植物部/藻

p.0877 藻類ニハ、採テ以テ食用ニ供シ、藥料ニ充ツルモノ少ナカラズ、就中昆布、和布(ワカメ)、荒布(アラメ)、海松、石花菜(トコロテン)、海髮(イキス)、海蘿(フノリ)、鷓鴣菜(マクリ)等ハ、其主要ナルモノナリ、

名稱

〔運歩色葉集〕

〈賀〉

p.0877 海藻(サウ)

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0877 水藻(○○)〈◯中略〉　水藻ハ水中ニ生ズル藻類ノ總名ナリ海藻(○○)〈◯中略〉　海中藻類ノ總名ナリ

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0877 海藻(うみのも)〈◯中略〉按生二海島水上一者曰レ藻(モ/○)、生二海中石上一者曰レ苔(ノリ/○)、今藻苔共通曰レ苔、而海苔類以充二食品一者、凡三四十種、隨二形色及所レ出地一立レ名、不レ能二悉記一

〔延喜式〕

〈八/祝詞〉

p.0877 祈年祭奧津藻菜(○○○○)、邊津藻菜(○○○○)〈爾〉至〈氐爾、◯中略〉稱辭竟奉〈牟、〉

〔萬葉集〕

〈三/雜歌〉

p.0877 石川少郞歌一首然之海人者(シカノアマハ)、軍布(メ/○○)苅鹽燒(ガリシホヤキ)、無暇(イトマナミ)、髮梳乃少櫛(クシゲノヲグシ)、取毛不見久爾(トリモミナクニ)、

〔倭訓栞〕

〈前編三十二/米〉

p.0877 め(○)〈◯中略〉　海布をいふは、もの轉語なるべし、又草木の芽の柔なるより出たるにや、萬葉集に軍布をよめり、軍布は昆布と意同じ、混渾通じ書るが如きにや、和布、荒布、搗布 など倭名抄に見え、建武年中行事にめの御汁ものといひ、又後拾遺集にめをつヽみてつかはしたりとみえたり、

〔藻鹽草〕

〈八/草〉

p.0878 藻いつもの花〈河上のいつもの花といへり、たヾのもをも云也、〉をきつ藻、河藻、玉藻、〈玉もかりしくとよめり、是につき異儀あり、或はもをかりくうと云説あり、それも玉も刈食とかけるによりて、かりはむと云り、又はしくといへば、もをかりしくなど心得たり、しかれども、これいづれもわろし、玉もをかりしとたヾ云也、く文字はたすけことば也と云々、〉なびき藻、すが藻、しき藻かる藻、〈あまの也〉たく藻、〈生と云り、又はあまのたくもとも云、〉つくも、〈老たる母のかみによす〉すく藻、〈是はもにあらず、むまうしの食物也、すくもたくなどもよめり、〉かる藻〈これゐのしヽのかぐ物也、まことのもにあらず歟、〉なつげ藻、〈莫告藻とかけり、しかれ共、これをなのりそ共よめり、〉藻くづ、みだれ藻、ながれ藻、玉藻かづく、ひじき藻、〈伊勢物語ひじきものには袖をしつヽもとよめり、海藻の中にひすきもと云物をば鹿尾菜、ひすきも、六味菜同、世俗にはひじきもと云これら也、しかればひじきもといふ物をやるとて、ひじきものには袖をしつヽもとそへたる也、しきものは、中にひじきものと云べき様なしと云々、〉河菜草〈異名也〉玉藻の花、をきの藻くづ、うぢ河に生る菅、〈万〉

昆布

〔本草和名〕

〈九/草〉

p.0878 昆布、乾苔〈性熱〉柔苔、〈性冷〉昆布一名綸布、〈出二兼名苑一〉和名比呂女(○○○)、一名衣比須女(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0878 昆布　本草云、昆布味醎寒無レ毒、生二東海一、〈和名比呂米、一名衣比須女、〉陶隱居注云、黄黒色柔細可レ食、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0878 按是物於二諸海藻中一最闊大、故云二比呂米一、産二蝦夷地一、故云二衣比須女一也、〈◯中略〉證類本草引作二柔靱一、證類本草又引二陳藏器一云、生二南海一、葉如レ手、乾紫赤色、大似二薄葦一、陶云、出二新羅一、黄黒色葉柔細、陶解二昆布一、乃是馬尾藻也、按陳氏所レ見陶注作二柔細一、故云乃是馬尾藻、若作二柔 一何以二陶所 言爲二馬尾藻一乎、源君所レ據、或與二陳氏一同、今不二徑改一、然其爲二柔 之誤一無レ容レ疑、宜下從二證類本一改正上、

〔下學集〕

〈下/草木〉

p.0878 昆布(コンブ)

〔尺素往 〕

p.0878 當日早晨之粥汁者、干蕨、大菽、同菜者炙和布、灸昆布、醤㼐、烏梅、并唐納豆之内兩三種、〈◯中略〉茶子者、〈◯中略〉結昆布、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

p.0879 藻モ〈◯中略〉　倭名抄に、〈◯中略〉昆布をヒロメとも、エビスメともいふ、〈（中略）ヒロメといふは、其濶きをいふなり、エビスメとは、蝦夷地方より出るをいふなり、俗に昆布を祝ひの物なりなどいふは、ヒロメの名に取りしなり、ヨロコブの義なりなどいふは、近俗に出し所なり、〉

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

p.0879 こぶ　昆布の音也、古名はひろめといへり、倭名抄に見えたり、古へ陸奧蝦夷貢獻して民部省に納む、索こぶ細こぶ廣こぶの名あり、庭訓に宇賀昆布見えたり、宇賀は箱館の外海の名也、今石附といふ、赤きを上品とす、島こぶと稱するものあり、海へちまの類にて、食ふべき物にあらず、

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

p.0879 昆布　鹹寒無レ毒、主二十二水腫癭瘤結氣瘻瘡一、生二東海一、凡海中菜皆療二癭瘤結氣一、青苔紫菜輩亦然、昆布主二陰 一、含レ之咽レ汁、〈海島人眼病不レ生、北人食レ之病皆生、〉水土不レ宜爾、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0879 昆布〈今俗訓如レ字、又訓二古布一、和名比呂米、一名衣比須女、〉集解、昆布生二於奧之松前及蝦夷海中一、形類二海帶一、廣四五寸、長數丈餘、或二三尺亦有、倚レ石生而浮二于水上一、如二浣布隨レ波漂揚一、其色黄黒、兩端薄帶二蒼色一、中厚黄色、海人采レ之晒乾、以貨二于四方一、其表出二白鹽一而如レ霜如レ粉、此亦兩片蒼黒色而薄、中黄赤色而厚、煮熟亦同色、但厚者倍二生乾一爾、古者陸奧蝦夷貢二獻之一、以納二民部省大膳寮一、有二索昆布細昆布廣昆布之名一、近代奧之仙臺南部津輕松前之守吏倶貢二獻之一、或自二松前一傳二送于前越敦賀一、自二敦賀一傳二送于若州一、若州小濱市人製レ之號二若狹昆布一、自二若狹一傳二送于京師一、京師市上製レ之號二京昆布一、其味最爲レ勝、松前若州不二相及一、故作二上品乾果一、凡昆布作二大饔嘉儀之贈一、祝二冠昏壽生之賀一、俗稱二古布一、以假二慶賀之和訓一、毎作二庖厨茶會之菜果一、或齋日取二煎汁一代二鰹魚汁一、僧家亦以二煎汁一調レ羹而添二甜味一、又作二果及油具一、大抵煮二昆布一不レ用二銅鑵一則色黒不レ美、用二銅鑵一則兩端純青中赤而佳、海藻及蕨狗脊之類亦若レ許矣、氣味、甘鹹微酸、滑寒無レ毒、主治、破二積堅一利二水腫一、消二瘰癧癭瘤瘻瘡一、附方口舌生レ瘡、〈用二好昆布一、燒黒爲レ末傅二瘡上一、〉痰結二小癭一、〈皮間累累者用二昆布一、細切洗淨待レ乾日日磨二腫上一、則小者消大者軟而愈、〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0880 昆布　綸布〈音關〉　〈綸青絲綬也、誤爲レ昆耳、〉　〈和名比呂米、一名衣比須女、◯中略〉按昆布生二東海一、蝦夷松前及奧州海底附二生於石一、蝦夷島有下號二龜田一之地上、凡三十餘里海中、寸地亦無レ不レ有レ之、其大者一株而成レ林、葉長二三丈謂二之長昆布一、大抵幅四五寸長二三尺、海人用レ鎌刈取レ之、挟レ腰乃滿二干身一、則使二繩挽一浮却、凡蝦夷松前之産、黄赤色而味甚美爲二最上一、津輕之産厚而味不レ美、但焙食或爲二油熬一即佳也、南部産稍黒而味亦劣矣、並傳二送之若狹一、同州小濱市人能調二製之一、以送二四方一、其製法以爲二家秘一、今京師亦能レ之、故京若狹共得レ名、

〔日本山海名産圖會〕

〈五〉

p.0880 昆布(こんふ)〈和名ヒロメ、一名海布(かいふ)、〉是は六月土用中にして、常に採ることなし、同じく蝦夷、松前、江刺、箱館などにも採れり、小舟に乘り鎌を持ち、水中に暫くありて昆布を抱、是につられて浮む、皆海底の石に生ひて、長さ三四尺より十間計のものあり、たま〳〵には石ともにあぐるもあれども、十日計にして根自ら離る、長きはよき程に切りて、蝦夷松前の海濱の砂上家の上、往來の道に至るまで、一日乾すこと、實に錐を立るの隙もなし、暮に納めて小家に積み、其上に筵を覆ふこと一夜にして、汐浮きたるを荒昆布と云、〈世俗に蝦夷の家は、昆布をもつて くと云は、此乾したるを見たるなるべし、家はすべて板庇し板圍ひなり、〉色赤きを上品として、僅かに其階級をわかてり、又八九月の比自然打あぐるを寄せ昆布と云、

〔蝦夷行記〕

p.0880 五月よりはまた昆布にかヽり、其場所々々へ船出せり、昆布は西海路にはなく、東海路箱館の外海より蝦夷地へかけて、四五十里の間昆布の場所あり、是を取事いと心安き業にて、海底より苅取、濱邊へしきならべて、干あぐるまでの事なり、此業六月中迄に仕廻て、七月よりは一同に休み、〈◯下略〉

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0880 交易雜物陸奧國〈（中略）昆布六百斤、索昆布六百斤、細昆布一千斤、◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0881 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉細昆布、〈以二一卷一充二廿口一〉索昆布二條、昆布〈以二一帖一充二廿口一〉仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉細昆布〈海菜料、以二一把一充二六口一、〉廣昆布〈海菜料、以二一帖一充二廿口一、◯中略〉　右一日供料依二前件一、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0881 年料陸奧國〈索昆布卅二斤、細昆布百廿斤、廣昆布卅斤、◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

〔執政所抄〕

〈上/正月〉

p.0881 十五日粥御節供事御菜二前〈◯中略〉　一折敷　瓜、昆布、 根、蕪、

〔年中定例記〕

p.0881 殿中從二正月一十二月迄、御對面御祝已下之事、一今朝〈◯九月九日〉より御粥まいる、又燒栗九、昆布九きれ、〈一寸四方〉いも、酒百日參候、

〔婚禮推 記〕

p.0881 昆布の事、中より折たる所を向〈江〉して一把宛竪に雌羽に重かけ積べし、雌羽とは右より左へ積事也、如レ此重候へば、上座へ披露の時に、貴人の右の方、上へ成によりて雌羽と云なり、　師傳に、上は五十把、中は卅把、下に十把也、十把以下は、紙に一把宛包、積たる事も有、

〔南留別志〕

〈二〉

p.0881 一いはひの時、昆布の切様に、ひきまたといふ事あり、かへるのまたに象るといふは心得がたし、匹またなるべし、二端の布をひとつにつらねて、兩のはしよりまきて、おきたる形なり、夫婦をいはふなるべし、

〔續日本紀〕

〈七/元正〉

p.0881 靈龜元年十月丁丑、蝦夷須賀君古麻比留等言、先祖以來貢二獻昆布一、常採二此地一、年時不レ闕、今國府郭下、相去道遠、往還累レ旬、甚多二辛苦一、請於二閉村一便建二郡家一、同二百姓一共率二親族一、永不レ闕レ貢、並許レ之、

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0881 供養東大寺盧舍那大佛記文 貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人料、〈◯中略〉昆布二卷、

〔權中納言定頼卿集〕

p.0882 あまうへの御もとより、ひろめ(○○○)といふ物たてまつり給けり、つヽみがみにかきつけて、をきたまひける、〈◯歌闕〉

〔庭訓往 〕

p.0882 被二仰下一之旨、畏拜見仕候畢、〈◯中略〉宇賀昆布(○○○○)、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0882 出羽　昆布

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

p.0882 昆布　出羽國松前宇賀出者、其状細薄、其色黄赤、其味甘而帶二微酸一、又若狹召昆布(○○○)爲レ宜、倭俗高貴之所レ食、是謂二召上一、其味美而堪二高貴之所 食、故謂二召(メシ)昆布一、今悉在二京極西竹屋町一、

〔寛政四年武鑑〕

p.0882 松平豐後守齊宣〈◯薩摩鹿兒島〉　時獻上〈二月〉昆布　宗對馬守義功〈◯對島府中〉　時獻上〈二月〉昆布松前志摩守道廣〈◯蝦夷松前〉　時獻上昆布

〔採藥使記〕

〈上/奧州〉

p.0882 照任曰、奧州田奈富松津川ニ昆布ヲ産ス、大キナルモノ三五丈、幅ハ三四尺アリ、土人屋ヲ葺テ暑雨ヲ除ク、

〔見た京物語〕

p.0882 昆布をみづから(○○○○)と呼びて、ことの外に用ゆ、芝居にても饅頭や水辛(みづから)と賣る、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0882 昆布〈◯中略〉　元升〈◯向井〉曰、洛下ニ一人昆布ヲ生ニテ過食シタル者アリ、夜ニ入テ此ノ昆布ウルホヒフクレテ、胸腹脹痛ス、甚シキ時ハ、胸中ニセメ上リ悶絶セントス、半時ガホド身ヲ休ルコトアタハズ、薑湯ニテ錦袋子ヲ多ク用テ嘔吐ス、吐タルモノハ皆昆布ニテ、痰ト倶ニ出タリ、吐ツクシテ則安眠セリ、昆布生ニテ多食スベカラズ、

海帶

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0882 海帶(○○)　ホソメ〈南部〉　ミヅメ〈仙臺〉　ミヅワカメ〈生〉　ボンメ〈共同上、乾、〉　一名多士麻〈村家方〉 奧州ニ産ス、濶サ六七分、或ハ一寸許、厚シテ昆布ノ如ク味モ似タリ、賤民ノ食ナリ、貯置ケバ白キ粉ヲ生ズ、水ニ入ルレバ青黄色、煙火ノ筒ヲ卷クニ用テ甚ツヨシト云、此條ヲアラメト訓ズルハ非ナリ、アラメハ黒菜ナリ、

和布

〔本草和名〕

〈九/草〉

p.0883 海藻、一名落首、一名藫、〈仁諝音徒含反、〉石帆〈楊玄操音凡〉水松、〈状如レ松〉 一名海藻、一名海羅、〈已上三名出二爾雅一〉海藻一名 、〈出二雜要決一〉一名青韮、〈出二兼名苑一〉一名海髮、〈状如二亂髮一也、藻亦作二 字一、〉麋茸、〈似二水松一〉紫菜、〈状似二紫帛一〉一名神仙菜、藻菜〈似レ莎而大、已上五名出二崔禹一〉石帆、一名石連理、〈出二兼名苑一〉和名之末毛(○○○)、一名爾岐女(○○○)、一名於古(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0883 海藻　本草云、海藻味苦醎寒無レ毒、〈和名邇木米(○○○)、俗用二和布字一、〉

〔古名録〕

〈二十七/海藻〉

p.0883 今案、古書ワカメニ海藻ノ字ヲ誤リ用ヒ來レリ、海藻ハホタハラニシテ裙帶菜(ワカメ)ニ非ズ、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

p.0883 藻モ〈◯中略〉　倭名抄に〈◯中略〉海藻をニギメといふ、俗用二和布字一、本朝令に滑海藻をアラメといひ俗用二荒布字一、〈（中略）ニギといひアラといふは、古語に荒妙和妙など云ひし如くに、其皺文の粗細をもて分ち呼びしなり、ニギメをば、又ワカメといひて、万葉集には、和海藻、稚海藻の字を用ひたり、〉

〔古事記傳〕

〈十四〉

p.0883 和名抄には爾木米(ニギメ)と阿良米(アラメ)とを出して、別に和加米と云をば出さず、又名も和加米(ワカメ)に爾岐米(ニギメ)とは、一の如く思はるれども、延喜式に、海藻(ニギメ)、稚海藻(ワカメ)、滑海藻(アラメ)、又和布(ワカメ)、海藻(ニギメ)、荒布(アラメ)と、三を並べて擧たる所々あれば別なり、かくて式の和布は〈海藻(ニギメ)と分てれば〉和加米(ワカメ)なるに、和名抄には、海藻(ニギメ)を俗に和布と書よしあるを以思へば、總ては爾岐米(ニギメ)と云を、其中にて細に柔なるを分て、別に和加米(ワカメ)とも云へるにや、〈◯中略〉海藻は米(メ)の總名なるに、此字を又爾岐米(ニギメ)に用たるを思へば、種々の米(メ)の中に爾岐米(ニギメ)を主とするにや、〈◯下略〉

