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武将感状記

松平筑前守忠之の長臣栗山大膳は、榊が弟子ち夕、鳥銃の妙変得たり、一間二分に定るは鳥銃の法たるに由た、十五間の場には、三寸川角お立て打之に、百発百中、一失もなし、二寸、一寸五分、一寸にも、稽古にはせ粥、是は外れて過にあらず、常に人に対して、九十九中りて、一つ外る、者は、上手にあらず、其故は始より外ぞ所定りなし、大事の物おうたん時、百に一じの外れ、最初に外れなば、いかヾせんといへり、栗山が宅地は、髏際にて古松多く茂りあへわ、泊の鳥のかけ鳥おうつに、三つ一つは必ず中る、馬爪源右衛門も、同く楕が弟子にて、芸は栗山より勝りけれども世人栗山と謂て、馬爪き不謂は、栗山は禄三万石お受て、其威勢あるが故也、