犬追物円説
下
犬之事
一犬は、白犬本也ご具鏡犬追物之記にみへたり、犬数は百五十匹お本とする事、法量物にみへたり、此外委細の事、古伝の書に見へず、其故は常の地犬お用候て、女犬男犬おもえらばず、あるにまかせて臨時にあつむる故なるべし真犬追物記に、犬おくらき所に入置て、人お恐るゝ様にして用之と有、是心得がたき事也、人お恐るゝ様にせば犬引の手にも、とちれまじき也、此説用がたき也、唯何となくつなぎ置べし、〈鎌倉年中行事に犬消物之事あり、是も臨時に、所々より犬お集る事あり、がれて犬おくらき所におしこめ置事は見えす、〉
一犬おかくる事、昔は藤かづらお用たる由、射手具足之記にみえたり、後には絶お以てかけし也、犬のくび縄こいふ事、諸の犬追物之書ざもに見えたり、又くび縄の事お、くび玉と書たる書もあり、おなじ事也、犬に絶おかくるやう、二ひろばか力の藤かづらにても縄にても、二つにおかて、その折めお犬のくびにかけて、男結ひに結ぶ也ぐびおえめぬ様に、ゆるやかに詰ぶなり、扠その藤かづらにても絶にても、筒おはめる也、頭おまはして絶お食切故、縄に竹の筒おはめる也、竹筒お用る事、犬追物の諸書にみへたり、射手具足の記に雲、昔は藤かづらなどにて、犬おかけたる間、鎌にて切て放たる也、今は筒にて懸る也雲々えかれば藤かづらの時は、竹の筒は用ひざる也、〈○図略〉此縄むすびめより余る分、三尺計もあるべし、法式なし、くび縄とも、くび玉とも雲は、此絶の事なり、筒長さ萱尺五寸計もあるべし、定法なし、筒はくる〳〵とまはる様に、ちとふとき竹お用べし、衢の中、かたぐて、まはらざれば犬かみわる也、
藤にてかくる時も如此すべし、但筒おば不用也、藤憾たやすくかみきらぬ故也、されども用心に筒お用るも不苦、
一犬の名所之事、頭お物がしらと雲、両目の聞の少上おみけむと雲、背お高せなかと雲、腹おみなしはらと雲疣おほそじりと雲、あとあしのふしお、からすがしらと雲、又はりずねとも雲、物語なざめ時、如此いふべし、真犬追物之記に、検見矢目お問ふ時、射手、弓手の肩とも、馬手のもゝとも答ふとあれども、古伝の書にみえず不可用之、矢所お問ひ答ふ事はある也、弓手、馬手、押もちりなどお、矢所といふ也、又犬の頭足ほそ尾おば射ぬ法也明鏡犬追物記にみえたり、検見、此等之矢目お射たる矢おば実せぬなり、
一犬は、白犬本也ご具鏡犬追物之記にみへたり、犬数は百五十匹お本とする事、法量物にみへたり、此外委細の事、古伝の書に見へず、其故は常の地犬お用候て、女犬男犬おもえらばず、あるにまかせて臨時にあつむる故なるべし真犬追物記に、犬おくらき所に入置て、人お恐るゝ様にして用之と有、是心得がたき事也、人お恐るゝ様にせば犬引の手にも、とちれまじき也、此説用がたき也、唯何となくつなぎ置べし、〈鎌倉年中行事に犬消物之事あり、是も臨時に、所々より犬お集る事あり、がれて犬おくらき所におしこめ置事は見えす、〉
一犬おかくる事、昔は藤かづらお用たる由、射手具足之記にみえたり、後には絶お以てかけし也、犬のくび縄こいふ事、諸の犬追物之書ざもに見えたり、又くび縄の事お、くび玉と書たる書もあり、おなじ事也、犬に絶おかくるやう、二ひろばか力の藤かづらにても縄にても、二つにおかて、その折めお犬のくびにかけて、男結ひに結ぶ也ぐびおえめぬ様に、ゆるやかに詰ぶなり、扠その藤かづらにても絶にても、筒おはめる也、頭おまはして絶お食切故、縄に竹の筒おはめる也、竹筒お用る事、犬追物の諸書にみへたり、射手具足の記に雲、昔は藤かづらなどにて、犬おかけたる間、鎌にて切て放たる也、今は筒にて懸る也雲々えかれば藤かづらの時は、竹の筒は用ひざる也、〈○図略〉此縄むすびめより余る分、三尺計もあるべし、法式なし、くび縄とも、くび玉とも雲は、此絶の事なり、筒長さ萱尺五寸計もあるべし、定法なし、筒はくる〳〵とまはる様に、ちとふとき竹お用べし、衢の中、かたぐて、まはらざれば犬かみわる也、
藤にてかくる時も如此すべし、但筒おば不用也、藤憾たやすくかみきらぬ故也、されども用心に筒お用るも不苦、
一犬の名所之事、頭お物がしらと雲、両目の聞の少上おみけむと雲、背お高せなかと雲、腹おみなしはらと雲疣おほそじりと雲、あとあしのふしお、からすがしらと雲、又はりずねとも雲、物語なざめ時、如此いふべし、真犬追物之記に、検見矢目お問ふ時、射手、弓手の肩とも、馬手のもゝとも答ふとあれども、古伝の書にみえず不可用之、矢所お問ひ答ふ事はある也、弓手、馬手、押もちりなどお、矢所といふ也、又犬の頭足ほそ尾おば射ぬ法也明鏡犬追物記にみえたり、検見、此等之矢目お射たる矢おば実せぬなり、