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

p.0883 海帶(ワカメ)　催レ生下レ水、療二婦人風一、比二海藻一更麁、柔 而長、乾レ之以束二器物一、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0883 裙帶菜(クンタイサイ/ワカメ)〈◯中略〉　元升〈◯向井〉曰、〈◯中略〉余西國海邊ニ住スルコト年久シ、毎春和 布ヲ食セリ、海中石間ニ生ズ、其ヒロサ二三寸或三四寸、長サハ五六寸或ハ尺ニアマリ、二尺ニ及ブモアリ、其色初メテ取タルトキ青シ、是ヲ煮レバ、イヨ〳〵青鮮也、サラシテ其ノ色黄黒也、生ニテモ煮テモ食スベシ、柔滑ニシテ味美也、勢州ヨリ出ル和布ハ柔滑ナラズ、味モ亦西國ノモノスグレタリ、壹州ノ和布最ヨシ、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0884 和布〈訓二和加女一〉釋名、海藻、〈源順和名邇木米、俗用二和布一、必大（平野）按、本朝式有二和布海藻一而難レ分、暫從二于通俗一、或曰和布者蓴也、未レ詳、〉集解、状似二昆布之葉端一而細薄柔靱、長不レ過二一二尺一、色青、其根如二荒布根一而蒼黒剛堅、可レ造二剪刀靱及器一、附レ石而生、其葉浮二于水上一、味美而甘鹹不レ減二昆布一、以爲二上饌一、本朝式大膳寮載レ之、一種有二極細如レ紐者一、産二干伊勢海濱一、此和布初者尋常和布、浦人細割成二絲様一、故稱二伊勢和布一、最美味世以賞レ之、兩種倶生乾同可レ食レ之、南海諸州哂乾貨二于四方一、西海北海諸州亦所在有レ之、又海上有二青佐、青昆布等物一、皆不レ足レ食、若當レ之則身腫痒痛也、氣味、甘鹹平無レ毒、主治、利レ水解二酒毒一、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0884 裙蔕菜(ワカメ)　食物本草載レ之、和名抄曰、ニギメ、處々海中ニ多シ、二月ニトル、伊勢ノ海ニ産スルヲ好トス、又紀州ノ賀多ニ産スルハ、脆クシテ味ヨシ珍賞ス、爲レ茹而食ス、煮爲レ羹亦可也、生ナルヲモ食ス、又莖ヲモ食フ、莖ハコトニ甘滑ナリ、莖ノ傍ニツキテ厚ク、耳ノ如ナルヲメミヽト云、莖モメミヽモ羹トシ、又鹽醤ニツケテ食ス、性寒味甘シ、有二虫積一患二腹痛一人不レ可レ食、或曰、本草二十八卷ニ、所レ載ノ石蓴是ナルベシト云、生薑ト醋ニ和シテ食ヘバ無二腹痛之患一、ワカメヲ食テ腹痛スル者モ亦可レ食レ之、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0884 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉海藻一百卅斤、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0884 交易雜物 長門國〈（中略）海藻一百五十斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0885 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁〈◯中略〉海藻、海松各卌三斤、〈但隱岐國卅三斤五兩〉凡中男一人輸作物〈◯中略〉鹿角菜、大凝菜、海藻各六斤、〈相模國一斤十一兩〉

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0885 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉海藻二兩、〈◯中略〉稚海藻三兩、〈◯中略〉滑海藻二兩二分、正月修二眞言法一料、〈◯中略〉滑海藻和布各五十五斤、試二海印三昧寺年分度者一料、〈◯中略〉和布五斤、〈三斤僧供料、二斤使料、〉海藻二斤、〈僧供料〉荒布一束、〈使料〉安祥寺試二年分度者一、證師六人菜料、〈◯中略〉和布三連、鹽三升、使料、〈◯中略〉和布二連、仁王經齋會供養料　僧一口別、〈◯中略〉海藻二兩四銖、〈海菜料一兩二分、生菜料二分四銖、◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0885 供御月料海藻廿二斤八兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、年料參河國、〈稚海藻一擔四籠、籠様一尺二寸、廣八寸、深四寸、他皆同レ此、〉遠江國、〈稚海藻〉下總國、〈稚海藻六籠◯中略〉若狹國〈（中略）稚海藻二籠十二斤◯中略〉越前國〈穉海藻二擔十籠、籠別一斗、又二捧別一斗、◯中略〉能登國、〈穉海藻一輿六籠〉越中國、〈穉海藻一輿五籠◯中略〉佐渡國、〈穉海藻一擔十二籠◯中略〉但馬國、〈穉海藻四擔十六籠◯中略〉因幡國、〈穉海藻十二籠◯中略〉伯耆國、〈穉海藻一擔十籠◯中略〉長門國、〈穉海藻一百四籠◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

〔萬葉集〕

〈十四/東歌〉

p.0885 相聞比多我多能(ヒタガタノ)、伊蘇乃(イソノ)和可米(ワカメ/○○○)乃(ノ)、多知美多要(タチミタエ)、和乎可麻都那毛(ワヲカマツナモ)、伎曾毛己余必母(キソモコヨヒモ)、

〔萬葉集〕

〈十六/有由縁并雜歌〉

p.0885 角島之(ツヌシマノ)、迫門乃(セトノ)稚海藻(ワカメ/○○○)者(ハ)、人之共(ヒトノムタ)、荒有之可杼(アラカリシカド)、吾共者和海藻(ワガムタハニギメ)、

〔類聚三代格〕

〈一〉

p.0885 太政官符 定二准レ犯科レ祓例一事一大祓料物廿八種〈◯中略〉　海藻六斤　滑海藻六斤　一上祓料物廿六種〈◯中略〉　海藻三斤　滑海藻三斤　一中祓料物廿二種〈◯中略〉　海藻一斤　滑海藻一斤　一下祓料物廿二種〈◯中略〉　海藻六兩　滑海藻六兩　　延暦廿年五月十四日

〔三代實録〕

〈四/清和〉

p.0886 貞觀二年五月十一日庚申、天皇及皇太夫人、以二米六百斛、〈◯中略〉海藻三萬三千三百三十斤、新錢一十二萬五十文一施二僧尼優婆塞優婆夷及隱居飢窮之輩二萬九千六百七十四人一、以助レ修二淳和太后齋會一也、

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0886 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉海藻六帖、〈◯中略〉　法用千僧供一人料、〈◯中略〉海藻一連、

〔三代實録〕

〈十八/清和〉

p.0886 貞觀十二年一二月廿五日壬寅、制〈◯中略〉諸國工匠役夫、米鹽之外加二給醴魚和布等一、

〔三代實録〕

〈四十九/光孝〉

p.0886 仁和二年六月七日乙卯、勅唐僧湛 供料、日白米三升二合、〈◯中略〉海藻二兩、滑海藻二兩、節料白米十斛、毎年五月十二日、以二近江國正税一充之、

〔和泉式部集續集〕

〈下〉

p.0886 春の初比、和布と云ふ物を、梅花につけて、人のおこせたるに、花みればこのめも春になりにけり耳のまもなし鶯のこゑ

〔朝野群載〕

〈七/攝籙家〉

p.0886 御齋會加供解文左大臣家　奉送　八省御齋會加供事合〈◯中略〉　精進物　青苔曳干　和布曳干　海松　昆布〈◯中略〉右奉レ送如レ件 大治二年正月日　　　　　案主肥後掾中原盛尚

〔古今著聞集〕

〈八/好色〉

p.0887 藏人しのびやかに、此女房參り侍よし奏し申ければ、うれしく思しめされて、やがてめされにけり、〈◯中略〉彼少將は隱去なりけるを、あらぬかたにつけてめし出されて、よろづに御情をかけられて、近習の人數にくはへられなどして、程なく中將になされにけり、つヽむとすれど、をのづから世にもれ聞へて、人の口のさがなさは、其比のことわざには、なるとの中將とぞ申ける、なるとのわかめとて、よきめののぼる所なれば、かヽる異名を付たりけるとかや、

〔八幡宮本紀〕

〈三〉

p.0887 長門國豐浦郡住吉に坐荒御魂神社、〈◯中略〉十二月晦日の夜は、稚海藻刈(メカリ)とて、神秘の神事あり、これは晦日の夜半ばかりに、此御社の下神人、豐前國波夜止毛の沖に出る、はやともよりも又神人出向ふ、此時潮はるかに退て、雙方の神人遙々海底にいたるゆゑ、互に松明の光も見え、 も聞ゆる程にて、ともに稚海藻をかり取、〈◯註略〉これを元日の朝御供にそなふ、〈波夜止毛にても同事となり、此禮今にたえず、いにしへは其刈取たる稚海藻を、禁裏にも獻ぜしとかや、〉

〔延喜式〕

〈四十二/東西市〉

p.0887 海藻 〈◯中略〉　右五十一 東市　海藻 〈◯中略〉　右卅三 西市

〔新猿樂記〕

p.0887 四郞君、受領郞等刺史執鞭之圖也、〈◯中略〉宅常擔二集諸國土産一、貯甚豐也、所レ謂〈◯中略〉丹後和布、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0887 伊勢　國崎若和布　同和布耳　志摩　和布　三河　稚海藻(チカイサウ)　若狹　若和布　出雲　加々浦若和布　紀伊　賀太浦賀太和布　阿波　鳴門和布　肥前　若和布

〔寛政四年武鑑〕

p.0887 松平下總守忠功〈◯伊勢桑名〉　時獻上〈三月〉洗水和布松平主計頭忠馮〈◯肥前島原〉　時獻上〈三月〉若和布　稻垣攝津守長以〈◯志摩鳥羽〉　時獻上〈四月〉洗わかめ

〔雲錦隨筆〕

〈二〉

p.0887 阿波鳴戸といふは、阿波國板東郡の端と、淡路國三原郡瓮崎〈鳴戸崎トモ〉と、雙相迫りて海を夾む、〈◯中略〉因云、和布は當地の名産にして鳴門和布といふ、是を採て灰に糢し干乾を、灰干の和 布と號す、幾許の年を重ぬ共濕ることなく、用ゆる時は熱湯をかくれば、忽ち和かになり、色よく味かはらず美也、福良の浦人多く製して名物とす、

〔狗猧集〕

〈一/春〉

p.0888 若和布汁の子もうみ出てよきわかめかな　　　　　貞徳かづきするあまの姿も若めかな　　　　　　重勝

海藻根

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0888 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者〈◯中略〉海藻根八斗、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0888 交易雜物伊勢國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　參河國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　遠江國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　出雲國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　石見國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　阿波國〈（中略）海藻根◯中略〉　伊豫國〈（中略）海藻根十斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0888 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁〈◯中略〉紫菜、海藻根各十六斤、凡中男一人輸作物、〈◯中略〉海藻根(マナガエ)四斤、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0888 仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉海藻根一兩三分、〈◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0888 年料伯耆國〈（中略）海藻根一擔十籠◯中略〉右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

烏頭布

〔庭訓往 〕

p.0888 被二仰下一之旨、畏拜見仕候畢、〈◯中略〉醍醐烏頭布、

〔庭訓往 諸抄大成〕

p.0888 烏頭布　黒和布(○○○)なり

〔庭訓往 諸抄大成扶翼〕

p.0888 貞〈◯伊勢貞丈〉云、十月の状にも、昆布、烏頭布、荒布と見えたり、然れば烏頭布は海草なり、醍醐は山にて海なければ、海草の生ずべき理なし、然れども烏頭布を他所より求 めて、食料に調味して出すを名物とするなるべし、西山にて心太を製し出すと同義なるべし、

荒布

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0889 滑海藻〈未附〉　本朝令云、滑海藻、〈阿良女(○○○)用二荒布一〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0889 按本草圖經云、東海又有二一種海帶一、似二海藻一而麁且長、登州人取乾レ之、柔 可三以繫二束物一醫家用下レ水、速二於海藻昆布之類一、是可三以充二阿良米一、

〔庭訓往 〕

p.0889 御札之旨、大齋之體、心事難二申盡一候、〈◯中略〉菜者、〈◯中略〉荒布、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0889 荒布〈訓二阿羅女一〉集解、荒布處處海濱多采レ之、附レ石而生、状似二昆布一細狹而厚、色深黒如二墨凝滑一、有二縱皺文一、粗柔靱而長、長者不レ過二四五尺許一、有二根株一而扁圓、或圓長或蟠屈亦有、其皮上黒有二細皺一、中黄黒色、俗稱二荒布木一而剛堅、然不レ可レ食レ之、好事之人造レ器耳、荒布葉不レ宜二生食一、采レ之曝乾煮熟可レ食、古者伊勢志摩紀伊等州貢二獻于大膳寮一、今時海南海西諸州及海東亦所在有レ之、〈◯中略〉氣味、甘鹹寒滑無レ毒、主治、婦人諸病、及血證能利レ水、消二癭瘤痰腫一、

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0889 荒布荒布海帶也、崔禹錫曰、出二東海水中石上一、似二海藻一而粗柔靱而長、今登州人乾レ之以束二器物一、然則荒布之類乎、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0889 海帶(アラメ)〈◯中略〉　今按海帶ハ海中ノ石ニ附テ生ズ、黒クシテタテ皺アリ、性冷利ナリ、虚人食スレバ泄利ス、袪二 血一消二腫毒一治二痔疾一、壯實人食レ之無レ害、虚冷人勿レ食、煮ルニ醋ヲ加フレバヨクニユル、アラメヲ煮テ雨水ヲソヽゲバ大蛀トナル、〈◯中略〉俗ニ是ヲ竿頭ニ多ツケテ、火ヲケス帚トス、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0889 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉滑海藻二百六十斤、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0889 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁〈◯中略〉滑海藻八十六斤十兩、 凡中男一人輸作物、〈◯中略〉滑海藻十二斤、伊勢國〈◯中略〉　中男作物、〈◯中略〉滑海藻、　志摩國〈◯中略〉　調〈◯中略〉滑海藻、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0890 試二海印三昧寺年分度者一料、〈◯中略〉荒布一束〈使料〉安祥寺試二年分度者一、〈◯中略〉使料、〈◯中略〉荒布一束、仁王經齋會供養料　僧一口別、〈◯中略〉滑海藻二兩、〈好物料◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0890 供御月料滑海藻十三斤八兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、

〔土左日記〕

p.0890 元日〈◯承平五年正月〉なほおなじとまりなり、〈◯中略〉芋もあらめ(○○○)もはがためもなし、かうやうの物なきくになり、もとめもおかず、

〔平家物語〕

〈三〉

p.0890 有王しまくだりの事磯のかたより、かげろうなんどのごとくに、やせおとろへたるもの、よろぼひ出 たり、〈◯中略〉かた手にはあらめ(○○○)をもち、かた手にうほをもろうてもち、あゆむやうにはしけれども、はかも行ずよろよろとしてぞ出 る、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0890 伊勢　荒和布　紀伊　三穗荒和布

搗布/相良布

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0890 滑海藻〈未附〉　本朝令云、〈◯中略〉末滑海藻(○○○○)、〈加知女(○○○)、俗用二搗布一、搗者搗末之義也、〉

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0890 荒布〈◯中略〉搗布似二荒布一而細狹、有二細皺文一、粗 味不レ佳、不レ足レ爲二上饌一耳、和布〈◯中略〉佐加良布(○○○○)〈傳稱本出二於遠州相良之海濱一、故以二其地名一而冠レ之、状似二和布一而粗 稍廣、晒乾則葉卷不レ伸、味亦略似二和布一而劣、世俗所レ謂此亦能解二酒毒一、〉

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0890 カチメ　又サガラメト云、海蔕ニ似テ細ク狹シ、皺アリ、ホシタルヲキザミテ羹ニ 加レバネバル、賤民ノ食也、又此物竿頭ニ多クツケテ、火災ヲケスニ用ユ、火ニモエズシテヨシ、アラメニ同ジ、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0891 凡調、〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉末滑海藻一石、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈後集四十〉

p.0891 寫經司解　申錢用事合所請錢貳仟文〈盡〉買物合十六種〈◯中略〉　末滑海藻四升　直錢七文〈◯中略〉以前錢盡状并買物、顯注如レ前、以解、天平十一年八月十一日　史生高屋連赤麻呂〈◯以下署名略〉

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0891 遠江　同〈◯掛川〉搗和布(カヂメ)

〔寛政四年武鑑〕

p.0891 太田備中守資愛〈◯遠江懸川〉　時獻上〈三月〉相良和布

莫鳴菜

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0891 莫鳴菜　本朝式云、莫鳴菜、〈奈々里曾(○○○○)、漢語抄云、神馬藻(○○○)三字云二奈乃里曾(○○○○)一、今案本文未レ詳、但神馬莫レ騎之義也、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0891 按民部省式作二那乃利曾一、大膳式作二名乘曾一、無レ有下作二莫鳴菜一者上、此所レ引或是弘仁貞觀式文、〈◯中略〉萬葉集作二莫告藻一、蓋本義也、用二神馬藻字一、神馬莫レ騎之義訓耳、源重之歌云、千速振、出石乃宮乃、神乃駒、努莫騎曾也、祟毛曾須留、是其義、用二莫鳴一者以二一 之轉一假借也、按陶注二海藻一云、生二海島上一、黒色如二亂髮一而太小許葉、大都似二藻葉一、詳二其形状一、是可三以充二奈能利曾一、

