、竹のくぎをけづり、せきせうをあつめ、根と根へかの釘をうちてかため、夕に拵朝に賣る、初心人は是をしらず、かの油にてなでたる葉、色の見事成にまかせて調るに、根は釘付成ゆへ、明日をまたずしてかるヽ、吟味有べし、又澤せきせうと云は、在郷の澤よりほりて來るを、其まヽあらい、油わたにてなで鉢に入る、是も後はわるし、右の外にもつくり様侍れ共、大方此分よし、

〔草木育種〕

〈下/藥品〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1122 菖蒲(せきしやう)〈本草〉 種類數十品あり、漢土西湖の邊に生ずるもの舶來(もちきた)る、其形状本邦の石菖 に變ことなし、又有栖川と云は葉の先皆上に向、これ又漢種なりと云、又竪に黄色の筋あるを黄金又虎の卷などヽ云、又葉の面白く背青きを晝夜と云、其外高麗、雞尾等色々有、又兩根と稱するものは、根の兩面より鬚根を生ずるを云、常の石菖にも多き中には自然に兩根になりたるものあり、又兩根を拵る法あり、常の石菖は皆根の腹より鬚を生ずる也、片根なるを以て、葉と鬚を剪て、根ばかりを竪に起て植置ば、兩方より根を生るなり、然れども久く植置時は、又常のごとく片根に返る也、又石菖を石に著るには、葉を剪て根を石へ添て、細き針金にてしかと卷て、絶ず水を灌ときは、鬚根皆石に著もの也、花鏡曰、鼠糞蝙蝠屎を水に和し澆ば榮るといへり、

〔草木育種〕

〈下/美花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1123 蘭蓀(あやめ)〈本草〉 野土眞土ともによし、魚洗汁を澆ば花多し、冬は人糞を用てよし、あやめ種類多し、紫は常なり、紫と白との紋あり、又鳶尾(いちはつ)もあやめの手入にてよし、又俗に扇菖花、尾張國にてひおふぎあやめと名く、葉は射干(ひをうぎ)いちはつなどに似て、花はあやめに似たり、

〔剪花翁傳〕

〈二/三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1123 鎌山http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000190.gif 蓀(かまやまあやめ) 花青紫形大きし、開花三月中旬、方日向、地二分濕、土薼交、肥小便、春芽出し前より花前まで、三四度澆ぐべし、分株春彼岸十日前にすべし、燕子花より高き所よし、水氣の少き方しかるべし、

〔剪花翁傳〕

〈三/四月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1123 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000190.gif 蓀(あやめ) 花白青、又姫あやめあり、花青し、いづれも開花四月上旬、方日向、地二分濕、土えらばず、水氣は少き方よし、肥小便、芽出し前に入べし、芽出して後にも入べし、分株春彼岸十日前よし、〈◯中略〉花菖蒲 種々あり、開花紅は立春より百十日頃に咲也、紫は是に後るヽ事五日ばかり、瑠璃紺は又五日ばかり、白又是に五日許おそし、村雲絞、白紺絞、網絞、吹墨等の斑入あり、さて斑入に六葩のものもあり、是は三葩の八重なるものなり、咲頃ともに同じ、方日向、地三分濕、土えらばず、肥淡小便、芽出しの時より二三度そヽぐべし、其外は用ひず、移分株春彼岸よし、

〔百姓傳記〕

〈十三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124 菖蒲ヲ植ル事一菖蒲ヲ植ルニ土地ニ嫌ヒナシ、雨池堀岸河岸土崩レ損ゼル處々ニ、根ノハルコト限リナシ又水ナキ處ヘモ生上ルゾ、雨池ナドノ小サキ池ニハ忌ベシ、生茂リ水ヲ減スモノナリ、〈◯中略〉石菖ヲ植ル事一石菖ノ種色々アリ、土民ノ用ルハ大石菖ヲ植ベシ、山間ナドノ雨池石地ナドニテ崩ルヽ處ノ水付、又澤水池水ノ餘リテ地ヲ破ル處ニ植テ、地ヲシメサセ、石ヲトヂ合ヨ、四季トモニ水ノ付ク處ニハ、古根ヲ裂キ植ヨ、井ノモトナドノ土ウクヤキ流レ、小石出ル處ニ植テトヂ合ヨ、赤葉サイサイ取テ捨テ、葉ヲ刈リタルガヨシ肥ヱテハ益ナク、瘠テハ根茂クナリテヨシ、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124 石菖蒲モ世ニ賞セラルヽヲ以テ、種類甚多シ、其中ニ於テ高麗、黄金、西湖、鷄尾(トリノヲ)、兩根(リヤウネ)、有栖川、晝夜等、其名ノ高キ者ナリ、凡ソ石菖ハ水濱ニ繁生スル者ナルヲ以テ、水ヲ澆テ作ルヨリ外ニ、作法アルコト無シ、肥養ニハ鼠糞蝙蝠糞ヲ古來稱スレドモ、然レドモ馬溺鹽ヲ用ルヲ殊ニ宜シトス、又其葉ヲ悉ク剪去リ、鐵線ヲ以テ根ヲ石ニ卷附ケ、恒ニ水ノ下滴ヲ乾ザルヤウニシテ置トキハ、鬚根ミナ石ニ繞著者ナリ、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124 諸國進年料雜藥山城國卅二種、〈◯中略〉昌蒲三斤 伊賀國廿三種、〈◯中略〉昌蒲木斛夜干各十斤、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈十/夏雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124鳥霍公鳥(ホトヽギス)、厭時無(イトフトキナシ)、菖蒲(アヤメグサ)、蘰將爲日(カヅラニセムヒ)、從此鳴度禮(コユナキワタレ)、

〔古今和歌集〕

〈十一/戀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124 題しらず よみ人しらず郭公鳴やさ月のあやめ草あやめもしらぬ戀もする哉

〔拾遺和歌集〕

〈二十/哀傷〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1124 ふくたりといひ侍けるこの、やり水にさうぶをうゑをきてなくなり侍にける、 後のとしおひいでヽ侍けるを見て、 粟田右大臣〈◯藤原道兼〉しのべとやあやめもしらぬ心にもながからぬ世のうきにうへけん

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1125 草は さうぶ

〔枕草子〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1125 卯月の晦日に、はせ寺にまうづとて、淀のわたりといふものをせしかば、舟に車をかきすへてゆくに、しやうぶこもなどの末みじかく見えしを、とらせたれば、いとながヽりける、こもつみたるふねのありきしこそ、いみじうおかしかりしか、たかせのよどには、これをよみけるなめりと見えし、三日といふに歸るに、雨のいみじう降しかば、さうぶかるとて、笠のいとちいさきをきて、はぎいと高きおのこわらはなどのあるも、屏風のゑにいとよくにたり、

〔東海一漚集〕

〈一/古詩〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1125菖蒲并序行庭忽見盆菖蒲、不知其厝之者爲誰也、詩以干之、欲永屬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 吾也、我自筑紫歸、空庭日日遊、空庭有何物、雪消蘭芽抽、菖蒲不主、瓷甌横蟠蟉、鬼神非吾畏、坡仙語可羞、正是尠薄者、欲之未敢偸、願言情人意、惠斯青髮http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000192.gif

〔鵞峯文集〕

〈九/記〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1125 石菖盆記有人寄石菖蒲一束、其葉之長或可二尺或尺餘、其短也或七八寸或五六寸、參差秀出尖尖獵獵、所謂水劍草是也、屈曲其根結葉中、提之不亂動之不分、貯水於盆以涵其根、置之座右以爲文房之一具、其色之青可以益老眼之明、其精之感可以收燈油之煙、則於書得其便亦悦乎、嘗聞蘇玉堂有言、石菖蒲濯去泥土、漬以清水盆中、數十年不枯果然否、嗚呼我老矣、數十年之久非期也、唯就今日之、時是陰氣之極木葉悉脱、唯此一物渾青自若、謂之歳寒草、可松栢並稱也、且席上之觀、暗合玉堂之言亦奇乎、對此欲神仙服餌之事、則醫藥非我所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 知也、爲之欲詠吟、則疊山歌備矣、其歌尾曰、人間千花萬草儘榮艷、未必敢與此草高名、可謂説得好、然豈徒草而已哉、言之長也、我唯取銀海 之光而便於舒陳編耳、丁巳仲冬氷輪減一分之夜作之記

〔大江俊矩記〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 文化十二年六月十七日辛未、於上立賣筑後面會、花菖蒲銘、隱レ蓑、先年自裏松家http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 院宮、若于今其根在彼宮者、一芽申受度間、聞繕可申由、内々自堀川家申來、仍筑後へ進藤式部卿へ内々聞繕之事相願置、當方之名前は出し不給、若可相成者、一芽式部卿拜領致し置、可給様頼置候、領掌也、

〔萬寶鄙事記〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 石菖蒲を瓦石の器に植へば、旦夕水をかへてよし、水にごり泥滓(どろかす)あれば萎む、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 山城 美豆菖蒲〈五月五日洛中用之〉

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 菖蒲 伏見美豆多菖蒲、洛下端午所用悉出斯所

〔武江物産志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 鼠山ノ産 紫羅襴(あやめ)

〔風俗文選〕

〈三/譜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 百花譜 許六あやめは小づくりなる女の、目を病る心地ぞする、

劇草

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 蠡實〈楊玄操音禮〉一名劇草、一名三堅、一名豕首、一名荔實、一名馬藺子、一名馬薤、〈已上二名出蘇敬注〉一名旱蒲、〈出稽疑〉一名苅薽、〈列眞二音出兼名苑〉一名獨行子、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a284.gif 首、〈已上出釋藥〉和名加岐都波太(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 劇草 蘇敬本草注云、劇草一名馬藺、〈和名加木豆波太〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1126 千金翼方證類本草中品云、蠡實一名劇草、證類本草引唐本注云、此即馬藺子也、本草和名云、一名馬藺子、出蘇敬注、按本草所載蠡實、是劇草之子、故蘇云、即馬藺子、蘇又引通俗文云、一名馬藺、是擧此草之一名、故但云馬藺、不子、源君此亦似本草和名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 之、則一名馬藺下、恐脱子字、引劇草、不蠡實、故不蘇云馬藺子也、載蘇所引通俗文一名馬藺歟、今姑依舊不遽増、〈◯中略〉説文、荔似蒲而小、根可刷、月令仲冬之月荔挺出、顏氏家訓載蔡邕月令章句云、荔似挺、鄭玄曰、荔挺、馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000043260.gif 也、以荔挺草名、逸周書時訓篇、及顏氏家訓引易通卦驗皆同、則或單言荔、或累言荔 挺也、高誘注呂氏春秋云、荔草挺出也本草蠡實一名荔實、其作蠡者假借字也、張揖注子虚賦之馬荔、荔藺一聲之轉、馬藺亦馬荔之假借、圖經云、北人訛呼爲馬楝子、圖經又云、葉似薤而長厚、三月開紫碧花、五月結實、作角子麻大、而赤色有稜、根細長通黄色人取以爲刷、時珍曰、蠡草生荒野中、就地叢生一本二三十莖、苗高三四尺葉中抽莖、開花結實、按是皇國不産、享保以來有漢種繁殖、今俗呼唐蘭、或呼禰治阿也米、用其根印刻本馬楝、其加岐豆波太、亦是草之一種、無別可充漢名、則輔仁所訓非誤也、後人以杜若之、杜若山薑、其説固謬、不辨、近人以燕子花之、燕子花出蠻溪叢笑、其草蔓生不加岐豆波太、不輔仁以馬藺之之不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif 遠也、

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 杜若(カキツバタ)

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 燕子花(カキツバタ)〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州府志云、溪蠻叢笑云、紫花全類燕子、一枝數葩、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 人名爲紫燕、〉

〔日本釋名〕

〈下/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 燕子花(カキツバタ) かきはかけり也、けりの反しハき也、つばハつばめ也、めを略す、たは立(タツ)也、此花のかたちハ、かけるつばめの、はねをひろげながら、しばらく物にとまりて立ににたり、かけるつばめたつ也、つばめににたる故、からの書にも燕子花と云、

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1127 劇草カキツバタ〈◯中略〉 萬葉集には、垣旗また垣津幡などの字を用ひて、カキツバタと云ひけり、後の人また杜若の字、讀てカキツバタといふなり、即今俗にバリンといひ、カキツバタといふ者は、相似て同じからず、今いふ所のバリンは即馬藺也、カキツバタは即今紫羅欄、俗名墻頭草、一名は高良薑といふ是也、カキツバタといひしは、其花の垣下にさきたつるをいひし名とこそ聞ゆれ、〈本草圖經に據るに、馬藺子は葉似薤而長厚、三月開紫碧花、五月結實作角子、江東頗多、種庭階、呼爲早蒲と見えたり、補筆談通雅等の書に據るに、杜若即高良薑也、楚地山中時有之、大者曰高良薑、細者爲杜若、唐時陝州貢之と見えたり、また花鏡には、紫羅欄俗名墻頭草、一名高良薑、葉似蝴蝶、而更潤嫰、四月中發花、青蓮色、葉瓣亦類蝴蝶花、大而起臺、紫翠奪目可愛と見えたり、彼是を併せ見れば、我國の古にありては、今の如くにカキツバタ、バリンなど分ちいふにも及ばず、すべてカキツバタと云ひしを、倭名鈔には馬藺をもてカキツバタとなし、世の人また杜若をもて、カキツバタといひしに因りて、後に倭名鈔にいふ所のものをば、其字の音によりてバリンなど分ち呼びしなり、杜若即高良薑、紫羅欄一名高良薑などいふ説に依らむには、我國に〉 〈して杜若の字を用ひて、カキツバタと讀みし、非也とも云ふべからず、近き頃ほひ、或人http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州府志海澄縣志等に據りて、溪蠻叢笑に見えし燕子花、此にいふ所のカキツバタ也といふなり、紫花全似燕子などいふは、似たる事は似たれど、叢笑には生藤也とも見えて、また正しく其物をも見ねば如何にとも思ひ分たず、〉

〔八雲御抄〕

〈三上/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 杜若 池によめり、かきつばたとて、かきによせてもよめり、其も不水歟、 萬十七、きぬにすりつけますらをのといへり、

〔大和本草〕

〈七/花草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 燕子花(カキツバタ) 國俗昔ヨリ杜若ヲカキツバタトス非也、杜若ハヤブミヤウガト云モノ也、燕子花ハ三四月ニ花ヲ開ク、其性未詳、福州府志ニ出タリ、倭名貌吉花ト云由、藏玉ニ見エタリ、水草ナリ、然ドモ水深クシテ葉ノ鋒マデヒタレバ枯ル、陸地ニモウフ、濃紫色ニシテ四時花開クアリ、又白花アリ、猶異品アリ、小燕子花アリ、葉莖花ノ形ハ同、莖高二三寸、花甚小ナリ、正月ニ開花、是大ナルト異リ、濕地ニ宜シ、不于水中

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/水草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 燕子花 加岐豆波太http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州府志云、紫花全類燕子、一枝數葩、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 人名爲紫燕、按燕子花其葉似白菖而大、色淡、其花實共似白菖而肥大、爲紫色之正、近頃出淺紅者白色者、皆變種也、五月爲盛、又有四時開花者、參州八橋之産得名、

〔増補地錦抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1128 杜若(かきつばた)のるひ鷲尾(わしのを) 花るりこん色、花中に白キ筋あり、しべのごとく成ほこ三まひづヽ上へ立〈ツ〉物なり、是もるりこん色々、  羅生門(らせうもん) 花うすくろし  村雲(むらくも) 白花にるり色のほし、さらさのごとくあり、  橋姫(はしひめ) むらくものごとくにて、るりのさらさ成ほど見事、大りん也、  濡鷺(ぬれさぎ) 花水あさぎいろ  薄雲(うすぐも) 白花に村々とかすり有  四季咲(しきざき) るり色、四度花咲、  ごまほし 白にうす紫のほし有  白 白に二種あり、つねのしろは花中に紫のさしうつろひ有、ぬけ白といふはうつろひもなし上々、  六葉(ろくやう) むらさき色よし、葩六まいづヽ出ル、  八葉 むらさき、是 も八葩(は)出ル、  八橋(やつはし) こいむらさき、花首に葉一まひづヽ出ル、是迄かきつばたのるひ也、何も莖一本に花三度づヽ咲物なり、肥たるは四ツ五ツも咲、一ばん花二番花といふ、

〔増補地錦抄〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 杜若るひ 水草也、田土にうへ、常に水をたむべし、肥はごまめ又はごみほこりを入たるもよし、植分春秋、かきつばたは當年花咲たるは、來年消て不生、花立のきわに付きて、ひあふぎの様成葉有り、是に來年花咲故に買調ルに心を付べし、能花の咲たるに、つねのたくさん成かきつばたを根にそへて、大かぶにして賣ル、然ば來年はかの能花立はくさりて、下成つねの花さく、能々吟味有べし、是をかきつばたの養子共、やとひ子共いふ、〈◯中略〉四季杜若 四季共に暖成所に田土に合、肥等分水を少づヽたむべし、水ふかければ、ひへてさかず、時々ごまめをさすべし、又はごみほこりを入たるも可、

〔草木育種〕

〈下/美花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 杜子花(かきつばた)〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州府志◯中略〉 扨燕子花は四七十月に花咲を、四季ざきと云、又白あり、白くして紫斑(むらさきふ)あるを鷲の尾と云、紅みを帶る紫をしよくこうと云、花瓣大にして六枚あるを六曜といふ、總て田の傍池などに植たるは肥に及ばず、淺水に植べし、盆に植たるは干鰛ごまめ等をさし込てよし、又花菖蒲も同じ、

〔剪花翁傳〕

〈一/正月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 早燕子花 色青く尋常の花種也、開花正月上旬、方陽面(みなみうけ)、地此土地たるや俗に堀拔と稱する井水の、晝夜湧流るヽ水涯の南陽受なる、片下りの地に株を植て、西北の風寒をよく圍ひ、此水の温暖なるを惹入るときは、春はやく花咲也、此花初夏の頃も花咲なり、されど暖氣になりては、平常の花より却て遲し、肥淡大便、秋彼岸に根際に溜りし水を、二日ばかり干上、根本の高き方に右の肥を入、また三日ばかり干切て後、此水を惹入べし、

〔剪花翁傳〕

〈二/三月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1129 燕子花(かきつばた) 此花多種也、其四五種左の如し、いづれも開花三月中旬也、橋姫、花中心青く縁白隈になる、村雲、花名の如し、吹墨、白地に青き吹點あり、濃紅、紅梅色に淡青を含めり淡 紅、淡赤に淡青を帶たり、白、極白あり、並白あり、藍、大輪濃色あり、並花あり、大葩なるものあり、俗に是を六葉(ろくえふ)といへり、此花に青色はなし、いづれも變色花なり、方陽面、地水邊の濕地よし、常に水の滯らぬやうにすべし、肥淡小便、春芽出し前に澆ぐべし、下種春彼岸にすべし、されど成長遲し、分株春秋兩彼岸ともよし、分株の方は分べき株を、地中にて缺とるべし、殘る親株動痛ずして榮はやし、〈◯中略〉四季咲燕子花(しきざきかきつばた) 花の色青し、開花八十八夜頃より四月中旬迄咲也、又夏の土用より咲出して、漸漸に年中花あり、方地分株等春の花と同じ、

〔剪花翁傳〕

〈三/五月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 四季咲燕子花 花青色、開花五月中旬より咲なり、是二度目にて夏の花なり、又土用より秋の花出る、夫より凡十一月まで節々花出る、故に四季咲の稱あり、育方は三月燕子花と同じ、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 燕子花モ品類多ク、四季ニ開モ有リ、且紫花アリ、白花アリ、白花ノ紫斑アルヲ鷲尾(ワシノヲ)ト云ヒ、紫花ノ紅ヲ帶タルヲ蜀江ト云フ、花大ニシテ六瓣アルヲ六曜ト名ク、此物ハ池沼溝等總テ水ノ淺キ處ニ繁生スル者ナルヲ以テ、盆植ニセンコトヲ欲セバ、根傍ニ干鰛ノ類ヲ刺込テ、時々意ヲ用テ水ヲ澆グベシ、

〔萬葉集〕

〈七/譬喩歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130花墨吉之(スミノエノ)、淺澤小野之(アサザハヲヌノ)、垣津幡(カキツバタ)、衣爾摺著(キヌニスリツケ)、將衣日不知毛(キムヒシラズモ)、

〔伊勢物語〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1130 むかし男有けり、その男身をえうなき物に思ひなして、京にはあらじ、あづまの方にすむべき國もとめにとて行けり、〈◯中略〉みかはの國八はしといふ所にいたりぬ、〈◯中略〉其さわのほとりの木のかげにおりゐて、かれいひくひけり、そのさわにかきつばたいとおもしろく咲たり、それをみてある人のいはく、かきつばたといふ五もじを、句のかみにすへて、たびの心をよめと いひければよめる、から衣きつヽなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞおもふ、とよめりければ、みな人かれいひのうへに、涙おとしてほとびにけり、

〔拾遺和歌集〕

〈七/物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 かいつばた よみ人しらずこき色かいつはたうすくうつろはん花に心もつけざらんかも

〔枕草子〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 めでたきもの一の人の御ありき、春日まうでえびぞめのをりもの、すべて紫なるはなにも〳〵めでたくこそあれ、花も、いとも、かみも、むらさきの花の中には、かきつばたぞすこしにくき、いろはめでたし、

〔俳家奇人談〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 山崎宗鑑山崎宗鑑は、近江州の人、〈◯中略〉或時逍遙院殿〈實隆卿〉へ、宗長諸とも參るとて、常に愛しける烟蘭(かきつばた)を折りて獻りけるに、卿御覽じて、手に持てる姿を見れば餓鬼つばた、と興じ玉ひけるを、のまんとすれど夏の澤水、宗長、蛇に追れて何地かへるらん、鑑が第三なり、

〔東都歳事記〕

〈二/四月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 杜菖花(カキツバタ)、〈立夏より二三日め頃より〉木下川淨光寺〈藥師堂〉境内、〈池中八橋を架せり〉吾妻森、〈近年社前の沼に八橋を架せり〉寺島村http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 花寺、同百花園、根津權現境内池、

〔武江産物志〕

〈遊觀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 燕子花 根津社内 三圍社内 蒲田新梅屋敷〈中和中散〉 木下川藥師〈立夏廿日頃〉 牛島 〈駒込千駄木〉坂植木屋

蠡實

〔多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 蠡實、加岐豆波多(○○○○○)、今案俗稱馬利牟(○○○)

〔和漢三才圖會〕

〈九十四/本濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1131 馬藺(ばれん) 劇草 蠡實 豕首 旱蒲 馬帚 鐵掃帚 馬薤 馬楝子 荔實 三堅本綱、馬藺生荒野中地叢生、一本二三十莖苗高三四尺、葉似薤而長厚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、馬牛亦不食、三月葉中抽 莖開花紫碧色、五月結實作角子、如麻大而赤色有稜、根細長通、黄色、人取其根以爲帚、〈◯中略〉按馬藺〈音吝、俗云波禮乎、◯乎恐牟誤〉葉長一二尺、似薤水仙及蘭葉而甚勁http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、三四月開花淺紫色、六瓣、〈三大三小〉可愛、人家種者根可帚者未之、倭名抄爲燕子花之訓者誤也、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 蠡實 バリン(○○○) バレン(○○○) トウラン(○○○○)〈江州〉 ネヂバリン(○○○○○)〈筑前〉 ネヂアヤメ(○○○○○)〈紀州〉 ネヂカネ(○○○○)〈尾州〉 一名紫蘭〈汝南圃史〉 掃帚〈通雅〉 掃帚草〈救荒野譜〉 蠡實草〈同上〉 馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 花〈續醫説〉 馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 草〈藥性要略大全〉 馬練花〈宣明方〉 馬練草〈盛京通志〉人家庭際ニ多ク栽ユ、最モ繁茂シヤスシ、山野ニハ自生ナシ、葉ハ溪蓀(アヤメノ)葉ニ似テ細ク厚ク、中心殊ニ厚シ、徑リ三分長サ二三尺、一根數百葉、緑色ニシテ微白ヲ帶ブ、二三ニネヂレタルモノ多シ、秋ニ至テ葉枯ル、其根細クシテhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif ク強シ、唐山ニテハ此根ヲ束テ物ヲ洗フニ用ユ、年ヲ歴テ腐ラズ、故ニ馬帚馬刷ノ名アリ、春ノ末宿根ヨリ新葉ヲ生シ、長サ數寸ノ時、叢葉中ニ數莖ヲ抽ヅ、高サ一尺許、其梢ニ花ヲ生ズ、淡紫碧色六瓣ナリ、其三瓣ハ大ニシテ、三辨ハ小ク、全ク溪蓀花ニ異ナラズ、惟瓣小クシテ狹シ、花後莢ヲ結ブ、燕子花(カキツバタ)ノ莢ニ似テ小ク、内ニ小扁子アリ、色赤シ、是藥用ノ蠡實ナリ、藥舖ニテ燈心草根ヲ馬藺ト稱シテ售ル、大ニ誤ナリ、和俗藺ノ字ヲヰト訓ズル故ニ誤ルナリ、釋名ニ救荒本草ノ鐵掃帚ヲ併セ入テ、馬藺ノ一名トスルハ非ナリ、馬藺モ鐵掃帚ノ名アレドモ、救荒本草ノハ別物ニシテ、メドハギナリ、

〔廣益地錦抄〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 馬藺(ばりん) 葉はあやめのごとくにてねぢけたる物、花ハむらさき、三月さく草花にはばれんとよぶ、朝にひらき、夕にしぼみ、次の花明朝又ひらく、此花を藥種のばりん花と云、根は刷(ハケ)に拵(コシラフ)と云、しゆろの毛のごとくにてつよし、

〔剪花翁傳〕

〈三/四月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1132 馬藺(ばりん) 花青色、貌あやめに似て少く葉厚く堅して幅狹し、開花四月上旬、方日向、地干、土砂雜、肥大便、寒中に入べし、春淡小便兩三度そヽぐべし、斑入葉は干鰯を入べし、分株秋 彼岸より早春までにすべし、葉よく伸るときは、七八寸より二尺にもいたる也、下種は成長おそし、

〔草木六部耕種法〕

〈四/需根〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1133 細條根ノ草ヲ作ル法細條根トハ馬藺細辛ノ類ヲ云フ、此ヲ作ニハ芍藥ヲ作法ノ如ク、壤土墳土ヲ深二尺モ細碎軟膨シ、根ヲ分テ亂散密邇ニ植エ置トキハ、夥ク蕃衍(シケル)者ナリ、今年春植ヱタルヲ、翌年秋ニ至リ掘採ベシ、馬藺根ハ箒ニシテ妙ナリ、細辛ハ藥物ナリ、

番紅花

〔増補多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1133 番紅花、和名未詳、異名洎夫藍、〈綱目〉撒法郞、

〔物類品隲〕

〈三/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1133 洎夫藍 ラテイン語サフラン(○○○○)、紅毛語フロウリスヱンタアリス、又コロウクスヲリヱンタアリト云、此物生草絶テナシ、乾花蠻國ヨリ來ル、東璧曰、番紅花出西番回回地面及天方國、即彼地紅藍花也、按ズルニ此説大ナル誤ナリ、泊夫藍番國産ナルガ故、李氏モ其何物タルコトヲ知ズ、花色紅ニシテ頗紅花ニ似タルヲ以テ、妄ニ番紅花ヲ以テ命ズ、近世紅毛人ドヾニヤウスト云者本草ヲ著ス、洎夫藍ヲ圖スルコト甚詳ナリ、根葉山慈姑ニ似テ、五瓣ノ赤花ヲ開ク、蠻國ヨリ來ル所ノ洎夫藍ハ、即其花ノ蕊ナリ、紅藍ノ類ニハアラズ、有圖可考、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1133 番紅花 チヤフラン(○○○○○)〈羅甸〉 サフラトン(○○○○○)〈同上〉 フロウリスヱンタアリス(○○○○○○○○○○○)〈紅毛フロウリスハ花ナリ〉 コロウクスヲリヱンタアリ(○○○○○○○○○○○○)〈同上コロウクスハ花ナリ〉 一名咱夫蘭〈獸類羊心ノ附方〉 撒http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000193.gif 蘭〈遵生八牋〉此書ニハ紅花ヲ蜜ニテ製スト云ハ非ナリ、番國ニテサフラトント云草ノ花蘂ヲトリタル者ナリ、舶來アリ、形紅花瓣ノ如ク至テ細シ、味苦クシテ梔子ノ氣アリ、色紅黄ニシテ潤多シ、年ヲ經レバ漸ク乾キ、色黒ク香氣薄クナルナリ、

