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東湖随筆
一川路〈○聖謨〉日く、近来試合剣術盛に行はれ、一世剣術の実用に適する事おえれるは可賀事也、然るに近来試合剣術の中、甚長きえなひ以て、片手にて刺突お専らとする事流行せり、試合も如此なり行ては、又実用に遠く、形剣術と同日の論なり、されば其弊お矯んには、人々双刀のえなひお帯び、槍お遣はせ、消りたらば槍お捨、刀お抜き、戦はしむる事お調練せば、甚長き剣の実用に遠きお悟るべしと嘆息せり、彪〈○藤田束湖〉亦嘗て憂お同うするゆへ、共に漑嘆せり、鳴呼川路可謂讃者矣、