〔下學集〕

〈下/草木〉

p.0891 神馬草(ジンバサウ/○○○)〈神功皇后攻二異國一時、船中無二馬秣一、取二海中之藻一飼レ馬故云二神馬草一也、〉

〔庭訓往 〕

p.0891 御札之旨、大齋之體、心事難二申盡一候、〈◯中略〉酢菜者、〈◯中略〉神馬藻曳干、

〔塵袋〕

〈三〉

p.0891 一神馬草ト云フモノヲナノリソト云フ心如何万葉集等ニハ名ノリスルニ、ヨソヘテ歌ニモヨメリ、但本朝式ニハ莫鳴菜ト書テ、ナヽリソトヨメリ、食スル時ハラ〳〵トナルガ六借ケレバ、ナヽリソト制スル心也、ナトノトハ通音ナレバ、ナ ナリソヲ今ハナノリソト云ヒナシタル也、順ガ和名ニハ神馬莫レ騎之義也ト云ヘリ、恐アレバ神馬ヲバ人用ニアツルコトナケレバ、ナノリソト云フ心ニテ、神馬草トハカキナセリ、

〔倭訓栞〕

〈前編二十八/保〉

p.0892 ほだわら(○○○○)　海藻なり、穗俵の義、魚の脬(ミツブクロ)の如き物の多くつくをもて名く、古へのなのりそもなりといへり、春盤に用るは穗俵を祝するなり、下品のものをかじもといふとぞ、

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

p.0892 海藻(ホダハラ)　苦寒鹹、主二癭瘤氣頸下核一、破二散結氣壅腫癥瘕堅氣腹中上下鳴一、下二十二水腫一、療二皮間積聚暴 留氣結熱一利二小便一、反二甘草一、治二石淋一、黒如二亂髮一、大小都似二藻葉一、生二淺水一浸去レ鹹、主二宿食不レ消、五膈痰壅、脚氣賁 氣一、治三頷下瘰癧如二梅李一、宜二速消 之、海藻酒潰數日稍々飮レ之、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0892 海藻〈今訓二保牟多和羅一〉集解、海中之藻生二于石上一、状似レ蓴、莖色青微長、一二尺有レ節有レ椏、椏上有二細尖小葉一而卷縮不レ伸、葉間有二小泡子一似レ花而不レ開、似レ實而圓空、味甘鹹而粘滑、或稱二保多和良一、或作二穗俵(ホタワラ)一、又作二本俵(ホンタワラ)一、俵字韻書有二俵散之義一、無二裹藏之義一、而未レ詳レ所レ據、本邦自レ古綴二稻草一收二米籾一、呼號二俵子一、一俵有二三斗五升四斗五升之分一者也、今海藻用二俵字一者、祝二米俵多積之義一、以供二年始之賀膳一、爲二蓬萊盤之具一也、本朝式有二海藻根一、訓二麻奈加志一、參河、伊勢、紀伊、志摩、阿波、伊豫、長門、出雲等州貢二獻之一、疑是今之保多和良乎、或曰、保多和良者、那乃利曾也、本朝式亦有二那乃利曾一、而伊勢、紀伊、播摩、伊豫等州、貢二獻于民部省一、又曰、莫鳴(ナヽリ)菜、源順曰、奈奈利曾、漢語抄曰、神馬藻三字云二奈乃利曾一、今按但神馬莫レ騎之義也、此説未レ詳、保多和良之名古亦有レ之、近時略供二菜膳一稍佳、處處海濱多有、十二月海國多運二轉于都市一而販レ之、爲二年初之用一、此時多賖レ之以蓄用、或醫家與二昆布一同入二散腫消痰之劑一耳、氣味甘鹹滑寒無レ毒、主治、利レ水洩レ熱、消二癭瘤結 陰 之堅一、

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0892 海藻海薀海藻者海中之藻、細黒色略似二水藻一、故爲二本邦之本俵一、予〈◯平野必大〉往年聞二之華僧一、亦指二本俵一爲二海藻一也、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0893 海藻(うみのも)　 〈音單〉　落首　海蘿　大葉藻本綱、海藻乃生二海島一之藻也、黒色如二亂髮一、而太少許、葉大都似二藻葉一也、有二二種一、生二淺水中一如二短馬尾一、細黒色者馬尾藻(○○○)也、生二深海中一葉如二水藻一、而大者大葉藻(○○○)也、海人以レ繩繫レ腰沒レ水取レ之、海藻〈苦鹹寒〉　氣味厚純陰而沈也、〈反二甘艸一〉治二癭瘤馬刀(コブルイレキ)諸瘡堅而不レ潰者一、利二小便一下二水腫一、治二五膈痰壅一、〈東垣散腫潰腫湯海藻甘草兩用レ之、蓋以堅積之病、非三平和之藥所二能取 捷、必令三反奪以成二其功一也、〉

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0893 海藻海中藻類ノ總名ナリ、馬尾藻大葉藻ノ兩種アリ、藥ニ入ルヽニハ、馬尾藻ヲ上トス、故ニ方書ニ海藻ト云フハ、馬尾藻ヲ用ユベシ、馬尾藻ナノリソ、〈萬葉集〉ナヽリソ、〈和名抄〉ジンメサウ、ジンバサウ、〈雲州〉タワラ、〈同上〉ギンバサウ、〈備後〉ギバサ、〈同上〉キバサ、〈佐州〉ホンタラ、〈同上〉ホダワラ、〈京〉ホンダワラ、〈同上〉タワラモ、〈勢州〉一名馬尾藻、〈外臺秘要〉海中ニ生ズ、長サ三四尺、莖細ク枝多クシテ細小葉互生ス、一分餘ノ圓實ツケリ中空シ、コレヲツブセハ アリ、筑前ニテ小兒コレヲシラミツブシト云フ、莖葉生ナル時ハ黒色ナリ、湯ニ入ルレバ緑色トナル、正月春盤ニコレヲ用ユ、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0893 交易雜物伊勢國〈（中略）那乃利曾五十斤◯中略〉　參河國〈（中略）那乃利曾五十斤◯中略〉　播磨國〈（中略）那乃利曾卅斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）那乃利曾五十斤◯中略〉伊豫國〈（中略）那乃利曾五十斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0893 同月〈◯正月〉修二太元帥法一料〈◯中略〉於期、名乘曾、鳥坂苔、若海藻根各廿四斤、

〔日本書紀〕

〈十三/允恭〉

p.0893 十一年三月丙午、幸二於茅渟宮一、衣通郞姫歌之曰、等虚辭陪邇(トコシヘニ)、枳彌母阿閉椰毛(キミモアヘヤモ)、異舍儺等利(イサナトリ)、宇彌能波摩毛能(ウミノハマモノ)、余留等枳等枳弘(ヨルトキトキヲ)、時天皇謂二衣通郞姫一曰、是歌不レ可レ聆二他人一、皇后聞必大恨、故時人號二濱藻一、謂二奈能利曾毛一也、

〔萬葉集〕

〈三/雜歌〉

p.0894 山部宿禰赤人歌六首〈◯五首略〉美沙居(ミサゴヰル)、石轉爾生(イソワニオフル)、名乘藻乃(ナノリソノ)、名者告志五餘(ナハノラシテヨ)、親者知友(オヤハシルトモ)、

〔萬葉集〕

〈七/旋頭歌〉

p.0894 梓弓(アヅサユミ)、引津邊在(ヒキツノベナル)、莫謂花(ナノリソノハナ)、及採(ツムマデニ)、不相有目八方(アハザラメヤモ)、勿謂花(ナノリソノハナ)海底(ワタノソコ)、奧玉藻之(オキツタマモノ)、名乘曾花(ナノリソノハナ)、妹與吾(イモトワレト)、此荷有跡(コヽニシアリト)、莫語之花(ナノリソノハナ)、　　右二十三首、〈◯二十一首略〉柿本朝臣人麿之歌集出、

〔催馬樂〕

p.0894 律　伊勢海〈一段、拍子十、無二空拍子一、〉いせのうみの、いせのうみの、きよきなぎさの、しほがひに、なのりそやつまん、かひやひろはん、玉やひろはん、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0894 和泉　石津神馬藻

〔攝陽群談〕

〈十六/名物土産〉

p.0894 住吉神馬艸　同郡〈◯東成〉住吉浦ニアリ、年始ノ飾、世云穗俵ハ、是神馬艸ヲ設ケ所レ造レ之也、

〔日次紀事〕

〈正月〉

p.0894 蓬萊臺〈倭俗新年三寶臺置二海老熨斗昆布榧橙穗俵等一、先供二賀客一祝二新年一、是謂二蓬萊臺一、〉

〔食物和歌本草〕

〈一〉

p.0894 海藻(ホンダハラ)神馬草は結氣を散ず女子癥瘕上下に鳴かたく痛に　神馬草は疝氣やむには常にくへ又大きんのくすり也けり　神馬草は石淋に吉又水腫皮の間のかたまりを治す　神馬草は脚氣腎積藥也宿食を去膈をよく去

鹿尾菜

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0894 鹿尾菜　辨色立成云、六味菜、〈比須木毛(○○○○)〉楊氏漢語抄云、鹿尾菜、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0894 比須歧毛、或云比之歧毛、見二伊勢物語一、今俗省呼二比自歧一、按閩書云、羊栖菜(○○○)生二海石上一、長四五寸、微黒色、出二漳浦一、是可二以充 之、

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

p.0894 藻モ〈◯中略〉　倭名抄に、〈◯中略〉辨色立成の六味菜、漢語抄の鹿尾菜、并にヒスキモといふ、義 不レ詳、ヒジキモといふは、其語の轉ぜしなり、〈鹿尾とは鹿角に對し云ふなるべし、六味は鹿尾の音を訛れるにや、〉

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0895 海藻(カイサウ/ヒジキ)〈◯中略〉　元升〈◯向井〉曰、〈◯中略〉西國海邊ニ此ヒジキモヲ取テヨク煮テ、日ニ晒乾シテヨクカレタルヲツキクダキ、米粒ノゴトクナシテ、米ト同ジク飯ニカシギテ飢荒ヲスクフ、貧家ハ常ノ食ニモ用フ、米飯ハ白ク、海藻ハ黒シ、ムラ〳〵白飯ミエタルヲ、タハフレテ燒野ノ雪ノムラキエト云、米飯ヲ下ニモリ、海藻飯ヲ上ニモリタルヲバ、ヌリガサキタルト云、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0895 鹿尾菜〈訓二比須木毛一、今稱二比之木一也、〉釋名、六味菜、〈源順載二辨色立成一而證レ之、必大（平野）按、名義未レ詳、鹿無レ尾有二短黒毛一、而似二此藻一故名レ之乎、〉集解、海濱石上生而長二三寸如二鼠尾之短一、根圓末細尖色蒼黒、晒乾變作二純黒色一味甘脆、俗謂能收レ血、未レ試レ之、今用二乾者一貨二于四方一、伊勢、志摩、尾張、參河等州多有、此是古在業平之所レ詠也、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0895 鹿尾菜〈◯中略〉　海中石ニ附テ生ズ、圓ニシテ末尖ル、乾セバ黒色ナリ、煮テ食ス、貧民米ニマジエテ飯トシ粮ヲ助ク、

〔伊勢物語〕

〈上〉

p.0895 昔男ありけり、けさうしける女の許に、ひじきも(○○○○)と云物をやるとて、思ひあらばむぐらの宿にねもしなんひしき物には袖をしつヽも、二條の后の、まだみかどにもつかうまつり給はで、たヾ人にておはしけるときのことなり、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0895 伊勢　鹿尾藻　紀伊　鹿尾藻　阿波　鹿尾藻

〔寛政四年武鑑〕

p.0895 本多伊豫守忠京〈◯伊勢神戸〉　時獻上〈四月〉鹿尾菜　宗對馬守義功〈◯對馬府中〉　時獻上〈暑中〉長鹿尾藻松平備前守正升〈◯上總大田喜〉　時獻上〈八月〉鹿尾菜　松平主計頭忠馮〈◯肥前島原〉　時獻上〈九月〉鹿尾菜松浦壹岐守清〈◯肥前平戸〉　時獻上〈御暇年旅中より〉長鹿尾藻

水雲

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0895 水雲　漢語抄云、水雲、〈毛豆久(○○○)、今按所レ出未レ詳、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0896 按本草拾遺云、海蘊(○○)生二大海中一、細葉如二馬尾一、似二海藻一而短也、李時珍曰、 亂絲也、其葉似レ之、故名、

〔異制庭訓往 〕

p.0896 酒肴等餘無沙汰無レ極候、何様尾籠之至可レ候乎、荒々所二尋出一者、〈◯中略〉海雲(○○)等海藻折櫃百合、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0896 海藻〈◯中略〉海雲〈今訓二毛豆久一、（中略）必大（平野）按、或作二海蘊一倶未レ詳、然以二形之相似一暫隨レ之、其状如二亂絲一有レ椏、青黒色而滑、長數尺浮二于水上一如レ流、味柔脆、生食煮亦佳、一種極細如二亂髮一而青黒色、阿波鳴戸灘最多、故俗稱二鳴戸海雲一、海西處處儘有、安房二總之海濱多有、一種肥大如二水松之大一而長有レ椏、蒼黒色、泉州海上多有、故俗稱二和泉太海雲一、此亦肥長可レ愛、然不レ及二鳴戸之細一、或曰鳴戸海雲者、保多和羅之花也、不レ住二海國一、故未レ知二眞僞一矣、〉

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0896 海藻海蘊海蘊、蘊亂絲也、其葉似レ之、今爲二水雲一、然水雲無レ葉則難レ名、本邦稱二海雲一與二水雲一同、

〔和漢三才圖會〕

〈九十六/藻〉

p.0896 海蘊　水雲〈倭名抄〉　〈和名毛豆久、俗用二海雲二字一、〉本綱、 亂絲也、其葉似レ之、故名二海蘊一、〈鹹寒〉治三癭瘤結氣在二 間一能下レ水、按海蘊状如二亂絲一、青黒色柔滑、長數尺、生二石上一浮二水上一、將レ採レ之而滑利難レ得、仍用二鮑空貝一刮二取之一、阿州鳴戸、泉州岸和田、及對州之産、肥大如二索麪一而有レ扠、安房、上總、下總、備前亦多有レ之、皆和二薑醋一食レ之、微有二海鼠腸氣一而能醒二酒酔一、或未醬汁煮レ之、粘滑似二薯蕷汁一而佳、値二温氣一則易レ敗也、藏レ之用二海蘊〈一升去レ水〉鹽〈三合〉一、密封則耐レ久、用時暫漬レ水出レ鹽食、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0896 年料若狹國〈（中略）毛都久◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0896 紀伊　若浦海雲(モヅク)

〔寛政四年武鑑〕

p.0896 松平主計頭忠馮〈◯肥前島原〉　時獻上〈三月〉海蘊

松藻

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0897 松藻　松杉ノ葉ニ似テ青シ、石上ニ生ズ、生ニテモ乾テモ可レ食、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0897 海藻〈◯中略〉松藻〈參州遠州海濱有レ之、状似二松杉葉一而柔脆香滑、生二于石上一緑色、生乾倶可レ食、久煮則消盡矣、〉

海松

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0897 海松　崔禹錫食經云、水松状如レ松而無レ葉、〈和名美流(○○)〉楊氏漢語抄云、海松、〈和名上同、俗用レ之、〉

〔倭訓栞〕

〈前編三十/美〉

p.0897 みる〈◯中略〉　倭名抄に海松をよめり、ふかみる、うきみる、みるぶきなどもよめり鷓鴣菜也といへり、岩に生てかつ色かへぬ物なれば、伊勢物語につれなくはとよめり、深海松万葉集によめり、延喜式諸國の貢にも長海松深海松あり、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0897 水松　ミルウミマツト訓ズルハ非ナリ、物理小識ニ、本草水松ハ水中苔也トノ文ニ據リテ、ミルト訓ズベシミルハ海中石上ニ生ズ、菜類ナリ、徑リ二分許、形圓ク枝多シテ棒蘭ノ如ニシテ緑色ナリ、長サ六七寸食用トス、一種ナガミル(○○○○)ハ長サ四五尺アリ、薩州ノ産ナリ、増、一種ヒラミル(○○○○)ト呼ブモノアリ、一名ラシヤノリト云フ、濶サ五六分ニシテ長サ一尺許、深緑色ニシテ哆羅絨(ラシヤ)ノ肌ノ如シ、春月採テ灰ヲ雜エ、日ニ乾シテ遠ニ寄ス、コレヲハイボシミルト云、阿州鳴門ノ名産ナリ、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0897 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉海松一百卅斤、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0897 交易雜物伊勢國〈（中略）海松五十斤◯中略〉　參河國〈（中略）海松五十斤◯中略〉　出雲國〈（中略）海松一百斤◯中略〉　石見國〈（中略）海松一百斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）海松卅斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0897 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁〈◯中略〉海藻、海松各卌三斤、〈但隱岐國卅三斤五兩〉凡中男一人輪作物、〈◯中略〉海松五斤、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0898 仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉海松一兩、〈海菜料◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0898 供御月料海松二斤四兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、年料志摩國〈深海松(○○○)◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