〔茅窗漫録〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1133 サフラム花 サフラムは近歳刊行せし六物新志に載せてより、始めて西洋歐邏巴、亞弗利加、亞細亞洲の諸國に生ずる、草花の蕊なることを人皆知れり、それまでは蠻國に生ずる紅花を、蜜にて製するものといひ、其草の形状知れざるゆゑ、此邦山中に生ずる猩々袴といふ草を充てたる人もあり、漢土にも時珍の綱目までは知れざるにや、隰草の部に番紅花を出だし、釋名に洎夫藍撒法郞をならべ載せて、西蕃回回地天方國の紅藍花なりといひ、又獸部羊心の附方に正要を引きて、洎夫蘭は即回回紅花なりといひ、同腎の附方にも洎夫蘭と書けり、遵生八牋には撒夫蘭とも書けり、皆是蕃名を字音に假借する者にて、實物を見ざる故なり、形状は新志に載せて、一種花の中心三線の蕊をなし、細き長舌の状に似たり、その色赤黄にして味辛く、少苦を帶びて、油氣のあるに似たり、其氣芳烈にして人の鼻を撲つもの、又一種春苗を生じ、秋に至りて花を開く、六瓣にして其色緋黄、其香百合に似たり、花後に實を結ぶ、ともに三房をなす、根は韮蒜(ニラコビル)に似て、毬をなせり、然るに品類ありて、形状其地に隨ひて少々異なりといへり、さもあらむ、以前浪華蒹葭堂へ、蕃國より贈り來るを寫眞し、一幅となし、人に見せらる、予〈◯茅原定〉其圖をこひ得て爰に摸す、〈◯圖略〉新志に載せたるものとは、形状また少々異なり、萬國地球圖に載せたる形状ともおなじからず、いかにも種類多しと見ゆ、此品近歳貴賤一統に珍重し、其價韓參に等しくすれど、時珍の綱目には、心氣鬱結、或は活血驚悸の症のみに用ひて、格別の功能を載せず、近歳主治を法のごとく數人に用ひ見るに、功能奇驗格別の事更になし、兎角にも末世に及びて、貴賤一統奇を好む癖情、世と推し移ると見ゆ、いふ程の功能奇驗あらば、漢土の書にも多く載すべし、當今清朝の方書、多く舶來するにも未見當たらず、此邦の主治方書は、往古より大抵漢土を法則とすれば、風土人情格別に異なる事はあるまじ、

芭蕉

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1134 芭蕉 唐韻云、芭蕉、〈巴焦二音、和名發勢乎波(○○○○)〉、其葉如席者也、兼名苑云一名甘蕉、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 廣韻云、芭芭蕉、又云、蕉芭蕉、與此不同、本草甘蕉根陶注云、本出廣州、今都下東間並有、根葉無異、惟子不食爾、蘇注云、嶺南者子大味甘冷、北間惟有花汁、無實、開寳本草云、此花葉與芭蕉相似而極大、子形圓長、及生青熟黄、南人皆食之、蜀本圖經云、俗爲芭蕉、多生江南、葉長丈許、濶二尺餘、莖虚軟、圖經云、甘蕉今出二廣閩中、蜀川者有花、閩廣者實極美可噉、他處雖多而作花者亦少、近歳都下往往種之甚盛、皆芭蕉也、蕉類亦多、此云甘蕉、乃是有子者、葉大抵與芭蕉相類、但其卷心中抽簳作花、初生大萼如垂菡萏、有十數層層皆作瓣、漸大則花出瓣中、極繁盛、紅者如火炬、謂之紅蕉、白者如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b887.gif、謂之水蕉、其花大類象牙、故謂之牙蕉、其實亦有青黄之別、品類亦多、閩人灰理其皮、令錫滑、績以爲布、如古之錫衰焉、本草衍義云、芭蕉三年已上即有花、自心中一莖止一花、全如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 花葉亦相似、但其色微黄緑、從下脱葉、花心但向上生、常如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif然、未嘗見其花心、剖而視之亦無蘂、悉是葉、但花頭常下垂、毎一朶、自中夏開直至中秋後方盡、凡三葉開則三葉脱落、

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 芭蕉(バシヨウ)

〔多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 甘蕉、波勢乎、異名芭蕉、〈衍義〉天苴、〈史記注〉

〔東雅〕

〈十五/草卉〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 卷柏イハグミ〈◯中略〉 漢音により呼ぶ事、芭蕉をバセヲバといひ、蒴藋をソクトクといふが如き、皆是漢字傳へし後に、名づけしと見えたり、

〔古今和歌集〕

〈十/物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 さヽ、まつ、びは、ばせをば、 きのめのといさヽめに時まつまにぞひはへぬる心ばせをば人にみえつヽ

〔信明集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 はせをば、長谷寺やけたりときくころ、世中のたのみ所にせし物をはせをばかくややかんと思ひし

〔傭字例〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1135 芭蕉芭蕉は、倭名抄に、巴焦二音、倭名發勢乎波(ハセヲバ)とあり、古今集にもバセヲバと書り、波字は葉のことな れば省くべきよし、餘材抄にもいへり、焦は韻鏡二十六轉宵韻の字なり、セヲの如く聞ゆる故に、轉じてかくいへるか、襖子をアヲシといふも同じ、そも〳〵韻に用るはアイウエオ等なれば、セオと書べけれども、拗音のヲをかけるは、直音の字なれども、御國の音より見ればなほ拗音なる故に、御國の拗音の韻を用しにや、御國の音韻は紀伊(キイ)、基肄(キイ)、都宇(トウ)、斗於(トオ)、囎唹(ソオ)、弟翳(セエ)、穎(エ)娃、などヽは韻(ヒゞ)けども、セオとは韻かず、焦は子姚切にてシエウの約まる音ゆゑに、拗音にておのづからセヲの如く聞ゆるなり、紀長谷雄卿の書給へる、大藏太夫の七十壽序にも、自のを發昭と書給へり、この昭字も同じ宵韻の字にてセヲなり、

〔茅窻漫録〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 庭忌草芭蕉を庭忌草と名付くるは、桔梗をきちかふといふとおなじく、字音にては、歌によみにくきによりて名付たるにや、庭忌といふは、佛書に此身如芭蕉と云ふ、其葉脆く風に破れやすき故に、庭に植うる事を忌むとみえたり西國にては神社佛閣より外は植ゑず、然るに此草に花咲く時は、優曇華の咲きたるとて、大に貴ぶも亦をかし、

〔大和本草〕

〈七/園草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 芭蕉 潛確類書曰、懷素治芭蕉、取葉代紙而書、三體詩註、古人多喜書芭蕉葉懷素、種芭蕉書是也、本草濕草ニ載ス、軟地ニウヘテ繁ヤスシ、年々子生ズ、草中最大者也、暮春生葉至秋而止、其新卷方ニ舒レバ新葉又生、冬ニ至テ根及莖不枯、年々發生歴久而大開黄花極稀、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四本/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1136 芭蕉 甘蕉 芭苴 天苴 和名發勢乎波〈◯中略〉按芭蕉薩摩多有之、畿内寺院希有之、人家忌之不植、凡經三歳者剥皮織布綯http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001ad99.gif琉球多出芭蕉布、光白色美於練絹、而弱於麻布、其子呼名比牟奢吾(ヒンシヤコ)、今俗陰囊腫者用芭蕉葉http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d503.gif 之、亦有據矣、鎌倉淨密法師庵優曇花開、遠近群集、二位禪尼使左近將監見http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之、曰芭蕉花也、蓋芭蕉以花開希有、人以爲優曇花也、按優曇花者乃是無花果之名也、

〔中山傳信録〕

〈六/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 蕉實、芭蕉所結、實名甘露、花紫紅色、大如瓢、日開一瓣、結寔如手、五六指並垂、採久之膚理似藕之最嫰者、可熟之、如薯而甘、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 甘蕉 バセヲハ(○○○○)〈和名鈔〉 ニハミグサ(○○○○○)〈古歌名〉 バセヲ(○○○)〈今名〉 ウドンゲ(○○○○)〈東鑑、花ノ名、〉 一名苞苴〈事物異名〉 扇仙〈群芳譜〉 扇子仙〈事物紺珠〉 草帝〈同上〉 緑參差〈同上〉 傳且〈同上〉 翠旌〈名物法言〉 緑天〈秘傳花鏡〉 羅襦鬼〈暌車志、葉ノ名、〉元來和産ナク、南方ノモノ故ニ寒ヲ畏ル、唐山ニテ南方ニハ品類多ク、北方ニハ只一品ト云、本邦モタヾ一品ナリ、花ヲ生ズレバ、旁ヨリ小苗ヲ生ジ、本根ハ枯ル、東鑑ニ此花ヲ優曇花(ウドンゲ)ト云、年々ハ花サカザル故ナリ、恭モ經六年方有花ト云、花ノ形最大ナリ、一尺餘ノ長サノ、粗クシテ節多キ莖下垂シテ、其端ニ一花アリ、黄白色ニシテhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 花ノツボミノ形チノ如シ、集解ニ似倒垂菡萏ト云ハ是ヲ指ナリ、花瓣多シテ數十重アリ、一日ニ只一瓣開キ落ツ、瓣ゴトニ中ニ蘂多アリ、實ハ莖ノ本ニ連リ生ズ、長サ一寸許、徑五六分、五稜ニシテ緑色、熟セズシテ落ツ、北間者但有花無實ト云是ナリ、嶺南ニハ紅熟シ、米穀ニ代ル者アリト云、本邦古ハ庭ニ栽ルコトヲ忌、故ニニハミグサト云、唐山ニモ屋内不多種、芭蕉久而招祟ト、遵生八牋ニ見タリ、

〔廣益地錦抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 芭蕉 本草に年々子を生ズ、草中尤大成ルものなり、暮春に葉を出、秋に止といへり、水腫脹滿に生葉敷て妙なり、又血をよく止ム、きりきずをばせをの皮にてまけば、はやく血をとめてきずいゆ、ばせを油をとりて髮をくしけづれば、鬢黒つやよく、毛のぬけるをとヾむ、花は初夏に出て、一日に一葉づヽひらき、冬までさく、さかり久敷なり、稀に花出故優曇花といふ、

〔剪花翁傳〕

〈四/七月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1137 芭蕉 花黄色、開花立秋後より葩開くこと一日に一枚宛、凡百日の間に咲也、英の長さ二尺又は三尺ばかり伸る也、方半陰、地三分濕、土囘塵、肥大便、寒中に入べし、株に生ずる芽を、春彼岸より三月中旬迄に缺分植べし、

〔後拾遺和歌集〕

〈二十/釋教〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 維摩經の十喩のなかに、この身芭蕉のごとしといふこヽろを、前大納言公任風ふけばまづやぶれぬる草の葉によそふるからに袖ぞ露けき

〔吾妻鏡〕

〈二十六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 貞應二年七月九日、藥師堂谷邊、有獨住僧淨密、於件坊前庭優曇花開散之由風聞、鎌倉中男女爲之成群、自二品〈◯平政子〉遣遠藤左近將監、爲後被見之處、芭蕉花之由申之云云、

〔鵞峯文集〕

〈一/賦〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 芭蕉不秋賦〈癸卯七月廿五日勿齋即席〉芭蕉芭蕉吾感其榮枯之有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 時、維葉之卷漸展而垂、維花之生先結而披、豈信湘水之夢妄感彭氏、唯想窻外之雨驚回牧之、維秋風之暴、葉破而萎、露華之脆、花凋而衰、誰不傷哉、誰不悲哉、試比愛寵之廢、孰與相如於卓文君、譬之壯士之老、奈何覇陵之舊將軍、猶期雪中之殘葉、摩詰之墨痕有聞、對此豈不節義哉、見歴代忠臣之勤、嗚呼芭蕉枝葉雖枯、知本根之在、待來歳之再榮、勿秋風之不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 耐、匪啻此物之感http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 人、人亦可時進退、何必憐敗葉之見於外、不本心之存於内哉、

〔芭蕉翁文集〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1138 芭蕉を移す辭菊は東籬にさかえ、竹は北窻の君となる、牡丹は紅白の是非ありて、世塵にけがさる、荷葉は平地にたヽず、水清からざれば花さかず、いづれの年にや栖を此境に移す時、芭蕉一もとを植ゆ、風土芭蕉の心にや叶ひけん、數株莖を備へ、其葉茂り重りて庭をせばめ、萱が軒端もかくるヽ計なり、人呼て草庵の名とす、舊友門人ともに愛して、芽をかき根をわかちて、所々に送る事年々になん成ぬ、一とせみちのくの行脚思ひ立て、芭蕉庵すでに破んとすれば、かれは籬の隣に地を替て、あたり近き人々に、霜の覆ひ風のかこひなど、返す〳〵頼み置て、はかなき筆のすさみにも書殘し、松はひとりになりぬべきにやと、遠き旅ねのむねにたヽまり、人のわかれ、芭蕉のなごり、ひとかたならぬ侘しさも、終に三とせの春秋を過して、ふたヽび芭蕉に涙をそヽぐ、今年五月の半、花た ちばなの匂ひもさすがに遠からざれば、人々の契も昔にかはらず、猶此あたりえ立さらで、舊き庵もやヽ近う、三間の茅屋つぎ〳〵しう、杉の柱いと清げに削なし、竹の枝折戸安らかに、葭垣厚くしわたし、南に向ひ池にのぞみて水楼となす、地は富士に對して、柴門景を進てなヽめなり、浙江の潮三ツまたの淀にたヽへて、月を見る便よろしければ、初月の夕より雲をいとひ雨をくるしむ、名月のよそほひにとて、先ばせをを移す、其葉廣うして琴をおほふにたれり、或は半吹をれて、鳳鳥の尾をいたましめ、青扇破れて風を悲しむ、たま〳〵花咲どもはなやかならず、莖太けれども斧にあたらず、かの山中不伐の類、木にたぐへて其性尊し、僧懷素は是に筆をはしらしめ、張横渠は新葉を見て、修學の力とせしとなり、予其二ツをとらず、只此陰に遊びて、風雨に破れやすきを愛するのみ、ばせを植てまづにくむ荻の二葉哉

蘘荷/名稱

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 白蘘荷〈音而羊反〉一名覆葅、〈赤也、楊玄操音姉反、◯姉下恐有脱文〉和名女加(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/園菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 蘘荷 馬琬食經云、蘘荷〈穰何二音、和名米加、〉赤色者爲佳矣、兼名苑云、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5a9.gif 苴、〈伏且二音〉唐韻云蓴苴〈上音粕〉大蘘荷名也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1139 本草和名、白蘘荷同訓、今俗呼女宇賀、〈◯中略〉本草白蘘荷陶注云、於人食http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之赤者爲勝、藥用白者、蜀本圖經云、葉似初生甘焦、根似薑牙、其葉冬枯〈◯中略〉按本草陶注云、今人乃呼赤者蘘荷、白者爲覆葅、同一種爾、説文云、蘘荷一名葍蒩、史記司馬相如傳作http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a2c0.gif、漢書作巴且、注引張揖曰、蓴且蘘荷也、史記索隱云、巴且蘘荷屬、楚辭大招、膾苴蓴只、九歎注蘘荷蓴菹、皆字異音近、然則http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5a9.gif 苴古蓋作復且、俗加艸頭耳、非盜庚之http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5a9.gif 字履苴字也、〈◯中略〉廣雅、蘘荷蓴苴也、古今注蘘荷似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000194.gif而白、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000194.gif 苴色紫、花生根中、花未散時可食、葉似薑、宜陰翳地種http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之、常依陰而生、王念孫曰、古今注以紫爲蓴苴、白爲蘘荷、別録注、以赤爲蘘荷、白爲蓴苴、廣韻則云、蓴苴大蘘荷、是又以大小分也、其實蘘 荷蓴苴皆大名、後世説者多歧耳、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷〈穰音メカ〉

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷(ミヤウガ)〈蘘或作名字也〉

〔運歩色葉集〕

〈見〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 茗荷 蘘荷

〔易林本節用集〕

〈美/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷(ミヤウガ)

〔多識編〕

〈二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷、米賀、又稱美也宇加

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷メガ 倭名鈔に、馬琬食經を引て、蘘荷はメガ、赤色者爲佳と註せり、即今メウガといふもの是也、義不詳、〈或人の説に、メガとは茗荷の字の音をよぶなりといふ、然かるべしとも思はれず、馬琬の食經に赤色を佳とし、又本草圖經にも其根似薑牙なども見えたり、メカとは其芽の赤きをいふなるべし、〉

〔倭訓栞〕

〈後編十六/米〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 めうが 蘘荷を訓ず、和名抄にめがと見えたり、芽香の義なるべし、字音にはあらじ、俗に芽をめうがたけといひ花をめうがのこといへり、莖は干て軍用の草鞋とすべし、根を眼科にめう石とす、藪めうがは花めうがともいふ、實を伊豆縮砂と稱せり、山めうがは高良姜也、子を紅豆http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b49d.gif と名くといへり、めうが草あり、俗説に蘘荷を多く食へば愚ならしむるといふは、東坡が志林に、本草に生姜多食損智とあるによて、无吾愚、吾食姜多矣と、戯れし事ありしを、訛りて傳へいふなるべしといへり、

〔傍廂〕

〈前篇〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1140 蘘荷 生薑蘘荷をメウガといひ、生薑をセウガといへるは、俗の音便なるべし、和名抄に蘘荷米加(メカ)、薑久禮乃波之加美とありて、メウガとも、セウガともなし、同じ形容なれば、蘘を米加といへるによりて、薑を兄香(セカ)として、妹兄(イモセ)の義にかなへたるなるべし、いづれも香氣のある中に、わきて薑は香氣深ければ、兄香といひしを、セウガと誤り、妹香(メガ)をメウガと誤りしなるべし、皆音便より崩れたるなり、

〔本朝食鑑〕

〈三/葷辛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蘘荷〈訓美也宇加、古訓米加、〉集解、蘘荷處處樹下及陰處多生、二月種根、四五月生苗、似薑之葉莖、而稍濶心、芽卷起而抽如竹葉蘆芽既長、高四五尺、根有赤白二種、夏月及七八月根旁生子、其子即花、似藕花之未http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 開而平扁、葉葉相重至蕊心亦同、其色上淺紫而尖、下碧白而有柔莖、俗稱蘘荷子、以可葅、葉莖亦嫰時可噉、其根辛而不佳、故噉之者少矣、八九月踏却其苗死則根滋茂、冬月以馬屎中之稻草而覆其根、或鋤耘加人糞、則値寒不凍死、至春不種蒔而生、是永生之法也、蘘荷自古用之、本朝式内膳部載之、未其根葉子花之別焉、

蘘荷栽培

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 耕種園圃營蘘荷一段、種子三石、總單功卅五人、耕地二遍、把犁一人、馭牛一人、牛一頭、料理平和二人、畦上作二人、〈九月〉糞百卅二擔、運功廿二人、殖功三人、藝二人、採功二人、

〔清良記〕

〈七上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蕗蘘荷之事一夏茗荷 一晩茗荷此二色別て作りて無益物也、植様は右蕗の如く、二月末より四月迄は莖を用、六月より八月初迄子を用、蕗には劣たる物也、然共畑を不費して、木陰屋かげに植るゆへ、外の妨なし、

〔農業全書〕

〈四/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1141 蘘荷みやうがは、樹の下其外日かげ、陰地を好む物なり、二月に根を分てうゆべし、〈一説に鐵をいむ、鋤にてほるべからずともいふ、〉一度うへて、年久しく其まヽ置て、さかゆる物なり、二月比草あらば取去、糞土をおほひ置、秋花を取、十月上をふみ付、莖葉を枯し、ぬかあくたなど多くかけをけば、來年よくさかゆる也、又是に夏秋の二種あり、五六月根のわきより花を生じ、秋までも相つヾきて生ず、是を夏みやうがと云、又七八月花出るを、秋みやうがと云なり、ともに料理によき物なり、夏を取分作るべし、諸菜の 絶間にありて賞翫なり、めうがは專樹木の下などに種たるがよし、若さやうの地なくば、つねの畠にうへ、其わきにかきをゆひ、上に棚をかまへ、薯蕷葡萄、其他何にても、蔓のはひまとひて、上をおほふ物の類を側にうゆれば、みやうがさかへ、兩様の利あり、

蘘荷利用

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 蘘荷 微温、中蠱者服其汁其葉、即呼蠱主姓名、主中蠱及瘧、〈食赤者爲勝、藥用白者、〉多食損藥勢、又不脚、人家種白蘘荷蛇、其性好陰、在木下生者尤美、其根堪葅、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉蘘荷漬、菁根漬各二合、仁王經齋會供養料僧一口別菓菜料、〈◯中略〉蘘荷二合、〈漬菜料〉

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 漬年料雜菜蘘荷六斗、〈料鹽六升、汁槽二斗四升、◯中略〉 右漬秋菜

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 蘘荷〈◯中略〉増、蘘荷ノ莖ヲ取リ、水ニ浸シ又雨ニ晒セバ、外皮爛レテ筋ノミ殘ル、コレヲ苧ニ代テ用ユ、ソノ形相似タレドモ、至テヨハシ、五月節句ノ人形ノ飾ニ多クコレヲ用ユ、縫物ニハ用ユルニ堪ヘズ、

蘘荷産地

〔續江戸砂子〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 江府名産〈并近在近國〉早稻田茗荷 牛込の内高田の近所他所にすぐれて大く美味也、江府のめうが多く此邊より出る、

薑/名稱

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 干薑〈久禮乃波自加彌(○○○○○○○)〉

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1142 乾薑一名定姜、〈出養性要集〉生姜一名地辛、一名揚樸、一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000195.gif 〈音織〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000196.gif 、〈音辨、已上二名出兼名苑、〉和名久禮乃波之加美、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/園菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑 兼名苑云、薑〈居良反〉一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000196.gif 、〈音織、和名久禮乃波之加美、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十六/薑蒜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑 膳夫經云、空腹勿生薑、〈居良反、和名久禮乃波之加三、俗云阿奈波之加美(○○○○○○)、〉乾薑 養性要集云、乾薑一名定薑、〈和名保之波之加美(○○○○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈四/鹽梅〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 醫心方引同説文作䕬、云禦http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f20.gif 之菜也、昌平本下總本有和名二字、按本草和名、乾薑生薑並擧、唯云和名久禮乃波之加美阿奈波之加美、保之波之加美之名、醫心方、生薑、和名都知波之加美、〈◯中略〉養性要集無傳本、按隋書唐書皆有張湛養生要集十卷、則性恐生之訛、然草類昌蒲條引作性、本草和名引亦皆作性、則源君所見從心無疑、今不徑改、本草和名引、定薑作定姜、昌平本有和名二字、按生薑、見大膳職内膳司式、干薑見民部省式、稚薑見内膳司式、種薑見民部省式、本草圖經云、薑苗高二三尺、葉似箭竹葉而長、兩々相對、苗青根黄無花實、秋採根、於長流水洗過、日曬爲乾薑、李時珍曰、五月生苗、如初生嫩蘆而葉稍濶、葉亦辛香、秋社前後新芽頓長、如指状

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 乾薑〈ホシハシカミ〉

〔易林本節用集〕

〈加/食服〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 干薑(キヤウ)

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 乾薑(カンキヤウ/ホシハジカミ)〈又云白薑〉

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑〈音姜、クレノハシカミ、俗云、アナハジカミ、ツチハジカミ、ハジカミ、ナルハシカミ、〉 生薑〈和名同上〉

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 生薑(シヤウガ)

〔易林本節用集〕

〈之/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 生薑(シヤウキヤウ/ハジカミ)

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑 (クレノハジカミ)〈䕬同〉 子薑(ハジカミ)〈初生爲子薑、紫薑同、〉 母薑(シヤウガ)〈宿根爲母薑

〔日本釋名〕

〈下/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑(ハジカミ) 端赤(ハシアカミ)也、あを略せり、はしかみは莖と根の端赤し、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1143 薑ハジカミ 神武天皇の御歌に、垣本に殖しハジカミクチヒヾクとよみ給ひしを、日本紀釋に、ハジカミは薑也、薑をもて口に銜みぬれば、ヒビクこと甚しきをいふと見えたり、倭名鈔には、薑讀てクレノハジカミといふと註せり、凡物の名、クレをもて呼びしは、皆これ呉國より 來りし所也、薑の如きは、ハジカミといふ、既に上世の時に聞えしを、倭名鈔にかくいひし事、其義如何にやあるらん、また倭名鈔に、蜀椒をナルハジカミ、一にフサハジカミといひ、辛夷をヤマアラヽギ、一にコブシハジカミと云ひ、蔓椒をイタチハジカミ、一にホソキといひ、呉茱http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b464.gif をカハハジカミといふと註せり、古にハジカミといひし物、皆其味辛辣の物を云ひしなり、ハジカミといふ義も、蜀椒辛夷等の類を呼びし所のごときも、並に詳ならず、

〔倭訓栞〕

〈中編十九/波〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 はじかみ 薑をいふ神武天皇の歌にもよみたまへり、今子薑をはじかみ母薑をしやうがとするはいかヾ、齒蹙の義なり、辛辣の味をもていへり、新撰字鏡に椒を訓ぜり、倭名抄に生姜を呉のはじかみといふによれば、神武天皇のよませたまひしは山椒なるべしといふ説あり、主計式に越前國薑見えたり、神名式に波自加味神社あり、神宮雜例集に種姜を獻ること見え、江戸芝神明にしやうが祭といふあり、和名抄に薑をあなはじかみ、蜀椒をなるはじかみとも、ふさはじかみとも、辛夷をこぶしはじかみ、呉茱http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b464.gif をかははじかみと訓ぜり、新撰字鏡に、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000197.gif 字をくまはじかみと訓ぜり、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000198.gif の誤なるべし、又秦椒をいだはじかみとも茗はじかみともよめり、臭氣をいふ、

〔倭訓栞〕

〈後編九/志〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 しやうが 生姜をいふは、音の急語なるべし、姜呉音かう也、しやうが石は即薑石也、

〔古事記〕

〈中/神武〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 然後將登美毘古之時、〈◯中略〉歌曰、美都美都斯(ミツミツシ)、久米能古良賀(クメノコラガ)、加岐母登爾(カキモトニ)、宇惠志(ウヱシ)波士加美(ハジカミ/○○○○)、久知比比久(クチヒヾク)、和禮波和須禮士(ワレハワスレジ)、宇知氐斯夜麻牟(ウチテシヤマム)、

〔古事記傳〕

〈十九〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1144 宇惠志波之加美は所殖薑なり、薑は今もたヾ波士加美と云を、和名抄には、生薑は和名久禮乃波之加美、俗云阿奈波之加美、乾薑和名保之波之加美と見え、字鏡には、干薑久禮乃波自加禰と見ゆ、〈これらに久禮乃と云るは、いかなる由にか、加賀國加賀郡波自加彌神社式に見ゆ、又大神宮四月十四日祭に、遠江神戸より進れる種薑を獻る神事あ〉 〈り、年中行事に見ゆ、〉