〔執政所抄〕

〈上/正月〉

p.0898 二日臨時客御料次第〈◯中略〉　三獻 羮　追物生蚫、浮海松(○○○)、 足、酢坯、〈无二海松一時用二白根一〉

〔萬葉集〕

〈十三/相聞〉

p.0898 神風之(カムカゼノ)、伊勢乃海之(イセノウミノ)、朝奈伎爾(アサナギニ)、 依(キヨル)深海松(フカミル/○○○)暮奈藝爾(ユフナギニ)、 因(キヨル)俟海松(マタミル/○○○)、深海松乃(フカミルノ)、深目師吾乎(フカメシワレヲ)、俟海松乃(マタミルノ)、復去反(マタユキカヘリ)、都麻等不言登可聞(ツマトイハジトカモ)、思保世流君(オモホセルキミ)、

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0898 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉海松五帖、〈◯中略〉　法用千僧供　一人料、〈◯中略〉海松六把、

〔伊勢物語〕

〈下〉

p.0898 昔男〈◯中略〉うせにし宮内卿もちよしが、家の前くるに日くれぬ、〈◯中略〉みなみの風吹て、波いとたかし、つとめてその家のめのこども出て、うき海松(○○○○)の波によせられたるひろひて、家のうちにもてきぬ、女がたより、そのみるをたかつきにもりて、かしはをおほひて出したるかしはにかけり、　わたつ海のかざしにさすといはふもヽ君が爲にはおしまざりけり、ゐなか人の歌にては、あまれりやたらずや、

〔住吉物語〕

p.0899 住吉にゆきたれば、〈◯中略〉南は一むらの里ほのかに見えて、とまやどもにみるめ(○○○)かりほし、〈◯下略〉

〔源平盛衰記〕

〈十一〉

p.0899 有王俊寛問答事僧都〈◯俊寛中略〉宣ケルハ、〈◯中略〉浪タヽヌ日ハ磯ニ出テ、岩ノ苔ヲムシリテ、潮ニ洗テ食物トシ、汀ニ寄タル海松和布ヲ取、和カナル所ヲカミテ明シ暮ス、

〔海道記〕

p.0899 十三日〈◯貞應二年四月、中略、〉此浦〈◯江尻興津間〉を遙に見渡して行ば、海松はなみの岩ねに、根をはなれたる草、海月は潮のうへに水にうつるかげ、ともにこれうき世を論じて、人をいましめたり、

〔御湯殿の上の日記〕

p.0899 慶長十四年五月七日、いたくらみる(○○○○○○)一おりしん上申、

〔常陸國風土記〕

〈行方郡〉

p.0899 郡西津濟、所レ謂行方之海、生二海松及燒レ鹽之藻一、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

p.0899 凡南入海所在雜物、〈◯中略〉海松、凡北海所レ捕雜物、〈◯中略〉海松、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0899 伊勢　海松　丹後　久美海松

〔後奈良院御撰何曾〕

p.0899 ぬれぶみ　　　　　ほしみる

青苔

〔本草和名〕

〈九/草〉

p.0899 陟 〈楊玄操音 又音 〉一名水中苔、一名河中側梨、一名水中麁苔、〈已上二名、出二蘇敬注一、〉一名藫毛、一名衣、〈已上出二崔禹一、〉一名水衣、〈出二兼名苑一、〉一名水落、〈出二雜録方一〉和名阿乎乃利(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0899 陟 　本草云、陟 、〈音 、一本作レ厘、和名阿乎乃利、俗用二青苔一、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0899 按本草和名引二楊玄操一云、音 、又音 、蓋本草本作レ厘、與二此所 引同、厘廛通字、見二干祿字書一、又釐字俗省作レ厘、見二集韻一、故音 又音氂、若作レ釐不レ得レ音レ 、作レ廛不レ得レ音レ氂、千金翼方、證類本草作レ釐者、蓋宋人所レ改、本草和名作レ釐、亦係二傳寫者校改一、伊呂波字類抄引二本草和名一作レ厘、醫心方亦作レ厘、可㆕以見三作レ釐非二輔仁之舊一、〈◯中略〉與下類聚名義抄作二陟厘一音 、撮壤集引レ此亦作中陟厘上合、則作レ釐 作レ廛皆非レ是、俗纏字、 俗釐字、見二干祿字書一、 俗氂字、見二類聚名義抄一、龍龕手鑑作レ 、少異耳、◯中略按本草云陟釐生二江南地澤一、蘇注云、此物乃水中苔、小品方云、水中麤苔也、范東陽方云、水中石上生、如レ毛緑色者、藥對云、河中側梨、李時珍曰、陟釐者、有二水中石上生者一、蒙茸如レ髮、有二水汚無レ石而自生者一、纏牽如二絲綿之状一、俗名二水綿一、依二以上諸説一、陟釐是生二二淡水中一、今俗呼二加波毛豆久一、或呼二阿乎美土呂一者、蓋是、江賦云、緑苔鬖二髿乎研上一、郭璞注二風土記一曰、石髮水苔也、青緑色、皆生二於石一、又本草圖經、青苔可二以作レ脯食之、閩書南産志有二海苔一、緑色如二亂絲一、生二海泥中一、其細嫩者名二濕苔一、是等可三以充二阿乎乃利一、小野氏以二乾苔一充レ之、乾苔見二本草拾遺一、作レ廛皆非レ是、 俗纏字、 俗釐字、見二干祿字書一、 俗氂字、見二類聚名義抄一、龍龕手鑑作レ 、少異耳、〈◯中略〉按本草云陟釐生二江南地澤一、蘇注云、此物乃水中苔、小品方云、水中麤苔也、范東陽方云、水中石上生、如レ毛緑色者、藥對云、河中側梨、李時珍曰、陟釐者、有二水中石上生者一、蒙茸如レ髮、有二水汚無レ石而自生者一、纏牽如二絲綿之状一、俗名二水綿一、依二以上諸説一、陟釐是生二淡水中一、今俗呼二加波毛豆久一、或呼二阿乎美土呂一者、蓋是、江賦云、緑苔鬖二髿乎研上一、郭璞注二風土記一曰、石髮水苔也、青緑色、皆生二於石一、又本草圖經、青苔可二以作レ脯食 之、閩書南産志有二海苔一、緑色如二亂絲一、生二海泥中一、其細嫩者名二濕苔一、是等可三以充二阿乎乃利一、小野氏以二乾苔一充レ之、乾苔見二本草拾遺一、

〔下學集〕

〈下/草木〉

p.0900 青海苔(アヲノリ)

〔庭訓往 〕

p.0900 御札之旨、大齋之體、心事難二申盡一候、〈◯中略〉酢菜者、〈◯中略〉青苔、

〔異制庭訓往 〕

p.0900 酒肴等餘無沙汰無レ極候、何様尾籠之至可レ候乎、荒々所二尋出一者、〈◯中略〉陟釐丸苔、

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

p.0900 陟釐　甘温、温レ中消レ穀、強二胃氣一止二泄痢一、衍義曰、陟釐令二人事治一爲二苔脯一堪レ啗、治一渇疾一、〈禁レ鹽〉今按此即石髮也、〈陟釐甘温、生二泄澤中石上一、水苔浮二水中一、性冷、〉在レ屋謂二之屋遊瓦苔一、在二墻垣一謂二之垣衣土馬騣一、在レ地謂二之地衣一、在レ井則謂二之井苔一、在二水中石上一謂二之陟釐一、大抵苔類也、以二其所レ附不 同、故立三名與二主療一亦異、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0900 乾苔(カンタイ/アヲノリ)　倭名抄ニ乾苔ナシ、多識篇ニアヲノリ、考二本草一此レ海苔也、彼ノ人トリカハカシテ脯トナス、海水ハシハヽユシ、故ニ陟釐ト同ジカラズ、張華博物志云、石髮海中ニ生ズルハ、長サ尺餘、大小韭葉ノ如シ、肉ヲ以テアツメ、ムシテ食シテ極テヨシ、元升〈◯向井〉曰、此註ヲミレバ勢州ヨリ出ルアヲノリハ、其味シハハユシ、乾苔ナル事ウタガヒナシ、其形状ハ陟釐ト同ジキニヤ、陟釐ハ水中ニ生ジ、乾苔ハ海水ニ生ズ、又乾苔ハ味シハヽユシ、性寒ナリ、陟釐ハ味甘ク大温ナリ、性味各別ナリ、サレバ陟釐ハアマノリト云ベキモノナリ、又西國海中ニアヲサト云苔アリ、色味乾苔ト同ジ、但長サハ三四寸ニハ過ズ、魚肉ト羮ニシテ甚ダヨシ、乾苔ノタグヒナルベ シ、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0901 青苔釋名、陟釐、〈源順曰、和名阿乎乃利、俗用二青苔一、必大（平野）按、本朝式亦用二青苔字一、〉集解、青苔有二水中石上生者一、有二水汚無レ石而自生者一、纏牽如二絲綿之状一、海人采乾如レ綿、其色深緑以貨二于四方一、三河、伊勢、志摩、紀伊海濱多有、就レ中勢志之産最爲レ勝、本朝式亦伊勢、紀伊、播磨、阿波、出雲、石見等州貢二獻于民部省一、近世華人搗造レ箋、韓人造二雲藍紙一亦此類乎、氣味、甘鹹冷無レ毒、主治、止レ渇解二酒毒一、擣塗二疔毒赤遊一、或謂傅二金傷一能留レ血、

〔大和本草〕

〈附録一/草〉

p.0901 肥後八代川苔　色緑美長一尺餘、味佳、長崎ノ海ニ青苔アリ、八代苔ヨリ短シ、味尤ヨシ、〈◯中略〉青苔ナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

p.0901 乾苔(○○)　アヲノリ　イトアヲサ〈佐渡〉　カハナ〈南部〉　一名苔脯〈氣味〉柔苔〈同上、生、〉　青苔〈海藻條下〉　緑苔〈文選海賊〉　海苔菜〈本草 言〉海中ニ生ズ、纖細緑色陟釐ノ如シ、收メ乾シテ方物トス、勢州多ク出ス、諸州出ス所各小異アリ、尾州ノ長アヲノリハ長サ一尺餘、土州四萬(フタリ)十川ノ産ハ長サ五六尺、尾州ノサヽハノリハ形篛(チマキ)ノ葉ノ如ク乾シナス、播州網干ノサヽノリモ同形ナリ、コレヲ一名アボシノリ、サヽノハノリトモ云、淡州ヨリモ出、アヲノリニ極テ細キト粗トアリ、サヽノリハ粗シ、其粗ナル者ヲガニノス〈備前〉ト云、一名アヲサ、〈 州〉阿州ノアヲノリハ微黒色ヲ帶ビ、小豆島ノ産ハ短クシテ濶シ、防州土州ノ産ハ濶シテ長ク緑色深シ、集解、江蘺(○○)ハ尾州ノヲゴノリ(○○○○)ナリ、一名ヲンゴ、〈 州〉ウゴ、〈播州原村〉ウゴヽブ、〈同上姫路〉形圓ク細クシテウミ索麵ノ如シ、黒色微青ナリ、灰ヲ加ヘ煮ル時ハ緑色トナル、晒シ乾セバ白色トナリ、甚細ク麻ノ如シ、或ハ五色ニ染賣ル、江蘺一名頭髮菜、〈間情偶奇〉

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0902 交易雜物伊勢國〈（中略）青苔五十斤◯中略〉　參河國〈（中略）青苔五十斤◯中略〉　出雲國〈（中略）青苔卅斤◯中略〉　石見國〈（中略）青苔卅斤◯中略〉　播磨國〈（中略）青苔卅斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）青苔十斤◯中略〉　阿波國〈（中略）青苔廿斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0902 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉青苔六帖、〈◯中略〉　　法用千僧供　一人料、〈◯中略〉青苔五把、

〔海道記〕

p.0902 十三日〈◯貞應二年四月、中略、〉江尻の浦をすぐれば、青苔石におひ、黒布磯にはる、

〔殿中申次記〕

p.0902 正月八日一土筆(同◯永正十三)　一折　青海苔　一折　山芋一折　若王子〈例年進上之〉

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0902 伊勢　馬瀬青苔(アヲノリ)　土佐　本川青苔

〔攝陽群談〕

〈十六/名物土産〉

p.0902 同〈◯網島〉青苔　同所〈◯西成郡大坂町ノ東網島町〉ヨリ川口木津勝間住吉ノ浦邊マデ、船ヲ通ヒ苅レ之、於レ于レ是製シテ以テ青苔トナシ、市店ニ出ス、

陟釐

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/苔〉

p.0902 陟釐　カハモヅク(○○○○○)　カハアヲノリ(○○○○○○)　ヤヲヤダヲシ(○○○○○○)　アヲソ(○○○)　アヲサ(○○○)〈同名アリ〉　一名水中細苔〈東醫寶鑑〉　増、一名石馬、〈正字通〉　石花〈同上〉流水中石上ニ生ズ、極テ細ク絲ノ如シ、緑色、流ニ隨テ靡ク、肆人採リ乾シテ青苔ニ僞ル、一種止水中或ハ川ノ淀ニ生ジ、水面ニアリテ綿ノ如ク緑色ナルヲ、時珍ノ説ニ水綿ト云フ、俗名アヲミドロ、一名アヲミドリ、アミドロ、〈備前〉二品共ニ久旱ニシテ水涸ク時ハ、乾テ紙ノ如シ、コレヲ苔紙ト云、又唐山ニハ陟釐ヲ用テ紙ヲ抄クト云フ、

紫菜

〔新撰字鏡〕

〈草〉

p.0902 藫〈徒含反、水衣、加支豆毛(○○○○)、〉

〔古名録〕

〈二十七/海藻〉

p.0902 按ニ常陸國風土記ニ、土色如二青紺一加支川(カキツ)爾ト云、加木豆波太、加木豆波奈等皆紫 紺色ヲ云ニシテ、紫菜ノ色也、正字通藫字注曰、生二海中一者曰二紫 一、本草綱目紫菜釋名紫 ト觀ユレバ、加支豆毛ハ爲二紫菜一可レ證也、

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

p.0903 紫苔、〈生二水底石上一〉乾苔、〈熱〉柔苔、〈冷、出二崔禹一〉和名須牟乃利(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/水菜〉

p.0903 紫苔　養生秘要云、補益食胡菜紫苔、〈和名須無能里(○○○○)、胡荽見二飮食部鹽梅類一、〉

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0903 神仙菜　崔禹錫食經云、紫菜状如二紫帛一、凝生二石上一、是物有二三四種一、以二紫色一爲レ勝、俗呼曰二神仙菜一、〈漢語抄云、阿末乃里(○○○○)、俗用二甘苔一、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0903 按江賦、紫菜熒曄以叢被、郭璞注、紫菜色紫、状似二鹿角菜一而細、生二海中一、本草圖經云、青苔紫菜皆似レ綸、並非二是物一、呉都賦、綸組紫絳、劉注云、紫紫菜也、生二海水中一、正青附レ石生、取乾則紫色、臨海常獻レ之、本草圖經又云、紫菜附レ石生二海上一、正青、取乾レ之則紫色、南海有レ之、當二是崔氏所レ云三四種之一一、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0903 紫菜　兼名苑云、紫菜一名石薺、〈和名無良佐木乃里(○○○○○○)俗用二紫苔一、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0903 按崔氏食經所レ載紫菜、兼名苑所レ載紫菜同異未レ詳、

〔下學集〕

〈下/草木〉

p.0903 海羅(ノリ)　紫菜(アマノリ)

〔書言字考節用集〕

〈六/生植〉

p.0903 藫(ノリ)　石髮(同)〈石衣、水綿、並同、〉　海菜(同)〈本字水苔〉

〔庭訓往 〕

p.0903 御札之旨、大齋之體、心事難二申盡一候、〈◯中略〉酢菜者〈◯中略〉甘苔、鹽苔、

〔尺素往 〕

p.0903 茶子者、荔枝、龍眼、〈◯中略〉海苔、

〔倭訓栞〕

〈前編二十三/乃〉

p.0903 のり〈◯中略〉　海苔をのりといふは、莫告藻(ナノリソ)より出たる辭なるべし、皆滑かなる類をいへり、よて堅のりの名もあり、延喜式に海菜とも見ゆ、

〔宜禁本草〕

〈乾/五菜〉

p.0903 紫菜　甘寒、多食令二人腹痛一、發レ氣吐二白沫一、飮二少熱醋一消レ之、食療曰、多食脹レ人、下二熱煩氣一療二癭瘤結氣一、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0904 淺草苔(ノリ)釋名、紫菜、〈本朝式〉神仙菜、〈源順〉甘苔、〈漢語抄〉甘海苔、〈東鑑〉葛西苔、〈俗稱、（中略）東鑑伊豆國以二甘海苔一獻二于鎌倉一、頼朝奉二進于京一、必大（平野）按、此今之淺草苔、淺草者武之江都東邊之地名、隅田川上之村也、此苔本總州葛西海中多生、土人采レ之傳二送于淺草村市一、葛西土人亦多販レ之、武之品川亦有レ之、其土俗同以二地名一而冠二其苔上一、故諸州呼二其名一、〉集解、苔如三拆レ紙製レ帛而投二于水中一、泛レ浪漂レ流、浦人立二于岸上一、投二竹竿一而繫采レ之、以入レ筩 、兒女掛レ箸以攤二于葦箔一而晒二乾之一、生時蒼色、乾後紫蒼色者爲レ上、淺草葛西之苔是也、故世以賞二美之一、品川之苔者、生時乾後淡青黒、略麁而不レ密、故味亦不レ美、甘苔者相豆海濱多有、此亦一物、稍似二品川苔一紫赤色、亦粗而不レ密、源頼朝公毎獻二于京城一者是也、古者志摩、出雲、石見、隱岐等州貢レ之、載二于本朝式一、近代雖二儘有 之而不レ佳、故京師及海西海北悉以二武之産一爲レ珍、予往年使二于二荒山中一獲二乾苔一、土人曰、此采二于大谷川中一、其状略似二海苔一而青黒色、性粗而不レ粘、味亦淡而微甘、與二海中之紫苔一遙相隔焉有二松苔(ノリ)者一、状似二紫苔之碎松葉之細齒一、青灰色味亦稍佳、久煮則凝滑如二昆布之煮熟一而不レ佳、奧之南部津輕等之海濱有レ之、有二雪苔者一、状如二石耳之細剉一而輕薄似レ紙、生青乾紫、味淡可レ愛、佐渡越後海濱石上生者也、氣味、甘冷無レ毒〈多食發二腹痛一、或令レ吐二白沫一、飮二熱醋少許一即消、〉主治、咽喉痛癭瘤脚氣消二積 、發明、通俗妄食二紫苔一、則發二蟲積嘔吐一不レ止、動到レ死、予昔見二一士人娘子年十五傷食嘔味一、一晝夜不レ知二幾回一、達レ旦吐二黒物鮮血一而竟殞、侍女曰、此食二生紫苔一碗一以發レ病、予意疑紫苔鹹能軟レ堅、故可レ追二積塊一、而無下發二蟲積一之理上、後有二一仕官一食二生紫苔一、食畢忽吐二鮮血一而卒倒、侍童與レ藥即甦、急招レ予乞レ治、先見二其所レ吐物一、則血中有二小蟲一、細擇レ之則水蛭之子也、故新製二一劑一令二煎服一、經レ日而痊、於レ是初識、昔日娘子亦悞食二苔中之毒蟲一而終レ命焉、嗚呼悼哉、凡水中之藻苔有二水蛭河豚之毒物一、而必留レ子、人未レ曉レ之、苦不二洗淨一而遇レ毒、最可二戒愼一哉、鷄冠菜〈◯中略〉品川苔、〈此亦武之品川海濱石上生、状似二鷄冠一而柔滑、似二海蘿鹿角一而清粗、末紅本白味亦淡甘、久煮則凝粘、今晒乾亦貨二于四方一、氣味主治未レ詳、必大按、海蘿澀鹹不レ可レ食、自レ古所レ食者此苔也乎、〉

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0905 紫菜孟詵曰、正青色取而乾レ之則紫色、李時珍曰、其色正紫、亦石衣之屬也、此則本邦之甘苔淺草苔也、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0905 紫菜(アマノリ)　本草水菜類ニ載タリ、海中石ニ付テ生ズ、青色ナリ、取テ乾セバ色紫ナリ、又ホシテ色青キモアリ味甘シ、處々ニ多シ、武州ノ淺草ノリ、品川苔、下總ノ葛西ノリ、雲州ノ十六島(ウツフルヒ)モ、皆紫菜ノ類ナリ、ウツフルヒトハ海中ノ苔ヲトリ、露ヲ打フルヒテホス故ニ名ヅクト云、コノ苔ノ名ニヨリテ、其島ノ名ヲモウツフルヒト云、凡此ノリ諸州有レ之、地ニヨリテ形色少カハル、紫菜ヲ食シテ腹痛スルニ、熱醋ヲ少ノメバヨシト本草ニ見ヱタリ、〈◯中略〉黒ノリ　若狹ノ海ニアリ、岩ニ生ズ、臘月ニトル、黒クウルハシ味ヨシ、經ノヒモ　昆布ニ似テ小也、廣二三寸、長五六寸バカリ、食スレバ脆ク味ヨシ、醋ミソニテ食ス、鮫皮苔(サメノリ)　ヨコ五分許、長二三寸、青色ナリ、鮫皮ノ如ナル星多クシテ、其處少高シ、味ハ經ノ紐ヨリヨシ稀有ナリ、〈◯中略〉奧津海苔　廣六七分、或七八分、長五六七寸許、頗厚可レ食、紫色、水ニ洗ヒ曝レ日則變爲二黄白色一、駿州奧津ニアリ、

〔大和本草〕

〈附録一/草〉

p.0905 牡 苔　長崎ノ海ニアリ、牡 ノ葩ノ如シ、色潔白可レ食、櫻苔　壹岐ノ島海岸ニ産ス、其色紅白似二櫻花一、片々相屬、浸二酢豉一而食レ之、脆鬆而潔清味亦佳、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0905 十六島苔　〈宇豆布留伊附雪苔〉按此苔出二於雲州十六島一、故名、〈◯中略〉國守使二海人取 之、入二海底一採爲二腰帶一而上、其所レ得賜二三分一於海人一、最爲二苔中之珍品一、雪苔(ゆきのり)　按雪苔雲州加加浦有レ之、略似二十六島苔一而短紫色、冬降二石面一乍變爲レ苔刮二取之一、至レ夏則難レ貯、 後亦有レ之〈◯中略〉 櫻苔(さくらのり)　〈俗稱〉按櫻紀州海濱出レ之、色黄白或淡紫、而似二櫻花凋落乾状一故名、又有二松苔一、黄白色、大二於櫻苔一、形微似二松花一、紫菜(あまのり)　紫 〈音軟〉　神仙菜　〈和名阿末乃里、俗用二甘苔字一、◯中略〉按甘苔者總名而隨二所レ出之地一異レ名、色味亦稍異也、總州之葛西苔、武陽之淺草苔、並紫蒼色而味甘美也、紀州之妹背苔次レ之、武陽之品川苔不二紫色一、味亦迥劣、伊豆相模之海濱亦多出レ之、只稱二甘苔一、紫赤色而不二細密一、味亦不レ佳、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十/水菜〉

p.0906 紫菜　スムノリ(○○○○)〈和名鈔〉　ムラサキノリ(○○○○○○)〈同上〉　アマノリ(○○○○)〈新校正〉　アマモ(○○○)〈佐州〉一名索菜〈 州府志〉凡ソ紫菜ハ冬月海中ノ石ニ著テ生ズ、緑色ナリ、又海面ニ浮テ浮萍ノ如シ、海畔ニ小竹ヲ多ク立テ置テ、トリ得テ乾ス時ハ、色紫ニシテ味甘シ、焙ル時ハ褐色トナル、紫菜ハ紫色ノ海苔ヲ云、總名ナリ、品類甚ダ多シ、國ゴトニ形色異ナリ、大抵武州淺草ノリヲ第一トス、精粗アリ、精ナル者ハ形小ク厚ク、色深シテ黒ミアリ、品川ニテ紫菜ヲ採リ、淺草川ニテ製ス、故ニ淺草ノリト云、粗ナル者ハ形大ニシテ色淺シ、ソノ赤色ヲ帶ル者ハ、上總ノ小瀧ノリナリト云、諸州ノ紫菜數多ク枚擧スベカラズ、下總ニ葛西ノリアリ、東葛西ノ桑川、舟掘、長島、二ノ江、今井等ノ村ニテ採製スルヲ云フ、紀州ニ妹背ノリアリ、同アマノリアリ、勢州ニマドノリアリ、一名格子ノリ、シヤウジノリ、是ハ細長キノリヲ、一筋ヅヽ縱横ニ格子ノ如ク並ベタルヲ云、雲州ノ十六島(ウツフルヒ)ノリハ、質細ク絲ノ如クニシテ ナリ、〈◯中略〉ソノ大サ大抵二三尺、至テ大ナルハ丈餘ナルモアリ、大ナル者ヲ上トス、又濶サ一寸許ニシテ、長ク劈キテ乾タルヲカモヂノリト云、又至テ下品ナルヲ、カキノリト云、又ミサキノリハ、勢州ノマドノリノ如クニ製シ、色深紫ニシテ光リアリ、コレヲ洗ノリトモ云、又九十九(ツクモ)ノ リアリ、石州ノカモヂノリハ、雲州ノカモヂノリト同ジ、又ハチノスノリアリ、塊ニ竅穴多クシテ蜂窩ノ形ノ如シ、藝州ノ嚴島ノリ、同廣島ノリ、一名仁保ノリ、泉州ノムシロノリ、若州ノナマノリ、但州ノ瀬戸ノリ、一名但馬ノリ、城崎ノリ、同ハカリノリ、長州ノムカツクノリ、對馬ノアマノリ、同佐護ノリ、同鴨崎ノリ、越後ノ笠島ノリ、 後ノ袖石ノリ、備前ノフヂトノリ、一名ウキスノリ、防州ノ三島ノリ、肥後ノ滿願寺ノリ、豐前ノ小倉ノリ、豆州ノ三島ノリ、奧州ノ仙臺ノリ、此外諸州ニ紫菜アリ、朝鮮ニハ紫衣ト云、又嚴寒ノ時雪中ニ採ヲユキノリト云、 後、越前、越後等ニアリ、其紫黒色ナルヲ黒ノリト云、紀州、石州、 後、若州、越前、能州等ニアリ、

〔廣益國産考〕

〈六〉

p.0907 海苔(のり)海苔は何處の海河にも生ずるものなれども、其品いろ〳〵のわかちあり、先九州にては水禪寺海苔と稱し、肥後の國より出る、是は水に生ずるよしにて佳品也、又同じのりにて、筑前國秋月より出る也、又但馬國木の崎邊の海より淺草海苔に似たるもの産せり、紀州加多邊よりも出、三州渥見郡より和治(わぢ)海苔と號し、淺草同種のもの出れども製あらし、爰に近年遠州舞坂の海に、大森同様に遠淺の所へ、ならの麁朶をさし、海苔を付る事を覺え、取て製し諸國にも賣、京大坂へ送るよし、一ケ年に三千兩餘の金子を收納するよしにて、舞坂の産物となれり、大森にて製する淺草海苔に付方製法方同流にて、其味ひも又替る事なし、世間に上品の海苔多しといへども、所の産物となり、潤へる程の事なし、淺草海苔は大金を收納するよし也、續て舞坂も收納多くなるよし也、此海苔は味ひ美にして世間に多く出 たりとも、淺草、舞坂などを押へて、害となることあるまじとおもへるまヽ、海苔をとりて利を得るは、漁をなし或は蠶を飼、又山より種々の金銀銅鐵鉛錫を堀出す道理にて、新田を開くもあたるべしと思ひこめしまヽ、海苔の付方等を聞置るままを記すになん、 先海苔を付るは、内海の清らかなる砂地にて、大風雨の時、脇より砂をよせ、又海水深きは忌べし、遠淺の引潮には深〈サ〉貳尺位、滿潮にはさしたる麁朶の末、ひた〳〵になり、又なかばの引潮には末壹尺五寸位、水際よりあらはるヽ土地を見立べし、　扨麁朶といへるは、楢木をよしとす、此木の元にてひと握位にて、枝のよくつきて、たけの五六尺に伐たるを調、葉を不レ殘むしりて、四五本づつ元を揃へ、下より壹尺程上を堅くくヽりて、元二尺程の所を先ほそりにけづりて、多く拵へ置、十月比迄に、下に圖する〈◯圖略〉通の木と、麁朶とを船に積、〈のり取小ふね〉汐の干たるを考へ漕行、船の入位に間置、畑の畦を立たる如く麁朶を置さすべし、さすには先穴明を圖〈◯圖略〉のごとくして足にて踏、またの所迄ふみ込、引ぬきて其穴へ麁朶の元をさしこみ〳〵して植べし、扨如レ此して其浦の家々にて持場ありて、其所へは凡三反の持場誰方の分、是よりさきまで凡五反歩程と、海中の地面を割て持場とする事也、汐の滿たる時は、麁朶の末ひた〳〵に成か、壹尺位汐の上にのりたる位になるやうに麁朶の長短をすべし、然して置ば十月より海苔付初る也、寒中に取たるのりを極上とし、春三月までは付ども、暖氣になる程海苔も色さえず味おとれり、淺草海苔と稱すれ共、品川より壹里程西、大森の海に麁朶をさして取、淺草にてひさぐゆゑ、淺草のりと稱すなるべし、淺草海苔同性のもの、諸國にて生ずれども、是を麁朶に付てとり製する事をしらずと見えたり、依て爰にその製法の事を記すといへども、予〈◯大藏永常〉先年試たる一通りを記せば、おち〳〵なる事ぞ多かるべし、右の如くさしたる麁朶に、追々海苔付也、能十分に付たると思ふ時、小船に兩人のり、一人は棹さし、一人は此ごとき笊〈◯圖略〉を左りの手に持、右の手にて麁朶の枝々に付たる海苔をとりては、笊に入〳〵して持かへり、俎の上にて塵を箸もてより除き、鉋丁の刃にて少したたき、四斗樽やうの桶に清水を入、竹の棒もてかき交、扨夫より左に圖〈◯圖略〉する如く棚に簀を置、其上に蒦ををき、升にて桶の中なる海苔を、棒にてかき交てすくひ、蒦の中に一面行渡るやうの 心得にて、さつと打明れば、水は下にもれて、海苔は簀へとヾまる也、干揚るには、簀の侭干臺に圖〈◯圖略〉の通り並べてほす也、乾あがりたるは取入片(へぎ)て重ねて、上に板を置重しを置、しつとりと成たるを、一枚づヽよく見てかさぬべし、或は塵ほこり小貝の殼抔付あるは、小刀の先にてはね除き、十枚を一帖とし、二ツに折て多く重く重ね、兩方より板にて狹べし、然して雨風に當ざるやう、箱に入貯ふべし、又久しく貯ふには、大きなる壺を澁紙にて外よりはりたる中に入、口を能封じ置べし、如レ此して貯ふれば、夏を越ても少しも色かはる事なし、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0909 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉紫菜卌八斤、

〔延喜式〕

〈五/齋宮〉

p.0909 月料〈小月物別減二卅分之一一、〉紫菜海松各二斤十三兩

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0909 交易雜物土佐國〈（中略）紫菜一百五十斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0909 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁、〈◯中略〉紫菜、海藻根各十六斤、凡中男一人輸作物、〈◯中略〉蒜、紫菜各二斤、

〔延喜式〈三十三大膳〉〕

p.0909 仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉紫菜一兩二分四銖、〈海菜料一兩、汁物料二分四銖、◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0909 供御月料紫菜十二兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈別集十九〉

p.0909 奉寫一切經所解　申請用雜物事合請新錢廿三貫九百九十三文〈◯中略〉　用一十七貫五百六十文〈◯中略〉　卌文紫菜二升直〈升別廿文◯中略〉以前、起去潤三月一日、盡今月廿九日、請用雜物并殘等、顯注如レ件、以解、 寶龜二年五月廿九日　　　　散位正六位上上村主馬養〈◯以下署名略〉

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0910 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉紫苔一升、

〔吾妻鏡〕

〈八〉

p.0910 文治四年四月二日戊辰、藍摺供御甘苔等、被レ進二仙洞一云云、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0910 伊勢　甘苔　　駿河　富士苔〈山中谷川ニ有レ之〉　　安房　小湊苔　ハヾ苔　生家ノ紐苔　下總　葛西苔〈是ヲ淺草苔トモ云〉　　下野　日光苔〈川ニ有レ之〉　　若狹　青井堅苔　　能登　經紐苔　　 後　内堅苔　　出雲　十六島苔　　備前　藤戸苔　　長門　向津奧苔〈向津ノ奧ノ入江ノササ波ニ苔カクアマノ袖ヤヌレケン、人丸ノ詠歌ト云、〉　　肥前　松苔　　肥後　菊池苔〈川ニ有レ之〉　百足苔〈海ニ有〉　　對馬　コブ苔

〔食物知新〕

〈首〉

p.0910 日域諸國名産苔類　青苔〈勢州〉甘苔〈同上〉香多(カタ)苔〈 州〉堅苔〈 後〉黒苔〈駿州〉藤戸苔〈備前〉菊池苔〈肥後〉蜈蚣苔〈同上〉富士苔〈駿河〉水泉苔〈肥後〉品川苔〈武州〉葛西苔〈同上〉鷄冠苔〈志摩〉牡 苔〈肥前〉櫻苔〈同上〉波婆苔〈遠州〉

〔寛政四年武鑑〕

p.0910 松平出羽守治郷〈◯出雲松江〉　時獻上〈二月〉十六島海苔　　加賀中將治修卿〈◯加賀金澤〉　時獻上　〈三月〉紐海苔　〈五月〉紅葉海苔〈歸國御禮〉紅葉海苔　〈九月〉島海苔　　細川越中守齊兹〈◯肥後熊本〉時獻上　〈八月〉清水苔　〈十一月〉菊池海苔