〔本朝食鑑〕

〈三/葷辛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 生薑〈訓志也宇加、又云波之加美、〉集解、處處所在有之、采去年之舊根而二月種之、四五月生淡碧黄芽、根亦碧白附于舊根而生、倶如初生蘆芽、漸長、葉似竹葉對生、而味辛香、青莖根頭著紅皮、其新根横連如指状、至秋尚壯、霜後作老薑、性惡濕畏日、若犯之値夏秋之暑則冬無根爾、近時采新根生梅紫蘇葉醃以經年、或作味噌漬糟漬蜜漬等物、又采老薑、臘月水http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/i000000000052.gif 日乾、以藏貯之、使水土、剉而服之、故爲行旅之具、亦能不霧濕煙瘴之氣、或治冷腹痛、呼號寒薑、是白薑之不皮者也、若無寒薑、則用乾白薑亦可矣、

薑種類

〔成形圖説〕

〈二十四/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 波自加美〈書紀即薑也、今も京人は子薑を波自加美と稱へ、母薑をはしやうがとは呼ける、◯中略〉此種大小柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif の品あり、九州及(マタ)は四國わたりに産は大にして柔に、尤辛辣なり、關東地方のものは皆小なり、中に柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 兩種あり、柔にして筋少きを良とす、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十八/葷辛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 生薑一種長崎ノオホセウガト呼ブアリ、一名長セウガ、長崎セウガ、形最肥大ニシテ佛掌薯(ツクネイモ)ノ如シ、辛味少シテ糖漬ニ可ナリ、藥ニ入ルヽニ堪ヘズ、

薑栽培

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 耕種園圃營薑一段、種子四石、總單功七十八人、耕地五遍、把犁二人半、馭牛二人半、牛二頭半、料理平和二人、糞二百十擔、運功卅五人、分畦四人、殖功四人、〈四月〉藝三遍、第一遍九人、第二遍七人、第三遍六人、採擇功六人、

〔清良記〕

〈七上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1145 生姜苛類之事一生姜 十月に種子を取て、三月に植、但寒に痛ゆへ、いづくにても柿の葉の間より雲を見て、雲の見へざる時を、時節と心得植る吉、旱に痛ゆへ、少ばかり水氣の有畑、又半日は陰の有畑吉、木 かげ藪かげなど吉といへ共、全くの陰は惡し、半日二時之内陰有所吉、種子置にくき物也、又種子取時分を大事にす、今大略は三霜四霜あてヽ取たるよし、扨生姜は遲く座取て、八九月迄も子を生ず、其若根はいまだ實いらず、其不熟なるを同じごとく取置故、それより朽る、又朽ずともそれは種子にならず、それをより分て、實のよく入たるを種子にすれば吉、夏秋旱の年には座取遲し、故に實不入、其年の生姜は腐安し、夏中雨繁く、秋旱の年には吉、可心得、一唐苛 肥たる土に早く植て吉、是もしやうが唐胡麻などのごとく、末久敷實のるゆへ、遲く植ては實少し、早ければいか程も實多くなる、種子は七八月取、二月始に植、

〔農業全書〕

〈四/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1146 薑しやうがはすぐれたる上品の物なり、論語にも不撤して食すとあり、史記にも廣くうへて、其利の過分なる事を載たり、うゆる地は、細沙の肥地に宜し、深く耕し糞を多くうちて、度々犁返し、塊少もなく、縱横四五遍もかき熟しをき、三月うゆる時又かきこなし、さて種子の疵なく芽の少出んとするを分て、指三つのふとさ程を一かぶとし、がんぎを間一尺ばかりをきて深く切、ならびの間五六寸にしてうへ、土を少おほひ、其上より馬屋ごゑのよくかれ熟したるを、四五寸もおほひ、少培ひ置べし、さて芽立少出ると、藝り中うちし、人糞油糟は云に及ず、馬糞麥ぬかなどを厚くおほひ、中うち培ひ段々して、後は高き所を溝のごとくし、萬手入をよくすれば、利潤他の作り物の及ぶ物にあらず、されども旱に痛み、又寒氣のつよき所、又は濕氣のつよきをばにくむゆへ、日あてのつよき所ならば、六月は日棚をかき、蘆すヽきなどを、葉ながらあみておほひ置べし、濕氣つよくは畦を高くし、溝を深くして、濕をもらすべし、ひでりに早くいたみ、又濕氣をも嫌ふ物なるゆへ、初うゆる時、しやうが畠はよく吟味し、日當つよからず、濕はもれやすく、沙がちなるによしと知べし、さて四五月芽立漸くさかへしげりて後、竹のへらにて根の一方を掘、薑母をもぎ取、 〈四五月古根をもぎ取事、唐の書にあり、しかれどもこれははやかるべし、〉鹽漬醤漬糟にも藏し、又は乾姜にこしらへ、藥屋にうるもよし、さて七八月根薄あかく、紅をぬりたるごとくなるを、紫薑(しきやう)と云なり、此時料理によし、市町にも賣べし、其後莖葉枯いろになり、根によく肉いりて、九月の末、十月の節に入比ほり取、屋の内の暖かなる濕氣なき所に穴をほり、わらを合せて埋みをき、用にまかせて、わきより手風の觸ざる様にとるべし、又雪霜のをそくふる國にては、十月まで置てほり取ば、彌からくなる物なり、又ほり取て穴には入ずして、棚をかき、下にも廻りをも、こもにてよくしとみ、其中へ生姜を入、下にぬか火ををきてふすべ濕氣さりてしとみたる口をよくふさぎをくべし、尤畠よりほり取時、土をよく去べし、又生姜の時、賣餘りたるを、干姜にすべし、淨く洗ひざつと湯煮して、かき灰にまぜ乾し上て、籠などにもりをきて、藥屋にうるべし、生姜にてうりたるに、價をとらぬ物なり、若自分に用ゆるは、灰を交るに及ず、功能ある物にて、日用かくべからずといへども、秋姜を食すれば、天年を損ずと醫書に見えたり、されども世俗なべて秋よく用ゆるものなり、但秋は用捨して多くは食すべからず、

〔成形圖説〕

〈二十四/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 波自加美〈◯中略〉其圃は濕地によろし、されど寒暑を畏るものなり、夏は炎威を覆ひ、冬は凝凘を防(イト)ひ、地を易て暖處に移し養ふべし、しかはあれど乾たる處へ植れば又枯萎(カルヽ)なり、二月の頃舊根を栽れば、四五月にいたり黄芽を發し、旣に新根を生ず、今江門近郊にては、土窖の中に醸し養ひ、四時絶ることなし、これ日用かくべからず、常にくらひて精神を爽にするものぞ、

薑利用

〔藥經太素〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1147 干姜 大温ニシテ熱味辛水ニ付テ能洗テ、石炭ノ氣ヲ去、少焙テ用、冷痢腹中ノ痛ヲ治、血ヲ止ト胸ノ痛ヲ治ニハ、毒ヲ不取治、劾除胸滿、除霍亂腹心疼

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 生姜 辛微温、九月採殺半夏毒、久服少智少志、傷心氣、論語云、不薑食〈言常噉、但勿過多、〉爾、主傷寒、頭痛、鼻塞、欬逆上氣、止嘔吐、去臭氣孟洗云、去痰下氣、多食少心智、八九月食傷神、〈須熱即去皮要冷即留皮、〉去燥糞、削如小指、長二寸、塗鹽、内下部中立通、善治狐臭、生姜汁塗液下、絶根本、八月九月食姜、至春多患眼、損壽減筋力、暴赤眼無瘡者、古銅錢刮薑上、取汁點目、熱涙出來日愈、子姜 日用本草曰、生姜之嫰者、秋社前收、糟藏之、辛温、醋食之、眼疾上壅痔病、動脚氣、發灸瘡、調中、開胃止嘔下氣、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉漬薑七勺、仁王經齋會供養料僧一口別菓菜料、〈◯中略〉干薑四銖、〈海菜并汁物料各二銖〉生薑一合九勺五撮、〈好物料一勺、茹菜料二勺、汁物料五撮索餅料一勺、漬菜料五勺、虀料一合、〉有莖生薑一房、〈生菜料〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 元日御藥〈中宮准此〉白散一劑、度嶂散一劑、千瘡萬病膏一劑、〈◯中略〉所須、〈◯中略〉干薑一分、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651abe.gif 月御藥 犀角丸六劑、芍藥丸三劑、〈◯中略〉所須、〈◯中略〉干薑二兩、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1148 供奉雜菜日別一斗、〈◯中略〉生薑八房、〈准二升、六七八月、〉漬年料雜菜〈◯中略〉稚薑三斗〈料鹽六升、汁糟一斗五升、〉右漬秋菜料生薑四石五斗、〈料鹽一石四斗二升、汁糟四石二斗〉、柏卅五把、〈http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019302.gif 瓼口料〉匏二柄、〈汲汁料〉擇薑女孺單五十人、女丁十二人半、給間食、〈人別日八合〉 右年料請内膳司漬造、至于明年三月、更易鹽糟、數隨殊多少、〈假如殘薑一石、料鹽一斗、糟五斗之類、〉始當年九月、迄明年七月之、

〔庖丁聞書〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 一生姜鱠は、雪鱠のごとくもりて、上におろし生姜を懸て出す也、一同〈◯引渡に〉生姜を組付る事は、穢の氣を去との事也、此ゆへに用ゆ、

薑産地

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 山城(○○) 干姜 生姜

〔和漢三才圖會〕

〈九十九/葷草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 生薑生薑處々皆有之、山州綺田(カハタ)、平尾、殿村之産雖稍老、而肥大無筋、肥州長崎、因州長柄之産亦不劣、

〔成形圖説〕

〈二十四/菜蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 波自加美〈◯中略〉乾生薑延喜主計式越前薑見えたり、今藥肆中乾薑と呼ものは、三河遠江わたりより出す、外白、内竊黒に、堅實ものなり、遠江薑名高し、又近來生乾薑と呼做ものあり、皆切片て日乾藥用に用ふ、伊豫の産を良とす、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 越前國(○○○)〈◯中略〉中男作物〈◯中略〉薑

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 諸國年料供進干薑小一百斤 薑種十石 右遠江國(○○○)交易所

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 交易雜物 遠江國〈(中略)干薑一百斤、種薑十石、〉

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 諸國進年料雜藥遠江國十三種、〈◯中略〉干姜八十六斤、

〔二宮年中行事〕

〈三月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1149 三日種薑御贄事遠江國濱名神戸所課也、宮司正月一日遣符、今日於離宮院二宮、分配方々、目代祝部散行也、

〔建久三年皇大神宮年中行事〕

〈四月〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 十四日風日祈宮祭禮〈◯中略〉遠江神戸種薑、詔刀〈件種薑ハ、兼日ニ酒殿ニ進納、今日件出納、從西御門捧參テ、風日祈詔刀畢後、八重榊ノ上進也、〉申ク、今年ノ四月ノ十四日ノ今時以、掛畏キ天照坐ス皇太神ノ廣前ニ、恐ミ恐ミモ申ク、宮司ノ常モ催奉ル、遠江神戸種薑ノ御贄ヲ奉状ヲ、平ク安ク聞食テ、朝廷寶御位無動、常石堅石ニ、夜守日守ニ、護奉幸給、阿禮坐皇子達ヲモ慈給ヒ、百官仕奉人等ヲモ、天下四方國々人民ノ作食ル、五穀豐饒ニ恤幸給ト恐ミ恐ミモ申、〈◯中略〉抑遠江神戸所進種薑、今日供進ノ用殘、禰宜中ニ分配、而禰宜各以其内、子良宿館ノ南ノ垣内ニ所殖也、爲物忌父等之役殖、然後九月御祭之時、御饌ニ所供進也、

〔甲斐國志〕

〈百二十三/産物及製造〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 生薑 河内嶺岩間ノ東邊稍暖地ニシテ薑ニ宜シク、逸見筋信州ヘモ駄運販賣ス、〈◯中略〉中郡玉川村、西條新田村ノ生姜肥大ニシテ筋ナシ、

〔豐後國志〕

〈三/速見郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 土産 薑、石垣莊別府村、及朝見郷濱脇村多出、

薑雜載

〔玉露叢〕

〈十八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 一寛文五年正月ニ、將軍家ノ仰出シ、一葉生姜 三月ヨリ

〔鹽尻〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 薑を撤せざるは、往昔食饌に有し物故に、これを食せずして盤盂に殘置、たうべざる事なりと、淺見氏いへり、誠に文義明らかにして、おもしろしといひ侍りしに、岩付氏がいふ、此事古書に證なくば、今説用ひがたしと、豫〈◯天野信景〉曰、四書備考孔安國云、齋禁葷物、薑辛而不臭、故不去、夫雖齋亦不去、則常食之有薑可知云々、淺見氏が博識考所有てしかいへるなるべしといひし、南史の裴子野が傳に、孔稱撤といひ、百川學海にのする荊公の問に、劉貢が答ふる所皆謬れり、本草に孔子民をすヽめて、はじかみを食せしむるといへる、可笑の事也、

〔江戸總鹿子名所大全〕

〈二/年中行事〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1150 九月十六日 芝神明祭 諸人貴せんぐんじゆす、すし、しやうが、うす、其外諸色市立也、

〔名物鹿の子〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1151 題神明市神風は吹ともわかじ生姜市 一漁生姜市牛車生姜車耳押遣禮 燕宴舍安士

〔梅園日記〕

〈一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1151 飯倉神明毎年九月、此神明祭に、參詣の人、必生姜を買ふ事あり、山中稠有の、芝神明宮開始縁起〈石塚豐芥所藏〉に、生姜を此神へ奉る事は、昔社を造立せし飯倉山は、近邊皆赤土也、赤土には種を殖ずとも、生姜おひ出る物なり、自然に出來たる物故に、取あへず神に奉りし事、例になれり、又大石千引の、野乃舍隨筆に、神明祭に生薑を鬻事は、論語郷黨篇に、不薑食とある注に、薑通神明穢惡故不撤とあり、これより誤るかとある人いへり、などあり、按ずるに、これらの説うけがたし、皇太神宮年中行事に、四月十四日、遠江神戸所進種薑、子良宿館南垣内所殖也、九月御祭之時御饌所供進也、とありて、伊勢の神宮にて、九月の御饌に奉りしを、そのかみこヽにうつしたる遺風なるべし、

〔嬉遊笑覽〕

〈六下/翫弄〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1151 生姜市は、貞享江戸鹿子に、九月十六日、芝神明祭、鮨、しやうが、うす、其外諸色市立なりとあれば、久しきことヽみゆ、俗に目くされ生姜とて、此市には目のたヾれなどしたる者の售るを求む、靭隨筆に、拾芥抄食禁物部に、三月五辛を食はず、九月生姜を食はずとあり、あさつき鱠は、雛の膳供にさだまり、芝神明の生姜祭り、食品にあらずして何ぞといへり、げに本草に、孫思邈云、八九月多食薑、至春多患眼云々、孕婦食之令兒盈指とあり、目くされ生姜は、この儀にはよるべからず、その辛味つよく目にしむの意なり、これを相贈ることは、其時肥たる節物なればなり、其うへ古諺あり、貞徳百韻に、生姜手が三へぎと筆にかすませて、其自注に、手がはじかみならば、生 姜三へぎと云ふ俗語と記せり、諺の意を押て考るに、盈指〈生姜手〉にておもうやうに物かヽれぬ手のわろきなり、三へぎは音信なるべし、生姜は指の事よりいひ、三片はすこしばかりをいふ、心ざしは松の葉といへるごとく、生姜三片といひたることより、音信とりかはしもしたるもの歟、

山薑

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1152 山薑、今案伊奴波志加美(○○○○○○)、異名美草、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1152 山薑 ハナメウガ(○○○○○)〈杜若モ國ニ因リテハナメウガト云フ〉 ハナヤリヤウキヤウ(○○○○○○○○○)漢渡ナシ、花戸ニ此草ヲ良薑ト呼ビ、藥舖ニコノ根ヲ良薑ト名テ貨ルモノハ、並ニ非ナリ、和州ノ三輪、江州ノ三井寺山中ニ有リ、又紀州、豆州、勢州、尤多シ、葉ノ形薑葉ニ似テ互生シ、毛茸多シ、夏莖ノ高サ一尺許、梢ニ穗ヲ成シテ花ヲ開ク、色白クシテ紅斑アリ、形建蘭(ランノ)花ノ如ニシテ至テ小ナリ、實ヲ結ブ、熟スレバ色赤ク、形圓長五分許、破レバ中ニ子アリ、コレヲ伊豆縮砂ト稱シテ僞リ貨ル、子ノ形縮砂ニ似タルヲ以テナリ、黒手白手ノ二種アリ、節山薑實ナリ、此根細長シテ、淺茶褐色、味苦シテ臭氣アリ、渾テ良薑ノ氣味ニ非ズ、市人良薑ト呼者ハ非ナリ、

高良薑

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1152 高良薑、今案於保久禮(○○○○)、今俗誤爲伊豆縮砂、異名蠻薑、〈綱目〉子名紅豆http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b49d.gif

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1152 高良薑 クマタケランノ類 一名埋光烏藥〈藥譜〉 孽花〈八閩通志〉 比目連理花〈主會新篇〉 花一名豆http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b49d.gif 花〈夢溪補筆談〉略シテ良薑ト云、藥舖ニ舶來ノモノアリ、先年福州ヨリ種ヲ傳フル、クマタケ蘭ト呼モノ此類ナリ、ソノ草寒氣ヲ畏ル、故ニ冬月外ニ置ケバ腐リ易シ、屋内ニ入置ベシ、苗ノ高サ四五尺許、葉長サ二尺餘、厚クシテ短毛アリ、薑葉ニ似テ光澤アリ互生ス、切レバ樟腦ノ香アリ、當年出タル幹冬枯レザレバ、翌年六月ニ至リ、ソノ梢ニ花ヲ開ク、然ドモ多クハ冬ノ中ニ莖枯レヤスシ、ソノ花初出ルトキ葉ニテ卷ク、後ニ葉ヒラケバ花ノ穗六七寸許、莖花トモニ白色ニシテ、光アリテhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b887.gif 花ノゴトシ、花ノ形鳳仙花ニ似タリ、而シテ鳳仙花ハ二瓣、コレハ一瓣ナレドモ、二瓣ナラビタル濶サナ リ、内ニ黄條紫斑點アリ、稀ニ實ヲ結ブ、無患子(ムクロジ)ノ大サナリ、京師ニテハ熟セズシテ落ツ、此根形色共ニ良薑ニ似タリ、然レ共氣味薄ク、舶來ノ子ノ形モ亦異ナリ、故ニ良薑ノ一種トスベシ、

薑黄

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1153 薑黄、和名今案岐禰(○○)、異名蒁、〈音述〉寶鼎香、〈綱目〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1153 薑黄 一名赤天佩〈輟耕録〉 野薑〈藥性奇方〉是唐山及ビ琉球ヨリ別ニ渡ニ非ズ、本邦藥舖ニテ鬱金莪荗ノ中ヨリ根ニ枝アリテ、生薑ノ形ノ如ク節アリテ、重キモノヲ撰ビ出シ、コレヲ薑黄ト名ケ賣ル、削レバ内黄色ナレドモ鬱金ヨリ淺クシテ生薑ノ氣アリ、即是眞物ニシテ琉球ノ産ナリ、今藥舖ニテ普通ニ薑黄ト名ケ賣ルモノハ、カシラウコンニシテ、鬱金ノ老根ナリ、鬱金ト名ケ賣ルモノハ、ヂクウコンニシテ、鬱金ノ嫰根ナリ、然レドモ老嫰共ニ鬱金ナリ、又カシラウコンヲ細末トナシ、薑黄ト名ケ賣ルモノモアリ、漢種ノ薑黄ノ苗今ハ少シ、和産モナシ、唐山ニテモ薑黄ト鬱金ト混ジ賣ルコトアリ、唐山ニハ鬱金少クシテ薑黄多シ、故ニ薑黄ノ老根ヲ薑黄トシ、嫰根ヲ鬱金ト爲テ賣ル、故ニ通雅ニ本根即薑黄、旁附即鬱金ト云ヘリ、薑黄鬱金蓬莪荗ノ三物、諸説紛々タリ、而シテ集解藏器色味ヲ以テ三物ヲ分別スルノ説、最モ詳ナリ、今コレニ從フ、然レドモ三年以上ノ老薑ヲ以テ、薑黄トスルハ誤甚シ、又薩州ニ山ウコント稱スル草アリ、根色淺クシテ物ヲ染ルニ堪ヘズト云フ、コレ薑黄ニ能似タリ、然レドモ未ダ親シクコレヲ見ズ、

鬱金

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1153 鬱金、今案加保利沙嬉乃久左(○○○○○○○○)、異名馬http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000199.gif

〔大和本草〕

〈六/藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1153 鬱金 葉ハ美人蕉檀特花ニ似タリ、薑黄モ同類ナリ、甚畏寒、冬月ハ早ク堀根、日アテヨキ暖處ニ埋ムベシ、不然根爛、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1153 鬱金 一名金母蛻〈輟耕録〉 玉金〈名醫指掌圖〉 蔚金〈醫學正傳〉 深黄〈郷藥本草〉 川乙金〈本事方〉 俗ニウコン(○○○)ト呼ブ、即鬱金ノ略音ナリ、琉球種世上ニ多ク栽ユ、唐種モ享保年中ニ渡ル、共ニ形状相ヒ同ジ、葉ノ長サ二尺許、蘭蕉(ダンドク)ノ葉ニ似テ長シ、又芭蕉葉ノ小ナルガ如シ、葉ノ莖ハ青芋梗(サトイモノジク)ノ如ク、長サ一尺許、葉淡緑色ニシテ叢生ス、秋月花アリ、細長葉數百鱗次スルコト一尺許、形欵冬花苞ノ老タルガ如シ、白色ニシテ末ノ方微紅ヲ帶ブ、葉間ゴトニ黄花アリ、衰テ後ソノ蘂ニ頭觜アリテ、小烏鳥ノ形ノ如シ、此草性霜雪ヲ畏ル、秋ノ末ヨリ土窖ニ入レザレバ枯レヤスシ、舶來ニ二種アリ、暹羅ヨリ來ルハ脂アリ、下品トス、琉球ヨリ來ルハ脂ナシ、上品トス、皆黄赤色ナリ、此ニ二等アリ、根雞卵ノ形ノ如クニシテ差狹ク、兩頭尖リ横文多キモノヲ蝉肚鬱金ト、薑黄ノ集解ニ云ヘリ、藥舖ニテカシラウコント呼ブ、即老根ナリ、其旁ニ附タル嫰根ハ、形細長ク大サ小指ノ如ク、長サ一二寸ニシテ、兩頭一般ノ大サナリ、是集解ニ謂ユル四畔ノ子根ニシテ、藥舖ニテジクウコント呼ブ、ジクトハ細キヲ云フ、筆管ヲ俗ニ軸ト云、老根ハ染家ニ賣リ、又薑黄ニ充テ賣リ、嫰根ヲ鬱金ト爲シテ、醫家ニ賣ルハ非ナリ、藥ニモ老根ヲ用ユベシ、

〔廣益地錦抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1154 鬱金(うこん) 春宿根より生ル、葉形我朮のごとく、又だんどく草の葉に似たり、花さく事まれなり、葉をながめ根はうこんに用る也、寒氣をおそるヽ、冬は根を取日向成所の土中にうづみおくべし、三月にとり出し植べし、

〔剪花翁傳〕

〈四/八月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1154 鬱金蕉 花白、形蘘荷の花に似たるもの四方に出て、段々高く伸咲なり、開花八月下旬より九月に咲也、方日向、地二分濕、土囘塵、肥淡大便、寒中花前に淡小便を澆ぐべし、分株春彼岸よし、移三四月中也、花後より三月迄霜覆ひすべし、盆に栽る時は油糟を入べし、九月より三月迄地窖(ちむろ)に入べし、世俗に所謂鬱金粉は即此根也、

〔草木六部耕種法〕

〈四/需根〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1154 茜草紫草ノ根ヲ作ル法鬱金ハ熱帶ノ地〈赤道下ヨリシテ夏至規ニ至リ、二十三度半ノ間ニ係ル國土ヲ云フ、〉ニ繁生スル草ナリ、故ニ寒ヲ畏レ霜ニ傷ムコ ト良薑ニ同ジ、莖葉ハ生姜ノ如クニシテ大ナリ、葉間ニ穗ヲ抽デ花ヲ發ク、根ハ青芋(サトイモ)ニ似テ深黄色ナリ、此ヲ作ル法ハ、日當リ能キ野原ノ眞土或ハ壚土ヲ軟膨シ、此ニ廐肥ノ腐テ土ノ如クナリタルヲ二荷ト、三和土〈製法培養祕録ニ詳ニ見エタリ〉一荷ヲ耕リ混ゼテ培養シ、畑ヲ一歩三畦ニ作リ、百合ヲ作ルガ如ク種根ヲ五目ニ植付ベシ、能ク他草ヲ耘リ、時々盛養水ヲ灑ギ、且蒟蒻ヲ作ル如クニ培養スルトキハ、意外ニ能ク肥テ兒根モ蕃息スル者ナリ、十月上旬マデニ悉掘リ採ルベシ、又種根トスルニハ、今年作リタル根中ニテ能ク實シタルヲ撰ビ、附タル兒根ノ、缼テ脱落ザルヤウニ、其莖ヲ斷去テ、南向ナル崖下ノ日當能温處ニ、深三四尺モ坑ヲ掘テ、十月初ヨリ埋置ベシ、若スレバ寒ニ傷コト無シ、翌年八十八夜頃ニ至リ、其親根ヲバ除テ兒根ヲ植ベシ、凡熱帶ニ應合スル草根ヲ、凉際〈赤道下ヲ去ルコト、二十三四度以下四十度以内ノ、霜降氷結コト有ルベキ國土ヲ云フ、〉ノ土地ニ作ルニハ、皆此法ヲ用テ、其種根ヲ貯フベシ、然ラザルトキハ必皆腐敗者ナリ、又染料ニ用ル草根ノ色ヲ、濃厚スル培養アリ、其法血茅茜草ノ莖ヲ燒タル灰一石、銅山韝爐ノ灰二斗以上、二品細末シ、馬溺及馬溺鹽泥ニテ煉リ合セ、水ヲ加ヘ稀シテ、其根ヲ離ルコト一尺許ノ地ニ、時々此ヲ澆トキハ、大ニ根ノ肥大ノミナラズ、其根色ノ甚濃厚ナル者ナリ、故ニ紫根茜等ヲ作ルニモ、皆此培養ヲ用フベシ、

莪荗

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1155 蓬莪荗、〈音述、宋開寶、〉異名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000199.gif 藥、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1155 蓬莪荗 一名蓬莪朮〈本草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001922c.gif 言〉 蓬荗〈本經逢原〉 蓬莪〈三才圖繪〉 蓬朮〈本草原始〉 廣荗〈本草述〉 破關符〈輟耕録〉 青薑〈續醫説〉 莪荗〈附方〉 蓬萊朮〈羅浮山會編〉略シテ莪朮ト云フ、通名ナリ、享保年中ニ唐種ヲ渡シ官園ニアリ、又明和年中琉球種薩州ヨリ來リ、京師浪華ニ競ヒ栽レドモ、皆冬ヲ經ズシテ枯ル、今尾州江州ニハ栽傳ユルモノアリ、苗ノ状鬱金ニ異ナラズ、只葉ノ中心ニ紫黒色ノ斑一條アリ、六月ニ花ヲ生ズ、大抵鬱金ノ如ニシテ小シ、細長ナル葉多ク重リテ、欵冬花ノ如シ、面白色背ハ緑色、梢葉ハ深紅色、其脚葉間ゴトニ朱花一ツア リ、形黄芩花ニ似テ内黄色ナリ、又一種葉ニ紫斑ナキモノアリ、根ノ形色舶來ニ同ジ、舶來ニ二品アリ、上品ヲ御物〈官府ニ入ヲ云〉ト云、芋卵(コイモ)ノ形ニシテ外黄白色、内ハ淺青黒色ナリ、下品ヲ商賣ト云、形小ク内外トモニ色黒ク朽蝕多シ、藥用ニ堪ヘズ、又先年丹後但馬ヨリ和ノ莪朮ト稱シテ、市ニ出セシ者ハ、根ノ形細ク内外白色ニシテ味苦シ、是ヱンレイサウノ根ニシテ、王孫ノ一種ナリ、莪朮ノ類ニ非ズ、