〔吾妻鏡〕

〈六〉

p.0910 文治二年二月十九日丁卯、供御甘苔自二伊豆國一到二 于鎌倉一、彼國土産也、仍任レ例差二專使一被二京進 之云云、

〔吾妻鏡〕

〈九〉

p.0910 文治五年十一月一日丁巳供御甘苔十合、令レ進二上京都一給、是伊豆國乃貢也、

〔吾妻鏡〕

〈十四〉

p.0910 建久五年正月卅日壬辰、伊豆國海苔被レ進二京都一、雜色吉野三郞爲二御使一云云、

〔増訂豆州志稿〕

〈七/土産〉

p.0910 海苔　海邊ヨリ多ク産出ス、色皆黒シ、井田村ノ産特ニ佳品ナルヲ以テ、概ネ 井田ヲ冒稱ス、鎌倉ノ時供御甘苔ト稱シ、天朝ニ獻ゼリ、〈◯註略〉一種潮(シホ)海苔、〈鹹味アリ、菓トシ食フ可シ、〉捻(ヨリ)海苔〈雲見村ヨリ出ヅ、卷テ指ノ大サノ如シ、〉等アリ、鳬頭苔　下田ノ大浦及白濱村邊ニ産ス、生ハ青ク乾ケバ白ク、熱湯ニ投ズレバ則青ニ復ス、尤佳品ナリ、

〔伊豆七島調書〕

p.0911 大島一女は冬より春迄海苔を取、又漁事手傳いたし渡世仕候、　　神津島一此島稼には、男は〈◯中略〉冬は海苔を取、江戸へ出し渡世仕、〈◯下略〉

〔續江戸砂子〕

〈一〉

p.0911 江府名産〈并近在近國〉淺草海苔　雷神門の邊にて製レ之、二三月の比さかん也、品川生海苔　品川大森の海邊にて取ル、淺草にてせいする所ののりは、則此所ののり也、葛西海苔　葛飾郡桑川舟堀二の江今井これらの所にて取り、其所にて製す名産也、淺草のりに似て又異也、

〔江戸總鹿子新増大全〕

〈七〉

p.0911 江府名物〈并〉近國近在土産淺草海苔　　　　　淺草雷神門前　四郞左衞門(うへ木や)此淺くさ海苔と云は、元 品川大森の海邊にて取たる海苔を、淺草にて製し、尊貴の御膳にも奉る故、殊更其根元の家を吟味して調べき事也、當時此所に海苔屋餘多有といえども、此四郞左衞門を根元とす、〈◯下略〉

〔續百一録〕

p.0911 延享五年五月八日卯、葉室様ヨリ日光御土産、〈◯中略〉寶 院様へ紗綾壹卷、淺草海苔十五枚一折 ル、

〔江戸名物詩〕

〈初篇〉

p.0912 永樂屋干海苔〈淺草雷神門前〉帖帖乾 積如レ紙、年年賣出早春風、白魚吸物豆腐汁、纔有一枚味不レ同、

〔守貞漫稿〕

〈五/生業〉

p.0912 紫海苔ノ看板〈◯圖略〉今世モ猶淺草海苔ヲ諸國通名トシ、江戸ニテモ稱レ之、而テ其産大森ヲ專トシ、此邊ヲ本場ト云、其招牌圖ノ如ク、然モ粗製ニテ面白、紙張墨書、或ハ白紙ニ藍紙ノ縁ヲ付ケ、或ハ字白藍石摺仕立モアリ、皆必ラズ唐紙風ニテ紙張也、又專ラ官家ニ因テ菊御紋ヲ描キ、店ニ置ク櫃類モ白紙張菊紋、又包紙必ラズ糊入紙ニ菊紋ヲ描キ、新干海苔ト書シ、左右ニ地名家號ヲ記ス、近年其包ヲ精ニシ、四方包トシ、四ツ手ト唱フ物多シ、江戸ニテ賣ルモ、看板包紙其他皆然リ、

〔守貞漫稿〕

〈六/生業〉

p.0912 江戸ニ在テ京坂ニ無キ陌上ノ賈人〈◯中略〉乾海苔賣大略中冬以後春ニ至リ賣レ之、乾海苔ハ今世大森村ヲ昌トス、然ドモ尚淺草海苔ヲ通名トス、又賣レ之者江人稀ニシテ、多クハ信人也、彼國雪深クシテ、冬季産ニ煩シキヲ以テ、出府シテ賣二巡之一、圖ノ如キ〈◯圖略〉筥ヲ ヲ以テ擔賣アリ、或ハ張籠ニ納テ、風呂シキ裹ミニシテ負モアリ、又冬春ノ間、店賣モ多シ、蓋他賈ノ兼賣多シ干物店鰹節店ヲ專トシ、其他ノ店ニモ賣レ之、店賣ノ者ハ筥ニ十六葩ノ菊ノ記號ヲ描ク、是官家ニ調進ヲ矯ル也、

〔常陸國風土記〕

〈信太郡〉

p.0912 古老曰、倭武天皇巡二幸海邊一、行至二乘濱一、于レ時濱浦之上、多乾二海苔一、〈俗曰乃理〉由レ是名二能理波麻之村一、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

p.0912 凡北海所レ捕雜物、〈◯中略〉紫菜、

〔親元日記〕

p.0912 文明十五年五月廿三日乙卯、三御方へ雲州海苔各一折進二上之一、近年は雖レ無レ進二上之一、爲二先例一之間上進云々、

〔藝備國郡志〕

〈上/安藝土産〉

p.0912 海苔　出二安南郡仁保島之海濱一、潮乾則採レ之、或生用レ之、又陰乾送二遠方一也、

〔紀伊國名所圖會〕

〈二/海部郡〉

p.0913 妹背海苔(○○○○)　又和歌海苔ともいふ、此邊の磯にあり、此海苔をとるには、初冬より春の彼岸に終る、霜月臘月などの寒氣凛冽なるときとるを最上とす、

川苔

〔大和本草〕

〈八/水草〉

p.0913 川苔　川苔モ海苔ニ似タリ、處々ニアリ、富士山ノ麓柴川ニ柴川苔アリ、富士ノリトモ云、日光苔ハ野州日光ノ川ニ生ズ、菊池苔ハ肥後ノ菊池川ヨリイヅ、ホシテ遠ニヲクル、アマノリニ似タリ、肥後水前寺苔ハ水前寺村ノ川ニ生ズ、乾シテ厚キ紙ノ如ナルヲ、切テ水ニ浸シ用ユ、此類諸州ニアリ、〈◯中略〉瀧苔　山川ノ石ニ生ズ、短クシテ褐色、熱湯ニ浸セバ青クナル、軟鬆ニシテ食フベシ、清潔ナリ稀ナリ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0913 紫菜〈◯中略〉富士苔　富士山之麓、精進川村出レ之、形状似二紫菜一青緑色、味極美、水善寺苔　出二於肥後一、色似二富士苔一而方形、煮レ之不レ亂、味甘美、近頃不二多出一、但一一如二菜葉一、相粘作二方形一耳、

〔雍州府志〕

〈六/土産〉

p.0913 菅藻　古出二宇治川一、載在二萬葉集一、今不レ聞レ有レ之、凡海苔海邊之所レ産、其種類甚多、總謂二海苔一、今雖二川産一、又唯稱二海苔一、川海苔之所レ出、大和布留川、安藝吉田川、肥後水前寺、斯外亦在二處々一、

〔奇遊談〕

〈三下〉

p.0913 貴船の川苔洛北鞍馬の西、貴船明神は水神にして、加茂の攝社にして、世に名高き靈地なり、此御前の川瀬の石に、六月いと暑き頃、川苔の少とあるを取集て、日に干かはかして、江戸の淺草海苔のごとく用ゆるに、調味かくべつにして、富士川苔よりもよし、ある年東山にて物産會せしに、此川淺草におとらじとて、もてはやしけることなり、しかし多くは得がたし、

〔甲斐國志〕

〈百二十三/産物及製造〉

p.0913 一川苔　都留郡桂川ヨリ産スル者、富士山ノ餘液ナリ、此水靈アリ、里人引 テ漑二麥隴一バ糞養ニ勝レリ、他所レ未レ見ナリト云、川苔ハ駿州ノ芝川ニ同ジケレドモ、採ル者多カラズ、一〈ノ〉宮ノ御手洗川ヨリ生ズルハ尤〈モ〉少シ、

〔藝備國郡志〕

〈上/安藝土産〉

p.0914 河苔　倭俗海苔總曰レ苔、凡海中生レ苔處々出レ之、河水生レ苔者稀矣、高田郡吉田川冬月生レ苔、形状風味似二海苔一柔脆堪レ食、又生二河蜷一、倭俗訓二爾奈一其形小如レ螺、其味淡似レ蜆、吉田村多治井生レ芹、其根白如レ緒、風味勝二他産一、民間傳言、右端三物、吉田之名産、而毛利元就知レ州之日、以二此三物一獻二朝廷一云レ爾、

鷄冠菜

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0914 雞冠菜　楊氏漢語抄云、雞冠菜、〈土里佐加乃里(○○○○○○)、式文用二鳥坂苔一、〉

〔尺素往 〕

p.0914 點心菜者不レ要レ多矣、生蘿蔔、鷄冠苔(○○○)、冬瓜、藕根、蘘荷、酸芡等之内、三種計可レ設レ之、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0914 鷄冠菜〈訓二土里佐加乃里一、今之登左加也、〉集解、状如二鷄冠一有二小齒一有二深刻一、深紅色味不レ美、以二淡味一而愛、此亦海濱石上生、古者參河、伊勢、志摩、紀伊、石見等州、貢二獻于民部省一、今亦處處多有レ之、氣味主治未レ詳、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0914 鷄冠菜(とさかのり)〈◯中略〉　〈和名止里佐加乃里、正赤者名二錦苔一、〉按雞冠菜處處海濱石上生レ之、〈◯中略〉如今肥州天草多出レ之、伊豆次レ之志摩亦少出レ之、用二薑醋一食レ之、又色相似而圓者名二楊海苔(ヤマモヽノリ/○○○)一、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十/水菜〉

p.0914 石花菜〈◯中略〉鷄脚菜　トサカノリ〈和名抄〉　鷄冠菜〈同上〉　海中ニ生ズ、赤白黄緑紫黒ノ數色アリ、高サ一二寸、鴨脚ノ葉ノ如ニシテ極テ小シ、其刻缺鷄冠ニ類ス、採テ食用トス、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0914 交易雜物伊勢國〈（中略）鳥坂苔五斤◯中略〉　參河國〈（中略）鳥坂苔五十斤◯中略〉　出雲國〈（中略）鳥坂苔五斤◯中略〉　石見國〈（中略）鳥坂苔五斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）鳥坂苔五斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0915 仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉鳥坂菜二分、〈生菜并海菜茹菜等料各四銖◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔文祿四年御成記〕

p.0915 一初獻御盃參候〈◯中略〉　御六獻　鷄冠苔

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0915 志摩　鷄冠苔

於期菜

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0915 於期菜　本朝式云、於期菜、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0915 海藻〈◯中略〉於期菜(ナゴノリ)〈處處海濱多有、生二於海中石上一、亦如二亂絲一而 、長不レ過二一二尺一、青色、采レ之過レ時變二蒼黒色一、煮レ之用二銅鑼一則色青如レ生、宜二生食一不レ宜二乾食一、氣味甘鹹寒無レ毒、主治未レ詳、多食難二消化一、發二腹病泄瀉一、古者伊勢、尾張、 伊、播摩、阿波等州貢二獻之民部省一、今亦三河、遠江、駿河、伊豆、安房、下總等海邊多送レ之、必大（平野）按、苔者石衣也、本邦無二水菜之名一而訓二乃利一、此亦李時珍所レ謂紫菜、亦石衣之屬也、於レ是假用者哉、〉

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0915 於期ノリ　海中石上ニ生ズ、亂髮ノ如シ、青黒色、ナゴヤヨリ大ニ、ヒジキヨリ小也、飯ニ加ヘ食スル事、ヒジキノ如ニス、性滑泄、虚冷ノ人不レ可レ食、發二腹痛一性不良、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0915 於期菜　〈和名於古乃里、恐此龍鬚菜也見レ後、〉按於胡菜生二海中石上一、〈◯中略〉東海諸州多有レ之、備前及淡州亦多、晒乾爲二白藻一、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0915 交易雜物伊勢國〈（中略）於胡菜卅斤◯中略〉　參河國〈（中略）於胡菜卅斤◯中略〉　播磨國〈（中略）於胡菜廿斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）於胡菜卅斤◯中略〉　阿波國〈（中略）於胡菜六斗◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0915 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁、〈◯中略〉於期菜廿六斤十兩、志摩國〈◯中略〉　調、〈◯中略〉於期菜、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0915 仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉於期菜二兩、〈好物并生菜料各一兩◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0915 供御月料 於期五斤四兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、年料若狹國〈（中略）於已◯中略〉　右諸國所レ貢、並依二前件一、仍收二贄殿一擬二供御一、

石花菜

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0916 大凝菜　本朝式云、凝海藻、〈古留毛波、俗用二心太二字一、云二古々呂布止(○○○○○)一、〉楊氏漢語抄云、大凝菜、

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0916 本居氏曰、凝訓二古留一、或云二古呂一、淤能碁呂島、自凝之義、心訓二古々呂一者、古呂古呂之省、凝凝也、故以二肝向一爲二心之枕詞一、肝向言二臟腑相集對一也、〈◯中略〉閩書云、石花菜生二海礁上一、性寒、夏月煮レ之成レ凍、本草綱目、石花菜生二南海砂石間一、高二三寸、状如二珊瑚一、有二紅白二色一、枝上有二細齒一、以二沸湯一泡去二砂屑一、沃以二薑醋一、食レ之甚脆、久浸化成二膠凍一也、

〔庭訓往 〕

p.0916 被二仰下一之旨、畏拜見仕候畢、〈◯中略〉東山蕪、西山心太、

〔庭訓往 諸抄大成扶翼〕

p.0916 貞〈◯伊勢貞丈〉云、西山は山にて海なし、心太は海草なり、山に生ずべき理なし、然れども心太を他所より求て、それを煎じて、こヽろぶとに作て出す、佳品なる故名物とするなり、

〔七十一番歌合〕

p.0916 七十一番　右　　　　　　心太うりうらぼんのなかばの秋のよもすがら月にすますや我心てい(○○○)右はうらぼんのよもすがら、心ぶとうることしかり、心ていきく心地す、

〔南留別志〕

〈一〉

p.0916 一職人歌合に、太凝(こヽろぶと)菜を賣る人の、こヽろていとよぶといふ事あり、それより又ところてんとなれるなり、

〔東雅〕

〈十三/菜蔬〉

p.0916 海髮イギス〈◯中略〉　イギスの義不レ詳、コルモは即凝海藻也、コヽロブトとは、コヽロは凝也、フトは太也、即大凝菜也、今も俗に凝をいひてコヾルなどいふ也、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0916 凝海藻〈古訓二古古呂布止一、今訓二登古呂天(○○○○)一、〉 釋名小凝菜、凝草、〈本朝式〉大凝菜、〈源順曰、楊氏漢語抄云、大凝菜和名古古呂布止、俗用二心太二字一、必大（平野）按本朝式訓二古留毛波(○○○○)一、又曰二比不毛波(○○○○)一、〉集解、此生二于處處海濱沙石間一、高二三寸、状如二珊瑚一有二紅白二色一、枝上有二細齒一、其根埋二于沙中一則可二再生一、一種有下似二鷄爪一者上、二物相同、浸レ水去二砂屑及枯黒者一、而湯煮者久取出、入レ水則凝成膠凍、如二蒟蒻之凝一、而透明清白作レ蔬可レ愛、和二醬汁嚴醋薑芥番椒砂磄豆粉一而食レ之、或漬二梅蘇汁一而越レ年、則作二珊瑚琥珀色一可レ愛、或用二此菜煎汁一塗二紙上一而晒乾、如二礬膠紙一、久而不二損傷一也、當世夏月通俗食レ之、謂能消レ暑、僧家亦用レ之、古者尾張、志摩、紀伊、阿波等州、貢二獻于民部省一、今亦勢尾參河等州最多矣、氣味、甘寒滑無レ毒、主治、去二上焦胸膈之煩熱及胃熱一、止レ渇消レ暑解二酒毒一、凡下焦虚寒之人不レ宜レ用、

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0917 凝海藻李時珍所レ謂石花菜、鷄脚菜、倶今有レ之、即稱二登古呂天一者也、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0917 石花菜(ところてん)　璚枝〈本綱〉　大凝菜〈本朝式〉　凝海藻〈同〉　〈和名古留毛波、俗云心太、古々呂布止、◯中略〉按石花菜今云止古呂低牟、或云小凝草、豫州宇和島之産爲二最勝一、相州鎌倉、豐州佐賀關之産次レ之、豆州海濱、紀州熊野浦亦多出レ之、造法、夏月能洗晒乾、復又注レ水晒乾也、十日許成二白色一、水煮冷定則凝凍、如二葛糊一而不レ粘、用二薑酸沙糖等一食レ之、能避レ暑也、冬月嚴寒夜煮レ之、露宿則凝凍甚輕虚俗謂二之寒天一、或用二蘇方木煎汁一染レ之、赤色最鮮可レ愛、謂二之色寒天一、城州伏見里製レ之、僧家爲二調菜必用一也、又用二其濃汁一塗二于紙一晒乾則如二礬膠紙一、而久不二損傷一以飾二團扇一、

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0917 凡調〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉凝海菜一百廿斤、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0917 交易雜物伊勢國〈（中略）凝菜卅斤◯中略〉　志摩國〈大凝菜卅四斤、白玉千顆、〉　尾張國〈（中略）凝菜卅斤◯中略〉　參河國〈（中略）凝菜卅斤◯中略〉　遠江國〈（中略）凝菜卅斤◯中略〉　紀伊國〈（中略）大凝菜一百斤◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0918 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁、〈◯中略〉大凝菜、小凝菜、角俣菜各卌斤、凡中男一人輸作物、〈◯中略〉鹿角菜、大凝菜、海藻各六斤、〈相模國一斤十一兩〉上總國〈◯中略〉　中男作物、〈◯中略〉凝海藻、　若狹國〈◯中略〉　調、〈◯中略〉凝菜、　阿波國〈◯中略〉　中男作物、〈◯中略〉凝海菜、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0918 同月〈◯正月〉修二太元帥法一料、心太一斗九升、仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉大凝菜六兩一分四銖、〈汁物料◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0918 供御月料大凝菜四斤八兩〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、