〔廣益地錦抄〕

〈五〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1156 我朮(がじゆつ) 葉形うこんに紛るヽ程よく似たり、一所に二種をならべ植見るに、いかやうにも見わけがたし、花さく事もまれなり、根のかたち各別なるにてしれり、我朮は根丸ク、うこんは根せうがのごとく、寒をおそるヽ、冬は土中にうづみ、春出し植る、

〔草木育種〕

〈下/藥品〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1156 莪荗(がじゆつ)〈本草〉 漢種のもの二種あり、形状鬱金に似て、葉の中に紫色あり、此根淡赤し、按ずるにこれ眞の莪朮なり、一種は官園に多植、葉に紫色なく、根黄色なり、然ども鬱金とは氣味少く異なり、此眞の薑黄なり、莪朮に非ず、植る地は赤土野土ともによし、大抵芋を植る如くにしてよし、夏も多く人糞を澆べし、十月頃皆掘あげ乾て藥に入べし、又よくしまりたる根を、來年の種に貯べし、尤子を缺ぬ様にして但莖を切、根はそのまヽにて、南に向て山の崖の日あたりよき地を三四尺掘て、根を埋置ば寒中傷ことなし、四月に入て掘いだし、親根を捨、子を植べし、

檀特草

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1156 檀特草(ダンドクサウ)〈芭蕉之屬、今按本草所謂紅蕉是矣、〉

〔大和本草〕

〈七/花草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1156 檀特花 是亦紅蕉ノ類ナリ、葉ハ恰芭蕉ニ似テ小ナリ、葉長キ事一尺餘、五月抽莖高キ事四五尺或六七尺許、鮮紅花ヲ開ク事、五月ヨリ九月ニイタル、莖頭ニ數花連リ開ク、花長ク不全開、花落テ結實コト他物ヨリ早シ、實ノ形蒼耳子ノ如ク大如大拇指少長シ、殼ノ内ニ實アリ、如蓮肉堅シ、秋實熟シタル時早クマクベシ、生ジヤスシ、又春實ヲマクベシ、寒ヲ畏ルヽ事如紅蕉、寒ヲフセギテ十月ヨリ根ヲ向南、屋下ニウヘ養フ事モ紅蕉ノ如クスベシ、生シテハ甚繁茂シヤ スシ、糞ヲ忌ム、胡麻糟ニ宜シ、稻若水云、葯圃回春日曇花、花紅子堪珠微香、是檀特花ナルベシト、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四本/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1157 檀特花按檀特草高三四尺、葉似芭蕉而小不甚柔、又似薏苡而大不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、長尺餘濶三四寸、冬枯春生、七月抽莖開花深赤色、形如穗、最可愛、結子圓黒色甚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 、用作念珠、本西南外國之草性最畏寒、如値霜雪則失種、故防北向南之地可種、冬則覆稃或稻藁等、以禦寒濕、其子爲念珠、形色如作成而良、

〔草木育種〕

〈下/美花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1157 蘭蕉(だんどく)〈農圃六書〉 冬中圃へ人糞をhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/ra0000067265.gif し墾置、四月種を蒔べし、夏は根廻へ藁を敷て日を防べし、赤花のもの黄花のものあり、

〔剪花翁傳〕

〈三/五月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1157 檀特 蘭蕉 花黄あり、赤あり、形蘘荷の花の細長きがごとし、開花五月上旬なり、是は新根を土に圍ひ置、春彼岸に移(うゑかへ)れば五月に咲也、方日向、地畝を高くして一分濕りよし、濕氣多き時は枯朽るなり、土えらばず、肥淡小便、春芽出し前一二度、又花前に一度そヽぐべし、下種移春ひがんより三月中よし、新根貯ひやうは、地二三尺ばかり堀砂をしき、其上にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000200.gif (もみ)を布、又乾き土を布て新根を並べ、又土を厚くおきて、筵などを覆ひ置べし、

紅蕉

〔大和本草〕

〈七/花草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1157 紅蕉〈◯中略〉 今案ニ、美人蕉初薩州日州ニアリ、琉球ヨリ來レリ、近年畿内處々ニウフ、甚寒ヲオソル、九十月ニ根ヲホリ出シ日ニヨクホシ、南ニ向ヘル屋下ノ土ニ埋ミ、上ニオホヒヲスベシ、或春ヨリ南ニ向ヒ、北フサガリタル濕ナキ陽地ニウヘ其マヽヲキ、上ニ大ナル箱或瓶ヲ以掩ヒ、寒風ニアツベカラズ、然ラザレバ寒ニアヒテクサリ枯ル、冬ハ水ヲソヽグベカラズ、三月温ニナリテホリ出シウフベシ、又實ヲマクベシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1157 甘蕉〈◯中略〉集解、紅蕉和名モ美人蕉ト云、一名ヒメバセウ、琉球ヨリ來ル、苗芭蕉ニ似テ小シ、葉モ狹ク短シ、花ハ紅ニシテ朱ノ如シ、形蘘荷ノ花ノ如ク、狹瓣三寸許、左右ニ互生スルコト四五寸、觀ニ堪タリ、秋 ノ末ヨリ土窖ニ入ザレバ枯レ易シ、

〔増補地錦抄〕

〈七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 美人蕉 花極てくれないなる事、ともし火のごとく、又はざくろの花の色に似り、されば唐にては紅蕉といふ、葉はばせうのやせたるごとくちいさし、花のうつくしきとて、びぢんせうといふといへどもしからず、此葉をせんじ、女中髮をあらふに、けを長クしてくろからしむ、又は油をとりて、びん水にして、髮をくしけづりて、けのおつるをとヾめ、かみすぢをふとくし、つやを出し、葉をくろやきにしてかみの油にねり、髮のはげたる所にぬりて、けをせうず、其しるしばせうにすぐれたるとて名付よし、誠に女は髮のめでたからんこそ、人のめたつべかめりといへば、美人蕉とよぶもにくからず、

〔剪花翁傳〕

〈四/八月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 美人蕉 紅蕉 花黒紅色、形ち蘭蕉に似たり、開花八月下旬より九月也、方地盆栽物、土回塵、肥油糟、寒中又花前にも入る也、尤時を見合てよし、分株移(うゑかへ)春彼岸よし、花後より三月迄地窖(ぢむろ)に入る也、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 美人蕉ハ其葉芭蕉ノ如ク、六七月ニ花ヲ開キ、其色眞朱ニシテ、極テ美ナル者ナリ、暖地ノ産ナルヲ以テ、九月下旬ニ其根ヲ掘リ出シ、藁ニ包ミ閉藏法ヲ行ヒ三月ニ至リ出シ植付ベシ、

蘭/名稱

〔下學集〕

〈下/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 芝蘭(○)〈二共香華可貴艸也、然日本俗呼芝、爲原野短草者、不其理云云、〉

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 蘭(ラン/○)花(/○)〈或名幽蘭(○○)、葉如麥門冬而濶、而且勒長及一二尺、四時常青、花黄緑色者爲蘭花、今世所玩栽者是也、與蘭草逈別、〉 風蘭(フウラン)〈又名桂蘭吊蘭〉 獨頭蘭(ホクリ/ハクリ)〈出于蘭譜、又名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000201.gif 蘭春蘭、〉

蘭種類

〔増補地錦抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1158 蘭のるひ大蘭(おふらん) 花うす黄色のやうに見ゆる、さかりの時は、ふん〳〵たる香ありて、家内くんずる也、蘭は葉長く大かぶなるをよしとす、大蘭は葉ながし、 小蘭 花は大らんのごとく、葉みじかく、葉先みだれてあしヽ、ひめらん共いふ、白莖(しろくき) 葉も花も莖白し、是を上トス、今は中絶してすくなし、黒莖、紫莖、青莖トテいろ〳〵有、大蘭は青莖なり、又は菖蒲蘭といふ有、大蘭と同じ、〈◯中略〉石蘭(せきらん) 葉はしらんはくらんなどのごとくにて、根本土の上に二三寸高ク岩のごとく成かぶ有、年々に數出て後は岩窟のごとし、其間々に花七八寸ニ出ル、花形は大蘭に似て色うこん也、岩石蘭(がんせきらん)共云、風蘭(ふうらん) 葉はみじかくせきせうのごとし、花白し、根を竹の皮につヽみ、中につりて置、風を得て榮ル也、春蘭(しゆんらん)〈春草の部にくはし〉 澤蘭〈花うすむらさき〉ばらん 葉は大キクあつし、花は未見、本草綱目馬蘭(バラン)、時珍曰、其葉似蘭大キシ、其花似菊紫也、故名俗稱物之大者馬云々、此事にや不知、日光蘭(につくわうらん) 葉はしらんによくにて、花は九りん草のごとくなれ共、咲ぶり各別なり、ほそきゑだをうちてさく、色はこいむらさきト白トうす色かきいろ四五色有、紫蘭(しらん) 葉はさヽのやうにて、中より花出て、こいむらさき、白蘭(はくらん) 葉はしらんよりみじかく、花しろし、黄蘭(きらん) 葉はあつもり草といふ草のごとし、花黄色、

〔和漢三才圖會〕

〈九十三/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1159 蘭花〈◯中略〉按蘭花最不寒暑風雨、故多鉢植之、唯豫州大洲、紀州若山、及遠州作圃畦、種之能茂盛、長三尺者多、秋芳者即眞蘭花也、春芳者即春蘭也、黒蘭 長尺許、葉花並似秋蘭而小、其花黒赤色、 南京蘭 葉一二尺、濶七八分、花似秋蘭而香淺、白蘭 葉似秋蘭而弱、秋開青白花、香太深、隈蘭 葉端縁限白、其似秋蘭而香太深、春蘭 俗云保久利按春蘭葉似蘭而細短、長不七八寸、春月開花亦似秋蘭香稍淺、冬月采其根慈姑、能治皸瘡(アカガリ)、蕙蘭 紫蕙 黄蕙 〈按零陵香異名爲蕙草、與此不同、〉 紫蕙即紫蘭按蕙蘭立莖生葉、似秋蘭而濶薄、色淡青有縱理、三四月莖端開白花香、其根團扁多髭、黄花者俗呼名黄蕙、以愛其花、 紫花者名紫蕙、又曰紫蘭、〈此乃山草之白及乎、可考、〉草本花詩譜有朱蘭蕙蘭之二種、形状稍似、雖蘭名芳香、但花莖状以略似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 蘭、後人稱之耳、銀蘭按銀蘭葉似小玉簪(コギボウシ)葉而莖長、三四月抽莖開白花蘭花、又有紫花者、其葉陰乾以清油小兒草瘡、青蘭按青蘭葉似帚草、而莖梢葉間生青花、似蘭而不香、棒蘭 〈正字未詳〉按棒蘭圓莖無葉頗似箸、故名棒蘭、五六月枝杈之間生花似蘭花、而小有微香、風蘭 桂蘭 仙草三才圖會云、風蘭不土而生、小籃貯掛樹上、人稱仙草、細花微香、五雜俎云、風蘭根不土、叢蟠木石之上、取而懸http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d5c2.gif、時爲風吹則愈茂盛、其葉花與家蘭全無異也、按風蘭深山有之、榧椵等幹間多有之、葉形似萬年青而細小、其長二三寸、六月抽一莖小白花、末曲微香、 奈吾蘭 風蘭之類、形相似葉長三四寸、亦不土能活、開黄花香佳、自薩摩之、曰有深谷採、琉球風蘭 葉長尺許、似蘭而柔、抽莖開小白花、微有風蘭之状、蓋此觀音草之白花者也、

〔中山傳信録〕

〈六/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1161 名護蘭、葉短而厚、與桂葉同、大僅如指、三四月開花、與蘭無異、一箭八九朶攅開、香清越勝、蘭出名護嶽巖石間、不水土、或寄樹椏上、或以棕皮裹懸之、又有風蘭、葉比蘭較長、香如山柰茴香、蔑竹爲盆、懸挂風前、極易蕃衍、俗皆尚蘭、號爲孔子花、粟蘭一名、芷蘭、葉如鳳尾、花如珍珠、 又有松蘭竹蘭棒蘭、〈状如珊瑚樹、緑色無葉、花從椏間出、似蘭較小、〉

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1161 春鳳蘭 〈蕙蘭〉春鳳蘭は漢名を蕙蘭一名九節蘭、一名興蘭と云、その形状鳳蘭に似て葉に光あり、花は二三月の頃に開く、一幹七八花、其瓣甌蘭よりも痩細にして末尖り、其色淡黄にてかばいろの縱道あり、これを土窖中に入おく時は、初春に花を開く事甌蘭に同じ、さて顧野王の頃に蕙といへるは、全く秋蕙にして、秋花さく蘭をいひ、黄山谷以下に蕙といへるは、春秋に拘はらず、すべて蘭の數花を開くものをいふ、憶に渠の頃は、いまだ蘭の種類世に多からざるによりて、たヾ春蘭秋蕙を以て其別をなせしなり、後世に至りては、其種類おのづから多く出て、春月數花を開く、蕙をも見出せしより、遂に蕙は春秋にかヽはらぬ名とはなりぬ、これは全く時勢のしからしむる所にして、必しもあやまりを傳へしにはあらず、世に蕙を翫ぶもの、よろしく古今によりて、その違ひある事をおもふべし、〈◯中略〉小蘭 〈王小孃〉小蘭一名姫蘭は、漢名を王小孃といふ、其葉極て細小にして、長さ一尺餘、濶さ二分許、秋白莖抽て三五花をつく、形寒蘭に似て白色にして黄を帶び、瓣ごとに五紅線ありて、心には同じ色の星點多し、凡此花は五瓣なりといへ共、上瓣は大にして三方に分離し、二瓣は小にして上より心をお ほふて分離せず、香氣衆蘭よりもやヽ劣れり、雄蘭 〈駿河蘭 建蘭〉雄蘭一名大蘭、一名駿河蘭は、漢名を蕙一名秋蕙、一名薫草、一名秋蘭、一名建蘭、一名劍葉蘭、一名玉整花といふ、〈◯中略〉抑駿河の種は葉頗る菅茅の如くにして叢生し、色青緑に少しく黒みを帶び、直立して劍脊あり、長さおほよそ二尺より三尺餘に至る、初秋の頃に至れば、その葉心より淡黄色なる花莖を抽て、其梢七八花或は九花を開く、又温暖の地にては、その花五月の頃に開く、故に西土にても建蘭盛於五月、〈格致鏡原引學圃雜疏〉或は建蘭五六月放一幹九花〈秘傳花鏡〉などいへり、その細縱道あり、また花内に二に瓣を生じ、その瓣並に紫黒色の星點あり、香氣殊に高し、故にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州府志に、建蘭芬郁方今爲海内所推度、他種無能見勝者とみへたり、さて蘭には花蕊の間に細かなる白露珠ありて、これをなむれば味いと甘し、此即西土にいはゆる蘭膏〈蘭言秘傳花鏡〉なり、また花後實を結ぶ、状馬蘭に似て長さ二寸許、これを蘭筍〈物理小識〉といふ、内に白き粉の如きものあり、これをまけども、遂に苗を生ずる事を聞ず、さすれば西土にて其子熟亦可種也、〈同上〉といへるは、甚疑ふべし、又根は天門冬に似て細く、其色また相似たり、これを土續斷〈草木通志略〉といふ、俚俗或は採て引風の藥とす、今これを試るに、根は味甘く香氣なし、されど五雜俎に蘭根食之能殺人不愼とみへたれば、用ゆるものよろしく斟酌すべし、又花は味辛くして苦し、これは五雜俎に、閩建陽人多取蘭花、以少鹽水漬三四宿、取出洗之以點茶絶不俗とみへたれど、事物紺珠には峽中儲毒蘭花第一といへり、今その花を試るに、おほく服すれば、少く逆上の氣味あるものといへども、根はしからず、さすれば花根ともに全く大毒はなきものなるを、殺人などいへるは、けだし傳聞の誤りなるべし、〈◯中略〉雌蘭 〈房州蘭〉雌蘭一名房州蘭は、漢名をhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭といふ、其葉全く建蘭に似てやヽ薄くして短く、斜にしだれて頗 る吉詳の如し、その花を開き實を結ぶ事、また建蘭と一様にして、たヾ花莖紅色なるを異なりとす、此即建蘭の一種にして、其品稍劣れるものなり、〈◯中略〉博蘭 〈呉蘭〉博蘭は漢名を呉蘭といふ、花は秋に至り一幹五六花を開く、形状幽蘭に似て圓く、紫黒色にして頗る藜盧の花の如し、葉は金燈草に似て黒緑色にて光澤あり、長さ一尺三四寸、濶さ七八分、此種近時多く唐山より來る、一種黒蘭ありと、和漢三才圖會にみへたれど今詳ならず、〈◯中略〉寒蘭 〈冬蘭〉寒蘭一名おほらんは、漢名を冬蘭といふ、和漢蘭稱に、寒蘭はたれまた蘭花の類なり、一莖數花、對州土州豫州紀州勢州等の暖國、海近き山よりいづ、葉に長短狹濶あり、花は青色のもの多し、また紅紫及黄色のものあり、十月の頃にさくといへり、今圖する所のものは、即狹葉青花のものなり、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1163 蘭ノ類ニハ建蘭(ラン)、秋蘭、冬蘭、歐蘭(カンラン)、蕙蘭、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(メラン)、箬蘭(シラン)、桂蘭(ナゴラン)、賽蘭(チヤラン)、風蘭、小蘭、鳳蘭(シヤウブラン)、青幹蘭(アヲグキラン)、紫幹蘭(ムラサキクキラン)、素眞蘭(シラハナラン)、春蘭等アリ、又蘭ニ非レドモ、蘭ヲ以テ稱スル者ハ、竹柏蘭(ナギラン)、紫金蘭(シキンラン)、兒蘭(チゴラン)、文珠蘭、獨脚蘭(ドクキヤクラン)、松葉蘭(マツハラン)、一船http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000202.gif (ハラン)、間道一船http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000202.gif (シマハラン)、白星一船http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000202.gif (シラホシハラン)、高良薑(クマタケラン)等、其他尚多シ、〈◯中略〉蘭ノ種類モ頗多シ、暖國山中ニ春初ニ花開アリ、春蘭(○○)ト呼ブ、葉ハ小蘭(コラン)ノ如クニシテ濶シ、花鏡ニ此ヲ報春先ト名ク、秋花開モノヲ秋蘭(○○)ト云フ、又對馬國ニ冬花開者アリ、莖ノ紫ナルト緑ト有リ、廣東新語ニ紫幹蘭(○○○)、青幹蘭(○○○)ト稱スルハ即是ナリ、又冬花ノ開ヲ以テ俗ニ寒蘭(○○)ト云フ、又琉球國ヨリ來ル、俗ニ菖蒲蘭(○○○)ト呼ブ者アリ、葉ハ建蘭(ツネノラン)ノ如クニシテ長三尺ニ及ビ、其性微軟ニシテ垂下コト多シ、此モ亦冬ニ花ヲ開ク、五雜俎ニ鳳蘭(○○)ト稱スルハ即是ナリ、又http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(メラン/○○)ハ葉短シ、又蕙蘭(シカラン)、歐蘭箬蘭(カンランシラン)、賽蘭(チヤラン)等モ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(メラン)ト大同小異ノミ、小蘭(○○)ハ其葉モ細ク且短シ、然レドモ小蘭ノ花ハ其香ノ極テ馥郁者ナリ、又漢土ヨリ舶來ノ素眞蘭(○○○)ト稱スル有リ、其葉ハ小蘭ノ如ク、花ハ建蘭ト形状ヲ同クシ テ、花ハ其色純白ク、花背ハ微青シ、其香亦甚ダ芬シ、信ニ珍奇ナル名品ナリ、風蘭(○○)ハ九州土州紀州伊豆房州等ニ多シ、風ノ能ク徹ル處ノ樹木ニ結ビ付テ置モ、能ク繁榮シテ皮ニ根ヲ纏ヒ、籠ニ入レテ釣置モ宜シ、此亦花開トキハ香氣最モ愛スベシ、桂蘭(ナゴラン/○○)モ此ト同類ナリ、又紀州伊豆房州等ニ生ズルハ、葉幅七八分長四寸許ニ、建蘭ニ似テ小キ花ヲ開ク者アリ、其葉ノ竹柏(ナギ)ニ似タルヲ以テ、俗ニ此ヲ竹柏蘭(○○○)ト呼ブ、

〔草木育種〕

〈下/葉或實視べきもの〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1164 幽蘭(らん)〈本草〉 秋蘭〈事物紺珠〉なり、秋花あり、又葉に斑あるものを地軸(こんりんざい/○○)、又こヽんりん(○○○○○)などヽいふ、又對馬國に産する、青幹蘭紫幹蘭(○○○○○○)〈廣東新語〉等あり、俗に寒蘭(○○)といふ冬花あり、又漢土より素眞蘭(○○○)と稱して舶來あり、其葉小蘭に似て花の形建蘭(らん)のごとく色純白くして背緑色を帶、其香又愛すべし、蘭中の奇品なり、又http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(めらん/○○)は葉短し、小蘭(○○)は葉短く狹し、花の香氣甚勝たり、又なぎ蘭(○○○)は土佐國紀伊國等に産す、葉の幅七八分長さ三四寸にして、形状竹栢(なぎ)の葉のごとく、花は蘭に似て小し、又琉球より來る鳳蘭(○○)〈五雜俎〉あり、俗に菖蒲蘭といふ、葉は建蘭に似て少し軟く、長さ二三尺、十月花あり、又所々山中に生ずる報春先(しゆんらん/○○○)〈花鏡〉あり、葉は小蘭に似て濶く、春花を開ゆへ春蘭〈蘭譜〉と名く、其外蘭の類多し、又蘭の類に非して蘭の名あるもの甚多し、

〔草木育種後編〕

〈下/蘭類并冒稱の類〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1164 竹柏蘭(なぎらん/○○○) 葉なご蘭に似て長く、莖は石蔛(せきこく)に似たり、赤土のごろたに栽てよし、又延命蘭(○○○)といふあり、八月花あり、一葉蘭(ひとはらん/○○○)といふあり、根に近き處塊ありて一莖を抽き、三月の比に花あり、二葉蘭(○○○)一名じらんといふものあり、山の陰地に生ず、一莖に抽き、梢に黄色花、五六花あつまり生ず、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1164 蘭草〈◯中略〉蘭花一名媚世〈潛確類書〉 王者香〈名花譜〉 玉整花〈汝南圃史〉 國香〈典籍便覽〉 劒葉蘭〈事物紺珠〉 馨列俟〈同上〉 香祖〈同上〉 待女〈因樹屋書影〉 芳友〈事物異名〉 幽客〈同上〉 幽谷客〈花鳥爭奇〉 幽草〈名物法言〉 謝階草〈同上〉 孔子 花〈中山傳信録〉 義香〈尺牘雙魚〉 蘭花〈通雅〉 建蘭〈本草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f3e.gif 〉 幽蘭〈正誤〉 土續斷〈同上、根ノ名、〉正誤、春蘭(○○)ハ一名報春先、〈秘傳花鏡〉獨頭蘭(○○○)〈蘭譜〉ホクロハ此一種ナリ、秋蘭(○○)ハ蘭花ナリ、楚辭ノ秋蘭ト同カラズ、猗蘭(○○)ハチヤラン、致富奇書ノ伊蘭ト同ジ、増、〈◯中略〉蘭花ハ王氏蘭譜金http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭譜等ニ詳ナリ、品類尤多シ、葉長クシテ直立スルモノヲ雄トス、即建蘭(○○)ナリ、福建ノ地ニ多ク産ス、葉柔弱ニシテ直立セザルヲhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(○○)ト云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 州ニ多シ、共ニ八九月コロ別ニ莖ヲ抽テ花ヲ開ク、清香馥郁タリ、一種十月ヨリ十一月ニ至テ、花ヲ發スルモノアリ、ソノ葉柔軟ニシテ小ナリ、花モ痩テ小ナリ、コレヲ寒蘭(○○)ト云、花ニ品類多シ、色ニヨリテ紫カンラン、青カンラン等ノ稱アリ、又淡紫紅白サラサ等ノ數品アリ、阿州海部郡、土州山中等ニ自生アリ、漢名花史左編ノ草蘭(○○)ナリ、又歳蘭、紫蘭、玉魫蘭、素心蘭、青蘭、金稜邊、銀稜邊等アリ、詳ニ百品考ニ見ヘタリ、ホクロ(○○○)一名ホクリ、〈阿州〉ホウクリ、〈藝州〉ハイクリ、〈備後〉ヱクリ、〈土州〉ガジヤ、〈丹波〉アカヾリサウ、〈勢州〉此草根ヲ炙リテ搗ケバ糊ノ如ク成ル、コレヲ皸http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a5a4.gif ニ貼スレバ能ク愈ユ、故ニアカヾリサウト云、

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1165 鹿蹄草すヾらん(○○○○) 大和にてまきをもてと云江戸にてべつかうさうといふ、鹿蹄草〈未詳〉江戸には四谷大宮八幡社地に見えたり、同名別種あり、獨頭蘭(○○○)ほくり 畿内にてほくりといふ、播磨にてほくろと云、四國にてゑくり、東國にてはくりと云、又ほつくりと云、ほくりは略蘭に似て愛しつべき花也、奴僕其根をとりて皸(あかゞり)をそくふもの也、

〔百品考〕

〈上〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1165 歳蘭 一名拜節蘭 和名ホウサイラン灌園草木識、歳蘭葉長四尺餘、花一莖廿餘蘂、赤黒色、無香不韻、拜歳時方開、亦蘭類也、植以備品、〈◯中略〉天保ノ初琉球ヨリ渡ル、花戸誤呼テ豐歳蘭ト云、形状ハクランニ似テ長大ナリ、葉ノ幅一寸餘、 長サ二三尺、深緑色ニシテ至厚ク甚光澤アリ、能直立ス、春花ヲ開ク、紅紫色、萼大ニシテ瓣細シ、莖ノ高サ二尺ニ及ブ、山柰甘松ヲ併タル如キ匂アリ、幽蘭ノ清香馥郁タルニ異ナリ、故ニ無香ト云、紫蘭 和名キンリヤウ チヤウジユラン葯圃同春、紫蘭三月開、色鮮可愛、但恨無香、 汝南圃史、紫蘭葉狹如水仙、比蘭蕙短而柔、三月中開紫花、有色無香、春初苗長可分、文政ノ比舶來スルトコロナリ、俗ニ金稜邊ト云ハ誤ナリ、葉ハ鳳蘭ニ似テ深緑色光アリ、婀娜トシテ斜ニ垂レテ直上セズ、一科ヨリ七八葉排生ス、花ハ冬ヨリ苞ヲ發シ、三月比花ヲ開ク、莖ノ長サ一尺餘、二十餘萼ニ及ブ、紅紫ニシテ瓣ノ邊色ウスシ、香氣絶テナシ、生育シヤスシ、玉魫蘭 一名魚魫蘭、一名玉幹、一名玉軫蘭、金http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭譜、魚魫蘭花片澄澈、宛如魚魫、采而沈之水中、無影可http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 指、葉頗勁緑、此白蘭之奇品也、〈◯中略〉紫蘭ト同時ニ唐山ヨリ渡ル、葉ノ長サ尺餘、幅廣シテ少シ垂テ直上セズ、深緑色ニシテ光アリ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(メラン)ノ如シ、發芽ノ時色白シ秋花アリ、幹細ク青白色、花建蘭(シラン)ト同形ニシテ潔白ニシテ、香氣最高シ、蘭中ノ上品ナリ、玉整花 一名素心蘭 和名ソシンラン雲間潘穉峯百花詩、素心蘭詩、人生至友杳難尋、蘭草因移澗谷陰、長與隱淪契合、清風披拂素居心、花鏡、玉整花葉脩長而痩、色甚瑩白可愛、白花之最能生者、此亦前年唐山ヨリ舶來ス、葉玉魫ヨリ幅狹シテ細長ナリ、又草蘭(カンラン)ノ葉ニモ稍似レリ、秋花ヲ開ク潔白ニシテ玉魫ニ同ジ、幹苞トモニ青白色玉魫ニ似レリ、秋花ヲ開ク、潔白ニシテ玉魫ニ同ジ、幹苞トモニ青白色、玉魫ニ似レリ、清香馥郁トシテ最諸蘭ニ優レリ、蘭中ノ魁ト稱スベシ、素 心蘭ノ名ハ香雪野村氏ノ考ルトコロナリ、碧玉幹 一名青蘭 和名アヲシベ セイセイラン花鏡、碧玉幹花雖白、微帶黄、有十五萼、合并幹而生、竟有二十五萼、其葉細最肥厚而深緑、〈◯中略〉葉建蘭(ジラン)ニ似テ勁シテ直立ス、深緑色愛スベシ、春發芽ノ時紫色最深シ、秋花ヲ開ク、建蘭ニ似レリ、花ニ三品アリ、花萼青白ニシテ、幹苞共青白ナル者ヲ、シヤムノ青青ト云、上品ナリ、花萼青白ニシテ幹青色、苞微紫ナル者ヲ青青ト云、中品トス、花萼青白ニシテ、幹苞共ニ紫色ヲ帶ル者ヲ、アヲシベト云、下品トス、三種共ニ花ハ青白色ニシテ、香氣清遠ナリ、貴ブベシ、金稜邊 一名金線邊、一名金邊蘭、 和名ヤキバラン コンリンザイ花鏡、金稜邊花豐腴而嬌媚、毎幹十二萼、色同呉蘭、妙在葉、自尖上一黄線、直下如金絲肥、〈◯中略〉建蘭(ジラン)ノ一種ナリ、葉質建蘭ニ同シテ、葉端ノ尖ヨリ四五寸ノアイダ、兩邊ニ黄白色ノ縁アリ、花ハ六七月ノ間ニ開ク、高サ尺許、幹紫色ニシテ花黄緑色、舌ノ如キ瓣ニ紫色ノ細點アリ、香氣ヨシ、金稜邊ノ名ハ紫泉平井氏ノ考ナリ、銀線邊 一名玉邊蘭 和名ココンリン ココンリンザイ葯圃同春、銀線邊有白有香、 興化府志、蘭有葉邊一線如金一線如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 玉、謂之金邊玉邊蘭、銀線邊ニ兩種アリ、葉質建蘭(ジラン)ニシテ銀邊ナル者ヲ、古金輪ト云、葉質http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f58.gif 蘭(メラン)ニシテ銀邊ナル者ヲ玉花ト云、倶ニ葉端ノ尖ヨリ四五寸ノ間、兩邊潔白ニシテ鮮明ナリ、其内ココンリンハ發芽ノ時ヨリ銀邊潔白ニシテ、金稜邊ノ成長ノ後ニ現ルヽニ異ナリ、秋花ヲ開ク、瓣ノ兩稜モ潔白ニシテ葉ト同ジ、香氣モ高クシテ愛スベシ、草蘭 和名カンラン花史左編、草蘭紫梗青花者爲上、青梗青花者次之、紫梗紫花者又次之、餘不品、種時須山土和匀、 圃成茶甌大、以猛火之、取出槌碎、舖以皮屑、納盆缶中、二八月分種漑之、以土煆者、爲其根最甘恐蚯蚓傷耳、莖葉柔細、生幽谷竹林中、宿根移植膩土、多不活、即活亦不多開http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 花、其莖葉肥大而翠勁可愛者、率自閩廣移來也、非草蘭比、 廣東新語、草蘭以短葉白幹者上、其花肥、喜食霜雪、不潅穢、冬月花ヲ開ク故ニ寒蘭ト云、暖地ノ深山ニ自生アリ、移栽テ育シガタシ、花史ニ言ヘルガ如シ、花ニ品類多シ、紫カンラン、青カンラン、紅カンラン等ノ稱アリ、葉痩テ春ランニ似テ長ク光アリ、花莖細シテ瓣モ亦細シ、香氣甚清遠ナリ、冬月書齋中ニ置テ清玩ニ堪タリ、

蘭栽培

〔大和本草〕

〈八/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1168 蘭 是世俗ニ花ヲ玩賞スル蘭ナリ、眞蘭ニアラズ、葉ハ大葉麥門ニ似タリ、數種アリ、皆寒暑ヲ畏ル、盆ニウヘタルハ、寒月ニ至リ屋下ノ暖處ニヲクベシ、上ヲオホフベシ、平地ヲ高クシテウフルモヨシ、地ニウヘタルハ、冬春厚キコモヲ二重ニシテオホフベシ、三月上旬取出スベシ、北風ヲ最ヲソル、北方ヲ厚クフセグベシ、樹下ヲ忌ミ陰地ヲコノム、又水ヲ好ム、水ヲシバシバソヽグベシ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f20.gif 地ヲ忌ム、甚鐵器ヲヲソル、剪葉忌鐵、暑月ハ日ニアツベカラズ、旱ヲ忌、凉地ニヲキテ頻澆水ニ宜シ、蘭ノコヤシニ、クジラノ油ヲ用テヨシ、魚ノ洗汁モ可也、人ノ浴シタル垢汁ヲカケタル尤ヨシ、正二月傍苗生ズ、此時肥シヲイム、又茶ノセンジカスヲ末シテ根ニヲキ、又センジ茶ノ汁ヲソヽグベシ、茶ノカスヲ末セズシテ其マヽヲケバ、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f20.gif 生ジテアシヽ、葉ニ小虫生ズルヲバ、手ニ油ヲ付、或紙ニ油ヲ付テヌグヒトルベシ、花鏡ニハ魚ノ洗汁ヲソヽギ、又大蒜ヲスリテ水ニ和シテソヽゲバ、虫自無ト云、又葉上ニ斑點アルニ魚汁ヲカクル、蒜汁ヲバ白筆ニテ付ル、盆ニウフルハ座間ノ清賞ノタメ也、二月下旬地ニウフレバ、根ヒロク繁生シテサカヘヤスシ、盆中ハ不榮茂、ツバキノ實皮ヲ去センジ、蘭根ニソヽゲバ根ニアル虫去ル、一説一切糞ヲ忌、魚汁モ勿用、久シキ糞土ニウフベシ、大蘭アリ葉大ナリ、春花ヲ開ク春蘭トモ云、稀ナリ、小蘭アリ、青莖ト云アリ、赤莖アリ、黄蘭アリ、葉廣ク短シ、黄花ヲ開ク、本草芳草類蘭草ヲ載タリ、フヂバカマナリ、是 眞蘭ナリ、今ノ蘭ハ本草別ニ不之、蘭草ノ集解正誤ニノセタリ、琉球ヨリ來ル風蘭ト云物アリ、コレハ木ニカケヲク處ノ風蘭ニハアラズ、葉長三尺バカリ、花如蘭有香畏寒、薩摩ニアリ、琉球ノ山石ニ生ズ、葉ノ形及廣サモ香モ常ノ蘭ニ同ジ、

〔草木六部耕種法〕

〈十/需花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1169 凡蘭ヲ植ル法ハ、赤土カ黄土ヲ細ニ碎キ、軟沙トヲ等分ニ合セ、胡麻油粕干鰛ヲ粉ニシテ、其土ノ二十分之一ホド能ク耙交テ植ルヲ良トス、不淨ナル者ヲ肥養ニ用ルコト勿レ、且又蘭ヲ植替ルモ分チ植ルモ、八月九日ヲ時トス、群芳譜ニ井水ヲ潅ヲ忌ムト云ヘリ、翅ニ井水ノミナラズ、總テ寒烈ナル水ヲ用ルハ宜シカラズ、又花鏡ノ養蘭訣ニハ、春不出夏不日秋不乾冬不濕ト云フ、今世上ノ蘭ヲ作ル者ハ、大抵盆栽ニシテ此ヲ賞覽ス、然レドモ盆栽ニノミスルトキハ、其根自由ニ蔓衍スルコト能ハザルヲ以テ、莖葉モ盛ニ繁生スベカラズ、宜ク高燥ノ地ヲ精碎シ、畹ヲ作リテ此ヲ植ベシ、上ニ説タル如ク、胡麻油粕ト干鰛ヲ肥培ニシテ植付置キ、時々盛養水ヲ薄クシテ、其根ニ澆グトキハ、意外ニ能ク茂生スル者ナリ、又ハ閉藏法ヲ嚴密ニスベク、夏秋ハ乾燥セザルヤウ遮陽ヲ爲シ、且http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019f20.gif 氣ヲ能ク除クベシ、又鉢植ニスルニハ、水ノ能ク脱ルヤウニシ、久霖ニ當ルコトヲ禁ジ、冬ハ閉藏法ヲ行フニ宜シ、或ハ蘭ヲ花壇ニ植ルトキハ、消失ルト云フ説アリ誤ナリ、下總國銚子港ハ、各別ノ暖地ニモ非ズ、且土性モ亦宜キ處ニアラズ、然レドモ植田屋徳平ナル者ノ庭ニ植タル建蘭ハ、甚盛ニ繁榮シ、數歩ノ間深碧ニシテ藺田ノ如ク、花開トキハ其香近隣ニ薫ズ、以テ蘭ノ花壇ニ宜キヲ證スルニ足レリ、

〔草木錦葉集〕

〈緒〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1169 深山物産蘭の名目ある品植土〈并〉養法深山産のうち、南かくらん、椙蘭、檜らん、かもめ蘭、天鵞蘭、右は赤土一合、肥氣なき土〈竹やぶの土よし〉二合、川砂五勺、豫〈◯水野忠敬〉が秘事の水ねりにして、丸藥のごとく成土へ植る、かもめ蘭、天鵞蘭の二品は懸肥惡し、外の三品は水肥少しはよし、 萬年椙〈萬年草とも〉もかもめ同様にてよし棒蘭、なご蘭、にうめん蘭、風蘭、ひも蘭、かや蘭、石薢、しこう蘭等の類は、土へ植ては惡し、へごを打くだき細かにして、岩ひばの根を細かにし少し交、鉢の下へ炭を多く入、右へごにて植る、又は措(ほく)へご等へ植るもよし、魚肥少しはよし、懸水日々澤山懸べし、麥蘭〈豆岩石とも〉豆蔦〈豆ごけとも〉等は、措へご石類へ付てよし、付るには鳥をとるもちを措、又は石類へ少しぬり付、其上へ蔓をもちへ付、はりがねか細きしゆろ絲にて卷、極蔭へ置、日々水澤山懸べし、山谷の産蘭の名目ある品〈并〉三角草植土雙鶴蘭、〈さぎ草〉飛鶴蘭、柳蘭、千鳥蘭、〈岩ちどり野州の産〉右は古き茅家根の腐りたる塵すヽ多く付たるは別して吉、右の品干細かに振ひ一合、合土一合まぜ合せ植る、下水時々懸てよし、〈◯中略〉蘭の名目ある植土違ふ品〈并〉養ひ方鶴蘭、錦けい、岩石、花蘭、松葉蘭、ゑびね蘭、くま竹蘭、櫻蘭、〈つるをのばす傳は、六卷目うの部にあり、〉右は合土三合、赤土一合、川砂一合交合せ植る、松葉の外下肥豆肥よし、蘭の名目ある品植土〈并〉養方桔梗蘭 鹿子島蘭 のし蘭 日光蘭 芙蓉蘭 茶蘭 鈴蘭 吉祥蘭 草竹(さうちく)蘭 紫蘭 萑蘭 紫錦蘭〈紫おもと〉右いづれも合土にてよし、紫おもとの外、下肥を用ゆ、豆肥もよし、榮蘭 渡り橄欖 並土よし、合土なれば別して吉、下肥を用ゆ、かん蘭は秋肥惡し、本蘭〈雄蘭の事也〉の根同じ成品は、植土皆同様にて吉、持方も同様也、

〔剪花翁傳〕

〈三/五月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1170 蘭 花青色に黄色を含めり、開花五月より七月下旬迄あり、香氣賞すべし、方 六分陰、地一分半濕の例也、されど土長流砂(ながれかはのすな)を微細に篩ひ整へて、盆栽にすべし、肥鰹節の煎汁を平日(つね)に澆ぐべし、移二月中旬よし、根に腐入ときは清水をもてあらひ、水氣を拭ひ去て植べし、長二尺ばかり、よく生育ときは三尺にもおよぶ、夏月は葭簀をもて日覆すべし、夕方より葭簀を取除き、夜露を受べし、雨天には雨覆ひすべし、秋彼岸より屋の内か、又は温室に入べし、初冬前より油障子をもて風を防ぐべし、風なき日は日の光を當るもよし、此時より來四月頃迄、油障子を開く事なかれ、四月より後風なき日は開てもよし、寒中地窖に入べし、

〔草木育種後編〕

〈下/蘭類并冒稱の類〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1171 鹿角蘭(しゆめんらん/○○○)〈廣東新語〉 壽蘭〈琉球〉入面(しゆめん)蘭〈同〉延命蘭〈薩州〉ともいふ、文化丙子の年、始て琉球より來る、中山入面の地に産す、故にしゆめんらんといふ、俗ニにふめんらんといふは訛なり、葉仙人指甲蘭(なごらん)に似て大なり、屋周(おもと)のごとく高く生長す、花は葉間より枝をなし、淡黄色にして黒褐色の斑點あり、油點艸(ほとゝぎす)の花に似たり、へこをくだきて卷柏(いはひば)の根を少しまじへ、鉢の下へ炭を入て栽べし、油かす胡麻の類を土へまじへてよし、十月の比より暖窖に入れてよし、〈◯中略〉岩蘭(いはらん/○○) 房州清澄山にて採り得たり、花戸にあるは大坂より來る、根に小塊あり、麥門冬(りうのひげ)の塊に似たり、傍より鬚根六七を生じ、葉は黄精(さゝゆり)に似て長く、莖赤みあり、淡紫の花を開く、赤土のごろたに栽てよし、一種岩千鳥(○○○)、一名君ケ世〈三州方言〉といふあり、予〈◯阿部喜任〉三州巴川の邊にてとる、崖の石の上に生ず、根に塊あり、岩蘭より莖葉ともに小なり、花に紅白の二品あり、赤土のごろたよし、豆肥を澆ぎてよし、二種ともに年々栽かへてよし、雙鶴蘭〈さき艸なり〉柳らんの類、かや屋根のふるくくさりたるを細かにし、合土一合、此ごみ一合まぜ合せうゑてよし、〈◯中略〉鈴蘭(すゝらん/○○) 野土にても赤土にてもよし、春月早く根を分けてよし、畦に作りてよし、和蘭にてマイブルームといふ、頭腦の神經を強壯にするに花を用ふ、又花の細末を鼻に入て嚏藥とし、頭痛を治すといふ、〈◯中略〉

蘭産地

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1172 雄蘭 〈駿河蘭 建蘭◯中略〉凡蘭は海濱近き暖國の産をよしとす、故に和漢三才圖會に、豫州大洲、紀伊若山、及遠州者能茂盛といひ、和漢蘭稱〈増山河内守家臣淺倉幸右衞門義方著〉には、伊豫のもの名産、遠江駿河の産これにつぐといへり、されど今江都にある所は、すべて駿河の産を移し植て、培養せしものなれど、其品最よし、おもふに伊豫の産は、我いまだ其種をみずといへども、今ある駿河の種は、かならずそれより劣れるものにはあらざるべし、

〔東海一漚集〕

〈三/記〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1172 神山移蘭記筑之香椎(○○○○)、環海皆山、山之斷爲衍而復起、突如獨峙者多多良也、其麓頫首、下飮諸江者神山也、其間峩然冠山、翼然臨江者顯孝寺也、是山也多有香草嘉樹、所謂香草者蘭http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d000.gif 其半焉、而土人無識而採之者、歳次壬申夏、予〈◯僧圓月〉自南粤而東海、纏疾息焉、明年春數爲家書招、臨當促裝而兵革塞途、故盤桓而止、毎日觀望林園、按花齅之竟夕而歸、以效王右軍避亂蘭亭之故事也、一日天朗氣清、時携二三朋友、臨水登山且行且吟、忽聞幽香清遠、可愛可親、稍行數歩、終到參差之中、盛有紫莖赤節而葩糚淺碧、猗猗然藹藹然、叢叢相望、不勝計、豫欣然分將數叢、滋之寺之間地輦石砌焉、課童潅焉、數日之後、夜雨滂沱徹曉而霽、早起視吾植則青秀敷舒、花態豔冶、不九畹百http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a533.gif 之景、然後土人之好事者、或謁而移之階除、若養之瓦缶、以朝夕愛親、甚者燒燭夜翫、惜其蹔時與之相疏也、自昔以降、騷人文士、或以罪左遷者、或率性之遊者、或官吏玆邦者、詩若歌於此、固是取用彼筥崎松西都梅、其他旁及瑣瑣之景致、屑屑之風物亦與焉、獨斯秀質、未咏且稱何哉、若也昔之未有焉、而今乍有焉、則豈可其盛多如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 此哉、蓋是凡物之潛乎昔而見乎今者、由其爲人所咏且稱、各自有時也、雖然是蘭也、不於潛見故母以竢也、是故雖久蕪沒蕭艾之林、其態常自若也、所以人不http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 知、而不芳而已、故予爲記以尚俾來者知君子之遇不遇皆有時而無http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif竢云、

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 薩摩(○○) 白蘭

〔採藥使記〕

〈下/遠州〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 重康曰、遠州(○○)ニテ蘭ヲ見シニ、關東ナドト違ヒ、圃ヲ作リテ種ル、甚ダ丈高ク三尺ニアマレリ、關東ニテハ寒暑風雨ニ傷ム故カ、盆植ニセザレバタモチガタシ、光生按ズルニ、遠州ニカギラズ、駿州豫州ノ大洲紀州ノ若山(○○○○○○○○○○○○)ナド、何レモ圃ニ作ルト云フ、

蘭雜載

〔江吏部集〕

〈下/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 秋夜守庚申、同賦蘭以香爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 貴、〈以風爲韻〉以香見貴一蘭藂、禮重得時似功、拾紫手匀榮耀露、鳴珠佩染徳音風、江楓葉落沈淪久、籬菊花遲採擢空、幸遇薫蕕分別日、腐儒獨愧志難通、

〔鵞峯文集〕

〈九/記〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 盆蘭記〈應堀飛騨守直良之求、三浦氏爲价、〉花之可愛者甚蕃、然其色之秀、其香之幽、其葉之茂、其徳之化、全備者蘭也、故國色天香之名、所以超羣芳亦宜乎、或藝之畹、或樹之畝、或植之堂、或蒔之沙、或譬諸君子、或比之美人、或以金錢之、或以綺石之、皆愛之之至深也、今栽於盆其左右、無朝無暮常常見之、眼悦其色、鼻齅其香、心感其徳、則其愛之之至切、庶幾其有化乎、嗚呼古之愛蘭匪直也人、然則今之愛蘭、亦慕古之愛之人而可也、〈庚戌之夏〉◯按ズルニ、蘭ノ字ハ、又蘭草(フヂバカマ)及ビ蘭蒚草(アラヽギ)ニ當ツル事アリ、宜シク各條ヲ參看スベシ、

釵子股

〔物類品隲〕

〈三/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 釵子股 一名金釵股、和名バウラン(○○○○)、東璧曰、石斛名金釵花、此草状似之故名ト、按ズルニ是即バウ蘭ナリ、琉球産近世薩摩ヨリ來ル、樹石上ニ寄生ス、石斛ノ類ナリ、中山傳信録ニ直ニ棒蘭ニ作ル、曰状如珊瑚樹、緑色無葉、花從椏間出、似蘭較小ト、此物寒ニ堪ガタシ、又土ニ植テ育ガタシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1173 釵子股 ボウラン(○○○○) マツラン(○○○○)〈肥前〉 キミル(○○○)〈筑前〉 ミルラン(○○○○)〈薩州〉 一名石蘭〈廣東新語〉 棒蘭〈中山傳信録〉 増一名三十根〈藥性奇方〉初メ琉球ヨリ來ル、今ハ四國九州其他暖地ニ皆アリ、木或石ニ寄生ス、莖長サ一尺許一窠ニ叢生 ス、葉ハ互生、形圓直ニシテ細キ箸ノ如シ、長サ五六寸、深緑色、水松ノ形ニ似テ端ニ一尖アリテ爪ノ如シ、冬枯レズ、五月ニ葉下ニ花ヲ開ク、臭氣アリ、形蘭花ニ似テ至テ小ク淡黄色、蕊ハ紫黒色、花後角ヲ結ブ、蘭花ノ角ニ似テ小ナリ、

白及

〔本草和名〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 白芨〈楊玄操音及〉一名甘根、一名連及草、〈本條〉一名白根、〈出雜要決〉一名連桑、〈出釋藥〉和名加々美(○○○)、

〔多識編〕

〈二/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 白及加加美久佐、異名連及草、〈本經〉甘根、〈同異〉

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 白及(シラン)〈白給、連及草並同、今按倭俗誤呼紫蘭者是也、〉

〔大和本草〕

〈六/藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 白及(シラン) 園中ニウフルシラント云物アリ、葉ハエビネニ似タリ、四月ニ紫花ヲヒラク、其根ヲ白及トス、カラヨリモ來ル、藥肆ニアリ、花紫白二色アリ、花賞スベシ、紫白一處ニ種レバ白者枯、此類ノ別種ニケイ(○○)ト云物アリ、葉ヒロク短シ花尤ヨシ、是亦白紫二色アリ、葉何レモエビネニ似タリ、花園ニウヘテ賞スルモノナリ、又花黄色ナルアリ、葉廣、國俗白及ノシランナル事ヲシラズ、蒙筌云、山根ニ敷ケバ衂ヲ止ム、山根ハ兩眼ノ間クボキ處ナリ、疥癬ニスレバ虫ヲ殺ス、糊ニスレバ甚ネバル、裱畫ニ用ユ、冬月手足ニアカヾリキルヽニ、此根ヲアブリテ糊トシ、用テキレタル處ヲフサゲバ愈ユ、白及ヲハクリト云説アリ、非ナリ、丹溪曰、凡吐血不止、宜白及

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈七/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 白及 シラン(○○○) シケイ(○○○)〈花戸〉 シユラン(○○○○)〈筑前、阿州、豫州、播州、雲州〉 ラン(○○)〈奧州〉 根一名雪如來〈輟耕録〉 竹栗膠〈郷藥本草〉 花一名箬蘭〈本草彙言〉 朱蘭〈秘傳花鏡〉人家ニ多ク栽テ花ヲ賞ス、葉ノ箬葉(チマキサゝ)ニ似テ縱ニ皺多シ、又藜蘆(ニツカウラン)葉ニ似リ、夏月莖ヲ出シ、三四葉互生シ、上ニ數花ヲ開ク、形蘭花ニ似テ紅紫色香氣ナシ、一種白花ナル者アリ、葉長大ナリ、花家ニ誤リテケイト呼ブ、故ニ尋常ノ者ヲシケイト名ク、又淡紅色ナル者アリ、ウスケイ(○○○○)ト名ク、市中ニ販グ者舶來ハ根瘠小ナリ、和産ハ肥大ナリ、宜ク和ヲ用ベシ、

石斛

〔本草和名〕

〈六/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1174 石斛、一名林蘭、一名禁生、一名杜蘭、一名石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000203.gif 〈仁諝音勅六反〉木斛、〈生櫟樹上者也〉雀髀石斛、〈状如雀髀故名之、已上二〉 〈種出蘇敬注、〉麥斛〈状似大麥、出稽疑、〉石斛者山精也、〈出范注方〉又石精也、〈出神仙服餌方〉和名須久奈比古乃久須禰(○○○○○○○○○)、一名以波久須利(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1175 石蔛 本草云、石蔛、〈胡谷反、和名須久奈比古乃久須禰、一云以波久須利、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1175 按廣韻、蔛石蔛、然説文所無、蓋俗字也、本草云、生六安山谷水傍石上、陶注云、生石上、生櫟樹上者名木斛、其莖形長大而色淺、蘇注云、江左又有二種、一者似大麥、累累相連、頭生一葉、名麥斛、一種如雀髀、名雀髀斛、葉在莖端、其餘斛如竹、節間生葉也、圖經云、五月生苗、莖似竹節、間出碎葉、七月開花、十月結實、其根細長黄色、衍義云、石斛若小草、長三四寸柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c654.gif 、折之如肉而實、今人多以木斛混行、木斛折之中虚、如禾草長尺餘、但色深黄光澤而已、李時珍曰、石斛叢生石上、其根糾結甚繁、乾則白軟、其莖葉生皆青色、乾則黄色、開紅花、節上白生根鬚、人亦折下以砂石之、或以物盛挂屋下、頻澆以水、經年不死、俗稱爲千年潤、石斛短而中實、木斛長而中虚、