〔出雲風土記〕

〈島根郡〉

p.0918 凡北海所レ捕雜物、〈◯中略〉凝海藻、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈後集四十〉

p.0918 寫經司解　申錢用事合所請錢貳仟文〈盡〉　買物合十六種〈◯中略〉　心太一村　直錢十文〈◯中略〉以前、錢盡状并買物、顯注如レ前、以解、　　天平十一年八月十一日　　　　　史生高屋連赤麻呂〈◯以下署名略〉

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈別集十九〉

p.0918 奉寫一切經所解　申請用雜物事合請新錢廿三貫九百九十三文〈◯中略〉用一十七貫五百六十文〈◯中略〉　一百文大凝菜二斗直〈斗別五十文◯中略〉以前、起去潤三月一日、盡今月廿九日、請用雜物并殘等、顯注如レ件、以解、　　寶龜二年五月廿九日　　　　　散位正六位上上村主馬養〈◯以下署名略〉

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0919 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉心太三升、〈◯中略〉　法用千僧供　一人料、〈◯中略〉心太三合、

〔延喜式〕

〈四十二/東西市〉

p.0919 心太 〈◯中略〉　右五十一 東市　心太 〈◯中略〉　右卅三 西市

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0919 紀伊　粉凝草(コゴリクサ)〈トコロテンニ用レ之〉

〔伊豆七島調書〕

p.0919 八丈島一此島稼には、男は〈◯中略〉海藻之内海苔、はヾ、芋、ところてん草の類を取、〈◯中略〉渡世仕候、

〔守貞漫稿〕

〈六/生業〉

p.0919 夏月專ラ賣巡ル者ハ、〈◯中略〉心太賣、心太トコロテント訓ズ、三都トモニ夏月賣レ之、蓋京坂心太ヲ晒シタルヲ水飩ト號ク、心太一箇一文、水飩二文、買テ後ニ砂糖ヲカケ食之、江戸心太價二文、又晒レ之ヲ寒天ト云、價四文、或ハ白糖ヲカケ、或ハ醬油ヲカケ食レ之、京坂ハ醤油ヲ用ヒズ、又晒レ之乾キタルヲ寒天ト云、煮レ之ヲ水飩ト云、江戸ハ乾物煮物トモニ寒天ト云、

海髮

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0919 海髮　崔禹錫食經云、海髮味醎小冷、其色黒状如二亂髮一、〈和名以木須(○○○)、漢語抄云、小凝菜〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0919 本草和名海藻條引云、一名海髮、状如二亂髮一也、按本草和名、海髮附二録海藻條一者、以レ類兼收耳、一名字恐衍、據㆕其云三状如二亂髮一、則是亦當二於期菜之類一、恐非二伊岐須一、或曰、又按本草陶注云、海藻生二海島上一、黒色如二亂髮一、而大小許葉、大都似二藻葉一、合二二書一見レ之、海髮即海藻之一名、源君分レ之爲二伊歧須一、非レ是、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0919 海髮　小凝菜〈漢語抄〉　馬尾藻　和名以木須〈◯中略〉按海髮本草所レ謂馬尾藻乎、阿州、淡州、備州、泉州有レ之、淡州者爲レ勝、長尺餘青色而甚細纖也、乾則紫黒色如二亂髮一、注レ水屡晒則潔白、煮レ之則凝凍如二石花菜菎蒻餅之輩一、盛二淺器一冷定、而纖裁レ之和二醋未醬一食レ之、 味淡甘美最爲二上品一、俗傳曰、煮レ之者勿レ語、如吐二戯言一則不レ成也、漢語抄謂二之小凝菜一、以二石花一謂二大凝菜一者最當矣、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0920 凡諸國輸調、〈◯中略〉　一丁、〈◯中略〉大凝菜、小凝菜、角俣菜各卌斤、凡中男一人輸作物、〈◯中略〉小凝菜、雜海菜各八斤、志摩國〈◯中略〉　調、〈◯中略〉小凝菜、

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0920 供御月料伊祇須九斤〈◯中略〉　右月料、小月减二卅分之一一、

ウケウト

〔大和本草〕

〈附録一/草〉

p.0920 ウケウト　海草也、煮テトコロテンノ如クカタマル、コンニヤクノ色ナルモアリ、非二佳品一不レ可レ食、

角俣菜

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

p.0920 鹿角菜、〈状如二鹿角一亦紫色〉一名獲葵、〈出二七卷食經一〉和名都乃末多(○○○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0920 鹿角菜　崔禹錫食經云、鹿 状似二水松一、〈和名豆乃萬太〉文選江賦注云、鹿角菜、〈漢語抄云、和名同レ上、〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0920 江賦、紫菜熒曄以叢被、李善注、紫菜色紫、状似二鹿角菜一而細、此所レ引即是、按嘉祐本草云、鹿角菜出二海州一、登萊沂密州並有、生二海中一、李時珍曰、鹿角菜生二東南海中石厓間一、長三四寸、大如二鐵線一、分了如二鹿角状一、紫黄色、土人采曝、貨爲二海錯一、以レ水洗醋拌、則脹起如レ新、味極美、若久浸則化如二膠状一、女人用以梳レ髮、粘而不レ亂、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0920 鹿角菜(ロクカクサイ/ツノマタ)〈◯中略〉　元升〈◯向井〉曰、西國ニロクカクサイト云アリ、モトハ大明商客ノ持 ル、近キ比ヨリ天草邊ノ海中ニ出ルトイヘリ、其ナリアヒ鹿ノ角ノ如シ、其色或ハ白キアリ、或紫黄ナルアリ、本草註ノ説ノ如シ、是即鹿角菜ナルコト明ラケシ、今俗音ニ隨テロクカクサイトイヒテ、ツノマタト云、和名ヲシラズ、日本モ古ヨリ此菜ヲ食シタルナルベシ、多識篇ニヒジキト云ハ誤レリ、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0921 鷄冠菜〈◯中略〉角脵(ツノマタ)菜〈此亦本朝式志摩國貢二民部省一、其状似二鹿角状一、蒼灰色、乾則黒色、如二鹿尾菜一、味亦稍似而不レ爲レ佳、今亦儘有、其氣味主治未レ詳、〉

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0921 鹿角菜　本草水菜ニ載ス、大寒無レ毒解レ熱、然ドモ性不レ良其形鹿角ニ似テ小ナリ、海中岩間ニ生ズ、乾シ收メ用ル時、水ニ浸シ醋ニ和シテ食フ、

〔延喜式〕

〈二十三/民部〉

p.0921 交易雜物伊勢國〈（中略）鹿角菜二石◯中略〉　尾張國〈（中略）鹿角菜三石◯中略〉　參河國〈（中略）鹿角菜二石◯中略〉　播磨國〈（中略）鹿角菜二石◯中略〉　紀伊國〈（中略）鹿角菜二石◯中略〉　阿波國〈（中略）鹿角菜二石◯中略〉　右以二正税一交易進、其運功食並用二正税一、

〔延喜式〕

〈二十四/主計〉

p.0921 凡諸國輸調、〈◯中略〉一丁〈◯中略〉大凝菜、小凝菜、角俣(ツノマタ)菜各卌斤、〈◯中略〉鹿角菜(ツノマタ/フノリ)卅三斤五兩、凡中男一人輸作物、〈◯中略〉鹿角菜(フノリ)、大凝菜、海藻各六斤、〈相模國一斤十一兩〉志摩國〈◯中略〉　調、〈◯中略〉角俣菜、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0921 同月〈◯正月〉修二太元帥法一料、〈◯中略〉鹿角菜一斛九斗、〈◯中略〉海松、角俣菜各廿四斤、仁王經齋會供養料僧一口別、〈◯中略〉鹿角菜、〈好物料◯中略〉角俣菜一兩二分、〈好物料一兩、茹菜料二分、◯中略〉　右一日供料依二前件一

〔延喜式〕

〈三十九/内膳〉

p.0921 供御月料鹿角菜十二斤〈◯中略〉　右月料、小月減二卅分之一一、◯按ズルニ、延喜式ニ角俣菜、鹿角菜ヲ並ベ載セテ二物トス、然ルニ本草和名、倭名類聚抄等ニハ、鹿角菜ヲツノマタト訓ジタレバ、鹿角菜ト角俣菜トヲ同物ト爲シタルガ如シ、但シ本朝食鑑ハ延喜式ノ訓ニ據リテ、鹿角菜ヲ海蘿(フノリ)トス、

海蘿

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0921 海蘿　崔禹錫食經云、味澀醎大冷無レ毒、其性滑滑然、主二九竅一、〈和名不乃利(○○○)、俗用二布苔一、〉

〔異制庭訓往 〕

p.0921 酒肴等餘無沙汰無レ極候、何様尾籠之至可レ候乎、荒々所二尋出一者、〈◯中略〉海蘿

〔東雅〕

〈十三/穀蔬〉

p.0922 海蘿フノリ　倭名抄に崔禹錫食經を引て、海蘿其性滑也、フノリといふ、俗用二布苔字一と註せり、猶麪糊といふが如し、其滑にして物を粘著すべき麪糊の如くなるをいふ也、〈◯註略〉凡海苔の類、又呼びてノリといふは、皆その滑なるをいふ也、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0922 鷄冠菜〈◯中略〉海羅〈和名訓二布乃里一、（中略）必大（平野）按、本草亦謂、甘大寒滑無レ毒、然近時無二食レ之者一、澀鹹凝粘不レ堪レ食レ之乎、此物生二海中石崖間一、長三四寸、大如二鐵線一分レ了、如二鹿角状一、紫黄色、土人菜曝貨二于四方一、大抵用レ紙作レ巧者、煎二海蘿一以爲レ糊用、織二布葛一者亦用レ之、本朝式鹿角菜(○○○○○○)訓(○)二布乃里(○○○)一、參河、尾張、伊勢、 伊、阿波等州、貢二獻于民部省一、此供二食物一歟、用二工巧之事一歟未レ詳、〉

〔本朝食鑑〕

〈三/華和異同〉

p.0922 海羅即鹿角菜也、古人食レ之、近世唯爲二紙匠之用一、而無二食レ之者一、李時珍所レ謂女人用以梳レ髮、粘而不亂、亦然焉、今婦人産難用レ之、爲二滑胎之利一亦可也、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0922 鹿角菜　猴葵〈本綱〉　海蘿〈食經〉　和名不乃利〈◯中略〉按倭名抄載二食經一云、海蘿〈澀鹹大冷〉其性滑滑然主二九竅一、則海蘿(○○)與(○)二鹿角菜(○○○)一一物也(○○○)、倭名抄以爲二二物一者非也、凡海蘿生者和二醋未醬一食レ之、稱二生海蘿一、〈訓二古不乃利一〉處處多出レ之、似二石花菜一而黄紫色、肥州五島之産爲二最上一、朝鮮次レ之、志摩、伊豆、對馬、阿波、肥州平戸、紀州熊野之産爲レ中、奧州松前、仙臺、南部、及防州、土州之産爲二下品一、但奧州之産甚多也、曝乾用時煮レ之爲レ糊、紙工家用レ治レ紙、或和二石灰一爲レ堊塗二城樓壁一、産前催レ生、及胞衣不レ下者、用二布苔煮汁一服レ之、又傅二痔脱肛一即平安、皆取二性滑利一也、婦人用洗レ髮則舊油不レ脱而垢能去、又織二絺布一者塗レ之則筬易レ行、造法、洗レ水去レ砂擴二于筵上一、以二稗帚一洒水、晒乾則成、裁爲二方形一販レ之、其功用最多大致二民之利一、燒海蘿法　用二乾海蘿一、漬レ水去レ塵握丸、裹レ紙煨レ之擂爛、和二柹漆一、爲レ糊最佳、

〔續修東大寺正倉院文書〕

〈別集十九〉

p.0922 奉寫一切經所解　申請用雜物事合請新錢廿三貫九百九十三文〈◯中略〉 用一十七貫五百六十文〈◯中略〉　三百卌文布乃利(○○○)七斗五升直〈四斗升別五文三斗五升別四文◯中略〉以前、起去潤三月一日、盡今月廿九日、請用雜物并殘等、顯注如レ件、以解、　　寶龜二年五月廿九日　　　　　散位正六位上上村主馬養〈◯以下署名略〉

〔東大寺要録〕

〈三〉

p.0923 供二養東大寺盧舍那大佛一記文貞觀三年歳次辛巳春三月十四日戊子、行二大會一事、〈◯中略〉一僧供　導師一人供料、〈◯中略〉布苔(○○)三升、〈◯中略〉　法用千僧供　一人料、〈◯中略〉布苔(○○)六合、

〔諸色直段引下〕

〈貞〉

p.0923 諸色引下ゲ直段書　　生布海苔一朝鮮生布海苔(去子年六月書上直段金壹兩ニ付上中下平均六貫目替)　今般〈◯慶應〉再應利解之上直段ニ居置一〈薩州種島肥前五島〉生布海苔　　　但當時品無レ之候一〈勢州 州阿州土州〉生布海苔(右同斷上中下平均金壹兩ニ付六貫六百六拾匁替)　　　　　六貫百六拾六匁替(右同斷 引下直段 )　　但當時直段六貫六拾六匁、百目直下ゲ、一〈伊豆相模房州〉生布海苔(右同斷八貫目替)　　　　　七貫八百三拾三匁替(右同斷)　　但同斷七貫五百六拾六匁、二百六拾七匁直下ゲ、一仙臺生布海苔(右同斷七貫目替)　　　　　七貫目替(右同斷)　　但同斷六貫六百六拾四匁、三百三十四匁直下ゲ、一〈南部松前〉生布海苔(右同斷七貫五百目替)　　　　　八貫五百目替(右同斷)　　但同斷八貫六拾六匁、四百三拾四匁直下ゲ、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0923 伊勢　海蘿(フノリ)　紀伊　布苔(フノリ)　土佐　海蘿　豐後　海蘿　肥前　海蘿

石蓴

〔本草和名〕

〈十八/菜〉

p.0923 石蒓、〈常倫反、性至滑々、〉一名海蓴、〈出二崔禹一〉和名古毛(○○)、

〔倭名類聚抄〕

〈十七/海菜〉

p.0924 石蒓　唐韻云、蒓〈常倫反、漢語抄云、石蒓、古毛、一云、水葵菜、〉水葵也、辨色立成云、海蓴、〈和名上同〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0924 按本草和名云、石蒓一名海蓴、出二崔禹一、和名古毛、與二漢語抄辨色立成一合、但水葵是蒓一名、詳見二下文一、漢語抄以爲二石蒓一名一誤、本草拾遺云、石蓴生二南海石上一、南越志云、似二紫菜一色青、臨海異物志曰、附レ石生也、小野氏曰、是可下以充中今俗呼二阿乎左一者上、然則以二石蒓一充二古毛一非レ是、〈◯中略〉毛詩釋文引二鄭小同一曰、 或名二水葵一江南人名二之蓴菜一、正義引二陸璣疏一云、江東人謂二之蓴菜一、或謂二之水葵一、蓴即蒓字、本草和名云、甄立言音義、蓴蒓同、按本草和名云、蓴和名奴奈波、又云、石蒓和名古毛、明是蓴石蒓非二一物一也、漢語抄誤云二石蒓一名水葵菜一、源君以二蒓石蒓一爲二一物一、引二唐韻蒓字注一、非レ是、

〔倭訓栞〕

〈前編九/古〉

p.0924 こも〈◯中略〉　倭名抄に海蓴を訓ぜり、古事記にも見ゆ、ほだわらに似て丸きもの多くつけり、壽藻也といへり、小藻の義成べし、著聞集にこものこをさかなにしけると見えたるは、此を粉にしたるにや、庭訓に薦子と書るはいかヾ、

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0924 石蓴(セキシユン/コモ)　倭名抄ニコモ海蓴ノ二字モ用フ、〈蓴與レ蒓同〉多識篇案ニシテ、考二本草一南海石ニ附テ生ズ、莖ノ長サ二三寸イロアヲシ、涎滑アリテ脂ノ如シ、又光瑩ニシテ水晶ノ如シ、葉ノ間ニ椏アリ、椏中ニ花アリ、形圓ニシテ豆ノ如シ、其葉錢ヨリ大ニシテ卷タリ、慈姑ノ葉ノ如シ、薑豉ニテ烹テ甚ダ美ナリ、昔張翰ガ思シ蓴鱸ノ蓴ハ即是也、元升〈◯向井〉曰、西國ニコモト云海草アリ、其ノ様本草ノ説ノゴトシ、コマカニキザミタヽキテ、シヤウユウ、サカシホニテ調レバ、ネバリナメラカニシテ脂ノ如シ、シヤウガクルミナドキザミ入テ甚美ナリ、山藥ノトロヽ汁ニマサレリ、サレバ石蓴ハコモナルコトウタガヒナシ、多識篇アヤマレリ、又コモノ長ジテ老タルハ、色變ジテ紫ニナル、正月ノカザリニ用フルホダハラハ、此コモノ老タルナルベシ、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0924 コモ　細莖長クシテ、穗ノ如クナル小ニシテ丸キ物多クツケリ、タヽキテ羹トス、ホダハラニ似タリ、又菰ハ水草ナリ、別ナリ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈二十/水菜〉

p.0925 石蓴　アヲサ(○○○)　チサノリ(○○○○)〈阿州〉海中石ニ著テ生ズ、紫菜ト形状同クシテ緑色、乾シテ紫色ニ變ゼズ、ネバリアリ食料トス、諸州共ニアリ、國ニヨリ粘セザル者モアリ、一種海中石上ニ生ジテ、車前葉ノ如ク淡緑色ナルヲ、泉州ニテアヲサト云、攝州ニテニガアヲサ(○○○○○)ト云、肥前ニテガニアヲサ(○○○○○)ト云、賤民ノ食ナリ、今勢州ニモコレヲ賣ル、下品ノ者ナリ、又アヲノリノ濶キ者モ、紀州ニテアヲサト云、又陟釐椑柹モアヲサト云、皆同名アリ、