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1175 石蔛〈スクナヒコノクスネ〉

〔多識編〕

〈二/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1175 石斛、須久那伊、〈◯伊恐比誤〉古乃久須禰、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1175 すくなひこのくすね 〈いはとくさ 石斛〉すくなひこのくすね一名いはくすり、一名みたから、一名いはどくさ、一名ちくらんは、漢名を石斛、一名林蘭、一名杜蘭、一名千年潤、一名長生草をいふ、古者出雲國諸郡に産するよし、其國の風土記にみえ、伊豆、下野、陸奧、美濃、紀伊、備後、安藝、丹波、但馬、伯耆、周防等より、これを貢せし事、延喜式にみへたり、今は豐前、伊豫、筑前、攝津、土佐、薩摩等の山中にも、往々これあり、其状大略木賊に似て寸寸節あり、内實して肉の如く、長さ三四寸、或は六七寸、其頭細竹葉に似て稍厚き兩三葉を生じ、白花を開く事、建蘭の如し、憶に此種は紹興本草圖する所の、温州石斛と全く同種なるべし、又一種淡紅花のものあるよし、物類品隲及び本草啓蒙に見へたれど、本草綱目に、石斛開紅花といひ、ま た雲南通志に、五色石斛出祿勸普渡河石壁紺紅者佳といへるものは、ともに國産いまだ詳ならず、釋名すくなひこのくすね、〈延喜式、本草和名、和名鈔、〉按に少名彦命は皇朝醫藥の祖神なり、くすねは即くすりの義、蓋し太古の時、少名彦命此藥を以て衆病を療せしより、かヽる名は出來しものなるべし、凡人の名を以て藥名とせしものは、我のみならず、徐長卿劉寄奴の類、西土にもいと多し、いはくすり、〈同上、按に此草岩上に叢生す、故に名づく、〉みたから、〈大同類聚方〉按にみたからは即御寶の義、上古の人此藥を尊ぶ事、猶珍寶の如くなりしより、名付しなるべし、いはとくさ、〈千金方藥注本草啓蒙、按に此もの石上に生じ、状木賊の如し、故に名く、〉ちくらん、〈本草啓蒙薩摩方言、按に此即竹蘭の意なり、〉せんこく、〈同上、紀伊方言、按にせんこくは、即石斛の訛傳なり、〉石斛、〈神農本經、按に石は石上に生ずる義、時珍云、石斛名義未詳、〉林蘭、〈同上、〉杜蘭、〈證類本草引名醫別録〉按に蘭はその花葉頗る建蘭に似たるによりて名づく、按に林杜の字、疑らくは原一は正字一は誤字なるを、後に誤りて一名とはせしものなるべし、凡本草中この類おほく有、金釵石斛、〈本草衍義荊州記〉按に宗奭云、金釵石斛、蓋後人取象而言之、時珍云、其莖如金釵之般故名、今蜀人栽之呼金釵花、荊州記云、來陽龍石山多石斛、精好如金釵是矣、千年潤、〈本草綱目、典籍便覽、按に時珍曰、經年不死、俗稱爲千年潤、〉長生草、〈物理小識、按に即千年潤の意なり、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/石草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1176 石斛 スクナヒコノクスネ(○○○○○○○○○)〈和名鈔〉 イハグスリ(○○○○○)〈同上〉 スクナヒコグスリ(○○○○○○○○)〈大同類聚方〉 ミタカラ(○○○○)〈同上〉 イハマメ(○○○○) イハドクサ(○○○○○) センコク(○○○○)〈紀州〉 チクラン(○○○○)〈薩州〉 一名長生草〈物理小識〉 百丈鬚〈藥譜〉 釵斛〈醫級〉 石䈸草〈康熙字典〉今ハ和漢通名、山中岩石上ニ生ズ、莖ハ木賊ノ如クニシテ細ク、黄緑色、寸餘一節、節ゴトニ一葉ヲ生ズ、形竹葉ニ似テ小ク、厚ク光リアリ、莖長サ三四寸多ク叢生ス、夏舊莖ノ節ノ下ニ二花並ビ生ズ、形白及(シランノ)花ニ似テ白色、又粉紅色ナル者アリ、紅色ナル者ハ稀ナリ、筑前土州ニハ淡黄花ナル者 アリ、形小クシテ穗ヲナシテ生ズ、其根樹皮ニ生ジ、石上ニナシ、共ニ花後實ヲ結ブ、蘭莢(ランノミ)ニ似テ小ナリ、九州地方ニ生ズル者、莖長ク、葉花モ又大ナリ、集解、麥斛ハムギラント呼者ナリ、一名イボラン、〈土州〉マメラン、〈勢州〉朽木ニ生ズ、一根一葉根ハ麥粒ノ如シ、淡緑色、葉ハ石斛ヨリ短小ニシテ光リアリ、六月花ヲ開ク、白色形最小シ、雀髀斛ハ花戸ニテバクコクラント呼ブ、一名オサラン、紀州熊野山中ニ生ズ、根長サ七八分、濶サ三分許、並ビ連ルコト十餘ニシテ筬ノ形ノ如シ、當年ノ新根上ノミニ二葉ヲ生ズ、形石斛ヨリ大ナリ、六月花ヲ開ク、形色石斛ニ同シテ小ナリ、増、花戸ニタウセキコク(○○○○○○)ト呼ブ者アリ、莖短ク葉圓ニシテ厚ク莖モ太シ、花尋常ノモノヨリ大ニシテ白色ナリ、唐種ト云ヘドモ、出雲隱岐等ニ多ク産スト云、一種花戸ニ銀邊ノモノアリ、莖葉共ニ痩小ナリ、ヘリトリノセキコク(○○○○○○○○○)ト云フ、其他四季ザキ(○○○○)、黄花セキコク(○○○○○○)、キクザセキコク(○○○○○○○)、マルバセキコク(○○○○○○○)等アリ、品類甚多シ、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1177 諸國進年料雜藥伊賀國廿三種、〈◯中略〉木斛夜干各十斤、 伊勢國五十種、〈◯中略〉木斛廿斤、 伊豆國十八種、〈◯中略〉木斛三斤、石斛十一斤、 美濃國六十二種、〈◯中略〉石斛七十斤、〈◯下略〉

〔出雲風土記〕

〈意宇郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1177 凡諸山野所在草木、〈◯中略〉石斛、

〔一話一言〕

〈四十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1177 石斛浪華の近藤正齋、〈重藏名守重、御弓矢鎗奉行、〉己卯臘月十五日發の書簡に、此比傳承候へば、京攝ともに石斛至て流行、一根七八金に至り候由、摺物入手則呈上候、〈其文如左〉 百川〈子海◯中略〉こヽに石蔛と名づくる小艸あり、閑雅の逸物にして、暑地なきも、寒暖土地の嫌ひもなく、作り樂しむに、いとやすふして、愛するの人多し、近き比やんごとなき御たちにも、數品の石蔛を集めた まひ、この艸和名いわとくさ、いわくすりなどいふて、言のはの御すさみのたねともならんと、めでましければ、このむの友どちよろこびあへて、數品のあつめを望み、遠近に同好の友の廣し、〈覃云此文拙キコトのノ字ヲ見テシルベシ〉こたび四季の壽てふ摺物を繪がき、春秋のうつりかはるかたち、冬は下葉よりうつろひて葉落となり、根に來る年の新芽をもよふし、身につもる老の數おもわすれ、春まちどふに思ひつヽ、かく四時のたのしみつきせぬも、遠近に沙汰せんと、同好つどひ、すりものひらきする事しかり、草の名によりてや人の好らんいわくすりとぞ弄ける

有馬草

〔和漢三才圖會〕

〈九十四末/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 有馬草 〈攝州有馬多有之故名〉按有馬草高尺許、葉似初生椶櫚葉而小、二三月抽莖開黄花、形略似蘭花而不香、

〔剪花翁傳〕

〈三/五月開花〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 有馬艸 花黄色、葉は縮りて形ち山茱萸の葉に似たり、開花五月中旬、河州生駒山に産す、里にては育ちがたし、名にし負ふ池田の栽樹家とても、植育ることを得ず、

綟摺草

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 モジズリ 莖長尺ニミタズ、花紅白ナリ、花連リテ小ナリ、一莖ニ十餘連リ開ク、紫蘇ノ如シ、四五月ニ開ク、其花戻レリ、葉ハ百合ノ如ニシテ狹シ、好事ノ人園ニウヘテ玩賞ス、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四末/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 綟摺草 俗稱〈本名未詳〉 〈古者奧州信夫郡出絹名綟摺、其文如亂髮而美、以比之名乎、〉按綟摺草高五六寸、葉如初生稻苗而細軟、三月開花如穗而色淺赤、

〔倭訓栞〕

〈中編二十六/毛〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 もちずり、〈◯中略〉 今俗一種の草をいふは、その花の綬の如くなれば、爾雅の注に綬蘭(○○)と見えたり、或は虹花(○○)とも、ねぢ花(○○○)ともいふ、水巴戟(○○○)も是なりといへり、筑前にしんこはな(○○○○○)といふ、

鷺草

〔大和本草〕

〈八/水草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1178 鷺草 葉ハ澤瀉ニ似テ小ナリ、背ニ角アリ、又モヂズリノ葉ニ似タリ、七月白花ヲ開ク、其形鷺ノ飛ニヨク似テ一足垂タリ可愛、慈姑ノ如ク小キ圓根アリ、或曰濕草也、非水草、山ニ モ生ズ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四末/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1179 鷺草 鷺草〈佐岐草〉 連鷺草〈豆禮佐岐〉 〈共俗稱也、本名未詳、〉按鷺草奧州處處有之、春生苗、葉如麥嫰苗高尺許、六月抽莖開花、正白色如雪、形似鷺鳥故名、連鷺(ツレサキ/○○)草(/○)〈豆禮佐岐〉 與鷺草一類異種、性惡濕喜陰處赤土、原非濕草、高五七寸、葉略大似万年青嫰葉、而淺青色、夏開花白色帶微青、其形似鷺十有餘群飛故名、

赤箭

〔本草和名〕

〈六/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1179 赤箭〈蘇敬注云、遠看如箭、〉一名離母、一名鬼督郵、〈仁諝音尤〉一名神草、一名獨搖、一名當苦、一名味子、〈或作子〉一名鬼箭、〈已上五名出太清經〉和名乎止乎止之(○○○○○)、一名加美乃也(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1179 赤箭 蘇敬本草注云、赤箭、〈和名乎止乎止之、一云加美乃夜加良(○○○○○○)、〉遠看似箭有羽故以名之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1179 陶注云、按此草亦是芝類、云莖赤如箭簳、葉生其端、根如人足、又云、如芋、有十二子衞、有風不動、無風自搖、如此亦非俗所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 見、蘇注又云、根皮肉汁與天門冬同、惟無心脈、去根五六寸、有十餘子衞似芋、其實似苦棟子http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/000000019a0e.gif五六稜、中肉如麪、日暴則枯萎也、藥性論云、赤箭脂一名天麻、衍義云、赤箭天麻苗也、開寶本草云、天麻葉如芍藥而小、當中抽一莖、直上如箭簳、莖端結實、状若續隨子、至葉枯時、子黄熟、其根連一二十枚、猶如天門冬之類、形如黄瓜、亦如蘆菔、大小不定、圖經云、赤箭、四月開花、此草爲物、下根如芋魁、有游子十二枚、周環之、去大魁數尺雖相須、而實不連、但以氣相屬耳、如菟絲之草下有伏菟之根、無此則絲不上、亦不相屬也、

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1179 をと〳〵し 〈天麻〉乎止乎止之 名義いまだ詳ならず、按に古語に多豆多豆之といふ詞を、後世は多止多止之といへど、此乎止乎止之とは其義似よるべくもあらず、又赤箭は前年に植しもの腐敗して、今年に至れば、其産地をかへて、思もよらぬ所に生ずるものなれば、前年を乎止止之といひ、前日を乎都比などいへるによりて、此名義をとかまくおもへども、いまだ其たしかなる考を得ず、 加美乃也 此もの一莖直上して枝葉なく、其状頗る箭簳のごとくなるによりて、加美乃也と名づく、加美は即神字の意にして、其さま常に異なるによりてなり、又加美乃也賀良、鬼乃也賀良といへるも、其義全くこれに同じ、其鬼乃也賀良は、新抄本草に太清經を引て、赤箭一名鬼箭とあるによれば、即和漢通名なり、又日光也賀良は、此もの下野の日光に産するもの多きによりて名付しなり、盜乃阿之 按に赤箭の人足に似たるよしは、既に弘景注にもみえたり、本草啓蒙にも其説を載たれど、今足の上に盜字を冠して、これを稱するものは、凡盜の人家をうかがふには、物音もせず、ひそかにぬき足して行來するものなれば、此物の今年植し所には、來年は生ぜずして、ひそかに外の所へ行て生ずること、全く盜のぬきあしして行來するに、その趣やヽ似たるによりて、俗にこれを盜のあしとはいへる物なるべし、〈◯下略〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十二本/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1180 天麻(てんま) 赤箭〈◯中略〉按赤箭〈和名乎止乎止之、一云加美乃夜加良、〉乃天麻也、出武州所澤者良、藝州廣島次之、倭天麻者一莖一花而無枝葉異、

〔物類品隲〕

〈三/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1180 赤箭天麻 和名ヌスビトノアシ、又タウカシラト云、西國ニハ希ナリ、關東ニハ多シ、莖ノ長三四尺、黄赤色ニシテ葉ナシ、小薄皮アリテ初メ生ズル時莖ヲ包ミ、長ジテ後莖ニ付テヒレノゴトシ、蘇頌所謂貼莖微有尖小葉ト云モノ是ナリ、莖ノ状矢ノゴトクニシテ赤シ、故ニ莖ヲ赤箭ト云、莖上數花ヲ開ク、大サ二三分許、莖ト同色ナリ、根魁アリテ横ニ出ヅ、形小兒ノ臂ノゴトク、或ハ小子傍生スルコト芋子ノゴトキモノアリ、其數定ラズ、又小子ナキモノアリ、此物化生ニシテ秋ニ至レバ盡ク朽ルナリ、故ニ他處ニ植テ再ビ生ゼズ、又實ヲ植テ生ゼズ、本草ニ其實却透虚入莖中潛生土内ノ説等信ズベカラズ、東都産上品、一種黄白色ノモノアリ、形状ハ異ナルコトナシ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈七/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1181 赤箭天麻 カミノヤガラ(○○○○○○)〈和名鈔〉 ヲトヲトシ(○○○○○)〈同上〉 ニツカウヤガラ(○○○○○○○) タウガシラ(○○○○○) オニノヤガラ(○○○○○○) ボウズグサ(○○○○○)〈土州〉 ヌスビトノアシ(○○○○○○○)〈越前〉 スチナ(○○○)〈奧州〉 ノヅチ(○○○)〈野州〉 キヤウヲウサウ(○○○○○○○)〈豫州〉 赤箭一名石箭〈類書纂要〉 赤箭脂〈事物異名〉 天麻一名鄆芝〈輟耕録〉 都羅本〈郷藥本草〉赤箭ハ苗ノ名、天麻ハ根ノ名、諸州平原及水邊竹林中ニ生ズ、四五月ニ獨莖ヲ發ス、ソノ長ズルコト速ニシテ直上四五尺ニ至リ、圓ニシテ淡黄赤色ナリ、故ニ赤箭ト名ク、莖ニ節アリ、節ゴトニ小薄皮アリ、色黒シ、初出ノ時ハコノ小皮相包テ筍ノ状ノ如シ、大抵莖二尺許ノ時、梢間ニ蕾ヲ綴リ穗ヲナスコト五七寸、草蓯蓉(ハマウツボ)ノ形ノ如シ、花旋開キ莖旋長ス、花ノ形玄參(ゴマグサ)花ノ如ニシテ大ナリ、黄赤色、中ニ黄蕊アリ、花下ニ莢ヲ結ブ、蘭筍(ランノミ)ノ形ノ如ニシテ小ク短シ、内ニ細黄粉アリ、コノ時穗長サ一尺五寸許、ソノ根ハ大塊ニシテ横生ス、長サ六七寸徑一寸餘ニシテ、本ハ圓カニ末ハ扁クシテ尖ラズ鬚ナク、甚人足ニ似タリ、タマ〳〵直根ナルモノアリ、倶ニ淺褐色、又旁ニ小子多ク生ズルモアリ、秋ニ至レバ苗根倶ニ腐朽シ、移シ栽ベキ者ニアラズ、又下種スベキモノニモ非ズシテ、翌年復忽然トシテ生ズ、故ニ赤箭芝獨搖芝ト名ケテ芝類ニ入ル、集解、還筒子ノ説甚誤レリ、根ヲ暴乾シテソノ色羊角ニ同ジ、故ニ羊角天麻ト呼トノ時珍ノ説是ナリ、本草原始ニハ、羊角天麻不用ト云、是ハ形瘠テ羊角ニ似タル下等ノ名トス、非ナリ、藥舖ニ和漢倶ニアリ、和ヲ上トス、和州宇陀、紀州、關東ヨリ出、藥用ニハ透明ナルヲ良トス、故ニ方書ニ明天麻ノ名アリ、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1181 諸國進年料雜藥大和國卅八種、〈◯中略〉鬼箭三升、 丹波國卌三種、〈◯中略〉鬼箭一斗三升三合、 出雲國五十三種、〈◯中略〉赤箭一合、

〔出雲風土記〕

〈飯石郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1181 凡諸山野所在草木、〈◯中略〉赤箭、

三白草

〔本草和名〕

〈十一/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 三白草、〈蘇敬注云、葉上有三黒點、古人秘之、隱白爲黒耳、〉和名加多之呂久佐(○○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 三白草 蘇敬本草注云、三白草、〈和名加多之呂久佐〉葉上有三黒點、古人祕之、隱黒爲白耳、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 證類本草下品引云、葉如水葒、亦似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 、又似菝葜葉、上有三黒點、高尺許、根如芹根、黄白色而麁大、無古人以下九字、按證類本草又引陳藏器本草云、按此草初生無白、入夏葉端半白如粉、農人候之蒔田、三葉白草便秀、故謂之三白草、若云三黒點古人秘http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 之、據此即爲識、妄爲之注爾、其葉如薯蕷、亦不水葒、其若云三黒點以下、陳氏引蘇注之也、若蘇注缺此所引九字、則陳説中古人秘之文、不何等語也、證類本草引蘇注、無是二句誤脱也、本草和名引亦有之、但隱黒爲白作隱白爲黒、非是、

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 三白草(カタジロ) 國俗半夏生草(○○○○)トモ云、五月ノ半夏生ノ時、此草ノ葉面白クナル、背ハ青シ、故カタジロト云、莖ノ梢三葉白ケレバ苗秀ヅ、故ニ三白ト云、梢三葉ノ外ハ白クナラズ、農人是ヲ以テ蒔田時ノタメシトス、水草也、陸ニモ生ズ、高二三尺、葉ハ柿ノ葉ノ大ノ如シ、毎葉タテスヂ五アリ、五月ニ白花開ク穗ノ如ク長シ、ヨキ香アリ、蘇恭ガ説、葉似http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 又似菝葜ト云ハ可也、其餘ハ與三白草合、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四末/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 三白草 〈和名加太之呂久佐、俗云半夏草、〉本綱、三白草生田澤畔、八月生苗、高二三尺、莖如蓼葉如商陸及青葙、四月其顚三葉、面上三次變作白色、餘葉仍青不變、俗云一葉白食小麥、二葉白食梅杏、三葉白食黍子、五月開花、成穗如蓼花状、而色白微香結細實、根長白虚軟有節鬚、状如菖蒲根、〈◯中略〉按、本草蘇恭注云、三白草葉上有三黒點白也、仍和名抄亦用其説共非也、半夏生時分變白、故曰半夏草

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十二/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1182 三白草 カタシログサ(○○○○○○)〈和名鈔〉 カタジロ(○○○○)〈大和本草〉 ミツジロ(○○○○) ヲシロヒカ(○○○○○) ケ(○)〈鎌倉〉 ハゲセウグサ(○○○○○○) ハゲセウ(○○○○)〈泉州〉 ハンゲセウ(○○○○○)〈勢州〉 ハンゲグサ(○○○○○)〈備前〉 一名三葉白草〈酉陽雜俎〉 翻白草〈痘疹要訣〉水草ナリ、湖澤及大川ノ側ニ多シ、陸地ニ移シ栽ルモヨク繁茂ス、春宿根ヨリ生ズ、其莖圓ニシテ三四尺、葉互生ス、形橢ニシテ長ク、薯蕷(ヤマノイモノ)葉ニ似テ尖ラズ、厚シテ深緑色縱道多シ、切レバ其臭馬兜鈴(ムマノスヾ)ノ如シ、五月半夏生ノ時、梢上ノ三葉ノミ、面白色ニ變ズ、背ハ然ラズ、故ニハゲセウグサ等ノ諸名アリ、其白葉ノ間ニ穗ヲ生ズ、長サ三寸許リ、小花密ニツヾリ、白色緑萼ナリ、花後細子ヲ生ズ、熟シテ苗枯ル、根ハ枯レズ、大サ筋ノ如シ、白色ニシテ甚ダ繁延ス、邵武府志曰、土人毎歳候其初一葉白秧、至三葉倶白則爲後時矣、増、一種琉球種ノ三白草アリ、苗高サ二尺許、莖ニ七八稜アリテ正圓ナラズ、其色紫赤色、葉莖ニ互生ス、ソノ形牛尾蒿(シホデ)ノ葉ニ似テ、厚ク大ニシテ縱脈五道アリ、面緑色ニシテ背淡緑ナリ、半夏生ノ候ニ至ルト雖ドモ、梢葉白色ニ變ゼズ、稀ニ一葉或ハ半片、淡白色ニ變ズルコトアリ、夏ニ至レバ脚葉悉ク脱シテ、竹ノ状ノ如シ、夏ノ末葉ニ對シテ穗ヲ生ズ、車前(オホバコ)ノ穗ニ似テ長サ僅ニ二三寸、花實ノ形大抵尋常ノ者ニ同ジ、根ハ白色ニシテ節多ク横行シ、春ニ至テソノ節ヨリ新芽ヲ生ズ、

〔武江産物志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1183 尾久ノ原 三白草(はんげさう)

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1183 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 〈楊玄操音葅立反〉一名葅菜、〈出蘇敬注〉一名出茄、〈音加、出兼名苑、〉和名之布岐(○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/水菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1183 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif  唐韻云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 〈祖立反、養生秘要云、之布木、〉菜名也、

〔物類稱呼〕

〈三/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1183 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜じうやく(○○○○)〈しぶき〉 江戸にてどくだみ(○○○○)といふ、武藏にてぢごくそば(○○○○○)といふ、上野にてどく草(○○○)といふ、駿河沼津にてしびとばな(○○○○○)と云、越前にてどくなべ(○○○○)といふ、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1183 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif シブキ〈◯中略〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif は味辛しと見えたれば、シブキとは其味をもていひしに似たり、〈或人説に、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif は今俗にドクダミといふ物なりといふ、唐本草にhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜は江南江左人、好生食之、關中謂之葅菜と見え、又北戸録に、其葉腥氣、故俗以爲魚腥草など見えて、我國の如きも、古の時には菜蔬と〉 〈なせしと見えたり、即今ドクダミといふものヽ如きは、其臭氣食ふべしとも思はれず、人の嗜好の如きも、古今の異またかくの如し、其ドクダミといふも、毒をダミたる義に似たり、〉

〔大和本草〕

〈九/雜草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1184 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜 ドクダミト云、又十藥トモ云甚臭アシヽ、家園ニウフレバ繁茂シテ後ハ除キガタシ、駿州甲州ノ山中ノ村民、ドクダミノ根ヲホリ、飯ノ上ニオキムシテ食ス、味甘シト云、本草ニモ柔滑菜類ニノセタリ、サレドモ本邦ノ人アマネク食ハズ、菜トスベカラズ、且有小毒ト云、和流ノ馬醫用之馬ニ飼フ、十種ノ藥ノ能アリトテ、十藥ト號スト云、

〔和漢三才圖會〕

〈百二/柔滑菜〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1184 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜 葅菜 魚鯹草 〈和名之布木、俗云地宇也久、又云止久陀三、〉本綱、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜生濕地山谷陰處、亦能蔓生、葉似蕎麥而肥莖紫赤色、又云、似荇葉、其状三角一邊紅、一邊青、有鯹氣、可以養http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 猪、山南人好生食之、多食令人氣喘、小兒食之覺脚痛、恐由氣故也、素有脚氣人食之一世不愈、葉〈辛微温有小毒〉 治疔瘡、擣爛之傅、乃痛一二時、不草、痛後一二日即愈、又治痔瘡、煎湯熏洗、仍以草挹痔即愈、一種有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 草(○○○)、〈則五毒草〉花葉相似、但根似狗脊、〈見山草部〉按http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜葉如荇水葵、初生帶紫色、或面青背紫、老則皆青色、夏開四葉小白花、有節不直不蔓、高五七寸、切葉鮮者觸手即魚鯹氣、其臭也難言、又能傅便毒(ヨコネ)良、

〔廣益地錦抄〕

〈四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1184 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b5da.gif 菜(どくだミ) 田野木の下の日かげなる所をこのみて多く生ズ、花極て白く、四花にして四方へ出、中に花しべ長ク立て唐人笠(カサ)をみるごとく成かたち、葉にあしき香ありて、手につみ切れば臭(カ)久しくやむ事なく、俗に十藥(ヂウヤク)といふ、馬のくすりに用ひて、十種のあるゆへ、十藥といふともいへり、いかヾしらず、

〔蜻蛉日記〕

〈中〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1184 かくのみこヽろつくせば、ものなどもくはれず、しりへのかたなるいけにしぶき(○○○)といふ物おひたるといへば、とりてもてこといへば、もてきたりける、けにあへしらひて、ゆをしき りて、うちかざしたるぞ、いとおかしうおぼへたる、

風藤蔓

〔多識編〕

〈二/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1185 南藤(○○)、或曰久知久佐誤也、異名丁公寄、〈別録〉

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1185 南藤(フウトウ)〈丁公藤、風藤並同、〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十六/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1185 南藤(ふうとうかづら) 風藤 石南藤 丁父 丁公藤 丁公寄 俗云風藤蔓(○○○)〈◯中略〉按南藤能治諸風、故有風藤之名乎、今痿痺癱瘓人用爲洗藥、〈痘後手足腫痛者、用風藤煎汁、頻洗有効、〉

〔物類品隲〕

〈三/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1185 南藤 一名風藤、一名石南藤、和名フウドウカヅラ(○○○○○○○)、紀伊湯淺橋本仙室曰、先輩南藤ヲツルウメモドキトスルハ非ナリ、形状本草ニ合ズ、フウドウカヅラ眞ノ南藤ナリ、蘇頌曰、南藤生南山山谷、今泉州榮州有之、生依南木馬鞭節、紫褐色、葉如杏葉而尖、采無時、又曰、天台石南藤四時不凋ト、此説ツルウメモドキノ形状ニアラズ、フウドウカヅラニ近シト、此説是ナリ、此物紀伊伊豆ニ甚多シ、土人皆フウドウカヅラト呼ブ、愚〈◯平賀源内〉謂ラク、本邦往昔藥物ヲ以テ國國ヨリ貢上ス、當時能此物ノ風藤タルコトヲ知テ、其名稱到今民間ニ傳ルカ、或ハ又暗ニ風藤ノ名和漢同キカ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十五/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1185 南藤 詳ナラズ 一名鬼目〈壽世保元〉ツルムメモドキ、又フウトウカヅラニ充ル説ハ皆穩ナラズ、〈◯中略〉増、南藤一名風藤、和俗フウトウカヅラト呼ブ、土蔞藤ト同名ナリ、〈◯中略〉外科正宗藥品異名考ニ云、此草熊野山中ノ者ハ長サ數十丈、山巖喬木上ニ延蔓シ、莖ノ巨サ一虎口餘、二三寸毎ニ節アリテ馬鞭ノ如シ、一莖一葉形杏葉ニ似テ厚シ、又細葉モアリ、皆切テ辛辣ノ氣アリ、其莖ノ樹石ニツク處小瘤アリ、中ニ小孔アリ、夏月葉間ニ小黄花穗ヲナシ、後小赤實ヲ結ブ、味微シ辛シ、四時萎マズ、コノ形状本綱ノ説ト的當ス、小野蘭山翁ノ説ニ、此草ヲ土蔞藤ニ充テ、南藤ハ和産詳ナラズト云ヘリ、コレ南藤ハ暖地ノ産ニシテ、熊野山中ニ生ル如キ、大蔓ノモノヲ目擊セザル故ニ誤ルナリ、 南藤葉蔞藤葉ソノ形ハ能似タレドモ、脈理ハ大ニ異ナリ、

蒟醬

〔多識編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1186 蒟醬、末多多比(○○○○)、今案安南在之日本無之、

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1186 蒟醬(キンマ)〈蠻語也、蒟子、土http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d004.gif 苃並同、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1186 蒟醬 キンマ(○○○)〈蠻名ナルベシ〉 一名蔞〈通雅〉 荖葉〈八閩通志〉 相思葉〈廣東新語〉 辛蒟〈通雅〉 蒟給〈同上〉 無留藤〈本草彙言〉 芙http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000204.gif 〈泉州府志〉 蔞葉藤〈廣輿記〉 蔞藤〈一統志〉嶺南ニテハ此葉ニ生ノ檳榔子ト蚌灰トヲ包ミテ果ニ充テ食フ、コレヲ入ルヽ器ヲ桂海虞衡志ニ檳榔合ト云、茶家者流ニテキンマデノ香合トテ弄ブモノ是ナリ、一器三室ノモノアリ、又三層ニシテ香撞ノ如キモノアリ、皆外ニ細ナル描花アリ、享保年中ニ、此葉ニテ檳榔ト蚌灰トヲ包ミ、蜜漬ニシタルモノ渡ル、ソノ葉ノ形秋海棠ノ葉ノ如シ、即今フウトウカヅラト呼モノナリ、コレハ四國九州豆州紀州海濱ノ崖ニ蔓延シテ生ズ、葉ハ蕺菜(ドクダミノ)葉ニ似テ厚ク互生シ、深緑色ナリ、切レバ胡椒ノ香有リ、故ニ世人胡椒或ハhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d004.gif 苃リトス、並ニ非ナリ、京師ニテハ冬月窖ニ入レザレバ枯ル、四月葉間ニ細キ穗ヲ生ズ、長サ一寸餘、細小白花ヲ開ク、子ハ纍々トシテ穗ヲナス、長サ一二寸、子ハ椒目ノ大サノ如シ、外ニ薄皮アリ、色赤シ、内ニ栗殼色ノhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 殼アリ、ソノ肉ニ仁アリ、色白シ、コレヲ嚼メバ味淡ニシテ微辛ク、香氣http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d004.gif 苃ニ近シ、先年蠻人ニ見セシニ胡椒ナリト云、然レドモ形色氣味胡椒ニ異ナリ、即土蔞藤ニシテ蒟醤ノ下品ナリ、夏以後節ゴトニ根鬚ヲ生ズ、土中ニ入ルモノハ鬚多クナリ、土ニ遠ケレバ鬚一條ノミ、故ニ節ゴトニ切レバ、皆分チ栽ベシ、葉大サ二寸許リ、或ハ四五寸、長葉アリ、圓葉アリ、土蔞藤一名山蔞藤、〈廣東新語〉