〔古事記〕

〈上〉

p.0925 於二出雲國之多藝志之小濱一、造二天之御舍一〈多藝志三字以レ音〉而、水戸神之孫櫛八玉神爲二膳夫一、獻二天御饗一之時、〈◯中略〉鎌二海布之柄一作二燧臼一、以二海蓴之柄一作二燧杵一而鑽出レ火、

〔古事記傳〕

〈十四〉

p.0925 海蓴は古毛(コモ)と訓べし、〈◯中略〉大嘗祭式に、紀伊國所レ獻云々、都志毛古毛(ツシモコモ)各六籠云々、並令二賀多潛女十人、量レ程採備一とある古毛も是なるべし、さて此海蓴と云物、いかなる物にか未考得ず、〈谷川氏云、海草に古毛と云物あり、小藻の意なるべし、保陀波良に似て、丸き物多くつけりと云り、其にや、されど海蓴の字をあてたるを思へば、海に生て蓴に似たる物なるべくや、又燧杵に作れるを思へば、やヽ堅き物なるべし、〉なほよく尋ぬべし、

〔延喜式〕

〈三十三/大膳〉

p.0925 正月最勝王經齋會供養料、〈◯註略〉僧別日菓菜料、〈◯中略〉青海菜、〈以二一帖一充二十口一〉古毛(○○)一合、

白藻

〔撮壤集〕

〈中/海藻〉

p.0925 白藻(シラモ)

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

p.0925 龍鬚菜(シラモ/○○○)〈彙苑詳註云、又名二 菜一、〉

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0925 龍鬚菜(しらも)　〈俗云白藻、未レ晒者、俗呼曰二於期菜一、〉

〔庖厨備用倭名本草〕

〈四/水菜〉

p.0925 龍鬚菜(リウシユサイ/シラモ)　俗名抄ニ龍鬚菜ナシ、多識篇カタノリ、考二本草一東南海邊ノ石上ニ生ズ、叢生シテ枝葉ナシ、ナリアヒ柳根ノヒゲノ如シ、長キハ一尺餘、色白シ、醋ニヒタシ、肉ニ和シテ蒸シ食シテ皆ヨシ、一名ハ石髮、元升〈◯向井〉曰、此註ヲミレバ、西國俗ニ云シラモ也、多識篇ニカタノリト云フハ、穩當ナラザルニヤ、

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0926 海藻〈◯中略〉白藻〈状如レ鬚、如二馬鬣一而有レ椏、長一二尺許、附レ石而生、生時淡紫色、連日晒乾則變レ白、若二陰雨時一漬二鹽水一取出、暴レ風亦變レ白、其味稍好、精潔生食可レ愛耳、備前海濱多有、豐後及海西諸州亦有レ之、〉

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0926 龍鬚菜(シラモ)　王氏彙苑曰、生二海中石上一莖如レ繒、長僅尺許、色始青、居人取レ之沃二於水一乃白、又名二繒菜一、人頗珍レ之、今按備前ニ白藻アリ、細絲ノ如ニシテ、青白水ニ浸セバ白クナル、煮食シ、或水ニヒタシスミソニテ食ス、潔白ナリ、若水曰、又北土及他州ニモ有レ之、ソウナト云、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0926 備前　堅浦白藻　　伊豫　 島白藻

〔寛政四年武鑑〕

p.0926 松平伯耆守資承〈◯丹後宮津〉　時獻上〈十月〉白藻

鷓鴣菜

〔和爾雅〕

〈七/菜蔬〉

p.0926 鷓鴣菜(マクリ)〈出二于閩書一〉

〔倭訓栞〕

〈中編二十四/末〉

p.0926 まくり　海苔の類にいへり、鷓鴣菜也といへり、海蒵也ともいへり、世に海仁草ともいひ、或は藫をよめり、小兒の腹痛などに用ひて虫を下す、まくり甘草合せ用う、古方なり、

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0926 鷓鴣菜(マクリ)　閩書曰、生二海石上一、散碎色微黒、小兒腹中有二蟲病二少食能愈、甘草ト同煎ジ用ユレバ、小兒腹中ノ蟲ヲ殺ス、初生ニモ用ユ、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/苔〉

p.0926 海人草(まくり)　〈俗云末久利〉按海人草生二琉球海邊一藻花也、多出二於薩州一、販二于四方一、黄色微帶レ 、長一二寸有レ岐無二根髭一、而有二微毛 一輕虚、味甘微鹹能瀉二胎毒一、〈一夜浸レ水去二土砂一〉小兒初生三日中先用二海人草甘草二味一、〈或加二蕗根一、〉包レ帛浸レ湯令レ吃レ之、呼曰二甜物(アマモノト)一、此方不レ知レ始二於何時一、本朝通俗必用之藥也、呑レ之兒吐二涎沫一謂三之吐二穢汁一、可三以去二膈上胎毒一、旣及レ吃レ乳則不レ吐、用二加味五香湯一可レ下、

海索

〔本朝食鑑〕

〈三/水菜〉

p.0926 海藻〈◯中略〉海素麪〈古未レ聞二此名一、近世通俗以二相似一而稱レ名、状似二索 之亂一、青色柔脆嚼レ之如レ有レ聲、其味稍好、京師近國最多、江東希有、伊豆、參河、安房、下總等海濱時有レ之爾、氣味主治未レ詳、然世人食レ之被レ中者少矣、〉

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0927 索麪苔　サウメンニ似テ長キ藻也、色黒シ味甘シテ美ナリ、鹽ニツケ或灰ニ和シテホシ用ユ、煮テ食ス、或薑醋ニ浸シ食フ、其漢名ト性ト未レ詳、冷滑ノ物不レ益二于人一、

〔和漢三才圖會〕

〈九十七/藻〉

p.0927 海索麪(うみそうめん)　〈俗稱〉按近世西海四國及因幡 後多有レ之、細長状似二索麪一而青緗色、故名二海索麪一、乾送二于四方一、用時盛二漆器一、少時漫レ水覆、亦用二漆器一則縮不レ敗、用二熬酒或醋一食レ之、味淡甘脆、若盛二磁器一則潰爛而失レ味、東海亦間有レ之、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0927 因幡　海索麪〈藻也〉

石帆

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0927 石帆　ウミヒバ(○○○○)　一名海松〈中山傳信録〉　礒松〈同上〉　鐵樹〈廣東新語、同名多シ、〉　 樹〈同上〉海底ノ石上ニ生ズ、大ナル者ハ高サ四五尺、小ナル者ハ數寸、枝叉甚ダ多クシテ網羅ノ如シ、皆左右ニ枝出テ扁ク、帆ノ形ノ如ク、又佛ノ後光ノ如シ、紅黄紫白青黒褐ノ數色アリ、小ナル者ハ海邊ニ於テ拾ヒ得、或ハ漁人ノ網ニ挂ル、用テ盆供トス、ソノ紅ナルモノハ、外ハ柔ニシテ赤土ヲ塗ガ如シ、外ノ柔ナルヲ削リ去ル時ハ、骨甚 ク石ノ如シ、赤色ニシテ縱道アリテ、珊瑚ニ異ナラズ、然レドモ枝ゴトニ自ラ斷テ椏ヲナサズ、長サ三四分許、コレヲ珊瑚砂ト云、又海濱ニテ拾ヒ得ル者アリ、其黄色ナル者モ又然リ、他色ノ者ハ骨軟ニシテ珊瑚ノ状ヲナサズ、一種ウミマツ(○○○○)アリ、又海中石上ニ生ズ、枝少ク扁ナラズ、黒澤ニシテ甚 シ、枝ノ梢稀ニ葉アリ、杉葉ノ如ニシテ極テ細ク長シ、播州ニテキガネト云、鎌倉ニテヤギト云フ、漢名鐵樹、〈通雅〉一名黒珊瑚、〈物理小識〉海苔樹、〈廣東新語〉一種ウミスギ(○○○○)ハ枝多ク葉繁シ、杉葉ニ似テ細小淺黒褐色ナリ、此外海産樹形ナル者甚ダ多シ、

水苔

〔倭名類聚抄〕

〈十七/水菜〉

p.0927 水苔　辨色立成云、水苔一名河苔、〈和名加波奈(○○○)〉

〔箋注倭名類聚抄〕

〈九/藻〉

p.0927 按水苔疑今俗呼二加波毛豆久(○○○○○)一、即是、當下以二陟釐一充 之、今南部呼二加波奈一者、海産阿 乎乃利也、

〔倭訓栞〕

〈前編六/加〉

p.0928 かはな　倭名抄に水苔をよめり、川菜の義なるべし、祝詞式にもしか書り、芹の名とす、古今集のかはなぐさも、是をいふなるべし、殿にも此藻をかき、或は彫は、火を防ぐ也、

〔大和本草〕

〈八/水草〉

p.0928 河薀(カハモヅク)處々小流ニアリ、海薀(モヅク)ニ似テ其色青ク、絲ヲツカネタルガ如クニシテウルハシ、羹トシ、或ハ酢ニテ食ス味ヨシ、但小瘡ヲ發シ身ヲ痒カラシム、病人及有レ瘡人食スベカラズ、北ニ向テ流ルヽ小河ニアリ、他方ニ向テ流ルヽ川ニハナシト云、漢名未レ詳、凡水苔ノ類ノ中ニ蛭蠆ナド毒虫ノ子アリ、食レ之則吐レ血而死ス、ヨク擇ブベシ、妄ニ食フベカラズ、

〔重修本草綱目啓蒙〕

〈十六/水草〉

p.0928 水藻　カハモ(○○○)　イツモノハナ(○○○○○○)〈古歌〉　カハナグサ(○○○○○)〈同上〉　一名惡藻〈典籍便覽〉　雲蘿〈同上〉　鳥藻〈同上〉　聚藻一名蘊藻〈埤雅〉　馬藻一名柳葉菹〈救荒本草〉　菹草〈同上〉水藻ハ水中ニ生ズル藻類ノ總名ナリ、集解兩種ニ分ツ、其一ハ聚藻フサモ、〈江州〉キンギヨモ、ヱビノス、〈 州〉ノボリ、〈但州〉クジヤクモ、〈勢州〉スヾモ、〈土州〉流水底ニ生ジ、水ニ隨テ靡キ流ルヽコト長ク、數尺ニ至ル、葉ハ至テ細ク絲ノ如シ、節ゴトニ多聚リテ、蓬子菜(カワラマツバ)ノ如シ、二月白花ヲ開ク、五瓣黄蘂、大サ三四分、水上ニ出テ開ク、其一ハ馬藻、ヤナギモ、サヽモ、溝瀆流水中ニ多シ、此モ水底ヨリ生ジテ、水ニ隨ヒ靡キ流ルヽコト數尺、葉ハ長サ二三寸、濶サ一二分、兩對シテ生ズ、又一種互生スル者アリ、

〔延喜式〕

〈八/神祇〉

p.0928 鎭火祭神伊佐奈伎、伊佐奈美〈乃〉命妹背二柱、〈◯中略〉吾名妋〈能〉命〈波、〉上津國〈乎〉所二知食一倍志、吾〈波〉下津國〈乎〉所レ知〈牟止〉申〈氐、〉石隱給〈氐〉、與美津枚坂〈爾〉至坐〈氐、〉所二思食一〈久、〉吾名妋命〈能〉所二知食一上津國〈爾、〉心惡子〈乎〉生置〈氐〉 〈奴止〉宣〈氐、〉返座〈氐、〉更生子水神、匏、川菜、埴山姫四種物〈乎〉生給〈氐、〉此〈能〉心惡子〈乃〉心荒〈比留波、〉水神、匏、埴山姫、川菜〈乎〉持〈氐、〉鎭奉〈禮止〉事教悟給〈支、〉

雜藻

〔萬葉集〕

〈十三/相聞〉

p.0929 紀伊國之(キノクニノ)、室之江邊爾(ムロノエノベニ)、千年爾(チトセニ)、障事無(サハルコトナク)、万世爾(ヨロヅヨニ)、是將是有登(シカモアラムト)、大舟乃(オホブネノ)、思恃而(オモヒタノミテ)、出立之(イデタチシ)、清瀲爾(キヨキナギサニ)、朝名寸二(アサナギニ)、 依深海松(キヨルフカミル)、夕難伎爾(ユフナギニ)、 依(キヨル)繩法(ナハノリ/○○)、深海松之(フカミルノ)、深目思子等遠(フカメシコラヲ)、繩法之(ナハノリノ)、引者絶登夜(ヒケバタユトヤ)、〈◯下略〉

〔萬葉集〕

〈十五〉

p.0929 海邊望レ月作歌九首〈◯八首略〉和多都美能(ワタツミノ)、於伎都奈波能里(オキツナハノリ/○○○○○○○)、久流等伎登(クルトキト)、伊毛我麻都良牟(イモガマツラム)、月者倍爾都追(ツキハヘニツツ)、

〔文祿四年御成記〕

p.0929 一初獻御盃參候〈◯中略〉　御與　堅海藻(○○○)

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0929 鳥ノ足(○○○)　一根ニ枝多シ短シ、葉形如二海松一、只甚薄褐色、鋒ニ兩叉アリ、煮テ可レ食、

〔毛吹草〕

〈三〉

p.0929 紀伊　鳥足(○○)〈鳥足ニ似タル藻云〉　鼠藻(○○)

〔大和本草〕

〈八/海草〉

p.0929 ナゴヤ(○○○)　海藻ニ似テマルシ、枝多ク細長シ、色青シ或褐色也、煮食ス、又沸湯ニユビキテ、味噌ニ和シテ食ス、性アシヽ、往々發二腹痛一不レ可レ食、

雜載

〔令義解〕

〈三/賦役〉

p.0929 凡調、〈◯中略〉正丁一人、絹絁八尺五寸、〈◯中略〉若輸二雜物一者、〈◯中略〉雜海藻一百六十斤、

〔常陸國風土記〕

〈多珂郡〉

p.0929 郡南卅里藻島驛家、〈◯中略〉昔倭武天皇乘レ船浮レ海、御二覽島磯一、種種海藻多生茂繁、因名、今亦然、

〔豐後風土記〕

〈海部郡〉

p.0929 穗門郷〈在二郡南一〉昔者纏向日代宮御宇天皇、〈◯景行〉御船泊二於此門一、海底多生二海藻一而長美、天皇即勅曰、取二最勝海藻一、〈謂二保都米一〉便令二以進 御、因曰二最勝海藻門一、今謂二穗門一者訛也、

〔肥前風土記〕

〈三根郡〉

p.0929 米多郷〈在二郡南一〉此郷之中有レ井、名曰二米多井一、水味鹹、曩者海藻生二於此井之底一、纏向日代宮御宇天皇、〈◯景行〉巡狩之時、御二覽井底海藻一、即勅賜レ名曰二海藻生井一、今訛二米多井一以爲二郷名一、

〔延喜式〕

〈四十二/東西市〉

p.0929 海菜 〈◯中略〉　右五十一 東市

〔枕草子〕

〈四〉

p.0929 さとにまかでたるに、殿上人などのくるも、やすからずぞ人々いひなすなる、〈◯中略〉左衞 門の文とてふみをもてきたり、みなねたるに火ちかくとりよせて見れば、あすみどきやうのけちぐはんにて、宰相中將の御物いみにこもり給へるに、いもうとのあり所申せとせめらるヽに、すぢなし、さらにえかくし申まじき、そことやきかせ奉るべき、いかに仰せにしたがはんとぞいひたる、返事もかヽで、めを一寸ばかりかみにつヽみてやりつ、さて後にきて、一夜せめてとはれて、すヾろなる所にゐてありき奉りて、まめやかにさいなむにいとからし、さてとかくも御かへりのなくて、そヾろなるめのはしをつヽみて給へりしかば、とりたがへたるにやといふに、あやしのたがへ物や、人のもとにさる物つヽみてをくる人やはある、いさヽかもこヽろえざりけると、みるがにくければ、物もいはで、すヾりのあるかみのはしに、　かづきするあまのすみかはそこなりとゆめいふなとやめをくはせけん、とかきていだしたれば、歌よませ給ひつるが、さらに見侍らじとて、あふぎかへしてにげていぬ、

〔清良記〕

〈七/上〉

p.0930 糞草之事一海藻類〈◯中略〉是等は草木の内にても多して、勝れたる養也、此外不レ可二勝計一、