茶蘭

〔増補地錦抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1186 蘭のるひ〈◯中略〉茶蘭(ちやらん) 葉は仙蓼(せんりやう)ニ紛ばかり似て、草立も毛頭違ず、花形は蓼の穗に少似て黄色なり、盛の時分は、異香こと〴〵く室内ニ薫香する事、大蘭にこへたり、

〔和漢三才圖會〕

〈九十三/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 孩兒菊(ちやらん/○○○)〈◯中略〉 ri>水畏寒、如冬月紙袋、以令風寒、或時破油盞水、其水可

及已

〔本草和名〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 及已、〈仁諝音以〉和名都岐禰久佐(○○○○○)、一名於宇(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 及已 本草云、及已、〈仁諸(諸諝誤)音義已音以、和名豆木禰久佐、〉

〔藻鹽草〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 和名少々 芨已〈いきくさ〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十四末/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 吉野靜(○○○) 俗稱〈本名未詳〉 〈靜者源義經之寵妾、有吉野山歌舞之事、好事者比其美以名之、〉按吉野靜、高尺許、葉似澤桔梗而大、三四月開花白色、而紫彩點及赤黄色小點甚巧艷、二人靜(○○○) 俗稱〈本名未詳〉 〈謠歌云、靜女之幽靈爲二人同遊舞、此花二朶相雙艷美以名之、〉按二人靜、高尺許、葉似櫻桃(ユスラウメ)葉而厚、三月葉間開白花、形如蓼穗而二小朶成杈、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1187 及已〈音以〉 フタリシヅカ(○○○○○○) サヲトメバナ(○○○○○○)〈石州〉新校正ニカタバミト訓ズルハ誤ナリ、幽谷陰地ニ多クアリ、春宿根ヨリ叢生ス、莖高サ五七寸、或ハ一尺許リ、三四節アリ、ソノ葉莖梢ニ二重ニ兩對シ生ズ、葉ノ形チ紫繍毬(アヂサイ)葉ニ似テ鋸齒細ナリ、四葉ノ上ニ細莖二條ヲ出ス、長サ一寸餘、白ク小ク圓ナルモノヲ綴ル、是レ其花ナリ、漸ク緑色ニ變ジ、漸ク大ニ一分許トナル、是ソノ實ナリ、而シテ漸ク葉間ニ下垂ス、凡ソ二穗ヲ常トス、故ニフタリシヅカト呼ブ、然ドモ瘠タルモノハ一穗、肥タルモノハ數穗及ビ十餘穗ニ至ルモノアリ、又一種ヒトリシヅカ(○○○○○○)、一名ヨシノシヅカト云アリ、此モ宿根ヨリ生ズ、共ニ冬月苗枯ル、高サ五寸許、肥地ノモノハ一尺ニ盈ツ、形状ハ二人シヅカニ同ジ、葉ニ光澤アルヲ異ナリトス、此穗ハ一條ノミナリ、花ハ白絲ノ如キモノ多クツキ、穗ノ長サ一寸許リ、フタリシヅカノ如ク、花圓ナラズ、穗ノ 幅ハ三分許リナリ、實ハフタリシヅカニ同ジ、是及已ノ一種ナリ、

〔廣益地錦抄〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 及已(ぎうい) 宿根より春生、小草なり、三四寸に生出て、白花毛のごとくに、しべばかり咲、草花にまゆはきさうといふ、花ちりて後に葉出、一莖に四葉づヽ莖(クキ)のかしらにあり、實は葉の間より下へさがりて付ク、又一種あり、形状同じ事にして、高さ二尺程にのび立なり、三四寸の小草なるがあひらしく、鉢にうへてながめ有、三月に花さく、根は細辛のごとくにほそく、香氣あり、

〔武江産物志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 道灌山ノ産 及已(ふたりしづか)

葎草

〔本草和名〕

〈十一/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎草、〈仁諝音律〉一名葛律葛〈出蘇敬注〉一名葛勒蔓、〈出http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001aa09.gif〉和名毛久良(○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎草 本草云葎草、〈上音律、和名毛久良、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 唐本注、葉似萆麻而小薄、蔓生、有細刺、蜀本圖經云、蔓生、葉似大麻、花黄白、子若大麻子

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎草〈音律 ムクラモクラ〉

〔多識編〕

〈二/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎草、和名毛久羅、又云加那牟久羅(○○○○○)、異名勒草、〈別録〉

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎(カナムグラ) 葎(ムグラ)〈本朝俗作葏非、蔓草似葛而有刺者、〉來苺草(同)〈又云葛勒艸〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十五/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1188 葎草 カナムグラ(○○○○○)〈轉ジテカナモグラト云フ〉 ナヽモグラ(○○○○○) スイジンノテ(○○○○○○)〈佐州〉 ムマコカシ(○○○○○)〈播州〉 一名渋蘿蔓〈救急本草〉 攬藤 葛勒子秧〈共同上〉 擄擄藤〈野菜博録〉 割人藤〈本經逢原〉 葛葎草〈附方〉 勒蔓〈同上〉 勒麻藤草〈訓蒙字會〉 勾勒蔓〈墨娥小録〉 汗三〈郷藥本草〉 増一名黒草〈證類本草〉舊子地ニアリテ春芽ヲ發ス、初二葉ヲ發ス、細長ニシテ大麻苗ノ如シ、漸ク長ジテ藤蔓繁延ス、葉兩兩相對ス、形蓖麻(トウゴマノ)葉ニ似テ小ク三四寸許、淺緑色、藤ト共ニ毛刺アリ、八九月葉間ニ穗ヲ出ス、長サ五七寸、枝多シ、小花數百聚リ生ズ、大サ一分許、五出細尖淺黄緑色、外ハ淡紫ヲ帶テ跗ナシ、中ニ黄白色ノ五蘂アリ、是雄ナリ、其雌ナル者ハ花ヲ開カズ、葉間ニ小穗ヲ出ス、長サ一二寸、實ヲ結ブ コト大麻子ノ如シ、子熟シテ苗根共ニ枯ル、

〔草木育種後編〕

〈下/藥品〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1189 葎草(ほつへ)〈本艸〉の一種 和蘭にてホツペ(○○○)といふ、葎草一種にて葉に叉なくして、楮(こふぞ)の葉に似たり、草に雌雄あり、莖葉ともに毛刺あり、花をとりて藥用とすべし、

木蓮

〔和爾雅〕

〈七/草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1189http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif (イタヒ)〈薛茘、木饅頭、鬼饅頭並同、〉

〔倭訓栞〕

〈中編二/伊〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1189 いたび 木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 子をいふ、日本紀、倭名鈔同じ、即木饅頭也、花なくて實を結べり、今俗蔓生の木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif を訓ずるはあらず、延喜式に諸國雜贄腹赤魚木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 子等と見えたり、

〔大和本草〕

〈八/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1189 薜茘 イタビ(○○○)也、木饅頭ト云、其葉木犀ニ似テ其實無花果ニ似タリ、其蔓コハシ、本草ニ木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif ト云、其實八月以後中實ス、八月以前ハ實ノ中虚ナリ、熟シテ味甘シ、小兒食ス、マサキノカツラト訓ズルハ非也、舊事記日本紀ニ木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 子ヲイタミト訓ズ、數年ヲヘテ後葉厚大ニシテ實ナル、小ナルハ大ナルト別物ノ如シ、壁ニヒロク延蔓ハビコル、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十五/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1189http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif  イタミ(○○○)〈日本紀〉 イタビ(○○○) イタビカヅラ(○○○○○○) イヌタブ(○○○○) キマンヂウ(○○○○○) チヽデヨ(○○○○)〈江州〉 一名木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 蓬〈本草彙言〉 石http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 蓬〈物理小識〉 羊兒藤〈保赤全書〉 桑上羊兒藤〈丹溪纂要〉 爬城草〈南寧府志〉 無花果〈本草洞詮〉山野ニ生ズ、葉木樨(モクセイノ)ニ似テ厚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a849.gif 鋸齒ナシ、深緑色互生ス、冬ヲ經テ凋マズ、其藤纏繞セズ、物ニ倚テ蔓延ス、地錦ノ蔓ノ如ク木石ニツキテ鬚根ヲ生ズ、蔓ノ末ハ枝ヲ分テ下垂ス、花無シテ葉間ニ實ヲ生ズ、形天仙果(イヌビハ)ノ如シ、秋ニ至リ熟シテ黒ク、柔ニシテ味甘シ、中空シテ細子殼ニツク、一種實大ニシテ一寸許ナルアリ、肥前ニテクヒイタビト云フ、又紀州ニ小葉ニシテ大實ヲ結ブ者アリ、クライタボト云フ、又一種圓葉ノ者アリ、木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif ニ同名アリ、此條ハ木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 房ノ略ナリ、實ノ形ヲ以テ名ク、木芙蓉木蘭(フヤウシモクレン)ニモ木http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif ノ名アリ、コレハ花ノ形ヲ以テ名クルナリ、

〔本草和名〕

〈十九/米穀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 麻蕡〈楊玄操音墳〉一名麻勃〈此麻花上勃々者〉牡麻也、〈蘇敬注曰、蕡即麻實也、陶景爲花大誤也、〉人精、〈出太清經〉華名青葙、〈出神仙服餌方〉和名阿佐乃三(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十四/織機具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 麻苧 説文云、麻〈音磨、和名乎(○)、一云阿佐(○○)、〉枲屬也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈六/織機具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 原書云、麻與林同、人所治在屋下、與此異、按玉篇云、麻枲屬也、源君疑誤引之

〔類聚名義抄〕

〈七/广〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 麻〈音磨、ヲ、一云アサ、〉

〔伊呂波字類抄〕

〈安/植物附殖物具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 麻〈アサ、麻紵枲屬也、〉 苴〈アサタネ、麻子、〉

〔倭訓栞〕

〈前編二/阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 あさ〈◯中略〉 麻をいふは、淺き義也、麻の狹衣などいへり、或は青割の義、白栲にむかへたる言也、栲を白和幣とし、麻を青和幣とする也、麻をみそぎの具とし、又麻の葉を流すをもて歌にもよめり、〈◯中略〉あさがらは古語拾遺に麻柄と見えたり、麻につるヽよもぎといへる諺は、荀子に蓬生麻中、不扶而直と見えたり、

〔八雲御抄〕

〈三上/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 麻 あさて あさを さくらあさ〈あさの名也〉

〔宜禁本草〕

〈乾/五穀〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 大麻子 甘平、取汁爲麻腐、及爲麻子粥、多食損血滑精、補中益氣、主中風汗出、利小便水、〈破積血血脉〉治嬭婦産後餘疾、長髮可沐藥、今人作布、麻蕡合人參服、令逆知未來事、麻賁花上勃々者、〈七月七日採良〉去殼法、麻子帛包、沸湯浸、湯冷出之、垂井中一夜、勿水、次日日中暴乾、就新瓦上挼去http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000205.gif 揚取仁、粒々皆完、大便不通、研和爲粥食、

〔大和本草〕

〈六/民用草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1190 大麻(アサ) 一名火麻、雌ハ子アリ、麻仁ナリ、雄者名枲麻、又牡麻ト云、實ナシ、雌雄共ニ皮ヲトリテ布トス、宿根ヨリ不生、毎春實ヲマク、上世ニハ麻仁ヲ五穀トス、月令ニ食麻トアルハ麻仁ナリ、今ハ食セズ、胡麻ハ上代ノ穀ニハアラズ、麻仁ノ功能多シ、本草ニ見エタリ、麻葉ヨク瘧ヲ治ス、用ヤウ本草ニ見エタリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十七/麻稻麥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1191 大麻 コヲリグサ(○○○○○)〈古歌〉 ヌキグサ(○○○○)〈同上〉 アサ(○○)〈和名鈔〉 ヲ(○)〈同上〉 ヒネリ(○○○)〈土州〉 一名山絲苗〈救荒本草〉 綿麻〈本經逢原〉 絡蔴〈同上〉 好麻〈群芳譜〉 吐乙麻〈村家方〉春種ヲ下ス、方莖直上七八尺葉對生ス、形細長葉八九圓ニ並ビテ、モミヂノ葉ノ形ノ如クニシテ長大ナリ、コレニ雌雄アリ、雄ハケムシ、〈古名〉ヲアサ、サクラアサト云フ、花ヲ生ジテ實ヲ結バズ、釋名ニ枲麻牡麻ト云フ、一名枲牡麻、〈群芳譜〉瑤華、〈楚辭九歌〉雌ヲメアサ、ミアサト云、花ナクシテ實ヲ結ブ、釋名ニ苴麻苧麻ト云フ、一名麻母、〈救荒本草〉大麻ノ皮ヲハギタルアトノ稭ヲ、アサギト云フ、一名アサガラ、コレヲ麻骨〈訓蒙字會〉ト云、一名續麻骨、〈物類相感志〉食物本草ニ、花名麻勃子名麻http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6d9.gif ト云フ、釋名ニ花名麻http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6d9.gif 麻勃ト云ハ、本經ノ文ニ據ル、コレハ誤ナルコト正誤ニ辨ゼリ、

〔農業全書〕

〈六/三草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1191 麻あさをうゆる法、先たねをゑらぶ事、白きが雄麻なり、白しといへども、齧て心みるに、かるくうるほひなきは粃なり、白く堅きをよしとす、これはいかにも良々田を好む物なり、中分以下の畠には作るべからず、いかほども深く耕しこなす事、力の及ぶほど塊少もなき様に、委しくこしらへたるにしかず、十耕蘿蔔九耕麻とて、九度も耕しこなす物と云なり、又竪横七遍づヽ犁かきすれば、麻に葉なく本末なりあひて、節少もなく皮うすくながく出來ると云へり、凡種子を一段に七八升ほど蒔を中分とするなり、厚過れば細くして長からず、薄ければ皮あらく枝さきて苧あしし、蒔時なげうつべからず、節高しと云習はせり、地のぬれたるに蒔たるは、生じて瘠る物なり、地の白くかはきたる時蒔くべし、〈◯下略〉

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1191 凡〈◯中略〉其調副物〈◯註略〉正丁一人〈◯中略〉麻二斤、熟麻十兩十六銖、〈◯中略〉麻子油七勺、

〔延喜式〕

〈五/齋宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1191 造備雜物〈◯中略〉 熟麻大一斤八兩、苧小二斤二分、凡諸國送納調庸、并請受京庫雜物、積貯寮庫支配雜用、〈◯中略〉麻四百斤、熟麻一百斤、〈已上下總〉

〔延喜式〕

〈十五/内藏〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192 御服料〈◯中略〉 熟麻大五斤〈暴絁緒料〉中宮御服料〈◯中略〉 熟麻大三斤〈暴絁緒料〉造御靴料、〈◯中略〉麻子一斛二斗五升、諸國年料供進〈◯中略〉 麻子二斛〈常陸七斗、下總七斗、武藏國六斗、〉

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192 年料別貢雜物武藏國〈(中略)麻子六斗〉 下總國〈(中略)麻子七斗〉 常陸國〈(中略)麻子七斗〉 下野國〈(中略)麻子三斗〉交易雜物尾張國〈(中略)苧一百五十斤〉 參河國〈(中略)苧九十斤〉 遠江國〈(中略)苧一百卅斤〉 信濃國〈(中略)熟麻十斤〉 上野國〈(中略)苧八十斤〉

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192 凡中男一人輸作物〈◯中略〉東木綿苧各一斤、〈◯中略〉茜、熟麻、枲各二斤、〈◯中略〉麻子、荏槾椒油各五合、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192 諸國進年料雜藥丹波國卌三種、〈◯中略〉麻子三斗五升、 備後國廿八種、〈◯中略〉麻子一斗四合、 紀伊國卅五種、〈◯中略〉麻子八升、 讃岐國卌七種、〈◯中略〉麻子二斗五升、 伊豫國卅二種、〈◯中略〉麻子三斗、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192雜味鹽魚廿石六斗、〈和泉國綱曳厨所進〉料商布十六段、信濃麻百斤、

〔出雲風土記〕

〈大原郡〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192 高麻山、郡家正北一十里二百歩、高一百丈、周五里、〈◯中略〉古老傳云、神須佐能袁命御子、青幡佐草http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001ed76.gif 命、是山上麻蒔初、故云高麻山、即此山峯坐其御魂也、

〔古語拾遺〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1192都橿原營帝宅、〈◯中略〉令天富命率忌部諸民種種神寶鏡玉矛盾木綿麻等、〈◯中略〉天日鷲命之孫、造木綿及麻并織布、〈古語阿良多倍〉仍令天富命率日鷲命之孫肥饒地、遣阿波國、殖穀麻種、其裔今在彼國、當大嘗之年、貢木綿麻布及種々物、所以郡名爲麻殖之縁也、天富命更求沃壤、分阿波忌部率往東土、播殖麻穀、好麻所生、故謂之總國、穀木所生、故謂之結城郡、〈古語麻謂之總也、今爲上總下總二國是也、〉阿波忌部 所居、便名安房郡、〈今安房國是也〉

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈後集六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 錢用帳 天平寶字六年同日〈◯閏十二月六日〉下錢壹伯肆拾陸貫壹伯拾玖文〈◯中略〉 一百文買麻大五斤〈斤別廿文〉

〔續日本紀〕

〈二十七/孝謙〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 天平神護二年六月丁亥、日向大隅薩摩三國大風、桑麻損盡、詔勿柵戸調庸

〔萬葉集〕

〈七/雜歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 羈旅作夏麻引(ナツソヒク)、海上滷乃(ウナカミガタノ)、奧津洲爾(オキツスニ)、鳥者簀竹跡(トリハスダケド)、君者音文不爲(キミハオトモセヌ)、

〔萬葉集〕

〈十一/古今相聞往來歌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193物陳思櫻麻乃(サクラアサノ)、苧原之下草(ヲウノシタクサ)、露有者(ツユシアレバ)、令明而射去(アカシテイユケ)、母者雖知(ハヽハシルトモ)、

〔袖中抄〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 さくらあささくらあさのおふの下草はやくおひばいもが下ひもとかざらましを顯昭云、さくらあさとは、麻の花は、しろき中にすこしうすすはう色あるあさのある也、それを櫻麻とは云也、又下人の申侍しは、くらあさといふ物なりと申き、くらあさとは、もしくら(苦參)らと云物にや、それもぬのにをれば、それをもあさといふ歟、それにさもじ(文字)をくはへて、さくらあさといふにや、櫻麻とかきたる所心えねど、万葉は書様ともかくもあり、石の根をも石金(イハカネ)とかけり、當時よみよきやうに書也、さくらあさのおふと云をも、或は櫻麻の麻原とかけり、これは麻の義にかなへり、或櫻麻の苧原ともかけり、これはいはれず、麻と苧と別の物なる故也、苧をはまをといひ、からうしともいふ也、

〔散木弃謌集〕

〈一/春〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 なしの花さかりなりけるをみてよめる櫻あさのおふのうらなみ立かへり見れどもあかぬ山なしのはな太平記

〈二〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1193 長崎新左衞門尉意見事附阿新殿事 阿新殿〈◯中略〉夜モハヤ次第ニ明離テ、忍ベキ道モナケレバ、身ヲ隱サントテ日ヲ暮、麻ヤ蓬ノ生茂タル中ニ隱居タレバ、〈◯下略〉

〔甲子夜話〕

〈二十四〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1194 或日ノ坐話ニ聞ク、麻ノ初生ノ芽ヲ食スレバ發狂スト云、先年谷中妙傳寺ト云ニテ、早朝人ユキタルニ、ソノ住持小僧奴僕ナド皆沈睡シテ熟臥ス、又視ルニ、佛壇ノ本尊ヨリ器具戸障子ノ類、悉ク打破テアリ、其人不審ニ思ヒ、睡リタル者ヲ搖シ起セドモ覺メズ、頻ニ起シテヤウヤク覺タリ、因テ其次第ヲ問フニ、サテ〳〵能寐タリ、夜前ハ面白キコトナリト云ユヱ、夫ハイカニト尋レバ、カノ打碎キシ物ヲ見テ大ニ驚キ、始テ狂ノ所然ヲ知リタリト云、カノ毒消ヌレバ故ニ復スルニヤ、此時坐傍ノ人曰フ、夏日麻ノ襦袢ヲ著タルモノ、酒ヲ飮デ汗出レバ、襦袢ニ酒氣殊ニ移リテ有リ、コレ酒氣ヲ吸フナリト云キ、然レバ麻ノ性ハ酒ヲ惹モノナルカ又一客曰フ、麻毒ノ狂モ酒ヲ飮メバ發スルコトナシト、然レバ又酒ハ麻ニ克ツ乎、又本草大麻ノ條ニ、附方〈舊一〉風癲百病、麻子四升、水六升、猛火煮令芽生、去滓煎取二升、空心服之、或發或不發、或多言語之、但令人摩手足、頃定進三劑愈〈千金〉是等カノ發狂ノ據トスベシ、又カノ寺ニテ數人發狂ノトキ、十二歳ナル兒、兩手ニ箸ヲ持チ、面白ヒト云ツヽクルヒ出シ、其次ニ住持ガ狂シタリト云、年少ノ腹中故ニヤ、和尚ハ多ク食セシ故ニヤ、

〔農業自得〕

〈下〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1194 麻麻の相生の地といふは、山間の土地こはく、厚地によし、依て野州粟野へんは、關東一の麻地なり、平地にては益少し、

〔延喜式〕

〈四十二/東西市〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1194 苧㢆〈◯中略〉 右五十㢆東市  麻㢆、績麻㢆、〈◯中略〉 右卅三㢆西市

〔毛吹草〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1194 信濃 白苧  上野 白苧  出羽 青苧〈奈良布ニ用之〉  越後 綱苧  但馬 苧

蕁麻

〔多識編〕

〈二/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1194 蕁麻、今案比土左志久左(○○○○○○)、異名毛http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b670.gif

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十三下/毒草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1195 蕁麻 〈正字通ニhttp://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b66f.gif 麻ニ作、通雅ニ燖麻http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b670.gif 麻ニ作ル、〉 イラグサ(○○○○) ユナグサ(○○○○)〈攝州〉 マムシサウ(○○○○○) オニアサ(○○○○) ヒトサシグサ(○○○○○○) イライラ(○○○○) 疼草〈和方書〉 イタイタグサ(○○○○○○)〈加州〉 増一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001d55a.gif 草〈貴州通志〉陰地ニ生ズ、方莖高サ二三尺叢生ス、葉苧麻ノ葉ニ似テ深緑色兩對ス、莖葉共ニ毛刺アリ、人ヲ螫スコト甚シ、然レドモ煮ル時ハ食フベシ、花實共ニ苧麻ニ同ジ、其穗葉上ヘ立上ルヲ異ナリトス、苧麻ノ花ハ葉下ニ垂ルレバナリ、木曽ニハ細葉ノモノアリ、濶サ五分、長サ三寸許、増、一種木曽山中ニ蔓生ノモノアリ、葉ノ形ラシヤウモンニ似テ、刺弱クシテ人ヲ傷ラズ、花實ノ形尋常ノモノニ似タリ、カラハナサウト名ク、又蕁麻ノ人ヲ刺シタルニ、鹽ヲ傅レバ疼ヲ止ム、人尿モ亦可ナリ、

麻苧

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1195 枲〈加良牟自(○○○○)〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000206.gif 〈加良牟自〉

〔倭名類聚抄〕

〈十四/織機具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1195 麻苧〈◯中略〉 爾雅注云、枲〈司里反、和名介無之(○○○)、〉麻無子名也、周禮注云、苧〈直呂反、上聲之重、和名加良無之(○○○○)、〉麻屬、白而細者也、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈六/織機具〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1195 按儀禮喪服傳云、牡麻枲麻也、周禮疏同、玉篇云、有子曰http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b2a1.gif 、無子曰枲、作無爲是、然廣韻云、麻有子曰枲、無子曰苴、因考春秋正義引喪服傳、苴絰者麻之有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6d9.gif 者也、馬融注云、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6d9.gif 者枲實、枲麻之有子者、其色麤惡故用之、凝注爾雅者、誤讀馬注枲者麻之有子者、廣韻亦承其誤也、其作無者、蓋後人所校改、非爾雅注之舊、經籍纂詁枲字條、引馬注枲麻之有子者、亦誤讀馬注、枲字爲逗、〈◯中略〉所引文〈◯周禮注〉原書不載、按冢宰之屬、典枲職、布緦縷紵、注云、緦十五升布、抽其半者、白而細、疏曰、紵白而細、注以釋緦、疏以釋紵也、源君或引之、脱疏字、且誤句讀也、毛詩東門之池、可以漚http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 紵、釋文云、紵字又作苧、故源君引作苧也、又南都賦有藨苧、王褒童約有蒲苧、皆謂三稜、與此自別、又按紵有草名布名二義、典枲所云布名、説文紵字注、細者爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001acb1.gif 、粗者爲紵、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001acb1.gif 字注細布也、皆與典枲所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 云 同、即本書布帛類所載紵布是也、此所載草名、則引典枲注是、説文紵http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001a127.gif 屬、又周禮掌葛職、徴草貢之材於澤農、注草貢出澤、http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b4f6.gif 紵之屬、可緝績者、本草苧根陶注云、即今績苧爾、蜀本注云、苗高丈以來、南人剥其皮布、圖經云、其皮可以績http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 布、苗高七八尺、葉如楮葉、面青背白、有短毛、夏秋間著細穗青花、其根黄白而輕虚、陸機草木疏云、苧一科數十莖、宿根在地中、至春自生、不栽種、本草衍義云、苧根如蕁麻、花如白楊而長、成穗生、毎一朶凡數十穗、青白色、李時珍曰、苧麻作紵、可以績http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 紵、故謂之紵、是皆草名、可以訓加良无之

〔令集解〕

〈十三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 葈〈古記云、葈司里反、爾雅葈麻也、野王案、喪服傳、牡麻者葈麻也、則麻之有子者爲枲也、〉

〔類聚名義抄〕

〈八/艸〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 葈〈音子、ナモミ、カラムシノヲ、カラムシ、〉 葈耳〈同〉 苧〈音佇、カラムシ、カラムシノヲ、〉

〔運歩色葉集〕

〈草花名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 葈(カラムシ) 紙麻(カラムシ)

〔大和本草〕

〈九/民用草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 苧麻(マヲ) 本草十五卷載之、大麻(アサ)トハ別ナリ、葉ハ紫蘇ノ形ニ似テ青ク大ナリ、又蕁麻(イラ)葉ニ似タリ、一根ヨリ莖多生、長ジタルヲ刈テ皮ヲ取リ苧トシ布トス、大麻ニマサレリ、冬宿根不枯、春又生ズ、又實ヲマキテ生ズ、圃ニ多クウヘテ利トス、又野苧(ヤフマヲ)アリ、是亦布トス、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四本/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 苧麻 苧〈音除〉 紵麻 〈凡麻絲之細者爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001acb1.gif 、粗者爲紵、和名加良無之、俗云眞苧、〉按苧麻大麻(マヲアサ)共剥皮爲絲、通稱苧、故以苧麻眞苧(マヲ)、羽州最上之産爲良、名青絲線苧(アヲマガイソ)、織奈良瀑布者是也、賀越之産亦佳、乃織越後縮布、信濃之産最勁強爲http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001ad99.gif 、不於鐵線、故名鐵引(カナヒキ)、凡使時浸熱湯米糠合之、日乾去糠用、其大http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001ad99.gif海舶絙呼曰加賀苧、凡苧麻初下種、後毎歳再三苅取宿根生、第一苅者長三四尺、去枝葉莖、浸河水取出覆薦筵之、故名虚蒸(カラムシ)乎、剥麤皮肌皮青白色者、以竹篦刮、淨晒乾用之、織奈良及阿部屋(アブヤ)布、故呼稱奈良苧、〈曾者與於通〉第二次苅者稍短、其性不初苅者

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十/隰草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1196 苧麻 カラムシ(○○○○)〈和名鈔〉 マオ(○○) カツホウ(○○○○)〈豫州〉 シロオ(○○○)〈土州〉 衣草〈和方書〉 シラソ(○○○)〈雲州〉 ヤマソ(○○○)〈佐州〉 シロソ(○○○)〈肥前〉 シロハ(○○○) シロホ(○○○)〈共ニ同上〉 ヒウジ(○○○)〈播州〉 一名青麻〈附方〉 青花麻〈千金方〉他國ニハ苧麻ヲ栽テオヲ採ル、京師ニハ栽ルモノナシ、野生多シ、山苧野苧ナリ、ノマオト呼ブ、又グロウジ、〈城州笠置〉ハヅ〈豫州〉ノ名アリ、採テ圃ニ栽レバ苧麻トナル、春宿根ヨリ生ジ、一根叢生ス、高サ四五尺、葉互生ス、形楮(カウゾ)葉ニ似テ岐ナク背白シ、集解ニ謂フトコロノ形状ヨク的當ス、頌ノ説殊ニ詳ナリ、夏葉間ニ穗ヲ生ズ、孛落(コナラ)樹花ニ似リ、一穗數枝、花最碎小ナリ、開ク時ハ細黄粉散落ス、後細子ヲ生ジテ下垂ス、落テ自ラ苗ヲ生ズ、此皮ヲ剥ギ水ニ漚シテ、外ノ粗皮ヲ去リ、内ノ白絲ヲ取リ、夏布ノ用トス、コレヲ奈良ソト云、南都ニテ此オヲ以テ布ヲ織リ、晒シテ四方ニ貨ス、白苧(サラシ)ト云、越後ニテ織ルモノ最上品トス、野苧麻葉ヲ乾シ、揉テ綿ヲ取用テ能血ヲ止ム、ソノ根打撲腫痛ニ効アリ、生根ヲ採リ薑擦ニテ研リ、紙ニノベ痛處ニ貼レバ、骨節ノイタミヲ治ス、蒴藋(ソクヅ)接骨木ノ煎湯ニテ洗ニ勝レリ、一種ヤブマオ(○○○○)アリ、路旁ニ多シ、葉苧麻ヨリ大ニシテ兩對シ、背ニ白毛ナク、皮ニ絲ナシ、穗粗クシテ直立ス、此類數多シ、一種アカメ(○○○)ト呼者アリ、一名サヽヤキグサ、キヽシグサ、シヽヤキグサ、〈皆同名アリ〉アカガシラ、〈豫州〉アカダ、〈仙臺〉タモ、〈南部〉クチヱ、〈同上〉アカワタ、〈越後〉山野共ニ生ズ、葉ノ形野苧ニ似テ小シ、大サ二三寸、莖赤クシテ兩對ス、葉間ニ花ヲ開ク、苧麻穗ニ似リ、是ニハ皮ニ絲アリ、奧州ニテハ、織テ足袋及頭巾ニ製ス、此絲ヲ南部ノ方言ニクチヱオト云、頭巾ニ製シタルヲアカダ帽子、〈仙臺〉クチヱボ〈ツ〉チ、〈南部〉アカワタボウシ〈白川〉ト云、風ヲ透サズト云ヘリ、市人コノ草ノ根ヲトリテ、紫大戟ニ僞リ、野苧麻根ヲトリテ大戟ト名ケ售ル、皆大戟ノ僞物ナリ、

〔百姓傳記〕

〈十一〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1197 青苧ヲ作ル事青苧ハ實ヲ取置、春ノ彼岸ノ内蒔、夏土用ニ至リテ苅取、其儘日ニ干シ、其後水ニヒタシホトボシテ、皮ヲムキテ上皮ヲ竹ベラニテコキ取リ水ニテ濕ヲ洗、眞麻トナル、マタ年々根ヲ九十月ニ堀 テ分ケ植、ホエヲ出サセ、夏土用ニ刈リ、又秋ノ末ニ刈リ、兩度眞麻ヲ取、此麻ヲ以布ヲ織ニ、分テツヨシ、土地ニ嫌ヒナクハビコルモノナリ、越後信濃上野、此國々ノ土民、能作リ得テ國々ヘ出ス也、

〔農業全書〕

〈六/三草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1198 麻苧(まを)麻苧をうゆる事、先苗地を寒耕し、いかほどもよくこなし、塊少もなく委しくこしらへ、濃糞を多くうちさらし置、二月中旬、麥畦のごとく畦作りし、横にせばく筋をかき、種子を薄く蒔、土をいかにも少おほひ、又其上に糠を少おほひ置なり、生出ては、先草ながら生立(そだて)をき、根よく出來て後、中を削りても痛むまじき時、かるき鍬にてさら〳〵と削り、草を殺しやがて糞を置べし、馬やごゑ其外何にても多くをくべし、糞すくなければふとりかぬる物なり、種子を蒔て明る年、苗ばらひをして、又こゑを多く入れ藝り中うちしをき、三年めより刈取物なり、尤冬雪霜に痛まざる様に、馬屋糞など一尺も厚くおほひ、春になりてはかきのけ藝り、又糞を入をきて、五月初め一鎌かり取、六月半又一鎌、八月一鎌、以上三度かる物なり、中の度を上とすべし、はぎとる事、中よりをしおれば、皮は二筋になりて、木は本末へげてのく物なり、さて其皮を日の當らざる所に置て、水に漬るか、池川なくば、井の水を汲かけてぬらし、竹刀を以て、内の方よりこけば、却て上の皮よくのく物なり、いかにも懇にこきて、其後上中をゑり分、さらし干し上(あげ)て、百目宛を一把とするなり、是は芳野にて作りこしらへ立る大概なり、〈◯下略〉

〔令義解〕

〈三/賦役〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1198 凡〈◯中略〉其調副物、〈◯註略〉正丁一人〈◯中略〉葈十二兩、

〔延喜式〕

〈一/四時祭〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1198 鎭花祭二座大神社一座、〈◯中略〉葈六兩、狹井社一座、〈◯中略〉葈八兩、

〔延喜式〕

〈五/齋宮〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1198 祓料〈◯中略〉 葈一斤

〔延喜式〕

〈四十二/東西市〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1198 紵(カラムシ)http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dff1.gif 〈◯中略〉右五十一http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dff1.gif 東市、 紵http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dff1.gif 、〈◯中略〉右卅三http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001dff1.gif 西市、

〔日本書紀〕

〈三十/持統〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 七年三月丙午、詔令天下勸殖桑紵梨栗蕪菁等草木、以助五穀

〔牧民金鑑〕

〈十七〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 明和五子年十月御代官所御預所村々の内、から虫有之候場所、絲にとり機物等にいたし候得者、村方勝手にも相成候筋に候處、其儘打捨置候場所多く候間、以來御代官所御預所より、右の趣寄々申渡候様可致候、右之趣申達候様、備後守殿被仰渡候間、申渡候、以上、子十月

柳イチゴ

〔大和本草〕

〈附録一/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 柳イチゴ(○○○○) 葉ハ如柳、其幹如柳樹頗大ナリ、高五六尺無刺、駿州薩陲山ニ多シ、葉ノ表深緑色裏白シ、三月末開黄紅白花、五月子熟、黄赤色味頗甘シ、無毒可喰、其花一處ニ叢生ス、子モ亦然リ、

赤車使者

〔多織編〕

〈二/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 赤車使者、今案阿加惠(○○○)、異名小錦枝、〈炮炙論〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈九/芳草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 赤車使者 クチナハジヤウゴ(○○○○○○○○) ヤマカゴ(○○○○)〈加州〉 シヅクナ(○○○○)〈佐州〉 ミヅナ(○○○)〈但州〉 ミヅ(○○)〈南部、凡圓莖ニシテ淡紅色、透明ノモノヲミヅト云、蚯蚓ノ略ナリ、〉 ウハバミサウ(○○○○○○)此草蛇過食ノ時食ヘバ即チ消ス、故ニクチナハジヤウゴト云、深山溪側陰地ニ生ズ、莖斜ニシテ直立セズ、葉ハ欅(ケヤキ)及加條(ムクノ)葉ニ似テ互生ス、黄緑色、四月葉間ニ極テ細小ナル白花ヲ簇生ス、秋ニ至テ脚葉ノ間ニ實ヲ結ブ、零餘子(ムカゴ)ノ形ノ如シ、根ハ淡紅色、又一種ミヅ(○○)ト云アリ、苗高サ一尺ニ滿タズ、葉ハ苧麻葉ニ似テ小ク、節節ノ間ニ生ジ、節ニハ葉ナシ、花ハ苧麻花ニ似テ葉間ニ簇生ス、花ハ葉ノ色ニ同ジ、コレモ赤車使者ノ屬ナリ、

馬兜鈴

〔多識編〕

〈二/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 馬兜鈴、今案牟末乃須須(○○○○○)、異名獨行根、〈唐本〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十六/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1199 馬兜鈴(ばとれい) 二百兩銀葉都淋藤 土青木香〈根名〉 雲南根〈根名〉 獨行根〈同〉 按青木香、〈重出于芳草下〉用之雜僞於木香、又倭無馬兜鈴、而蘿藦根似之、故亦僞爲青木香

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1200 馬兜鈴(バトレイ) 馬兜鈴(ムマノスヾ)〈蔓艸也〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十四/蔓草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1200 馬兜鈴 ジヤカウサウ(○○○○○○)〈苗ノ名下同〉 ムマノスヾカケ(○○○○○○○)〈和州〉 ツンボグサ(○○○○○)〈播州、此實耳ヲ毒ス、故ニ名ク、〉 チドリサウ(○○○○○)〈播州〉 ムマノスヾクサ(○○○○○○○)〈片玉本草〉 ムマノスヾ(○○○○○)〈實ノ名〉 スヾナリ(○○○○)〈勢州同上〉 青木香〈根名〉 一名玉皇瓜〈藥譜、輟耕録及事物異名、皇ヲ黄ニ作ル、〉 雲南枝〈楊州府志、枝ハ根ノ誤ナルベシ、〉 天仙藤〈万病回春〉 兜鈴苗〈附方〉 冬兒冬乙羅〈村家方〉馬兜鈴ハ實ノ名、土青木香ハ根ノ名(○○○○○○○○)、古方ニ青木香ト云ハ南木香ナリ、後世ノ方ニ青木香ト云ハ多ハ此根ヲ指ス、即土青木香ノ略ナリ、和名ニモ青木香ト云、故ニ和方ニ青木香ト云ハ、コノ根ヲ用ユベシ、此草原野路傍ニ多シ、苗山藥(ヤマイモ)ニ似テ春宿根ヨリ苗ヲ生ズ、色黒シテ衆草ニ異ナリ、長ジテ繁延シ、葉互生ス、山藥葉ヨリ厚ク黒色ヲ帶ブ、長サ一二寸、切レバ臭氣多シ、夏月葉間ニ花ヲ出ス、本筒ニシテ末兩瓣ニ分レ、屈曲シテ馬頭ノ形ノ如シ、紫緑色後實ヲ結ブ、長サ一寸許、濶サ六七分下垂シ、外ニ薄キ皮アリテ包ミ、鷄卵ノ形ノ如シ、皮ノ本ゴトニ各一絲アリテ耬斗菜(オダマキ)ノ花ノ形ノ如シ、故ニ集解ニ開四系ト云フ、熟スレバ褐色中ニ薄扁子數多アリ、形楡莢(ニレノミ)及百合子ノ如クニシテ白色ナリ、一種大葉ノ者アリ、長サ三寸許、増、種樹家ニ漢種ノ馬兜鈴ト呼モノアリ、春舊莖ヨリ葉ヲ互生ス、葉蒂長クシテ二寸許ニモ及ブ、葉ノ形木防已葉ニ似テ三岐ヲナス、中葉長サ三寸許、幅五六分、左右ノ岐葉圓ク短クシテ、僅ニ六七分ニ過ギズ、ソノ缺刻深クシテ下漸ク窄シ、恰モ正面ニ畫ケル鼻ノ状ノ如シ、夏月葉間ニ下垂シテ花ヲ開ク、長サ一寸六七分、本ハ筒ニシテ一寸許ニシテ上ニ彎曲シ、横ニ向テ兩瓣ヲ分ツ、内ニ黒斑アリ、甚異形ニシテ比シ象リガタシ、花後莢ヲ結ブ、大拇指ノ大サニシテ末尖リ、縱ニ六七線アリテ淡茶色熟シテ自ラ裂ク、中ニ竪ニ薄皮ヲ隔テ、一分許ノ子數多クアリ、灰色ニシテ甚ダ 堅ク、舶來ノ莢柔http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c654.gif ニ子ノ薄片ニシテ、尤輕虚ナルニ異ナリ、根ハ巨クシテ香アリ、コノ草勢州志州ニハ自生アリ、漢種ニハアラズ、

〔武江産物志〕

〈藥草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 早稻田邊 馬兜鈴〈大葉ハ中里ニアリ〉

細辛

〔新撰字鏡〕

〈草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛〈彌良乃禰草(○○○○○)、又似地白、〉

〔本草和名〕

〈六/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛一名小辛、一名細草、〈出釋藥性〉和名美良乃禰久佐、一名比岐乃比太比久佐(○○○○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛 釋藥性云、細辛一名小辛、〈和名美良乃禰久佐、一云比木乃比太比久佐、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 按千金翼方證類本草並云、細辛一名小辛、則知小辛之名出本草、細草之名出釋藥性也、疑以本草和名於小辛下http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4d.gif出典、源君誤以爲小辛之名亦出釋藥性也、太平御覽引呉氏本草云、細辛如葵葉赤黒、一根一葉相連、本草圖經云、其根細而其味極辛、故名之曰細辛

〔古名録〕

〈十八/香草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 按ニ美良乃禰ハ、即生根鬚韭根如キヲ云、〈本草和名曰、韭和名古美良、◯中略〉其根ノ味香アリテ辛ニヨリ、美良乃禰久佐ト云、〈◯註略〉比岐乃比太比ハ、其葉形状蟾蜍ノ額ニ似テ、根味亦蟾蜍ノ味ノ如ヲ云、

〔大和本草〕

〈六/藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛 一説賀茂葵ヲ細辛トス、其根甚辛シ、和俗ノ細辛ト稱スル者ハ杜衡也ト云、モロコシニモアヤマルヨシイヘリ、又山野ニ一種根ノ味細辛ニ似タルモノアリ、是世俗ノ所謂細辛ナルベシ、是白微ナリ、京都http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f0000651145.gif 臺野藥園ニアリ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十二末/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛 小辛 少辛 〈和名美良乃禰、或云比木乃比太比久佐、◯中略〉按細辛倭漢共用之、奧州津輕及江州之産良、阿波及豐前小倉之産次之、其葉似小葵而青、有小白點、夏月開小紫花、朶短根直、外黄内白、其氣略如椒、雖辛不甚、用細辛人參、則人參不蛀云、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1201 細辛 ヒキノヒタヒグサ(○○○○○○○○)〈延喜式〉 ミラノネグサ(○○○○○○)〈和名鈔〉 ミヤマヌナハ(○○○○○○)〈本草類編選〉 一名玉蕃絲〈種杏仙方〉 緑鬚薑〈輟耕録〉 延喜式ニ載ルハ、當時何ノ草ヲ以テ細辛ト爲シタルヤ詳ナラズ、眞ノ細辛ハ近來出タリ、加茂アフヒヲ以テ細辛ニ充ル古説ハ穏ナラズ、加茂アフヒハ古歌ニモロハグサ、フタバグサ、カザシグサ、ヒカゲグサ、カタミグサ、モロカヅラトモ云、是ハ雙葉細辛(○○○○)ナリ、根粗クシテ辛味少シ眞ニアラズ、眞ノ細辛ハ和州大峯ノ麓赤瀧村ニアリ、根細ク黄白色、コレヲ嚼バ辛カラズ、暫シテ大ニ辛シ、加茂葵ノ葉ニ似テ、微シ長ミアリテ毛ナシ、又葉形變ジタルモアリ、三月新葉生ズレバ、根上ニ三瓣ノ花ヲ開ク厚シ、大サ三四分、下ニ圓筒アリテ釜ノ状ノ如シ、紫黒色内ニ小子アリ、熟シテ自ラ落チ、春ニ至テ嫰苗ヲ生ズ、冬ハ葉枯ル、又常州江州豆讃州野等ニモ産ス、

〔延喜式〕

〈三十七/典藥〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1202 諸國進年料雜藥伊勢國五十種、〈◯中略〉細辛十一斤、 武藏國廿八種、〈◯中略〉細辛廿斤、〈◯下略〉

〔佐渡志〕

〈五/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1202 細辛 山中ニ多シ、採テ藥舖ニ賣ルニ、他邦ノ産ニ勝レリトイフ、

杜蘅

〔本草和名〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1202 杜蘅〈楊玄操音衡〉一名馬蹄香、〈蘇敬注云、形似馬蹄、故以名之、〉一名楚蘅、一名土鹵、一名土荇、〈已上出釋藥〉和名布多末加美(○○○○○)、一名都布禰久佐(○○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈二十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1202 杜蘅 蘇敬本草注云、杜蘅一名馬蹄香、〈蘅音衡、和名布太末賀三一云豆不禰久佐、〉形似馬蹄、故以名之、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈十/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1202 證類本草中品引云、杜蘅葉似葵、形如馬蹄、故俗云馬蹄香、與此所http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/7f000003ac4a.gif 引字句少異、本草和名引與此同、按葉似葵三字似缺、若無是三字、則云形似馬蹄者、無何物也、本草和名删節、非是、西山經、天帝之山有草焉、其状如葵、其臭如http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b6c1.gif 蕪名曰杜衡、爾雅、杜、土鹵、郭注云、杜衡也、似葵而香、別録、杜蘅香人衣體、陶注、根葉都似細辛、惟氣小異爾、史記司馬相如傳索隱引博物志云、杜衡一名土杏、其根一似細辛、葉似葵、按杜衡土杏古同聲、然則此草似莕生土故有土莕之名也、〈王念孫〉蘇又云、生山之陰水澤下濕地、根似細辛白前等、圖經、根亦麄黄白色、圖經細辛注云、杜衡春初於宿根上生、苗高二三寸、莖如麥藁麁細、毎窠上有五七葉或八九葉、別無枝蔓、又於葉莖間罅缺内蘆

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1203 頭上、貼地生紫花、其花似見不見、闇結實如豆大、窠内有碎子、似天仙子、苗葉倶青、經霜即枯、其根成窠、有http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001c7c6.gif 箒密閙、細長四五寸、微黄白色、味辛、

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1203 杜(ツハ/ツハ)衡(ブキ)〈一名馬蹄香〉石蘭(同)〈俗用此字、謬、石蘭者石葦也、〉杜衡(ミヤマヌナハ)〈杜葵、土細辛並同、俗以杜衡及已者謬見本草、〉馬蹄香(同)〈本草、杜衡葉似蔡形似馬蹄、故云爾、〉

〔古今要覽稿〕

〈草木〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1203 ふたまかみ 〈かんあふひ(○○○○○) 杜蘅〉ふたまかみ、一名つぶねぐさ、俗名かんあふひ、一名ちやうじやのかま、一名おけばな、一名ちやがまのき、一名がけのあふひ、一名つぼはなは、西土にいはゆる杜蘅一名馬蹄香、一名土鹵、一名土荇、一名杜葵、一名土杏、一名杜細辛なり、此物古飛騨國より貢せしこと、延喜式にみえたれど、今は處處山中陰濕の地に往々これあり、形状は大略細辛に似て、一根兩莖或は三莖を生じ、數根相連りて數莖むらがり生ず、花は其兩莖の間より出て地上に貼し、状細辛花に似て紫黒色、内空にして底に付て、蕊の如きものあり、其内に至て微細なる實數十粒あり、頗る罌粟子二ツ三ツに碎きしが如くにして、黄白色、葉はすべて光澤ありて、蟾蜍背の如し、一種武藏多磨郡に産するものは、其葉白斑なくして光澤稍薄し、其他また數十種あり、その形状はくわしく本草啓蒙にみえたり、釋名ふたまかみ、〈本草和名、和名抄、名義詳ならず、〉つぶねくさ、〈同上〉按につぶ疑らくは、別に一種の草の名にてもあるべきか、さすればつぶねくさは、猶みらのねぐさの如く、根の状全く其草の根に似たるによりて、命ぜし名なるべきか、かんあふひ、〈本草啓蒙、按に此草嚴寒の時といへ共、葉かれずして其状葵の如し、故に名づく、〉ちやうじやのかま、〈同上、越後方言、按に此花の状、頗る釜の如し、よりて名づく、〉おけはな〈同上、按に其状おけに似たるをいふ、〉ちやがまのき、〈同上、山城鞍馬方言、按に茶釜もまた其状相似るをいふ、きは甘草あまきといへるきの如し、〉がけのあふひ、〈同上、按にがけは山のかたはらをいふ、〉つぼはな〈同上、按につぼもまた其状によりて名づく、〉杜蘅〈證類本草引名醫別録、圖經本草、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈八/山草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1204 杜衡 カンアフヒ(○○○○○) チヤウジヤノカマ(○○○○○○○○)〈越後〉 オケバナ(○○○○)〈同上〉 チヤガマノキ(○○○○○○) カゲノアフヒ(○○○○○○)〈共ニ城州鞍馬〉 サイシンアフヒ(○○○○○○○)〈種樹家〉 トキハグサ(○○○○○)〈同上〉 イシバサミ(○○○○○)〈勢州〉 ツボハナ(○○○○) 一名http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b683.gif 香〈香譜、茴香同名、〉 金鎖匙〈附方、山豆根ト同名、五雜俎ニ出、〉 馬蹄草〈同上〉 杜衡葵〈爾雅翼〉 馬蹄莘〈赤水玄珠〉 衡http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/S01000000207.gif 香〈楊升庵文集〉 http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/00000001b683.gif 〈同上〉 土杏〈正字通、品字箋、〉 鈸兒草〈大倉州志〉 杜細辛〈集解〉山ニ多クアリ、陰地ニ生ズ、葉圓ニ末尖リ、莖ノ附クトコロカケテ馬蹄ノ形ノ如シ、大サ二三寸形圓ナルモノアリ、長キモノアリ、又苦蕎麥(ミゾソバ)葉ノ如キモノアリ、質皆厚シ、冬ヲ經テ枯レズ、一カブニ葉叢生ス、莖紫黒色葉ニ白斑文アリ、其斑數品アリ、葉中左右相對シテ白キ者アリ、中央ノミ白キ者アリ、葉後白キモノアリ、中央一線白キ者アリ、滿葉細白條網ノ如キ者アリ、又全ク斑ナキ者アリ、是ヲ種樹家ニテ細辛ト呼ハ誤ナリ、細辛ハ葉薄シ、杜衡ハ三四月花ヲ開ク、紫黒色此花ヲ鹽藏ニシテスイモノニス、味淡シ、花ノ形釜ノ如クシテ上ニ三瓣アリ、根ハ細辛ヨリ粗クシテ臊氣アリ、コレヲ藥舖ニテ近江細辛又土細辛ト名ケテ、細辛ニ充テ貨ル、眞ノ細辛ニアラズ、一種葉小ニシテ香氣多キ者アリ、是集解所謂其臭如蘼蕪ト云モノナリ、加州ニ産ス、大サ八分許ニシテ圓ク扁シ、コレヲ錢葉ノ杜衡ト云フ、世ニ錢細辛ト云ハ非ナリ、

〔佐渡志〕

〈五/物産〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1204 杜衡 方言チヤウジヤノカマ 山中ニアリ

二葉葵

〔倭訓栞〕

〈前編二/阿〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1204 あふひ 葵をいふ、〈◯中略〉賀茂祭に用らるヽあふひは、訓義同じく物異れり、二葉草(○○○)とも兩(モロ/○)葉草(/○○)ともいへり、杜衡を杜葵ともいふ、其類也、

〔兼載雜談〕

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1204 一賀茂祭に出る葵は二葉也、そばの葉に似たり、又世上に多き、花の紅にさく葵も用ゆるなり、 葵草照日は神の心かもかげさす方に先むかふらん此歌にてみれば二葉の葵にかぎらざるなり、この歌は葵花向陽の心なり、

〔藻鹽草〕

〈八/草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 葵あふひ草、〈又たヾあふひとばかりも云〉葵はなさく、もろかづら(○○○○○)、もろは草、二葉草、〈神山によめり〉かざし草、〈かざしの草と、のもじありても、〉ひかげ草、〈是も異名とふるき物にあり、すこし不審、〉かたみぐさ、〈◯註略〉庭草、〈これはつちあふひなり、ちしはり草の事也、又にはの草とも、たヾには草共いふと、ふるき物にいへり、〉からほひといへり、〈是馬也、からあふひ也、〉あふひはかも神山、また松尾山にも、みあれひくけふに葵、

〔和漢三才圖會〕

〈九十四本/濕草〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 菟葵〈◯中略〉山州賀茂山中有二葉葵(○○○)、〈毛呂波久佐〉布地生、其葉團而微尖、面青背帶紫色、賀茂神事著葵於桂木枝、掛簾及器之葵祭、毎年四月中酉日被之、獻葵於北山中村

〔古今和歌集〕

〈十/物名〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 あふひ かづら よみ人しらずかくばかりあふひのまれになる人をいかヾつらしと思はざるべき人めゆゑのちにあふひのはるけくばわがつらきにや思ひなされん

〔古今和歌六帖〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 あふひ思ふなかさけにゑひにし我なればあふひならではやむ藥なし

〔古今和歌六帖標注〕

〈六〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 童蒙抄卷五に、酒にゑひたるには、あふひの實をくへばさむといへりとみゆ、今按ずるに、こは何によりてかくいはれたるにか、物に見えず、

〔枕草子〕

〈三〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 草はあふひいとおかし、祭のをり神代よりして、さるかざしとなりけん、いみじうめでたし、ものヽさまもいとおかし、

〔枕草子〕

〈八〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1205 うつくしきものあふひのちひさきもいとうつくし、何も〳〵ちひさき物はうつくし、

〔鵞峯文集〕

〈百十二/頌〉

http://ys.nichibun.ac.jp/kojiruien/image/gaiji/SearchPage.png p.1206 賀茂葵頌賀茂之山、葵草之生、兩葉相對、中有一英、象日月星、三光徳并、維其向日、不其誠、維花之垂、衞足而傾、基本旣守、其末自榮、兩葉之對、擬陰陽精、一英之秀、譬諸神明、此物雖微、託意不輕、神域靈産、祝國家禎、◯按ズルニ、賀茂祭ノ時ニ、葵ヲ用ヰル事ハ、神祇部賀茂祭篇ニ載ス、


Last-modified: 2019-03-15 (金) 09:49:00 (386d)